第一話 闇と氷
ここは幻想郷。
外の世界からは結界で隔離されている。
が、たまに現世から人が迷い込むことがある。
今日、幻想郷に入り込んでしまった男がいた。
暗い森の中、ルーミアはお腹を空かせながら飛んでいた。
「最近食べる物がないなー。誰かいないかな?」
そんな空腹ルーミアは、木々の向こうに人間らしき物を発見した。
「あれは食べてもいい人間?」
近づいてみると、その男は気絶していた。身なりからして外からきた人間だろうか。
空腹が限界に近かったルーミアはとりあえず食べることにした。
「それじゃ、いただきまーす♪」
頭に噛みつこうとした瞬間、男が目を覚まし上半身を勢いよくおこした。
上半身を起こした男の頭に思いっきりぶつかり、ルーミアは倒れてしまった。
「……いったいここはどこだ?」
男はルーミアに頭突きを喰らわせたことには気付かず、周囲をみわたした。
今回幻想郷に迷い込んだ男の名はスネーク(本名はジョン)。
スネークは森でハインドに見つかり、爆風で飛ばされた。
その際、偶然幻想郷への入り口が開き、入ってしまったのだ。
当然ながらスネークにそんな事がわかるはずない。ここがどこか見当がつかないので、とりあえず先へ進むことにした。
立ち上がると、後ろにルーミアが倒れているのを発見した。
「おい、大丈夫か? こんなところで寝ると風邪をひくぞ」
体を揺すってみるが、反応はない。自分を喰おうとしていたことなど知らないスネークは、ルーミアを安全な場所へ運ぶことにした。
ルーミアを背中に乗せて歩いて行き、しばらくするとルーミアが目を覚ました。
「ん?起きたか」
「……おじさん誰?」
「俺か?俺は……スネークだ」
「おじさんは食べてもいい人間?」
何を言っているんだ、と思いながら、すぐに否定した。
「いいわけないだろう」
「そーなのかー」
ルーミアは残念そうにそう言った。
「君の名前は?なぜこんなところに?」
「私はルーミア。お腹減ったから食べ物探しにここまで」
「なるほど、腹が減っているのか」
そういうとスネークはバックパックからレーションを取り出した。ルーミアはそれを珍しそうに見ている。
「それなに?」
「これはレーションだ。少なくとも人間よりはうまいぞ。食うか?」
スネークはルーミアにレーションを渡した。
ルーミアはレーションを受け取るとすぐに平らげた。しかし、ルーミアはまだ満腹ではないようで、「もう一個ちょうだい」とスネークに催促した。
「……もうないぞ」
「そーなのかー」
それを聞いたルーミアは、がっくりと肩を落とした。少し気の毒だったので、スネークは何かないかバックパックを漁ってみた。すると、ハインドに攻撃される前手に入れた蛇があった。
「蛇ならあるが……食うか?」
「蛇って美味しいのかー?」
「ああ、戦場じゃ貴重なタンパク源だ」
スネークは蛇をルーミアに渡した。最初はどう食べればいいのかわからないようだったが、ルーミアは蛇を丸ごと食べ始めた。
年端もいかない少女が蛇を頭からかじるという、狂気ともとれる光景を見ながら、スネークは辺りを見回した。特に敵の気配はない。だが、スネークは警戒を解かなかった。
よほど美味しかったのか、それとも腹が減りすぎていたのか、ルーミアは物凄い勢いで蛇を平らげた。普通に食べたのなら頭と皮はその場に残るはずなのだが、もはや何も残っていない。
「満腹なのかー」
ルーミアはスネークにお礼を言うと満足そうに飛んでいった。
飛んでいくのを見てスネークは驚き、どうして飛べるのか聞いてみた。しかし、ルーミアにスネークの声は届かず、そのままどこかへ飛び去ってしまった。いろいろ考えてみたが、どうして飛べるのか全くわからない。
だが、ルーミアに食糧を分けてしまい、食べるものがほとんど無くなってしまった。少ない食糧でどこまで持つかわからない。スネークはあまり深く考えないようにし、再び歩きだした。
しばらく歩くと、巨大な湖が見えてきた。深い霧に包まれているが、それは湖の上だけだったのであまり関係はなかった。
水筒の水の補給も兼ねて、スネークは湖に近づいた。しかし、その湖は完璧に凍ってしまっていた。
「この辺りはそこまで寒くないんだが……」
この辺りの気温が氷点下を超えているとは思えない。ならば何故湖が凍っているのか、皆目見当もつかない。
すると、霧の中から声が聞こえた。氷の上に立っているのかと思いきや、声の主は霧の上の方から出てきた。
「そこのあんた!幻想郷の人間じゃないね!」
