第四話 白黒の魔女
博麗神社から出たスネークは、言われたとおりに西へ歩いていた。だが、しばらく歩いてもそれらしき森は見えてこない。まさか、賽銭が少ないと情報の信憑性も少ないのだろうか?
そんなことを考えながら歩いていると、驚くほど背の高い木々が生えている森があった。なんとなく禍々しいものを感じる。
「これが魔法の森なのか?」
だとすれば、一応は目的地に着いたということか。
近づいてみると、森の入り口にはなにやら奇妙なキノコが生えていた。
そういえば、今日はなにも食べていない。スネークは毒キノコか怪しんだが、食欲の方が勝った。キノコに手を伸ばし、それを採取した。かさは赤く、白い斑点模様がついていて、柄には顔らしきものがある。何かのゲームで見たようなキノコだが、スネークは一口食べた。
次の瞬間スネークの身体に変化が起きた。どこかで聞いたことのある効果音とともに、巨大化し始めた。巨大化する以外に変化はないので、もう一本キノコを採ってみた。さっきのキノコと違い、かさが紫色だった。これは誰もが毒キノコだと思うのだが、スネークは迷わず口に運んだ。
「なかなかいけるな」
一口かじったら、スネークは元のサイズに戻った。他にもこんなキノコがあるのだろうか?少し面白くなってきたスネークは森の中へと入っていった。
森の中は昼間だというのに薄暗く、じめじめしていた。こんな環境ならキノコは沢山生えるだろう。しかも幻想郷では常識が通用しない。元の世界にはないようなキノコが多いはずだ。スネークはそこらにあるキノコを手当たり次第食べてみた。キノコの中には、体力が回復したり、身体が麻痺したり、触ったらはじけてしまうキノコもあった。
ちなみに味の感想は、「不味すぎる」だそうだ。
味には満足できないが、それなりの量を食べて腹も膨れたところで、森の奥へ進んだ。そういえば神社の巫女が言っていたが、この森には魔女がいるらしい。せっかくここまで来たのだ、一目見てみたい。そんなスネークの願いは天に届いたようだ。スネークは、森にひっそりと建っている小屋を見つけた。
「あそこに魔女が住んでいるのか? 」
スネークはその小屋の入り口に近づくと、戸をノックした。中から足音が聞こえてくる。そういえば、まともな容姿なのだろうか。魔女というと人間を食べるというイメージがある。
恐ろしい化け物が出てきたら困るのだが……
「こんな森の中までなんの用だ……って霊夢じゃないじゃないか」
意外と人間に近かった。特徴的な帽子と服を除けば、普通に少女だ。
「ああ、俺はスネークだ」
「私は魔理沙。あんた、その身なりからして幻想郷の人間じゃないな」
「そうだ。紫という奴を探しながら幻想郷を観光している」
「ふーん……そのバックパックにはなにが入ってるんだ?」
「まあ色々とな……見るか?」
「外の世界の物は珍しいからぜひ見たいぜ」
それを聞いたスネークはバックパックを腰から外し、地面に置いて広げた。
「本当に色々入ってるな。これはなんだ?」
「それはMk.22だ。麻酔針を発射できる」
「じゃこれは?」
「そいつはパトリオット。俺の師匠から貰った自動小銃だ」
「じどうしょうじゅうってなんだ?」
幻想郷には自動小銃の概念がないようだ。
「まあ簡単に言えば引き金を引くと弾を連射できる物だな」
「へぇー、外の世界には便利なのがあるんだな」
ちょっと撃ってみてくれよ、と頼まれたので近くにあったキノコに照準を合わせ、引き金を引いた。森に銃声が響き、キノコはバラバラになった。それを見た魔理沙はとても驚いていた。
「すごいな、弾が見えなかったぜ」
「殺傷能力はかなり高いぞ」
「ふむ、一個貰えないか?」
「駄目だ。素人が扱うのは危険すぎる。それこそ暴発したら死ぬぞ」
魔理沙は舌打ちすると物色を再開した。その舌打ちの意味がわからないのだが……
「これ、咲夜のナイフじゃないか。なんで持ってるんだ?」
「彼女と一戦交えた時に一本拝借した」
「あいつと戦って生きてるって、普通の人間じゃなかなかできないぜ」
それはそうだろうと思った。実際、銃を持っていなければ死んでいた。
「お?なんだこの銃、かっこいいな!」
「それはシングル・アクション・アーミー。オセロットという敵の少佐がくれた」
一通り物色を終えた魔理沙は、バックパックをスネークに返した。
「……おい、パトリオットがないぞ」
「ギクッ」
「返すんだ」
「わかったよ、返すよ」
「手癖の悪い奴だなまったく」
自分で言って、自身も咲夜のナイフを盗んだことを思い出したが、気にしないようにしよう。
「よく言われるけど気にしないぜ☆」
「気にした方がいいと思うぞ」
「お茶でも飲むか?」
話をそらされた。本人は直すつもりはさらさらないようだ。まあせっかくなのでお茶は貰うことにしよう。スネークが「貰おう」と言うと、お茶を持った魔理沙が10分後に戻ってきた。
「ほら、特に何も入ってないから飲め」
何も入っていないことをアピールするところが怪しい。後ろにあった金魚鉢にお茶を少し入れてみた。すると、金魚鉢の中の金魚が麻痺して浮かんできた。
「痺れ薬でも入れたのか?」
「いや、これはその……まああれだ」
どうやらスネークを麻痺させた後で装備を盗むつもりだったらしい。
「お茶はもういい、そろそろ行くことにする」
「また来いよ〜」
おそらくもう二度と来ることはないだろう。いや絶対に来ない。スネークはそう心に誓うと魔法の森をまた歩き始めた。