ダンジョンで一攫千金を狙おうと思ったらどんどん人から外れていくんだが   作:アースゴース

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第75話 クランの名前を決めよう

 「うーん、どないしよ……」

 「適当に決めたらいいんじゃねーか?」

 「ダメですよラプターさん、せっかくのクランなんですから真面目に決めなくちゃ」

 「お、おう悪ぃな」

 

 ウチらは、協会の一室を借りて顔を突き合わせていた。

 内容は『クランの名前』と『クランの方針』である。意見が割れているわけではないのだが、これが中々決まらない。

 

 「まず方針やが……もうこれは各々自由にやっていけとしか言いようがないな」

 「だな。ま、だからといって犯罪は無しだが」

 

 流石にこの中にやらかすバカはいないだろう。

 悪質なクランの噂を聞くと、クランやメンバーの名を騙っての恐喝などがあるらしいが。

 皆は頷いている。ウチはこの中に人道に(もと)る行いをするような奴はいないと信じている。というか、その被害者だらけみたいなものじゃないか?

 

 「クランの共有財産はどうする?」

 「素材買取とか、賞金から1、2割くらいを納める、みたいなのでよくないですか?」

 「オレは賛成だな。皆は?」

 「異議なし」

 「私はいいと思う」

 「アカンかったら後で相談しよ」

 

 共有財産は、その名の通りクラン全員で使う金だ。

 例えばここから物資を買ったり、医療費を出したりする。いわば貯金だ。

 1割、2割でも何度も貯金していれば相当な額になるだろう。しかし、金が絡むと言えば……

 

 「あ、そういえば確定申告とかっていうのは……」

 「あ……」

 「スゥー……ッ」

 「フー……ッ」

 「……」

 

 確定申告だ。

 例え超人的な力を手にしたとしても、クランを結成したとしても税から逃れられないのか……

 強い探索者は収入は莫大だが、その分税金も多い。それでも手元に残るのはとてつもない金額になるのだが。

 

 「普段は私が事務作業を行おう。私はロボットだ、計算は得意なのでな」

 「オレもやるよ。税理士資格は持ってるんでな」

 「ありがとうございます、ブロワーマンさん、K2さん。ボクももっと勉強します」

 「……感謝する」

 「助かる……教養はあるという自信はあるが、そっち方面はからっきしなのでな」

 

 流石ロボット、計算が得意だ。

 んで、税理士まで持ってるブロワーマンの経歴やいかに。

 まあ人の過去を暴き立てる趣味はないので聞かないが。

 

 「さて、もっと細かいのは後で決めて行こう。次はお待ちかねの名前だ」

 「カッコいい名前ドンドン出してや~」

 

 クランに重要なのは名前である。

 名は体を表すというように、人もクランの名前を見て印象を判断するのだ。

 無頓着だったりすると『サキュバス&ミスター・しばざくらゲヘナ』みたいになる。

 

 「はい!」

 「マコト君、どうぞ!」

 「『魔人衆(まじんしゅう)』というのはどうですか?」

 「魔人衆」

 

 魔人衆。

 いきなえげつないの来たな。

 

 「どうしてその名前にしようと思ったんだ?」

 「その、めちゃくちゃ失礼なんですけどボク含めて皆さん人間には見えないんで、魔の人の集まり、つまり魔人衆という名前を考えました」

 「失礼すぎる」

 「すみません。でも事実ですよね?」

 「酷い言われようだな」

 

 まあ事実だからしょうがないけど。

 この場に異形化(することができるも含む)していない純人間はマコト以外に存在しないが、そのマコトも合成人間だ。

 他にもウチは変態触手人間だし、、ブロワーマンはブロワー人間になれるし、グレゴールは変身できるし、ラプターはサイボーグだし。

 

 ドン、ガーランド、K2に至っては人間ですらないのだ。

 異形率99パーセントの脅威のクランなので、マコトの案は合ってるっちゃ合ってる。

 だが、他の人の意見も欲しい。

 

 「取りあえず保留で」

 「では私も良ろしいかな?」

 「グレゴールどうぞ」

 

 次はグレゴールだ。

 今は日本語喋ってるけど純ドイツ人からどんなセンスのネームが出てくるのだろうか……

 

 「シュバルツ・ヴァルトというのはどうかな」

 「シュバルツ・ヴァルト?」

 「ああ……ドイツに存在する黒い森という意味だ」

 「ええやん、カッコいいし」

 

 流石グレゴールだ、カッコいい名前を出してきてくれた。

 

 「ちなみに黒い森って以外にも化け物が住む森って意味もあるぞ」

 「ウチらのクランが魑魅魍魎(ちみもうりょう)巣窟(そうくつ)やって言いたいんか?」

 「ククク……」

 

 グレゴールは不気味に笑っている!