幻想郷一の⑨、チルノである。
「ここは幻想郷というのか?」
幻想郷、聞いたことはない。
「そんな事も知らないの?やっぱり人間ってバカね!」
知らない少女からバカ呼ばわりされるいわれはないのだが。それは気にせず、スネークは先ほど聞き損ねたことを聞いてみることにした。
「なぜ君は空を飛べるんだ? なんの理由もなく飛べるはずがない」
そう、さっきのルーミアといいこの少女といい、なぜ空を飛んでいるのかずっと気になっていた。深く考えるなという方が無理だった。しかし、チルノの回答は「あたいがさいきょーだからよ!」などという理解できない回答だった。何を聞いても無駄かと思ったが、一応この湖が凍っている理由は聞いておくことにした。
「……ところで、湖が凍っているのはなぜなんだ?」
「あたいが凍らせてるの。悪い?」
その言葉に嘘はなさそうだ。だとすれば、とんでもない少女である。空を飛べて、おまけにこの湖全体を凍らせることができるとは、とても理解しがたい。
「ああ、今は水が欲しいんでな」
「元に戻して欲しいなら、あたいを倒すことね!」
もう水筒の水も尽きる。
ここで水を補給しなければ、この先水源があるとは言い切れない。ここで補給できなければ非常にまずい事態になりかねない。つまり、あの少女は”敵”というわけだ。
「いいだろう、君を倒してこの湖を元に戻してもらう」
「ふん! 人間がさいきょーのあたいに勝てると思ってるの?」
そう言い放つと、チルノの周りに氷が出現した。まったくもって現実味がない。
それは次第に大きくなっていき、スネークに向かって飛んできた。
スピードは避けれないほどではないのだが、予想外の攻撃にスネークは反応が遅れてしまった。右に飛んで避けたが、飛んできた氷がスネークの足に刺さった。
あまり痛みはないが、とにかく冷たい。チルノは次弾の用意を進めている。
バックパックから麻酔銃を急いで取り出し、チルノに照準を合わせた。チルノはそれを見ると鼻で笑った。
「なにそれ? それであたいを倒せるの?」
「倒すことはできない」
「それはそうよ! なんたってあたいはさいきょー...」
「だが、眠らせることはできる」
スネークは麻酔銃の引き金を引いた。麻酔針が発射され、真っ直ぐにチルノへと向かっていった。スネークの狙いは完璧で、麻酔針はチルノの首元に刺さった。
「ふえ?」
麻酔針によってチルノは睡魔に襲われ落下し、眠ってしまった。どうやら妖精にも麻酔薬は効くようだ。
チルノが眠ると、湖の氷はだんだん解けていった。沈んでしまっては後味が悪いので、スネークは氷が解け切る前にチルノを岸へと運んだ。
本来の姿を取り戻した湖の水を水筒に入れて、水を少し飲んだ。
人を探すため、スネークは歩き出した。湖の向こう側は、また森が続いている。
あの森には動物はいるのだろうか。欲を言えば蛇がいてほしい。そんな期待をしながらスネークは森へと歩いて行った。
森の中でスネークはよくわからない生き物にあった。それは人でもないし動物でもない。
確か、日本にいるという妖怪に似ている。いや、恐らく妖怪だろう。
それが意味のある言葉を喋っている。人語を介する猫を見たことがあるスネークはあまり驚かなかった。
「なんで人間がこんなところに? 食ってやろうか?」
「冗談じゃない」
やはり妖怪は人間を襲う存在のようだ。スネークは12Gショットガンを取り出した。
照準をしっかりと合わせ、引き金を引いた。散弾は妖怪に向かって散らばり、その妖怪はバラバラに四散した。スネークはバラバラになった妖怪を見て、この森の危険度を察した。
「こんなのまでいるとはな……」
この幻想郷というところは常識が通用しないようだ。単独で行動していればいつかはやられてしまうかもしれない。
「早いところ人を見つけた方がよさそうだ」
だが、その前にまず腹ごしらえが先だ。水以外何も口にしていない。
そう考えていると、近くで気配がした。見てみると、そこには蛇が一匹いた。
スネークはその蛇が逃げないようすぐに蛇の首を抑えた。
装備していたナイフで首を落とし、皮をはいで身に食らいついた。
これで一応食事はできた。無論大人がこれだけの食事で満足できるはずもない。
そろそろ疲労が限界に近かったので仮眠を取ることにした。丁度良さそうな木に凭れ掛かり、装填済みのAK-47を握って眠りについた。
スネークのバックパックには結構色々入っています。
あと、日本語は分かるという設定です。