ダンジョンで一攫千金を狙おうと思ったらどんどん人から外れていくんだが   作:アースゴース

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第49話 C級ダンジョン『中級者の洞窟』

 「点呼します。ソラです」

 「ジャア」

 「ブロワーマンです」

 「グムゥ」

 

 探索者協会付近に集まったのは、この異様なメンバー。

 薄着の少女(オブラートな表現)、コモドドラゴン、ブロワー男、完全武装オークである。

 不審者丸出しの連中だが、実力はそれなりにある。

 

 「いやぁ、見違えたなぁガーランドよぉ」

 「グム」

 

 ガーランドの装備は、コロシアムで着ていた簡素な皮鎧から大幅に更新されている。

 金属と革、そしてプロテクターの入り混じった、ある種のバイカーにも見える装備。肩パッドにはトゲがついており、ブーツは鉄板入り。

 世紀末的なアトモスフィアを感じさせる。武器が金属製の棍棒と手斧であることも拍車をかけていた。

 

 ヘルメットを被っている姿を見れば、誰もオークだとは思わないだろう。

 まあ、完全武装の人間風にしたのは、野生のオークと間違えられてトラブルにさせないためでもある。

 これから行くダンジョンも、オークの出現が確認されているのだから。

 

 ウチらが足を運んだのは、空き地のど真ん中にポツンと不自然にできた洞窟。

 両隣が店なのに、明らかに石っぽい見た目と材質で『自然にできましたよ』みたいな感じを出している。

 確かに山とかじゃただの洞窟に見えただろうが、場所が不自然極まりなかった。というか、階段が存在している。偽装する気はあるのだろうか。

 

 「ここが『中級者の洞窟』か」

 「『初心者の洞窟』のC級版だな。暗いから気をつけろよ。ま、オークなら夜目がきくらしいけど」

 

 ブロワーマンがガーランドを見る。ガーランドはすまし顔だ。多分。

 

 オークの得意なフィールドは森や洞窟といった薄暗い場所。

 なので夜の奇襲も大得意だ。戦いが関係すると眠気も空腹も吹っ飛ぶ。そして、そこそこ器用で、武器の使用もお手の物。

 何か、戦うことに特化してないか?

 

 「ま、ここにはそんなオークを超えるおっそろしいモンスターもいるから気を付けるんだぜ」

 「せやな。このパーティ、バランス悪いし」

 

 前衛2人、後衛1人、コモドドラゴン1匹。

 アカン、コモドドラゴンがノイズすぎる。どっちに入れるべきか……屈強さを生かして前衛か? それとも主に探知で役立ってもらうから後衛?

 だが、今回は明確な役割があるから迷うことはない。

 

 「まあええわ。じゃあ行こか」

 「ジャア!」

 「ユクゾー!」

 「グム」

 

 ウチらは階段を下った。

 そこには薄暗い道が続いており、何本にも枝分かれしている。

 壁には目印となるようなペイントが塗られていて、迷わないように配慮されていた。

 

 「どれ進む? 右か? 左か?」

 「うーん……ドンの意見も聞こう」

 「ジャア!」

 

 ドンが示したのは真ん中だ。

 ガーランドも頷いているので、同意見のようだ。

 

 その道を進む。薄暗いのでドンに棒を括りつけ、そこに懐中電灯をつけている。

 コモドドラゴンの体型なら、光源がひとりでに動いているように見えるはずだ。

 道は結構な幅があり、ウチらが並んでもまだ余裕があった。

 

 「ん、前から何か来た」

 「同業者か、モンスターか……」

 

 向こう側から、何者かが歩いてくる。

 足音からして、グリーヴか何かを履いているようだ。

 やがて懐中電灯の光に照らされたそれは、フルプレートアーマーの騎士のような者。

 

 それは大きく()()()()()()()――

 

 「ヤバい! 『リビングアーマー』だ!!!」

 「ウチがやる!」

 

 剣が振り下ろされる前に、懐に潜り込んで殴る。

 硬化した拳は鎧の腹部を簡単に貫き、そのまま両手で強引に真っ二つにした。

 すると、鎧――リビングアーマーは沈黙した。

 

