ダンジョンで一攫千金を狙おうと思ったらどんどん人から外れていくんだが   作:アースゴース

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第69話 珍道中

 「おぉ、流石ロボット。精密動作はお手の物やな」

 

 誤解が解けた後、K2とラプターはクマの解体を手伝ってくれた。

 ウチとラプターが1体解体している間に、K2は3体目を解体しているほど早かった。その手つきは的確かつ効率的で、人間には真似できないものだ。ロボットだからな。

 何十体と死んでいたメガクローの解体は、3時間弱くらいで終わった。

 

 「よしっ! そうやっ、詰めるんや!」

 「な、なあこれ動物虐待にあたらねえか?」

 「しゃあないやん。マジックバッグ持ってんのはドンだけなんやから」

 

 痴女二人とロボットが、コモドドラゴンの口にクマの残骸を詰め込む光景は酷いものだったが、ドンは苦も無く呑み込んでいる。

 口が異様に開くのは恐らく呑み込んだ『ストバッグ』の効果だろうが、これだけ大量に呑み込んでも太りもしないのは、何だか見ていて奇妙な気分になる。

 

 「やぁ、終わった。ありがとうな、ウチ一人じゃアホほど時間かかってたわ」

 「良いってことよ。アタシらも悪かったよ、狩った獲物の価値が下がるかもしれなかったんだから」

 

 協会はモンスターを素材として買い取ってくれるが、できることなら損傷は少ない方が良いというのが正直な思いらしい。

 今回の場合は、ウチがすでに頭部の半分を吹っ飛ばしていたのでどちらにせよ、という感じだが。

 

 「そういや、ウチらは協会の依頼でクマ狩りに来てるんやが……お前らは?」

 「アタシらも協会からの要請だよ。賞金首(こいつ)はついで。本命がいる」

 「我々の目的は、メガクローの異常繁殖の原因を探り、可能ならば解決することである」

 「なるほどなあ」

 

 確かに、防御が間に合わないほど次々とクマに襲われるのは異常事態だ。

 【超再生】が無ければまず確実に死んでいただろう。ウチやから何とかなったが、このまま放置していれば一般的な探索者の犠牲は避けられないだろう。

 

 「その調査、ウチも手伝おうか?」

 「え、マジィ? 正直すっげぇありがてぇけど」

 「我々だけでも完遂は可能。しかし、逃げられるリスクは減らさなければならない。私はその申し出を受諾する」

 

 ラプターはともかく、K2が乗り気なのは意外だった。てっきり自分達で十分だとでも言うと思っていたが。

 だが、ニコニコしていたラプターの眉が徐々に下がる。

 

 「あー、でもよぉ、流石に防具なしじゃ厳しくないのか?」

 「ウチは元々薄着や。ラプターよりもな」

 「あ、アタシより?」

 「凄いやろ?」

 

 やたら露出の多いプロテクターと、色々見えている下半身の装備。

 確かに何のタクティカル・アドバンテージもなさそうなコスプレみたいな格好だ。しかし、ウチの方が布地面積は少ない。その点はウチの“勝ち”や。

 

 「いやダンジョンで露出誇ってもいいことねぇだろ。あんた変態か?」

 「ククク……酷い言われようやな」

 

 今は全裸に布をまとってるだけだからだから事実と言われてもしょうがないけど。

 

 「まあ、あんたが防具に左右されねぇスキルを持ってるってのは何となく分かったよ。武器はその銃か?」

 「いんや? メインウェポンは(こっち)

 「いかなる状況下でも戦闘能力を維持できるのか。諸星ソラを非常に優れた探索者であると評価する」

 

 そう。極論、ウチは全裸でも戦闘力は変わらない。

 全裸であることに目を瞑れば、いくらでも戦えるのだ。

 

 「分かった。そうと決まれば出発しようぜ」

 「目的地は森の最奥。ナビゲーションは任せろ」

 

 ウチらは、K2の案内で『危険な森』の最奥へと向かった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 森の奥へと向かう途中、ウチらは親交を深めていた。

 具体的に言うと、銃の話で盛り上がっていた。主にラプターが。

 

 「アタシのショットガンだが、こっちははウィンチェスターM1887。で、こっちがAA‐12。強いぜ」

 「ウィンチェスターは映画で見たことあるなぁ。AA‐12の方は知らんけど」

 「AA‐12はフルオートマチックのショットガンだ。つまり連射できるってことだよ」

 「なるほど。だからそんなドラムマガジンなんかつけとんのか」

 「しかも全弾対モンスター弾! クソほど高かったぜ。おかげで懐がすってんてんだ」

 

 『イーッ』としか言いようのない表情で肩をすくめるラプター。

 対モンスター弾は性能は良いものの、より良いものを選ぶとなるとそれに比例して値段が跳ね上がる。

 それこそB級、A級モンスターに効くものともなると、値段は相応だ。ウチのはC級向けだからそこそこだが。

 牽制目的なら十分だろうが……万が一を考えてグレードの高いものにするべきだろうか。

 

 そんなことを考えていると、ラプターがウチの銃を指した。

 

 「なあ、それって水平二連式(ダブルバレル)だろ? 随分古いように見えるが、何て名前なんだ?」

 「『80’s End of the Century』や。『アーティファクト』やぞ」

 「ショットガンのアーティファクト!? は、初めて見た!」

 

 銃のアーティファクトは珍しいのだろうか、ラプターは興奮していた。

 アーティファクトと言えば魔剣(アーティファクトの武器の総称)か、道具とかだろうし。

 そう考えると、銃は珍しいのだろうか。

 

