仮面ライダーガヴ×カシバトル スイート・ジェネレーションズ   作:壱肆陸

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エピローグです
仮面ライダーガヴ最終話までと劇場版のネタバレを含みます。


おいしい未来のエピローグ

 2122年のある日。場所が公表されていないはずのレジスタンス支部に手紙が届いた。

 

 それはあの日新装(ネオ)レジスタンスとの戦いに参加したチョコ、ポップン、レモネド、ぽた子、ダブリ、ベッコウの6人への招待状だった。

 

 指定された『約束の場所』にあったのは、マンション。

 その部屋の一つにお菓子屋の看板が小さく置かれてあった。

 

「いらっしゃいませ! あっ、レジスタンスの皆さんですか!?」

 

「うむ! 招待感謝する!」

 

「2122年にこの住所に手紙をって、自分も前の店主から強く言われてたんです。この店ももうすぐ100年の老舗、今はお菓子禁止令でお菓子は売ってないんですけどね……」

 

 そこには若い店主が1人。今日この日のために店を潰すわけにはいかないと、こうして形だけの営業を続けていたらしい。

 

 お菓子の代わりに店の歴史や売り物の写真が飾ってあった。

 そこにあった創業者は、井上ショウマ。

 

「過去には戻れたのだな、ショウマ!」

 

 『お菓子の家 はぴぱれ2号店』は、ショウマが作ったお菓子屋さんだ。

 

「ん? 2号店って、チェーン店やってんだな」

 

「いや、1号店は小さな便利屋だったらしいですよ。他にも名前が違う姉妹店がいくつもあったけど、もう今はここだけです。そうだ、忘れてた。これを受け取ってください」

 

 ポップンの疑問に答えた店主は、USBメモリを彼らに手渡した。

 チョコたちは店内にあったパソコンでその中身を確認。その中身は、過去に帰ったショウマがあれから経験した、戦いの記録だった。

 

『みんなへ。これが読まれてるということは、タイムカプセル作戦大成功ってことだよね! わざわざ来てくれてありがとう! 何かの役に立てばと思って、俺たちの戦いについて絆斗に書いてもらいました。あれから本当にたくさんのことがあったんだ』

 

 ショウマの語りから始まった記録。その戦いは、凄まじいものだった。

 

 人間を材料にした闇菓子で世界を牛耳ろうとするグラニュートとの戦い。ストマック社だけではなく、グラニュート界の大統領 ボッカ・ジャルダックまで現れ、人間界の命運を賭けた戦いへと発展していった。

 

 戦いは苦しさを増していったが、嬉しいこともあった。

 

『ふーん……お前らがグラニュートハンター、ってやつ?』

『俺はラキア・アマルガ。闇菓子に翻弄され、お前らに殺されたコメル・アマルガの兄だ!』

 

 グラニュートの用心棒として現れたラーゲ9───ラキアは闇菓子の被害者で、人間を守るためショウマの仲間になってくれたのだ。

 

「おぉ! ヒーローライダー……じゃねぇ、仮面ライダーヴラム!」

 

「え、知ってんのダブさん?」

 

「カルパスの彼との戦いでワタシたちを助けてくれたのです。ショウマくんのお仲間だったのですね」

 

 しかしその頃、ショウマが隠し続けていた『ストマックの血族』の事実が、絆斗に知られてしまった。

 

「まぁ、そんなすぐには受け入れられねぇよな……」

 

「オレがショウマを受け入れられたのは、部外者だったからに過ぎないのかもしれない。辛木田絆斗、もしオレがヤツと同じ境遇だったら……」

 

 ポップンも受け入れるまで時間がかかったが、絆斗は二度もストマック社に大事な人を奪われている。しかも攫われた絆斗の母親は、とっくに殺されていた。

 

 チョコの視線がふと、ぽた子に向けられた。

 復讐は理屈で片付けられるものではない。許せるはずなんてない。

 

『志が低いなぁ。目的があるなら何を犠牲にしてでも果たさなきゃ』

『待ってよ平然となんかしてないって。実験台の皆んなには心から感謝してるよ? あ、もちろん───エサになってくれた人にも、ね』

 

 そして、明かされた真実。

 カンキリと似た信念を持ちながら、引き返すことができなかった人間、酸賀研造。絆斗の師匠を殺すよう仕向けたのは、彼だった。

 

 絆斗の師匠を殺し、ショウマのクローンを作ったのも全て、絆斗を最強の生物にするための謀略。信じ難い残酷な事実がそこにはあった。

 

 耐えられない自責、怒り、絶望。それでも、絆斗にはショウマがいた。

 

『俺は……お前にッ! これ以上ヤベェ真似させるわけにはいかねぇんだよ!!』

『……じゃあな』

 

