蛇のおっさんが幻想入り   作:幽玄ノ乱

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第十五話 師からの最後の訓練3

幽々子はゆっくりお茶を飲んでいた。軍人の戦闘を妖夢に見てこさせて、後で話を聞いて楽しもうという魂胆だったのだが、待っている間はやはり暇だ。

「はぁ、私も行けばよかったかしら……」

白玉楼にあった食料は全て食べ尽くしてしまったし、話し相手もいない。そんな状況に耐えかねて庭に降りると、狙撃銃を構えたジ・エンドが下の森を狙っていた。その横には長身の男が何か指示を出している。

幽々子がそっと近づくと、一発の銃声が響き、遠くの方へ消えていった。

「何をしているのかしら?」

幽々子は二人に話しかけてみたが、相当集中しているようで反応はない。

 

「……X103、Y50。距離800m」

「え?」

 

長身の方の男がそう呟くと、ジ・エンドが手持ちの銃に弾を込め、スコープに目を通した。少しの間沈黙が続き、幽々子が首を傾げていると、ジ・エンドは何の前触れもなく引き金を引いた。再び銃声が響き、ジ・エンドは狙撃銃を降ろした。

 

「ジ・エンドよ、ご苦労だな」

「なぁに、まだまだやれるわい。おっと、すみませんな幽々子さん。わしらの仕事は終わったから、しばらく休ませてもらおう」

 

ジ・エンドはしゃがんだ状態のまま幽々子に話しかけ、庭に落ちた空薬莢を回収した。

 

「あらそう、それじゃあしばらく私の話し相手になってもらえないかしら?」

「もちろん構わんよ」

ジ・エンドはそう言ってしゃがんだ状態から立ち上がると、白玉楼へと歩いて行った。

 

 

 

少し時間をさかのぼり、スネークはジ・エンドの狙撃に苦しめられていた。どう考えても狙撃不可能な場所に居るのだが、何故か正確に狙ってくる。銃声を辿って移動はしているものの、狙撃手モードのジ・エンドは素早く、一、二発撃ったらすぐに別の狙撃ポイントに移ってしまう。

そしてまた銃声が聞こえ、スネークの顔の横で木が弾けた。今回は白玉楼の方角、さらに上の方から銃声が聞こえたので、もしかしたら白玉楼の庭から狙撃しているのかもしれない。そんな考えが浮かんだが、さすがにこの密集した葉や枝をかいくぐってスネークを狙うのはほぼ不可能だろうという考えに至り、とりあえずスネークは銃声のした方向から狙えない位置に隠れた。

すると突然銃声が止み、しばしの間静寂が辺りに流れる。スネークは木の後ろから様子を伺ってみるが、まず見えないので分かるはずもない。そうして時間だけが過ぎ、その後二十分間は一度も銃声は鳴らなかった。

妖夢はスネークの横で暇そうに座っている。

 

「スネークさん、もう行きましょうよ」

「……まだ狙ってるかもしれない」

「大丈夫ですって!」

 

妖夢はなかなか動こうとしないスネークを移動するよう促すが、スネークは微動だにしない。

 

「じゃあ私は他の場所に行ってきます」

「待て! 動くと危なーーー」

 

妖夢がしびれを切らして立ち上がり、木の陰から顔を出した次の瞬間、銃声とともに妖夢の足元に土煙が上がった。それが狙撃だとわかると、妖夢はその場でフリーズしてしまった。いつまでも隠れようとしない妖夢をスネークは木の陰に引き戻した。

 

「だから言ったろう」

「……狙撃手って凄いんですねぇ」

「ジ・エンドは相当歳をとってはいるが、その中でも伝説だからな」

 

スネークはようやく立ち上がると、木の陰から素早く飛び出し木の陰に隠れながら移動をし始めた。ちなみに、この時既にジ・エンドはモシンナガンの弾を切らし、幽々子と抹茶を飲んで楽しく話していたのだが、そんな事はスネークに知る由もなかった。

 

「あっ! 待ってくださーい!」

 

妖夢も一応狙撃を警戒しながらスネークを追いかけた。

 

 

 

他の敵を探しながら森を進んで行くと、なぜかそこだけ木が生えていない場所に彼女はいた。そう、ザ・ボスである。

ザ・ボスはちょうどスネークと真正面の位置に構え、スネークを見ていた。

 

「コブラ部隊は倒したようね」

「ああ、残るはあんただけだ」

「ふふ、こうしてお前と戦うのは二度目か。あの時は負けたが、今回はそうはいかんぞ!」

 

ザ・ボスは着ていたマントを脱ぎ捨て、戦闘服を露わにした。そして、ケースから白銀に光るナイフを取り出し、CQCの構えをとった。ザ・ボスのCQCの構えは完璧に近く、どの方向から襲っても隙はないだろう。

ザ・ボスがCQCの構えをとったのを見て、スネークも反射的にナイフを取り出した。両者は構えたまましばらく動かない。

妖夢は少し離れた木の陰から二人の様子を伺っていた。だが、この場の緊迫した空気のせいで逃げ出したい気分だった。まるで裁判の傍聴席のように空気が張り詰めている。どうにかその場にとどまれるのは、幽々子に仕える従者として頼まれたことはしっかりやらねば、という責任感だろう。

 

「……ところで、あそこの木に隠れているのは誰なんだ?」

 

妖夢は心臓が飛び出るかと思うほどびっくりした。ザ・ボスと妖夢の距離は少なくとも五十メートルは離れている。よくこの距離で妖夢の存在に気づけるものだ。

やはりザ・ボスはただ者ではないーーーー妖夢は大人しく姿を現した。

 

「ああ、なんだ。妖夢、お前だったのか」

「すいません……」

「いや、どうせ幽々子に無理を言われて来たのだろう? そこで観戦してくれていていい」

 

妖夢はザ・ボスにどうしてそこまで分かるのか聞きたかったが、二人の勝負を邪魔しては悪いと思い何も言わなかった。

 

「さて、始めようじゃないかスネーク。さあ、来い!!」

 

ザ・ボスがそう言うと、一瞬大気が震えたかのように感じた。辺りの緊迫感は消え、代わりに溢れんばかりの殺意が辺りに充満し始めた。妖夢はごくりと唾を飲み込み、二人の行動を集中して見据えた。

スネークの実力もザ・ボスの実力も見た妖夢は、どちらが勝つのか想像もつかない。辺りに風が吹き、妖夢のほおを撫でた。

それが合図にでもなったかのように、スネークはゆっくりとザ・ボスに近づき始めた。しかし、ザ・ボスはその場から動こうとしない。ただ鋭い眼光でスネークを見ているだけだ。

そこへ、この場の空気を乱すように全身を硬そうな鎧で身を包んだ男か女かも分からない者が乱入してきた。

 

「ボス〜! 何故俺だけ留守番なのですか!?」

 

乱入してきたのは、声色からどうにか男だということが分かった。

 

「……ザ・フューリー、お前の装備は森を焼いてしまうからダメだと言っているだろう」

「ああ、そういえば奴もいたんだったな」

「俺は空気なのか? そうなのか?」

 

その男は、ザ・フューリーというらしい。あまりにも必死に何か訴えているのが遠目にも分かるので、妖夢は少し彼を不憫に思ったのであった。

 

 

 

 

 




すいません。二週間ほど放置してました。
テスト期間も終わり、もう大きい行事はないので、これからはもう少し投稿スピードが上げられると思います。多分。
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