第五話 天狗の里
魔理沙の家を後にしたスネークは、再び森で迷っていた。スネークは特に方向音痴ではないのだが、異常に背の高い木々がどこまでも続いているのだ。これで迷わない方がおかしい。木に登って辺りを見ようかと思ったが、木の背が高いうえに、掴む部分が全くないため、登ることはできなかった。もうこうなったら、自分の運と直感を信じるしかないだろう。
スネークが長い間森の中を歩いていると、木と木の間に、微かだが光が差し込んでいるのが見えた。スネークは光に向かって歩き、なんとか魔法の森を無事抜けることができた。森を抜けたスネークがなんとなく横を見てみると、魔法の森に隣接して小屋のような物が建っていた。近づいてみると、看板が出ていた。どうやら店のようだ。名前は香霖堂というらしい。
店の中に入ると、眼鏡を掛けた銀髪の男性がカウンターに立っていた。
「いらっしゃい。何をお求めで?」
「この店には何があるんだ?」
「基本的には外の世界から流れ着いた物を扱ってるよ」
「ふむ、銃弾はあるか?」
「銃弾? どっかにあると思うけど、お金はあるのかい?」
そう言われて、スネークは自分が無一文だったことを思い出した。
「今手持ちが……ない」
「物と交換でもいいよ」
スネークはバックパックを漁ってみたが、キノコしかない。スネークはとりあえずあるだけのキノコをカウンターにぶちまけてみた。香霖堂の店主はキノコの品定めをすると、一個のキノコを持って驚いていた。
「こ、これは!マボロシキノコじゃないか! どこで採ったんだ!?」
「魔法の森で迷ってた時に採ったんだが……そんなに珍しいのか?」
「そりゃそうだよ! これは千年に一度しか生えないキノコでね……!」
……何時間経っただろうか。あれからマボロシキノコの説明を延々とされて、ありったけの銃弾と交換してくれた。スネークは幻想郷にどんな場所があるのか聞いてみると、ここから北に行った所に妖怪の山というところがあるらしい。スネークはその山に行ってみることにした。
スネークは言われたとおり北へ歩いて行くと、どっしりとそびえ立つ巨大な山が見えてきた。魔法の森と同じく、邪悪なものを感じた。スネークは意を決して山へ入ると、辺りが霧に包まれ、数メートル先も見えなくなった。少し進んで行くと、右から何者かの気配がした。スネークはホルスターから麻酔銃を素早く抜いて気配がした方向に向けた。小藪が揺れ、目の付いた唐傘のような物がひょっこり出てきた。スネークと唐傘で見あっていると、唐傘を持った少女が顔を出した。
「なんで驚かないのさ!」
「いや……あれぐらいじゃ驚きはしない」
どうやら、スネークが驚かなかったことに対して怒っているようだ。こんな山に一人でいるということは、彼女も妖怪なのだろうか?
「聞きたいんだが、君は妖怪なのか?」
「そうだけど?」
「まさかとは思うが、俺を食べるつもりじゃないよな?」
「もちろん食べるけどなにか?」
これは早く倒した方がよさそうだ。スネークは躊躇せずその少女に麻酔銃を撃った。麻酔針が刺さり、その少女はその場で崩れるように眠ってしまった。やはり妖怪の山というだけあって、住んでいるのは全部妖怪のようだ。気をつけて行動しなければ。
どれぐらいの高さまで来ただろうか。スネークは超巨大な滝の近くいた。だんだん斜面も急になってきて足場も悪い。あれからたくさんの妖怪に襲われたが、意外と簡単に倒せた。だが、今目の前にいる妖怪は、あきらかに格が違うようだ。髪は銀色で、頭に犬耳が付いていた。その身のこなしから相手の強さがうかがえる。
「ここから先は通せません。どうしても通るというのなら、ここで貴方を殺します」
と物騒なセリフを口にし、腰に掛けている剣を握った。彼女の名前は椛。白狼天狗である。
「この先には何があるんだ?」
「天狗の住処があります。なので賊は立ち入らせるわけにはいきません」
「別に荒らしに来ているわけじゃないんだが……」
「なんにせよ、早くこの山から立ち去ってください」
「紫という人物を探しているんだ。心当たりないか?」
「知りません」
するとそこへ、視認できない速さで何かが飛んできた。
「あ、文さん!」
「椛、この人は通してあげていいですよ」
椛の口ぶりから、どうやらこの女性は上司のようだ。
「貴方が幻想郷に迷い込んだというスネークさんですね? 写真一枚いいですか?」
スネークは断ろうとしたが、スネークが喋る前に写真を撮られた。
「あ、申し遅れました。私、記者の射命丸 文と申します」
「なぜ俺の事を知ってるんだ?」
「天狗の情報収集能力なめちゃいけませんよ。まあ立ち話もなんですし、とりあえず里に入りましょうか」
そう言うとスネークの服を掴み、とんでもない速さで飛び立った。五秒程で頂上まで辿り着き、文の作業部屋まで案内された。途中、他の天狗達から好奇の目で見られていたが、あまり気にしないことにした。
作業部屋に入ると、そこは六畳間の狭い部屋だったが、部屋の奥にはパソコンらしき物が見えた。ここの文明は地上より進んでいるようだ。
「確か、紫さんを探しているんですよね?」
「ああ、そうだが?」
「情報提供してあげるんでインタビューいいですか? 私、新聞記者なもんで」
「情報提供、ということは何か知っているのか?」
「さっきも言いましたが、天狗の情報収集能力は高いんです」
自慢げにそう言うと、スネークはしばらく質問責めにされてしまった。