 「怪力系美少女すげぇ……リビングアーマーが真っ二つになったし」

 「ムフーッ」

 

 ウチは力こぶを作って見せた。触ったらガチガチかも。

 ドンは、まだ使えそうな剣や兜を飲み込んでいた。

 

 「使えそうなんは剣と兜だけか」

 「リビングアーマーは全身金属だからな、壊れてても全部売れる」

 「何やってんねんはよ集めるで!!!」

 「ジャア……」

 

 鎧をバラバラに分解し、ドンの口に突っ込む。

 ドンが呆れたような目をしてくるが、マジックバッグを持っているのがドンなのでしょうがない。

 

 「ヨシッ!」

 「よしじゃないが」

 

 ガチャガチャとしたうるさい音を感知したのか、またリビングアーマーがやってきた。今度は4体で徒党を組んでいる。武器はそれぞれ盾と槍、剣、斧、三節棍だ。

 ん? 三節棍? 何かマイナーな武器が紛れ込んでる……それ集団戦だと邪魔じゃないか?

 

 「……取りあえず、三節棍はウチがやる」

 「ジャア!」

 「ドンは槍持ちか。じゃ、俺は斧にしよう」

 「グム」

 

 ガーランドは剣とやり合う気満々の様子。

 幸いにして、洞窟内はかなり広い。ある程度なら乱戦も可能だ。

 

 「ウチが相手やっ!」

 

 三節棍が無言で迎え撃つ。

 三つの関節を持つ棍、その名に恥じない縦横無尽の動きだ。棍の先が地面や壁にぶつかるたびに、物凄い思が鳴り響いている。

 しかし、驚くべきはその技量だ。壁や地面にぶつかったとしても、バランスを崩した様子は一切ない。これを疲れも痛みも知らないリビングアーマーが繰り出してくるというのだから恐ろしいものである。

 

 まあ、相手がウチじゃなきゃなぁ。

 

 「ふんっ!」

 

 両腕を硬化し、ゆっくりと近づく。

 三節棍の間合いに入ると、ウチは飛んできた棍の先をパリィした。

 

 「おおっと」

 

 すると、リビングアーマーは後ろに弾かれた体勢のまま一回転し、三節棍をくっつけて1本の棒にして突き出してきた。

 どうやら、棒になるタイプの三節棍のようだ。

 

 「甘いなぁっ!」

 

 だがウチは棒を左手で掴み取る。

 そして、一気に引き寄せて殴り抜いた。

 頭部を破壊されたリビングアーマーは、ゆっくりと倒れ伏した。

 

 「よしっ。他は……」

 

 苦戦しているかもしれないので、仲間の方を見る。

 すると全くそんなことはなかった。

 

 「ジャアッ」

 

 ドンの全体重を乗せた突撃により、槍持ちはバラバラになった。

 

 「あらよっと」

 

 ひらりと斧を(かわ)したブロワーマンは、ブロワーを鎧の隙間に突っ込んで風を送り込むと、鎧が内部から爆散した。

 

 「うん、シンプルに強いな」

 「ソラと一緒に激戦を乗り越えてきたんだぜ? これくらい朝飯前さ」

 

 まあ、今までの連中と比べたら、リビングアーマーに苦戦しているようじゃ逆におかしい。

 それに、ウチらも強くなっている。その成果が表れたということだろう。

 

 「ガーランドは……すげえな」

 「ガァッ!!!」

 

 横なぎに振られた剣を斧で弾くと、棍棒で頭を叩き潰す。

 兜が胸部あたりまでにめりこむような形に変形し、リビングアーマーは沈黙した。

 

 「流石の馬鹿力やな」

 「オークとリビングアーマーが戦ったら、生身と金属の差でオークの勝率はまあ低いんだがなぁ」

 

 確かに生身のオークと、金属のリビングアーマーではどうしても差が出るだろう。

 同じダンジョンにいるモンスターは、全部が共存しているわけではない。場合によっては天敵同士の関係性だったりする。

 オークはリビングアーマーの武器を奪い、リビングアーマーはオークの命を啜る。

 

 だが、ガーランドは相性を覆す屈強さを持っていた。装備の差もあるしな。

 