 絆斗はショウマを許し、その絆を胸に再起し、自分の手で酸賀との因縁に決着をつけた。

 

 その後、遂に母親の仇であるグラニュートと邂逅を果たす。

 しかしそのグラニュートは改心し、人間の輪の中で人間として生きていた。その時の絆斗の心情は、推し量ることもできない。

 

 ここで復讐を果たすことが何を意味するのか。それが分からないわけもない。悩み抜き、苦しみ抜き、絆斗は

 

『グラニュートのお前は……もう死んだ』

 

 母親の仇を、許した。

 復讐の連鎖を己の手で断ち切った。その絆斗の物語の結末に、ぽた子は滲むように一言を溢した。

 

「すごいなぁ……絆斗さんは」

 

「ぽた子さんも踏み止まったではないか。彼も、ぽた子さんも、とても優しい人だ。辛木田絆斗……同じチョコレートの戦士として、オレはキサマを心から尊敬する!」

 

 願わくばもっと彼と言葉を交わす時間が欲しかったと、チョコは少しだけ悔やんだ。

 

「ショウちゃんは……最後まで、家族とは分かり合えなかったんだな」

 

 レモネドが呟く。

 

 1年の戦いの末、ストマック家はショウマを除いて全滅した。

 共に大統領を倒したランゴも、最後はストマック家の再興に執着し、闇菓子を諦めることはなかった。

 

 祖父のゾンブが見出し、父のブーシュが掻き乱し、その歪みをランゴが受け継いでしまったのだ。

 

『ランゴ兄さん、最期にもう一度だけ聞く。どうする? 二度と人間に関わらないか、それとも───この場で俺に倒されるか!』

 

『お前が俺に! 倒されるんだ!』

 

 ただ、誰もが幸せを求めていた。

 闇菓子という存在が生み出してしまった歪の物語は、舞い散る羽根の中で終わった。

 

 でも、失っただけじゃなかった。

 殺されてしまったショウマの母、みちるの兄である井上優。ショウマの叔父にあたる彼に、ショウマは自分のことを明かすことはなかったが、血の繋がった存在として彼はショウマの側にいてくれた。

 

 救うことはできなかったが、叔父のデンテにもう1人の自分、タオリン。彼らが生きて描いた幸せは、ショウマの中で生き続けた。

 

 血など繋がっていなくても、幸果や、絆斗。グラニュート界に戻ったラキアもいた。そこにあったのは間違いなく家族の形だった。

 

「そっか、一人じゃないもんな。幸せなら……よかった」

 

 レモネドは周りの仲間たちを、そして育った街にいる友と母の顔を思い浮かべて、微笑んだ。

 

 記録を最後まで見届けたところで、ショウマからのメッセージが綴られていた。

 

『ここまで見てくれてありがとう。俺が最後まで戦えたのは仲間たちのおかげ。そして、お菓子のおかげだ! お菓子があったから、俺たちは幸せのために戦えた』

 

 グラニュート界から逃げ出したあの日から、お菓子はショウマの力であり続けた。

 

『これってグミだよね! グミだよね!?』

『これが……俺の眷属の力。これなら守れる!』

 

『ケーキってすごい。作るってすごい! 一緒に喜んでもらえるって、すごい!』

『あんた達とも……一緒にケーキ食べられればよかったのかもな』

 

『ありがとう幸果さん、すっごい美味しい! これなら俺……また戦える!』

『ビターガヴ、もう一度俺が相手だ!』

 

『やっぱりお菓子って美味しい。大好きだーーーー!!』

『だったら、全力で倒す!』

『静かな力が───湧いてくる!』

 

 食べるたびに新しい幸せを見つけた。母が大好きだったお菓子が、ショウマをここに導いてくれた。

 

『最後に、あの時いっしょに戦ってくれてありがとう!』

 

「ショウマ……!」

 

『お菓子はみんなを幸せにする! だから俺も、その幸せを繋いでいきたいと思って、お菓子屋さんを作ったんだ。でも今はきっと、お菓子禁止令でそれも叶わなくなってる。だから───』

 

「あぁ、わかっている。勿論だショウマ!!」

 

 チョコたちはショウマからのメッセージを読み終わると、名残惜しさを覚えながらも、そのUSBメモリを店主に渡した。

 

「100年越しの言葉、確かに受け取った! これは返す! お菓子禁止令が無くなった後、オレたち以外にもショウマの言葉を伝えてやってくれ」

 

「そうですか……よかったらコピーしてお渡ししますけど」

 

 思わずずっこけるチョコ以外の5人。

 なんだか締まらないが、せっかくなので受け取っておいた。店から出る前に、チョコが振り返って店主に尋ねる。

 

「店主よ、この店の名物お菓子を教えてくれないか」

 