 「なぁー、ちょっとでいいから触らしてくんね?」

 「アカンでー。これはウチの戦利品や。やすやすと他人に触らしとったら価値が下がってまうやろ」

 

 ウチがロドリゲルから勝ち取ったものなので、迂闊に他人がさわるとどうなるか分からないと言うのもあるが。

 アーティファクトの中には、主人を選ぶというものもあると聞く。この銃がその類だという思いは半々だが……確証は持てない。

 

 「えー、ちょっとくらいいーじゃーん」

 「アカンでー……って、アレ見ぃや!」

 「うん? ……あ、あれは!?」

 

 ウチらの言葉に先導していたK2も止まる。

 その視線の先には……

 

 「宝箱や!」

 「やったぁ!」

 

 鬱蒼とした森には似つかわしくないほど豪華な宝箱。

 自然物と、煌びやかな装飾の宝箱はミスマッチすぎる。だが、ダンジョンとはそういう場所だ。

 

 「どうする? 罠が仕掛けてあるかもしれねぇ」

 「ウチに任しとき。これでも探索者免許の講習じゃ罠解除の項目で高評価やったんや」

 

 ウチはそっと宝箱へ近づく。

 まずは触らないように全体を見る。見たところ、おかしな仕掛けは存在しない。

 次に装飾をいじくってみる。装飾が動いたりもしない。鍵穴も施錠されていないようだ。もしかしたら誰かが持って行った後かもしれない。

 

 「大丈夫そうやな。取りあえず開けるで」

 「気をつけろよ、ミミックかもしれないんだぞ」

 「ハッ! こんな森にミミックとかおらんや――」

 

 ガブッ

 ウチは目の前が真っ暗になった。

 尻が風でスースーするので、どうやら上半身と下半身で分かれているようだ。そして、尻が何だか生暖かいものに舐めまわされてる感触がする。

 

 「うああああソラがミミックに舐め回されてる」

 

 ラプターが何かを言っているが、聞こえない。

 いや、かろうじてミミックがどうのとか聞こえたので、ミミックに食われたのだろう。

 だがミミックにあるはずの牙が突き刺さった痛みはないし、ひたすら全身を舐めまわされてるだけだ。

 

 ウチは冷静になりながらも何とか腕を動かす。

 すると、何かが手に当たった。それを掴むが、暗くて何かは分からない。柔らかいのだが……

 下半身側では、ラプター達がウチを引っ張り出そうとしているらしい。

 

 「ふんぎぎぎ……こ、このエロミミックの力強ええぞ!?」

 「撃てば誤射のリスクがある。幸いこのミミックには牙がない。直ちに最悪の事態になる確率は2パーセントと判断」

 「その2パーは?」

 「強酸で溶かされること。しかし、センサーによるとあのミミックの体液は中性であると分析」

 

 何か言ってるがマジで聞こえない。

 その間にもベロベロとされてる。殺気もないし何がしたいんやこのミミックは。

 しかし、ウチの尻を舐めていた舌? が、次第に割れ目へと近づき――

 

 「? ベロベロベロベロベロ――」

 「ジャッッッ」

 「アッアー!!!」

 

 バシィン!

 凄まじい音とともにミミックが揺れ、ウチが吐き出された。

 全身は粘液だらけで、ベトベトの有様だ。

 

 「ぶえーっ……ありがとうなドン」

 「よっしゃ吐き出した! 覚悟しやがれエロミミックが――」

 「ベロベロベロベロベロ」

 

 ガタン

 ミミックは危機を感じ取ったのか、宝箱に閉じこもった。

 

 「こいつぅ……」

 「まあええやろ。他のモンスターみたいな殺意はなかったし……ケツは舐められたけど」

 「お前は何でそんな冷静なんだよえーっ、乙女なら貞操の危機には過敏になりやがれっ」

 

 ええツッコミやこれは……

 ウチはラプターのツッコミに感心しつつ、手に持ったものを見る。

 それは、黒い布だった。

 

 「そいつは?」

 「恐らく宝箱本来の品だろう。あのミミックは大事に保管していたらしい」

 

 布を広げる。

 エキゾチックと言えば良いのだろうか。煌びやかな装飾でありつつも、豪華すぎず機能もデザインも損なっていないそれは、チューブトップ型の下着らしきものだった。

 

 「あ、あのエロミミックの野郎、下着なんか口に入れてたのかよ」

 「まだあるぞ」

 

 もう()()ある。それはどちらともパンツだ。

 

 「パンツが二枚……何が始まる?」

 

 パンツは二つあった。

 一つは食い込みのエグいハイレグ、もう一つは普通のやつ。

 どちらもキレイであるが目立ちすぎない、良い装飾だ。

 

 「……下着やな。着る?」

 「んな気持ち悪いの履けっかよ!」

 「じゃあウチが着てええか?」

 「いいぜ……ってマジかよ」

 

 ウチは手に入れた下着を装備した。

 流石はダンジョン産。サイズはウチにピッタリで、着心地も抜群、今までの装備とは比べものにならない。

 

 「パンツはどっちを先に履くんだ?」

 「ハイレグが先かな。見せパンにしたるわ」

 「パンツより見るべき部分が多いと考えられるが」

 

 身体はベトベトだったが、スッキリした気分だ。

 ようやく文明の利器を手に入れたといいうか、裸族を脱したというか、そういう気分だった。

 

 「よし、気を取り直して進もうや」

 「先が思いやられるぜ……」

 

 ウチらは、先を進むことにした。

 なお、エロミミックのことは忘れていたので放置してしまった。

 達者で暮らせよエロ野郎。

 

 

 

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