 「比較的キレイに残っとるな……よし、回収終わりや」

 「これが動物虐待ですか」

 「モンスター保護団体か? スタンピードの真っただ中に送ったるわ」

 「やめてくださいしんでしまいます」

 

 そんな軽口を叩き合っている時だ。

 

 『グゥゥゥゥオオオオ……』

 「な、何や?」

 「凄い雄叫びだ……かなり遠くっぽいが、こんなに大きく聞こえるとは」

 

 かなり遠くの方から、とんでもない声量の咆哮が聞こえてきた。

 獣のような、しかし金属同士が打ち合うような甲高い音も聞こえる。そして、その叫びはオークの、ガーランドのものに似ていた。オークなのだろうか。

 

 「何や、行ってみるか? ガーランド……?」

 

 同族と戦うことになっても良いのか。それをガーランドに聞こうとして、その顔を見る。

 

 「ガゥゥゥゥ……」

 

 ガーランドがヘルメットを脱ぎ、犬歯をむき出しにして声の方向を睨んでいる。

 明確に怒りと敵意がにじんでいる。あるいは嫌悪感なのかもしれない。そんな複雑な表情を浮かべていた。

 

 「……行ってみっかぁ!」

 「おう!」

 「ジャア!」

 「グム!」

 

 暫定、というか一応リーダーのウチの号令で、声のした方向へ全速力で進む。

 道中、リビングアーマーやオークが群れをなして襲ってきたが、ウチのタックルの前では紙クズ同然に血やパーツをぶちまけた。

 

 「こっちであってるか?」

 「オレの聴覚と風センサー、そしてドンの嗅覚を合わせれば……」

 「ッジャア!」

 「この通りさ!」

 

 かなり開けた場所に出た。

 『東京ドーム裏コロシアム』の半分くらいか?

 その中心で、何者かが対峙していた。

 

 『ゴガアアアアァァァァッッッ!!!』

 

 一方は、豪華な装飾をつけた、とてつもなく分厚いフルプレートアーマーをつけたオーク。

 3メートルを優に超す体格と、オープンフェイスの兜から見える凶悪無比な顔は見る者を圧倒する。

 間違いなく特異個体か、変異種の類だろう。

 

 そして、その怪物の目の前に立つのは、ゴシックなデザインをした、毒々しい色合いのドレスを着た女性だ。

 ウチとは違い、露出が全くなく上品な雰囲気を漂わせている。

 

 だが、その顔には脂汗がにじんでいた。脇腹あたりを抑えており、この汗が気温に合わない長袖やロングスカートのせいではないことは明白だ。

 人のことは言えないが、とても戦闘に適した服とは思えない。

 

 『ゴガァァァァ!!!』

 「……」

 

 鎧のオークに威嚇されても、女性は陰気な薄ら笑いを浮かべるのみ。

 まさか、一般人がたまたまダンジョンに入り込んでしまったのだろうか。そう思い、飛び出そうとした時だった。

 

 「あ、あれはまさか、A級探索者『毒虫』グレゴール・ザムザ!? ドイツにいるはずじゃ!?」

 「なにっ!? A級探索者!?」

 

 女性……グレゴール・ザムザは、ウチらを一瞥して言った。

 今にも襲いかかってきそうな鎧のオークすら、まるでいないような扱いで、優雅なカーテシーをして一礼。

 

 「お初にお目にかかります。私はグレゴール・ザムザ……少し、時間を稼いでくれると助かる」

 

 鎧のオークの背後から、大量のリビングアーマーとオークが現れる。

 天敵同士が、確かな統率力の元に結束している姿は圧巻で、まるで群れが1つの生き物のように見える。

 

 「な、何かよう分からんけどやるぞ!」

 「ここでザムザに会えるたぁ……やっぱ奇縁ってやつだな!」

 

 ウチらは、迫りくる筋肉と金属の軍勢と激突した……




 【壁の目印(ペイント)】
 ・ダンジョンの壁が硬すぎるので、苦肉の策としてペイントを残したところ、放置しても消えなかったのでそのままにされている。
 これに悪戯することは罪に問われ、エグい額の罰金と探索者免許の停止が言い渡される。
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