ダンジョンで一攫千金を狙おうと思ったらどんどん人から外れていくんだが   作:アースゴース

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第80話 日常、からの騒動

 『大阪地下火山』での戦いの後、ウチらは大阪のフェニックスの訃報とサラマンダーとの戦いを報告し、得たアーティファクトを鑑定のため預けた。

 著名なS級モンスター、それも人類に友好的な存在の死亡ともなると騒ぎは大きくなった。

 

 事情聴取は長かったが、日をまたぐほどではなかった。

 やがてそれらが終わると、協会の職員達は慌ただしくどこかへ連絡し始める。

 当のウチらはもう帰っていいとのこと。お言葉に甘え、ウチらはそれぞれの住居に帰って行った。

 

 ドンは送還でコモド島へ、ウチと虎の穴は実家、ブロワーマンは知らん、ガーランドとグレゴールは多分近場のホテル、K2とラプターは工場で暮らしてるとか何とか……

 

 そして次の朝……ウチと虎の穴は、公園の広場にいた。

 今は早朝なので、周囲には誰もいない。

 

 「諸星さん、準備はいい?」

 「おう! いつでも来いや!」

 

 ウチは動きやすいトレーニングウェア。例によって露出は多い。

 虎の穴も、それなりに洒落たトレーニングウェアである。

 今からやることは……組手だ。

 

 スキルの使用は無し。というか法律で禁止されている。

 しかし、ただ徒手空拳による組手ならば、認められている場所や時間帯があるのだ。

 この公園もそうである。虎の穴は設定したタイマーをベンチに置くと、構えた。いつでもかかってこいの合図である。

 

 「しばきあげたらあっ」

 

 地面を強く踏み込み、虎の穴へと迫る。

 ただのパンチだが、破壊力は常人どころか同じ階級のモンスターと比べても破格のもの。

 もちろん手加減はしている。市街でそんなアホみたいな威力を出すわけがない。

 

 「ふっ……」

 

 虎の穴はそれを苦も無く避ける。

 剣術のみならず、格闘技も高いレベルで修めた虎の穴にとっては見切りやすい攻撃かもしれない。

 

 「しゃあっ」

 「はっ!」

 

 頭部を狙った回し蹴りを繰り出す。

 だが、虎の穴はしゃがんでそれを回避し、そのままウチの軸足を刈り取りにきた。

 防ぎようのない超低空タックルだ。ウチらは、絡み合うようにもつれ込んだ。

 

 「ヒール・ホールドか……!」

 

 虎の穴は、情け容赦なくウチの脚を極めた。

 ウチの脚を圧迫しながら、身体全体をひねりながらへし折ろうとする。

 激しい痛みがウチを襲うが、我慢できる……というか壊れても問題ない。

 

 「げっ……」

 「ははぁ! ウチに関節極めたんが間違いやったな!」

 

 ウチは自由は両手を使い、関節を極められたまま逆立ちような状態になる。

 そのまま身体をひねって空中で回転し、勢いをつけて虎の穴ごと地面に叩きつけようとした。

 

 「はっ!」

 

 もちろん虎の穴は一瞬で技を解いて抜け出す。

 ご丁寧に、離脱する寸前に蹴りを入れて。スパァン、と良い音が鳴り響き、木にとまっていた鳥たちが驚いて逃げ出す。

 

 「硬った……ねぇ、ホントにスキル使ってないよね?」

 「これがウチの素の硬さや」

 「うーん、耐久力と腕力に特化しすぎ」

 

 ダンジョンでモンスターを倒して上がる身体能力には、個人差がある。

 例えばウチは主に腕力と耐久力に偏っていて、虎の穴なら速度を主体としたバランス型だという風に。

 特に何が強いとかはない。結局はその人によるとしか言いようがない……

 

 その時だった。

 ピッピッと、タイマーが鳴ったのは。

 

 「終わりだね」

 「あーっ、結局一本も取られんかったなぁ。ま、こっちも取られんかったけど」

 「僕ってこれでも免許皆伝なんだよね、喧嘩殺法から取られたら恥なんだよね」

 「恥って、お前なぁ……素人(トーシロ)に一本くれたろうとか無いんかい」

 「素人? 面白いこと言うなぁ、このタコゴリラは」

 「あーっ? ……ふっくく……」

 「ふふっ」

 「ハハハハ!」

 

 子供じみた言い争いをしていたら、何だかおかしくなってきた。

 

 「はぁー、おもろ。それにしても喧嘩殺法か……ウチにはこれが合ってんなぁ」

 「諸星さん、武術の才能ないもんね……」

 

 虎の穴の実家は道場だ。

 そこで、彼は剣術のみならず様々な武術も学んでいる。その腕は免許皆伝

 だからそこ彼は空手とかの指導をしてくれたのだが……

 

 「実質的に腕六本もあるから人間の武術使ったら、格闘戦における選択肢の幅が狭くなるってマジ?」

 「うん。むしろ基礎をみっちりやるより応用的な技を付け焼刃で覚えた方が強いかも」

 「腕が多いってのも考えようやな」

 

 ウチは四肢に加え、頭部の触手がある。

 人間の武術は腕と脚(頭突きとかもあるかもしれない)で行うもの。

 つまり、ウチに武術が合わないのではなく、武術がウチに合わないのである。どちらの意味でも規格外なのだ。

 そもそも、ウチに武術の才能は無かったけど!

 

 「もうちょっとやってく?」

 「せなやなぁ。虎の穴が良ければ」

 「じゃあ――」

 

 ウチらが再び組手をしようとした時だった。

 

 「おーい! 大変(てぇへん)だ! 大変(てぇへん)だぁ!」

 

 そんな声を上げる人物が。

 チリンチリンと自転車をこぎながら、やってきたのは……

 

 「ブロワーマン何やっとんねん」

 「あれ? ブロワーマンさん。バイクは?」

 「車検に出してる! それより大変だ、これを見ろ!」

 

 ブロワーマンだった。

 声に反してあまり慌てていない彼は自転車か降りると、かごから紙を取り出した。鞄どころか封筒にすら入れられていないそれは、途中で落ちたりしなかったようだ。

 ウチはその紙を読んだ。

 

 「んー? 行方不明者の救出? よくある依頼とちゃうか?」

 「問題はその行方不明者なんだ。見ろ!」

 「うーん? ……ん!?」

 

 ダンジョンでの行方不明者リストを見る。そこに載っていたのは……

 

 「な、何で一般人がダンジョンで行方不明なんや……」

 「住宅が丸々一棟ダンジョン化したんだっ」

 

 写真の中で、無数の一般人達が助けを求めているように感じた。

 新たなる騒動、そして闘いが幕を開ける……!

 

 

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