 何でこうも化け物要素を押し出そうとするのか……

 

 「ガーランドは何かあるんか?」

 「MDS……」

 「ほぉ、MDS。意味は?」

 「モスト・デンジャラス(最も危険な)・サーチャー(探索者)……」

 「……」

 

 これがオークにしては高いどころか人間並の頭脳からはじき出された名前か……いや、危険であることは間違いないのだが、もっとこう……あるだろう。

 

 「ほら、K2も何か考えろよ」

 「私が考えた場合は実に事務的で記号的、君達風に言うと()()()()()ものばかりになるが」

 「ええよ、とりあえず言ってみてや」

 「Sora Moroboshi's H&Sクラン」

 「なるほど? そのH&Sって何の略や?」

 「ハック&スラッシュ、つまりダンジョンへの殺害及び略奪という意味だ」

 「物騒やな!?」

 

 モンスターを倒すことをそんな風に表現されるとは……

 確かに探索者は押し入り強盗みたいだが、ダンジョン側も放置していればいずれモンスターがはい出て来て人を襲うのでお互い様だろう。

 

 「ラプターは?」

 「いや……アタシはパスする。こーゆーのは苦手なんでね。ま、どんな名前でも文句は言わないさ」

 「分かった」

 

 一瞬だけ、ラプターが暗い顔をしたのをウチは見逃さなかった。

 人は誰しも言いたくない過去がある……そんなことを考えていると、ブロワーマンが首をポキポキと鳴らした。

 

 「ったくしょうがねぇなぁ。ここらでオレのネーミングセンスってのを見せてやるよ」

 「お? ブロワーマンは何かあるんか?」

 「へっへっへ、聞いて驚けよ。オレが考えた名前は――」

 

 皆が固唾を飲んでブロワーマンを見る。

 そして、その口が開かれ、出てきた名前とは――

 

 「異形100%」

 「ふざけんなっ少年漫画のパクリやないけっ」

 

 却下だ却下。

 

 「へっ、冗談だよ。ホントは別にある」

 「またパクリやないやろなぁ?」

 「真面目に考えてるよ。その名も『イモータルズ』!」

 「イモータルズ?」

 

 どういう意味だろうか。

 

 「意味は不死身……そえの複数形ってことは不死身の奴らとかそんな意味だな」

 「おお、ええやん。由来は何かあるん? ウチは不死身やけど」

 「それも由来だが、この名前にした意味な、ソラに出会ったり、その場にいてくれたことでオレ達が死ななかったことにある」

 「んー?」

 

 ブロワーマンは真面目な顔をして続ける。

 他の皆も聞き入っている。

 

 「オレなんてクマに殺されたり溺れ死んだりするとこだった。だが、ソラと出会って何とか生きながらえてる。マコト君の時もそうだろ?」

 「はい。諸星さんがいなかったらボク達は全滅してました」

 「ガーランドが生きてるのもソラが依頼を受けたからだ。グレゴールは知らんが……」

 「いいや? 私は人と出会わなければ野垂れ死ぬつもりだったさ」

 「アタシとK2も、あの物量に押されてりゃ死んでたかもな。そうでなくともターゲットを取り逃してた」

 「非常に遺憾だがその通りだ」

 

 確かに、毎回ピンチに出会っているがそれを皆と力を合わせて解決している。

 

 「ってかソラのタンク性能高過ぎんだよ。ただでさえクソ硬いのに再生能力持ち、その上触手とステゴロが鬼(つえ)ぇし。まっ、オレ達が情けないだけかもしれないが、いつも最前線で戦ってくれてるソラに敬意を表した名前さ。いよっ我らが難攻不落の城壁! 最強美少女タンク!」

 「ふ、ふーん……ほ、褒めても何も出んよ」

 

 ウチは今、どんな顔をしているだろうか。

 

 「も、諸星さん顔真っ赤だよ」

 「……」

 「顔逸らしてる……お前そんな顔もできたんだなぁ」

 

 ウチは照れ臭いあまり、努めて聞こえないフリをした。

 だが、何はともあれこれでクランが出来上がった。後は好きに活動するだけだ。

 

 

 

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