……最近こればっかり前書きに書いてますねw
白玉楼には、七人の異世界人が白玉楼の住民ともに焼肉を食べているという、普段ではありえない光景が広がっていた。
現在の白玉楼内には全部で九人、うち六人が男である。それに比例して肉の量はかなり多いが、その半分は幽々子用だ。この肉の量の半分というと、成人男性が一日に食べる量の十倍近い。しかし、ここにいる全員幽々子がそれを平らげることができるのは承知しているので、気にするそぶりも見せない。
肉の脂が火に焼かれ、食欲をそそる匂いが白玉楼の周りを充満している。宴好きの幻想郷住民がこの匂いを嗅いだら、大勢集まって来るだろう。しかしここは冥界、入る者すら珍しい場所だ。この九人以外誰もいない。
転生待ちや成仏待ちの幽霊はいるが、物に触れるわけでも、喋ることができるわけでもないので、実質この九人しかいないのだ。
どこから道具が出てきたのか不思議だが、九人が囲んでいるテーブルには大きな焼肉機が埋め込まれており、その上で肉を焼いている。火はどこから持ってきたかというと、ザ・フューリーの液体燃料を少し使い、銃で火を起こしたのだ。
しかし、わざわざこんな回りくどいやり方をせずとも木炭は白玉楼にあるので、それをスネークの持っているライターで火をつければ簡単な話だったのだが、どうやら二つとも存在を忘れられていたようだ。
ザ・フューリーの液体燃料は通常の火炎放射器に使われるものとは違い、ロケットなどに使用される強力な燃料(非対称ジメチルヒドラジンとテトラニトロキシドを混ぜ合わせた物。覚える必要は皆無)である。これにより少量でも充分肉は焼けるのだ。火力が強すぎて焦げたりするが。
しかし、一つ疑問が残る。焼肉機は白玉楼にあったということで納得できるが、大量の肉はどこから持ってきたのだろうか。
幻想郷の時代では冷蔵庫がないので、生肉は保存が難しいはずなのだ。そんな疑問をスネークは幽々子にぶつけた。
「なあ、この大量の肉はどこで手に入れてきたんだ?」
「ソローさんに頼んで出口を探してもらったのよ。すぐに見つかって、貴方が戦っている間に下で寝てたフィアーさんを起こして買い出しに行ってもらったの」
とても単純な理由だった。しかもザ・フィアーはパシリに使われていたらしい。
道中でスネークがいくら探してもザ・フィアーがいなかったのは、それが原因のようだ。ザ・フィアーを探したのは完全な無駄骨だったが、こうして焼肉を食べられるのだから結果オーライだろう。
今ちょうど幽々子の手前の肉が焼きあがり、電光石火のごとく一瞬で十数枚はあった肉を全て自分の取り皿に回収してしまった。幽々子の隣には妖夢とザ・フューリーが座っており、自分が取ろうとしていた肉を横取りされたことに不満を覚えているようだった。
「あ、妖夢ー。そこにある焼肉のタレ取って頂戴」
「幽々子様の方が近いじゃないですか」
幽々子は自分が手を伸ばせは届く位置にある焼肉のタレの容器を、妖夢にとってもらうよう頼んだ。
しかし、肉を取られたことに少々苛立っている妖夢は、だいぶそっけない態度でそう言った。だが、そんなことで諦める幽々子ではない。
「だって私焼肉食べるのに忙しいし〜」
幽々子は焼けた肉を片っ端から自分の取り皿に入れ、次々口に放り込んでいく。このまま肉を全部食べられることを懸念した妖夢はついに折れた。
「わかりましたよ! はい、焼肉のタレ!」
「ありがとう妖夢」
幻想郷の時代に焼肉のタレがあるとは思えないが、もしかしたら香霖堂にあるのかもしれない。ザ・フィアーの脚力ならば、スネークが戦っている間に冥界から香霖堂を往復することもできるだろう。
タレを受け取った幽々子は、さっそくタレを皿に入れ、それに肉をつけて食べ始めた。その動作が加わり、食べる速度が低下した今がチャンス……かと思いきや、幽々子の食べるスピードはコンマ単位しか落ちず、幽々子両サイドの二人にはほとんどおこぼれしか残らないのであった。
一方スネークは、ジ・エンドやザ・フィアーから戦闘についていろいろと聞いていた。ジ・エンドからは狙撃技術、ザ・フィアーからは食べ物についてだ。ザ・フィアーに聞くのは普通罠についてだと思うのだが、スネークはこのなんでも食べる男から美味しい食べ物のことについて聞いている。
「それは食えるのか?」
「……スネークよ、わしは狙撃の精度を上げる弾丸について話してるんじゃが」
「そうなのか? 俺はてっきり、食べられる弾丸について話しているのかと……」
どんな聞こえ方をしたら狙撃精度を上げる弾丸についてが食べられる弾丸についてに聞こえるのかはわからないが、ジ・エンドはそのまま続けることにした。
狙撃時のフォームや風の読みなど、さすが伝説のスナイパーといえる技術を教えてもらえた。スネークは聞いた話から若い頃のジ・エンドの活躍を想像してみたが、まったく想像つかない。
しばらくしてジ・エンドの話も終わり、次はザ・フィアーに食べ物について聞き始めた。最初の話題は〈ヤドクガエルについて〉だ。
「いいかスネーク、よく聞け。ヤドクガエルは食えそうな気もするが、絶対に食うなよ。あれを好んで食べるのは
「わかった……ところで、ヤドクガエルは美味いのか?」
「あれはそこまで美味くない。クロスボウの矢に塗る毒としては使えるがな」
