ダンジョンで一攫千金を狙おうと思ったらどんどん人から外れていくんだが   作:アースゴース

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第48話 ダンジョン×タンデム

 「――でなぁ、今そのオークを預かってるわけなんや」

 「また変なことしてんなコイツ」

 

 下校時刻。ウチは友人である(ともえ)にガーランドのことを語っていた。

 まだガーランドの真の実力は未知数だが、他のオークに関する資料と見比べると、かなり筋肉量が多いことが判明した。

 これから一緒にダンジョンへ潜り、力量を確認する予定だ。

 

 ……正直、『東京ドーム裏コロシアム』の戦いではあまり基礎的な力が分からなかった。

 取りあえず、ガーランドが選ぶ武器や防具を買って様子を見ることにしたのだ。

 

 「その、ガーランドって言ったっけ。オークなんでしょ? 強いの?」

 「身長200センチ軽くオーバーしてるんやぞ、こんな恵体が弱いわけあらへんやろ」

 「恵体(えたい)だろうが恵体(めぐたい)だろうがどうでもいいのよ。問題は……『迷宮配信者(スクリーマー)』の間でオークは大体カマセだってことよ」

 

 オーク、実はC級では弱い方だった!?

 いや、特にそんなことはない……が、そこまで強いかと聞かれると疑問なレベルである。

 

 勇敢と言えば聞こえは良いが、獣のように突っ込んできたりするし、怒りで我を忘れることもしばしば。

 正面からまともにやれば強いが、(から)め手や遠距離攻撃を使えば普通に倒せる。

 

 まあ、C級ともなると、オーク相手に無双できる奴も中にはいる。何ならウチでもできる。

 つまり、戦闘中に配信できる余裕のある者にとってはそう難しくない相手……なのかもしれない。

 

 「気をつけないと、『迷宮配信者(スクリーマー)』に野生のオークと勘違いされて討伐されるかもよ」

 「うーん、防具とかつけとるから勘違いされることはないと思いたいんやけど……」

 

 戦闘では興奮で、見分けがつかなくなるかもしれない。

 ウチも気をつけなければ。

 

 「あぁ〜……それで、今日もダンジョン行くの?」

 

 学校の校門あたりまで来ると、巴がコキコキと首を鳴らしながら言った。

 彼女は巨乳だ、肩とかが凝っているのかもしれない。

 

 「まあな。待ち合わせもしとるし」

 「へぇ、どこで?」

 「ここで」

 「はぁ?」

 

 ブォーンと大型バイクのエンジン音が聞こえてくる。

 やがて校門で止まったのは、緑色に塗装されたカワサキのゼファー1100。

 それはまるで、風のように颯爽とやってきた。

 

 「な、なんだぁっ」

 「時間ピッタリ。流石やな……ブロワーマン」

 「オレは時間に遅れたことがないのが自慢なんだ」

 

 ヘルメットを脱いでこちらに目を向けたのは、ブロワーマン。

 そう、今日はこのまま協会まで送ってくれることになっているのだ。

 

 『誰だあのイケメン』

 『背たっか! スタイル良っ!』

 『おい、あそこで話してるの諸星さんだろ』

 『ま、まさか……彼氏?』

 『まあ美少女だしあり得るだろ』

 『諸星さんがあんなチャラ男に……NTRやんけ〜!』

 『寝てから言え』

 『このロリコンどもめ!』

 

 皆して好き勝手にほざいてる。

 というか、誰がロリじゃ! 体型か!?

 

 「ほぉ~慕われてんだなぁ。オレの地獄耳(ブロワーイヤー)にゃ、全部筒抜けだぜ」

 「地獄耳でも節穴みたいやな」

 

 全くブロワーマンはお調子者が過ぎる。

 まあ、チャラい感じだがイケメンなのは本当のことだ。しかし、その割に金髪以外は、ピアスすらしていない。

 曰く、『身体強化で頑丈になりすぎてピアスの穴が開けられなくなった』かららしい。なんとも彼らしい理由だ。

 

 「さぁて、初めての二人乗り(ニケツ)……じゃあないな。でもオレ女の子エスコートしたこと無いんだよなぁ……」

 「そんなエスコートなんか! ええって別に」

 「こーゆーのは雰囲気が大事なんだよ」

 

 ブロワーマンは(たたず)まいを正す。

 ワイシャツの上からライダースジャケットという格好だったが、意外と様になっている。

 彼は(うやうや)しく、執事のような礼をしながら言った。

 

