ダンジョンで一攫千金を狙おうと思ったらどんどん人から外れていくんだが   作:アースゴース

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第57話 決戦の準備

 

 「待たせたかな?」

 

 ブロワーマンが探索者協会の応接室で今までの情報を整理していると、背後から声がかかる。

 灰色の(もや)が、まるで何もない空間からあふれ出すかのようにいきなり現れた。その煙がまとうのは異質な魔力。

 魔力より(よど)みがなく()んでいるのにもかかわらず、()(たぎ)る溶鉄のような性質を持っている。

 それにもかかわらず、煙は極めて冷静で落ち着いた声をしているのが不気味だった。

 

 「冗談だろ? 約束の1時間前だぜ」

 

 だが、ブロワーマンは軽い調子で返事をした。

 何故なら、マフィアのボスのような恰好をしたこの灰色の煙は、ブロワーマンのみならず、ソラ、ドン、マコトも知る人物だったからだ。

 

 「お早い到着も交渉の秘訣か? トレーダーさんよ」

 「いや……単なる性分だ」

 

 かつて『超生物研究所』で共闘した、A級探索者トレーダー。ブロワーマンはあの戦いの後、彼と連絡先を交換していたのだ。

 トレーダーも無関係な者達を戦いに巻き込んでしまった――実際はソラ達から突っ込んでいったのだが、彼には責任感が強すぎるきらいがあった――負い目から、いつでも頼っていいと連絡先を渡していたのだ。

 

 「詳細はメールで見たが……諸星ソラが再起不能となったようだな」

 「ああ……それで力を貸してほしい。つっても、エリクサーが欲しいとかそんなんじゃねぇ。あんたの()()に用がある」

 

 ブロワーマンは、無駄話をするつもりはないとばかりにジュラルミンケースを取り出す。

 そこには、いくつもの札束がぎっしりと詰まっていた。それは、1億円にも達する大金だった。

 

 「こいつで買えるモンスターを用立ててくれ」

 「大金だな。Aランク以上ならはした金扱いする者も多いが、そうでない者にとっては手が出る金額ではない。どうやって手に入れた?」

 「オレは探索者ブロワーマンだぜ? コツコツ貯金してたのよ。まあ、『超生物研究所』の資料が協会に高ぁ~く売れたってのもあるが」

 「なるほど。あの非人道的研究が(めぐ)(めぐ)って人を助けることになるとはな」

 

 トレーダーは皮肉を言いながら資料を取り出す。

 カタログのようにも見える紙には、様々なモンスターが記載されていた。

 そのどれもがB級、A級であり、金額が書かれている。しかし、その金額は全て手書きの斜線で消されていた。

 

 「好きな者を、好きなだけ選びたまえ。期日までに必ず届けよう」

 「太っ腹だなぁ、流石A級探索者。でもオレってば金は払うし注文は決めてるんだ。こいつとこいつ、そしてこいつだ」

 

 ブロワーマンが選んだ精鋭達は、いずれもA級モンスターでも下位の存在でありながら、厄介な特殊能力を持つ種類だった。

 3体の金額をまとめると、どうにか1億円以内に収まるという値段だった。

 

 「厄介な連中だな。だが捕獲は容易だ……どうやって使うのかね?」

 「罠に嵌めてやるのさ」

 

 ブロワーマンが自信あり気に笑みを浮かべる。

 その未知数な智謀がどこまでパンツァー・ベーゼに通用するかは分からない。

 だが、分かっていることは3体のモンスターがその金額に見合う働きをすることは確実である、ということだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 トレーダーとの商談を終えたブロワーマンは、マコトとガーランド、グレゴールを連れてとある場所に向かっていた。

 その場所というのは、主に洋食を提供する広いレストランである。

 

 「ブロワーマンさん、次は誰と会うんですか?」

 「オレの知り合いだな。とにかく数が多くて、銃を何丁も持ってるクランだ。ま、等級はCだが……ポテンシャルはそれ以上さ」

 

 4人の内、3人が190センチをゆうに超える体格を持つ異様な集団が練り歩く。

 軽薄そうなチャラ男、強面のオーク、陰気な美女。それらに挟まれたマコトは連行される宇宙人もかくやという様相だった。

 道行く人も二度見したり、ガン見している。注目される一番の原因は、オークがライダースジャケットを着ているからかもしれない。

 

 だが、彼らは注目されても気にしない。

 そもそもそういったことに無頓着な者達が集まっているし、これからのことを考えると一々気にしていられないというのもある。

 彼らが高い身長から来る歩幅で歩いていると、目的のレストランが見えてきた。看板には、『本日貸し切り』という文字が。

 だが、ブロワーマンは気にせず扉を開けた。

 

 「邪魔するぜぃ~」

 「あー、申し訳ない、今日は俺達の貸し切りで……って、ブロワーマンの兄貴か」

 

 一行を出迎えたのは、褐色の肌をした背の高い美青年だった。

 その背後から、ぞろぞろと屈強な外国人達が集まってくる。誰もが、体格だけならガーランドにも引けを取らない者達だった。

 

 「わぁ……」

 

 屈強な体格を誇る彼らに、マコトは見とれていた。

 マコトはブロワーマンやグレゴールのみならず、ガーランドとかも守備範囲内なので当然彼らのようなマッチョマンもイケる。

 

 「兄貴の仲間かい? 俺はオーマ・アブドゥル。『風雲団』のクランリーダーだ」

 「ど、どうも。虎の穴マコトです」

 「ガーランド」

 「グレゴール・ザムザ。以後、お見知りおきを……」

 

 青年の名はオーマと言った。

 その背後から、さらに背の高い青年と、小柄な少女が出てきた。

 

 「ワリソン・スコッティ・デズモンドだ。よろしく」

 「ん、錆粕(さびかす)・アリス」

 

 彼らはオーマの古くからの友人であり、家族ともいえる存在だ。

 

 「で、聞きましたぜ兄貴。ワケの分からない奴にパーティーのリーダーをやられたって?」

 「そうなんだよ。単刀直入に言うが、見つけるの手伝ってくれねぇか? 危険な依頼にはなるが……」

 「兄貴の頼みときたら断るわけにもいかねぇ! それに、やられたのは兄貴の恩人なんだろ? むしろ手伝わせてくれよ」

 

 風雲団の士気は高かった。

 彼らはブロワーマンに助けられた過去がる……らしい。

 

 「仇討(あだう)ちか? 腕が鳴るぜ」

 「ウサギ狩りの始まりだ」

 「オデ、人類ニ仇ナス存在キライ! 人類ノ敵殺ス!」

 

 団員達も、気合が入っているようだ。

 ブロワーマンの頼み、その恩人の仇。彼らは仁義や恩を大切にしていた。

 

 「準備はできてます。早速行きますか?」

 「ああ、目指すは『中級者の洞窟』。人海戦術だ」

 

 迷宮町のC級ダンジョン『中級者の洞窟』史上かつてない規模の攻略戦が幕を開ける――

 

 

 

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