かつて「超能力」と呼ばれていた先天的に備わる能力が「魔法」という名前で体系化され、
一科学技術として広く広まって半世紀。
元々「魔法使い」として生活していた魔法族は、
「魔法使い」から「真なる魔法使い」と名称を変え、自分たちこそ魔法使いであると謡いながらも、
時代の流れに翻弄されていくのだった。
寒冷化や戦争による魔法生物の生息域や魔法植物の群生地の消失、
魔法師の登場を契機に再燃した非魔法族に対する排斥思想、
亜人族との関係悪化、特に小鬼たちとの関係性はかの英雄「ハリーポッター」の暗殺事件が勃発して起こった
「ゴブリン騒乱」も理由となって、2095年現在においても改善の道筋が立っていない。
そんな混沌と化した魔法界に更な混乱が訪れるとまだだれも知らないのであった.....
2095年3月某日
都内某所
「…xxx町のえーとなんて読むんだ?
…yyかなぁ?」
閑静な住宅地を1人の青年が歩いている。
藍色のコートを見に纏い、手にはトランクを持ったその青年は、慣れない日本語で書かれたメモを片手にとある場所を目指して歩いていた。
「はぁ。憂鬱だ。
何で母さんのせいでこんな事しないといけないんだ…。」
これから対面するであろう人達との時間に憂鬱さを感じながらも、これから少なくとも3年間は日本で生活する、ましてや魔法師として暮らす以上避けられない事を青年はわかっていた。
'逃げられない事なら早急に処理するが吉'
ホグワーツでの集団生活を通して学んだ人生の教訓を思い浮かべながら、青年は道を急ぐのであった。
2095年3月某日
東京某所・司波家
その日、司波家のリビングには微妙な空気が流れていた。
兄である達也も珍しく大きな予定もなく、兄妹水入らずで過ごせると妹の深雪が浮かれていると、
インターホンが鳴り、リビングのモニターに一人の青年が写った。
「すいません。司馬龍郎氏は御在宅でしょうか....」
兄に似た顔をした茶髪の青年は父---深雪からすれば兄を息子と思わぬクソ野郎ーーを訪ねて来たようだ。
取り合えず、家の中に招いて話を聞いてみることにした達也と深雪は話を聞き始めた。
「えーと、僕の名前は京介・G・オリバンダーっていいます。実は僕の母は龍郎氏の姉で...。
今はイギリスにいるんですけど、なんかイギリスに行く時に家族と揉めに揉めて最後は勘当されたみたいで...
で、春から第一高校に留学するのが決まった時に、母から龍郎氏への手紙を預かりまして....」
どうやら目の前でオロオロしている青年は兄妹にとって従兄弟であるらしい。
確かに父である司馬龍郎に姉がいることは四葉の資料で知っていたが、
同世代の魔法師が従兄弟しているとは全く知らなかった。
「.....そうか。取り合えず初めましてだな京介。俺は司波達也、隣にいるのが妹の司波深雪だ。」
深雪より早く、突然の従兄弟登場の衝撃から回復した達也は自己紹介を始め、
深雪も慌てて兄のように握手をした。
「それで、叔母からの手紙だったか。内容はしっているのか?」
「いや、「見るな」って言われているし見てないよ。それに.....」
「それに?」
「やばいことして書かれてないはずだし見たくないんだ.....。母はそこらのマフィアよりマフィアみたいな性格だから....」
達也と深雪は四葉の資料に書かれた「性格に難あり」の文字の意味を理解した。
「そうか.....手紙については俺達で父に渡しておこう。」
「え!」
「ああ、この家には基本帰って来ないし、聞いている話だと父は恭介と会いたがらない。手紙も受け取りたがらないだろう。渡すなら俺達経由しか方法はないだろうしな。」
「あ、ありがとう。で、でも帰ってこないって、龍郎氏はここに住んでないの?」
「ああ、父は普段都心近くのマンションに普段は住んでて,俺達とは一緒に住んでいないんだ。」
「そうなんだ.....」
何ともないように言われた家族の乖離を聞いて、京介は何とも言えない気持ちを抱いた。
「そ、そういえば京介さんも第一高校に入学なさるのですね!
私達も春から第一高校になんです!」
「あ、やっぱりそうなんだ。....知り合いがいるってわかると安心感がすごいね。」
深雪は会話に微妙な空気が流れたのを察し、別の話題に切り替えた。
以降会話は新生活に向けたものとなっていった.....
「.....どう思いましたお兄様。」
京介が司波家をあとにした後、深雪は達也に京介について問いかけた。
達也と深雪は只の魔法師の兄妹ではない。十氏族の一つ’四葉家’の直系だ。
自分の或いは相手を守るためにも、必然的に関わるべき存在は選ばなくてはいけなくなる。
深雪は
様々な意味を持って問いかけた。
「.....様子見するしかないな。」
「様子見ですか?」
「ああ、あの京介と名乗った魔法師が、俺と深雪の血縁者であることは俺の目でもわかったし、
さっきの会話の内容にも嘘の内容が含まれているようには思えなかった。
だが、一つ気になることがあったんだ。」
「気になることですか?」
「京介の懐にいれていたものが解析出来なかった。」
「!お兄様の目で解析出来なかったのですか。」
深雪は驚きをもって問い直した。
達也の持つ異能「
あらゆる物体のイデアにアクセスし、その情報を知覚することで万物を十全に解析できる異能だ。
その達也の「
深雪は信じることが出来なかった。
「京介は何か、俺達に隠していることがある。」
達也は確信をもって述べた。