食事の場で話すことではないのだが、それでもスネーク達はおかまいなしにカエルやその他サバイバルで食べられるゲテモノ系食料について話した。正面の幽々子はさほど気にしていないが、さすがに妖夢は食虫のくだりの辺りで明らかに嫌そうな顔をしている。
が、スネークとザ・フィアーはまったく気にとめる様子がない。むしろ話に熱が入り始め、どう食べれば美味いだとか、いつ食べるべきかを話し始めた。
「ああもう! 虫の話は後にしてください!」
さすがに耐えかねた妖夢は、急に立ち上がりスネークを指差して怒鳴った。別に悪いことを話していたわけではないと思っているスネークは、少々戸惑っている。
「何を怒っているんだ?」
「ですから……!」
「ほらほら妖夢、落ち着きなさいな。お肉無くなっちゃうわよ?」
「幽々子様は食べ過ぎです! 少し自重してください!」
幽々子はすでに二十人前の肉を全て平らげている。その食欲に限界はなさそうだ。というか、幽々子用の肉は全て食べきり、ついに他人の分まで食べ始めた。
「あ、妖夢。そのお肉頂戴な」
「ちょ、勝手に取らないでください!」
妖夢がそう言ったのもつかの間、幽々子はただでさえ量が少ない妖夢の取り皿から、容赦なく焼肉を奪い去った。その動きはまさに獲物を狙う時の動物だ。妖夢が取り返そうとするも、焼肉は虚しく幽々子の口の中へと消えていった。
「う〜ん、美味しい!」
「……もう勝手にしてください」
もう焼肉を諦めた妖夢はやけ酒(お茶)をしようとして、自分の湯のみに手を伸ばした。その際、自分が飲んでいたお茶と、ザ・ペインが飲んでいた酒をよく見なかったため取り違えてしまった。
それに気づかない妖夢はザ・ペインのアルコール度数が高い酒を一気に飲み干すと、突然ふらつきそのまま後ろに倒れた。
「あら、妖夢ー?」
幽々子が顔を軽く叩いてみるが反応がない。しばらく様子を見ていると、倒れている妖夢が何かつぶやいた。
「……ヒック、うーん……幽々子さまぁ、それ私のお肉……むにゃむにゃ」
「寝ちゃったのね。風邪引いたら困るし、運んでおくわ」
幽々子は酒に酔って眠ってしまった妖夢を抱えると、隣の部屋へ運んでいった。焼肉バキュームのように食べ続けていた幽々子がいなくなったので、ザ・フューリーはようやく肉の切れ端ではなく一枚の肉を食べることができた。すぐ戻ってくるかもしれないので、ザ・フューリーは幽々子が戻ってくる前に焼けた肉を急いで自分の取り皿に入れた。その動作の早さから彼の必死さが伝わってくる。
しかし、ザ・フューリーが数枚の肉を取ると同時に幽々子が隣の部屋から戻り、結局ほとんど食べられないのであった。
それぞれがこの焼肉パーティーを楽しみ、夜もだんだん更け始めた。しかし、楽しいことは時間が過ぎ去るのが早いもので、次第に全員眠気に襲われ、あれだけあった肉も尽きて焼肉パーティーはお開きとなった。
とりあえず今日は全員白玉楼に泊まることになり、幽々子に案内された部屋の押し入れにしまわれていた布団を人数分取り出した。しかし、広いとはいえ一部屋に七人が眠るので、非常に狭っ苦しいことになっている。布団を敷き終わると、もう畳が見えない。
だが、そんなことを気にする集団ではないので、布団に入って数分もすると深い眠りについてしまった。良く言えば適応力が高く、悪く言えば無神経である。
その中で一人、全員が寝静まったころに布団から抜け出し、外に出た人物がいた。
「……これで外の空気を吸えるのも最後か」
外に出たのはザ・ボスだった。明日には地獄で閻魔に裁かれる身、現世ではないが最後の景色を見に来たのだ。
冥界の月は今日も美しく輝き、真夜中でありながら冥界全土を照らしている。ここをさまよう霊が、冥界の美しさに成仏をしないというのもうなずける景色だ。
感傷に浸っているザ・ボスの後ろに、もう一人布団から抜け出した男が月の光を浴びて立っていた。
「感傷に浸るとは、ボスらしくないな」
「……ジャックか。なに、こんな景色を見られるのは最後だろうからな……一目見ておこうと思ったんだ」
ザ・ボスがスネークの方を向かぬまま話すと、スネークも白玉楼から眺められる冥界の景色を見た。
「確かにこれはいい景色だ。だが、下の森には食べられる物がない。そこが残念だな」
「お前らしい感想だな……お前と次に会えるのはだいぶ先か」
「いや、人間の寿命なんて長いようで短い。案外、早く会えるかもしれないな」
スネークがそう言うと、ザ・ボスは何も言わず微かに頬を緩ませた。その笑みには最愛の弟子と別れる寂しさ、そして数年前と変わらない弟子に対する安心感が含まれているように感じる。
「ジャック、折角起きたんだ。最後にもう一度だけ稽古をつけてやろう」
「……わかった」
ザ・ボスはゆっくりと月を背に振り向き、完璧なCQCの構えをとった。スネークもそれに呼応するようにCQCの構えをとり、ザ・ボスとの距離を縮める。
まだまだ夜明けは遠いーーーー
はい、前書きに書いた通り投稿遅くなりましてすいません。
いったいこれを書くのは何度目でしょうか=反省をしていない
春休みに入って書く時間が増えたというのに投稿スピードが上がらない矛盾……もうちょい頑張りますw
次回から一番長くなった冥界編も終わり、魔法の森再来編となります。
では次回もお楽しみに!