 「お手を拝借、マドモアゼル?」

 「ほ、ほぉぉぉぉ……???」

 

 こ、コイツ中々やるやんけ。

 エスコートは初めてとかほざいていたが、その所作は完璧だ。どこで覚えてきたんだそんなもん。

 この行動に生徒の反応は――

 

 『キャアアアア! ヤバッ! え? ヤバッ!』

 『イケメンで高身長でカッコいい執事!? どっから連れてきたの!?』

 『あ、あんなアホそうなチャラ男に諸星さんが……NTRやんけ~!!!』

 『寝言は寝て言え』

 『俺達は顔でも身長でも知識でも技術でも心でも勝ててないんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ』

 『ククク……どうしてそんなこと言うの』

 

 女子からは黄色い声、男子からは怨念。

 まあ、恋バナ大好きな高校生にこんなもの見せたらどうなるかは明白だ。

 どいつもこいつも、刺激に飢えている。それは大ダンジョン時代とも言われる現代でも変わらない。

 

 「おや? 私ではお気に召しませんでしたかな?」

 「こ、コイツぅ……」

 

 ブロワーマンが期待に満ちた目で見てくる。まるで犬みたいだ。そう思うと何だか冷静になってきた。

 でも色々悔しいので、ウチは手を後ろに回して、代わりに【触手】をブロワーマンの手に乗せた。

 

 「これマジ? マドモアゼルの手にしてはヌメリありすぎだろ」

 「粘液の有無は自由や、わざとやぞ。んで、瀟洒(しょうしゃ)のメッキは剥がれたな」

 

 一瞬でキラキラした雰囲気を消し去り、いつもの調子に戻ったブロワーマン。うむ、彼の場合、これが一番落ち着くなぁ。

 ウチがうんうん(うなづ)いていると、横から凄い視線を感じる。

 

 「お、どうしました?」

 「なんや巴、どないした?」

 

 目をこれでもかと開いた巴。その両手はファック・サイン。

 

 「こ、この汚い初音ミクがよ……!」

 「貴様ーっ! ソラさんを愚弄するかぁーっ! まあ事実だからしょうがないけど」

 

 巴はかなり美少女だし、尻もタッパも胸もデカい。

 詳しくは知らないが、実家も太いらしいというのを聞いたことがある。

 だが、それでもモテない理由があった。

 

 「いつの間にか綺麗になってたのってやっぱそーゆーことかよぉ……色気づきやがってぇ……」

 

 肉食……いや、雑食。出会いを求めるのとは裏腹に、出会いは遠のいていく。求め、遠のき、求め、遠のき……ループに陥った負の無限の化身。

 モンスターすら憐れむ哀しき存在であり、隙あらばモンスターも食おうとする野生動物に近い奴。

 

 人は彼女をこう呼ぶ、『猿の巴』と。

 

 「まあほっといたら収まるから、はよ行こうや」

 「おう!」

 

 ウチは特注品のヘルメットを被り、ブロワーマンの後ろにまたがる。

 点火されたエンジンがうなりを上げ、ガソリン排気の呼吸を行う。

 

 「掴まったかぁ? じゃあ行くぞ!」

 

 ブロワーマンの腹に手を回し、落ちないように掴む。

 まあ、いわゆるタンデムという形だった。皆に見られているのは少々恥ずかしいが……ん? ダンジョン行く時の格好で練り歩いてる方が恥ずかしくないか?

 

 そんなことを考えている間に、バイクは発進した。

 

 「どうだ? 気持ちいいだろ? 自慢のバイクだぜ」

 「あぁ……」

 

 肌を撫でる風、一定のリズムで揺れる車体、目の前の大男の温もりが心地よい。

 

 「ずっと前、オトンにバイク乗せてもらった時以来やな……」

 「へぇ、いいじゃん。どんなバイクだった?」

 「オンボロのカブやった。家計が苦しいから、売り払ってもうたけど……今ならまた買える」

 

 オトンもオカンも、身を粉にして働いている。

 ウチも家族の助けになりたいと思って、探索者になったのだ。

 

 「どうした? どっかキツいとこあるか?」

 「いや……初心を思い返してた」

 「へぇ、初心かぁ。ま、大切にしとけよ」

 

 風を切り、バイクが進む。

 目的地は探索者協会。今日もまた、ダンジョン探索が始まるのだ。

 

 

 

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