第八話 旧地獄街道を行く
射命丸が飛んでから数十秒後、巨大な穴が見えてきた。
「あれが入り口か?」
「はい。ちなみに、私は仕事があるので中まではついていけません。あ、あと底に着いたら地霊殿に行ってくださいね」
「ああ、大丈夫だ。地霊殿とやらに行けばいいんだな?」
射命丸にこの穴を案内してもらえないとなると少し不安だが、仕事の邪魔をするわけにもいかない。ここの住民にだって自分のやるべき事があるのだ。
射命丸は穴の近くにスネークを降ろすと、すぐに飛んで行った。射命丸が見えなくなるのを見届けると、スネークは穴を覗き込んでみた。底は全く見えない。いや、そもそも底はあるのだろうか、と、考えてしまう程深い穴だ。
(どうやって降りればいいんだ……大丈夫とか言うんじゃなかったな)
あいにくスネークには飛ぶ力もパラシュートもない。あるのは麻酔銃とパトリオットとにとり特製レーザーキャノン……とタバコ。
どれもこの穴を降りるには意味のない物ばかりだ。
スネークが穴を覗きながら考えていると、スネークの後ろから突風が吹いた。スネークはその風に押されバランスを崩し、真っ逆さまに穴へ落ちた。
「うぉぉぉあぁぁぁぁぁ…………」
スネーク、絶体絶命のピンチ!
為す術なく落下して行くこと約一分、いまだに底は見えてこない。今の状態で見えたら困るのだが。
「早くなんとかしなければ……」
とは言ったものの、どうしようもないのが現状である。
だが、このまま転落死するわけにもいかない。
(にとりが作った物なら何か機能があってもいいと思うんだが……)
そう考えたスネークは、レーザーキャノンをよく観察してみた。
すると、グリップの側面が開くことに気付いた。グリップの側面を開くと、ボタンが6個付けられていた。
ボタンの下にはそれぞれ、攻、防、光、飛、狙、㊙︎、と書かれている。㊙︎ボタンが圧倒的な存在感を放っているが、今は押さないことにした。
スネークは飛のボタンに懸け、ボタンを押した。その直後、レーザーキャノンの上部が開き、パラシュートが出てきた。パラシュートは一気に広がり、スネークの落下速度を殺した。
「にとりに感謝しないとな」
にとりのレーザーキャノンのおかげで転落死の可能性は無くなった。妖怪の山でにとりに会っていなかったら死んでいただろう。
ゆっくりと地底に降りて行くスネークだが、一つ不安がよぎった。
(……いつ底に着くんだ?)
フリーフォールで一分経っても底が見えない縦穴をパラシュートで降り切るのはだいぶ先のことだ……
パラシュートで降り始めて二時間、スネークの腕は限界に近づいていた。
なにせ、スネークの体はパラシュートに固定されておらず、腕の力だけでレーザーキャノンに掴まっているのだ。もはやスネークの腕VSレーザーキャノンの戦いになっている。
(底まであとどれぐらいなんだ……)
すでに太陽の光が届かない辺りまで降りて来ているため、周りが全く見えない。そこで、状況確認のため明かりが欲しい。スネークはレーザーキャノンを離さないよう光ボタンに指を伸ばし、ボタンを押した。
光ボタンを押すと、レーザーキャノンが自ら光り始めた。結構な明るさで光るため、だいぶ先まで見渡すことができるようになった。
先まで見えるようになるとあら不思議、もう底が見え始めているではないか。
しかも底には昔の日本のような街並みが広がっている。
(地底に街……ここが射命丸の言っていた地獄とやらか?)
約二時間ぶら下がっていたスネークは、当然だが腕が痺れて上がらなくなった。
腕の痛みに耐えながら歩き出すと、街には妖怪らしき者があちこちに居るのが見えた。普通の人間はぱっと見いない。どうやら、ここは妖怪の街のようだ。まあ、こんな地下深くに人間が住んでいたらそれこそ驚きだが。
しばらく道沿いに進んで行くと、明らかに纏っている雰囲気が違う女性が酒を飲みながら歩いてきた。額に赤い角が生えているところを見ると、恐らく鬼だろう。周りにいる妖怪よりはだいぶ人間らしい風貌をしているので、スネークは地霊殿への道のりを聞いてみることにした。
「すまない、ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
「お?旧都に普通の人間がいるとは珍しいね。私に力比べで勝てたら聞いてやらんでもない」
……なるほど、なかなか好戦的な性格のようだ。
「鬼に腕力で勝てと?」
「ハンデはやるよ。私が持ってるこの盃から酒が零れたら私の負けでいい」
はっきり言って、そのハンデがあっても勝てる気がしないスネークだが、断ったら後が怖そうなので勝負を受けることにした。
「よし、その勝負受けよう」
「そうこなくっちゃ!少しは楽しませてくれよ?」
鬼の女性が嬉しそうに笑い、戦いの火蓋は落とされた。