まあ、俺もこの高校に入学してまあまあ経つけんど、行ってねーところはまだあるわいってことで。
「よ~いしょっと」
俺は体育館とプールがある間の階段スペースに腰を下ろした。
「まあ、こんなところかな」
「そうですね、特に異常は見当たりません」
桜川先輩と真壁さんが地面に木の棒で魔法陣を描いて話し合っている。俺の出る幕ナッシング。
俺は頬杖をつきながら尋ねた。
「魔法陣って何のために描いてんすか?」
真壁さんがチラリと俺を見る。
「魔力の位置を捕捉するため、ですね」
「アハハ、隠蔽魔法の場合、普通に見るだけじゃ分からなかったりするからね~~。こうして魔法陣で探査する必要があるんだよ~~」
「ほえ~~てえへんすねえ」
桜川先輩の解説に俺は軽くウトウトしながら頷いた。桜川先輩は、ピッ、と人差し指を立てる。
「ちなみに魔法陣にも魔力が関係していて、効果範囲はえらく違うんだ~~。魔法にもそれぞれ属性があってね……」
おいおい、止まんなくなっちゃってるよ。ノンストップ魔法解説コースかこりゃ。
「私が得意な属性が火とか光で、聚楽ちゃんは水とか氷だよ!」
っぽいわ~~。
桜川先輩はピカッと燦々な感じで、真壁さんはピキッと寒々な感じだ。
まあ、なんつーの? 性格によっているのかもな。
「めっさ似合っちょりますね」
俺が端的にそう言うと、桜川先輩はフフンと鼻を鳴らして、
「でしょう? きっと性格や思考に関係すると思うんだよね~~」
真壁さんは数回瞬きをしつつ、
「私はほぼ生まれつきですね。あと大月君の言い方はちょっとイラッとしますね」
何でだよ。俺のワードチョイスが間違っているとでも言いたいのかだとしたらすんまそん。
「じゃあ、魔法陣にも反応はないみたいだし、今日はこれで――」
お開きか? と俺が思った瞬間。
ドンガラガッシャーン! 校舎の中から何やらけたたましい音が響いた。
「な、何だ!?」
俺はびっくりして立ち上がる。
「何の音だろ?」
「向こうから聞こえてきました。行きましょう」
桜川先輩と真壁さんが、即座に反応し、迅速に行動を開始した。え? 俺? いやほら俺は華のぼっちだから、チームプレイみたいなの苦手で苦手で……。まあ、だからお二人のヒラヒラと揺れるスカートを一生懸命追いかけてます。ぴったりと後ろにつきまーす!
俺達が着いた先は、校長室。そう、ヅラ疑惑の校長室だ。え? 何でわざわざ付け加えたかって? この目の前の光景見りゃ付け加えたくもなるってもんよ。なんせ――
「ヅラ飛んでる~~~~~~!」
俺が目を見開きながら叫ぶと、桜川先輩はほえ~として宙を見上げていた。
「校長先生って本当にヅラだったんだね~~」
いやそこかよ。
真壁さんは冷静に周囲を観察して、ポツリと呟いた。
「なるほど。さっきの音は花瓶が割れた音でしたか。お花さんはまだ無事なようですね」
いやそこかよ。
俺が飛んでるヅラを見ながら、う~んと考え込んでいると必死に頭を手で押さえる校長がいた。いやもうバレてっから。
「み、見ないでくれ~~!」
校長が涙目で訴えてくるが、どこ吹く風だ。
「え? これってもしかしてポルータってやつっすか?」
俺が覚えたての魔法知識を使って桜川先輩と真壁さんに聞いてみる。
「う~ん。どうだろ?」
桜川先輩は腕を組んでムムムッと唸る。
「そうだとしたら術者の気配がないのが解せません」
真壁さんがキョロキョロしながら答える。
「待ってくれわしのヘアー!」
まあ、魔法っぽいのは何となく察しがつくけんどなあ。どことなく魔力っぽい? オーラも見えっしな。
「わしの背じゃ届かんわい!」
特段害を為すような感じは見受けられないが……。おんなじ場所くるくると回ってらあ。
「頼む! 魔法部の面々や! わしのアルティメットヘアーを……!」
「うるっっっせえぞジジィーーーーーーー! ぬわにがアルティメットヘアーじゃーーーーーーー!」
ただのヅラじゃねえか! やかましい校長は俺が黙らせときます。
「ねえねえ聚楽ちゃん。魔力だけ吸い取る事って出来るかな? オートマティックマジックでしょあれ?」
桜川先輩が空飛ぶヅラを指差しながら、真壁さんに尋ねる。
「可能だと思います。ええ、同感です」
真壁さんがコクリと頷き、俺もコクリと頷く。
「なるほど。オートマティックマジックっすか!」
「いや、大月君は知らないでしょう?」
んだよ! ノリがいいって言ってくれよ! そう、見せ場がほすぅい俺だ。
まさかのヅラの噂はマジだったようです。アルティメットヘアーと対決だ~。また次回です。