ダンジョンで一攫千金を狙おうと思ったらどんどん人から外れていくんだが   作:アースゴース

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第47話 80’s End of the Century

 「治りおっそ。再生せぇへんやんけ左腕」

 

 『銀の弾丸(シルバー・バレット)』によって崩壊した左腕は、【超再生】でも治りが遅かった。

 どういう原理かわからない。『銀の弾丸』の効能か、ロドリゲルの執念か。

 

 「どうなっとんのや……まあええわ」

 「オーッス! 未来のチャンピオン!」

 「! ブロワーマン。何でこんなとこに?」

 

 左腕を動かしながらコロシアムの外に出ようとする。

 すると、ブロワーマンが現れた。解説してたのは知ってるが、先に帰ったと思っていた。

 

 「上でソラを待ってたのさ。そしたらこっちに入ってくのが見えてな……いやぁ、お見事。まさかロドリゲルを殺っちまうとは」

 「……そこまで見とったか」

 

 お互い合意の上とはいえ、立派な殺人行為。

 ……ブロワーマンには失望されただろうか。協会に通報されても文句は言えない立場だ。

 だが、ウチの想像とは裏腹に、ブロワーマンはケラケラと笑っていた。

 

 「ハハッ! いや、通報とかするつもりはねぇよ。ロドリゲルだって同じようなことやってたんだ」

 「そうか……でも、ええんか?」

 「……いや。ここだけの話な、この『東京ドーム裏コロシアム』含む一部の闘技場系ダンジョンじゃ、探索者同士の決闘が合法なんだ。それによる殺人もな」

 「えっ!?」

 

 驚愕の情報だった。殺人が合法だと言われても、信じられない。

 ブロワーマンは口に指をあて、ジェスチャーで誰にも言わないように伝えている。

 

 「絶対誰にも言うなよ? この情報は協会でも知ってる奴は少ねぇ。口外しないように契約書も書かされるからな」

 「お、おう。分かったわ。でも、なんでそんなこと知ってるんや?」

 

 ラーメンじゃなくて情報食ってそうなほど情報通であるブロワーマンだが、なぜそんな秘密を知っていたのだろうか。

 まさか、ブロワーマンも過去に……?

 

 「ま、実況席で解説してりゃ色々あるのさ」

 

 煙に巻かれてしまった。

 こうも露骨にされると、ウチとしては詮索しづらい。

 

 「そうか……まあええわ。で、ウチも帰ろう思てんねんけど、コレどうしたらええ?」

 

 ウチは話題を変えて、手に持っていたショットガンを指し示す。

 ソードオフ・ショットガンなど銃刀法どころじゃない、アメリカでも違法な代物だ。

 

 「貰っといたらどうだ? そいつは『アーティファクト』だ。だがすでに所有権はソラに譲渡されてるぜ」

 「なにっ!? ウチに?」

 「ああ。ロドリゲルはそいつを使ったことが無いんだ。でも、強敵から手に入れた手前、手放しにくかったんだろうよ。だから、自分に勝ったソラに(てい)よくプレゼントってわけさ」

 

 確かに、このダブルバレルのショットガンは、ガンマンのロドリゲルには似合わない。

 ウィンチェスターとかなら似合うだろうが、この銃は少し世紀末的すぎる。

 

 「C級探索者なら銃は持てるぜ。教えてやるから申請に行こう」

 「ホンマか!? 助かる! せやったら頼むわ」

 「いいってことよ」

 

 ブロワーマンは何でも知ってる。

 その知識は、いつもウチを助けてくれるものばかりだ。

 だが、そんな彼でも知らないことはあるようで。

 

 「そういえば……」

 「どないした?」

 「その銃の()は何ていうんだ?」

 

 ウチはショットガンを見つめる。

 少しかすれてはいたが、木製のストックに刻印されたその銘は理解できた。

 

 「『80’s End of the Century』。80年代の世紀末ってことやな」

 「へぇ、確かに元警官とか名前言ってほしそうな奴とかが使ってそうなデザインなだけはあるな。まあ80年代なのに世紀末って意味分からんが」

 

 確かに、世紀を超えられてない。

 これは、80年代の世紀末的な近未来を思い描いた銃なのかもしれない。

 だが、この飾り気の全くないデザインはウチ好みだ。ありがたく使わせてもらおう……弾代は高いからケチりつつだが。

 

 「さ、帰ろうか……ああ、ロドリゲルの死体は放置でいい。『(つわもの)どもが夢の(あと)、死して(しかばね)拾う者なし』ってな」

 「そういうもんか」

 「そういうものさ」

 

 ウチらは、『東京ドーム裏コロシアム』を後にした。

 一陣の風が吹く……闘技場が、またいつでも来いと歓迎しているように思えた。

 命の奪い合い。それこそが人間の、生命の本質であると。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「グムゥ……」

 

 ガーランドは、ソラとロドリゲルの決闘を目撃していた。

 ブロワーマンはあえて言わなかったが、彼も一緒にいたのだ。

 

 「……」

 

 どちらも破格の強者だった。

 互いに必殺の手段を持ち、一撃のもとに勝負がついた。

 耐久戦が得意なガーランドにとって、この早期決着は新鮮なもに映った。

 

 そして、この2人は今、殺し合う必要などなかった。

 だが彼らは自分の意思で死合いを望んだ。避けられた死だった。

 なぜ彼らが死合ったのか、それが分からない。

 

 「グゥム……」

 

 その答えは、強さにあるかもしれない。

 ソラについて行けば、強くなれるかもしれない。

 幾星霜の歳月がかかってもいい。ガーランドは、それが知りたかった。

 

 

 

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