「やっぱりアレですかね。『光菓子』なんて呼ばれてたお菓子で、噂では異世界から客が来るほど大人気だったとか」

 

「光菓子て……」

 

「まぁショウちゃんっぽいね……」

 

「あたしは好きだけどなその名前! どんな味か気になるね!」

 

 ぽた子の言葉に涎を垂らしてチョコは大きく頷き、最後に大きく手を振って『はぴぱれ2号店』を後にする。

 

「王国を倒したらまた来る! その時は光菓子を……ショウマが作ったお菓子を食べさせてくれ!」

 

「もちろん、それまで店は守りますよ。自分もお菓子が大好きですから」

 

 ショウマは戦い抜き、人間の幸せを勝ち取った。

 次はチョコたちの番だ。ショウマたちが守ったものを、この時代で必ず取り戻す。

 

 お菓子禁止令に立ち向かう菓子能力者(カシマスター)たちの戦いは、これからも続いていく。

 

────────────

 

 これは、お菓子の力に敗北した者たちの結末。

 

 

 この世に生まれ落ちて最初の記憶は、創造主の落胆だった。

 

『失敗だ。永遠を実現する権能がエネルギーを消費するようでは元も子もない。理とはかけ離れた存在だ』

 

 黄金の世界を作るため、何かの模造品として自分は作られ、そして失敗作の烙印を押されたらしい。

 

 誰かの手によって奪われた時も、創造主は興味を示さず、うわ言のように黄金の世界を求めるだけ。

 

 気付けば異なる世界に落ち、力も無い泥として這い回った。誰の目にも留まることもない時間の先で出会ったのが、べゼロだった。

 

 力を取り戻し、新たな身体と名前と使命を得て、忠誠を尽くした。だが、その末にあったのは人間に突きつけられた敗北と、あの時と同じ───主の失望の声。

 

 そして、全てを捧げた主も敗北した。

 僅かに存在を保ったままの自分を殺すこともせず、あの男はこの懐かしい世界に自分を放った。

 

『好きにしろ。選ぶのはお前だ』

 

 長い時間で存在が少しずつ形を取り戻し、今。

 成すべきことは何も変わらない。

 

「べゼロ様のために……人間を……!」

 

 ヒュドロは人の街を彷徨い、整然としない足取りで悲鳴を追う。その姿はグラニュートとしての姿を模してはいるが、崩れそうな泥を金属の帯で無理矢理形にしたような、そんな有様だった。

 

 もはや意識と呼べるものはない。

 ヒュドロは自我に残った残滓のような忠誠に従って、ヒトプレスを作ってはそのまま放置し、進む。

 

「見つけたぞ、アレが反応の源だ!」

 

「アレが……!? なんか前とは見た目と違うなぁ。いかにも不安定そうで、完全にはほど遠いように見えるけど」

 

 人間の男女が逃げずに向かってきた。その指からは、自分の中の力と同じ何かを感じた。

 

「だが奴の反応があの時と同じ───『ウロボロス』なのは間違いないんだろ。油断はできない」

 

「というわけで! 頼んだよ、お気楽ボーイ!」

 

 二人の後ろから現れた少年は、より強い力を持っていた。力だけじゃない。精神力も、感情も、並の人間とは違う。

 

 まるで若さというエネルギーが、全身から溢れ出るような。

 

「悪いねー、調理師試験の勉強で忙しいのに呼び出して」

 

「スパナが出張中でな。ちょうど九堂も帰国してるんだが、あっちも非常事態でそれどころじゃないらしい」

 

「えっ九堂いまこっちいるの!? うっそ、俺聞いてない……でも今はとにかく、アイツだ!」

 

 ベルトを装着した少年が出した2枚のカードにヒュドロの目が見開いた。それは造られた生命体、自分と同じ存在。

 

《ホッパー1!》

「ホッパ!」

 

《スチームライナー!》

「スッチーム!」

 

「変身!」

 

《ガッチャーンコ!》

《スチームホッパー!》

 

 バッタ×機関車の二重錬成。その胴体に炎を宿し、煌めくように鮮やかな青銅色の鋼を纏った戦士の(あざな)は───

 

「仮面……ライダー……!?」

 

「俺は、仮面ライダーガッチャードだ!」

 

 エストマの野望を打ち破った存在、仮面ライダー。

 

 同じ名を持つその戦士への怒り、少年を素材としてべゼロに献上したいという執着、そして自身と同じ存在を使う彼への興味。何もかもを混ぜこぜにして、ヒュドロは襲い掛かった。

 

「はぁっ!」

 

 ガッチャードは軽快な連撃をヒュドロへと浴びせる。しかし、その一撃一撃が重い。それを食らう度に、何かがヒュドロの意識へと流れ込んでくる。

 

 それは、彼に使われている人造生命体の意志。

 その意志は、感情と呼ぶしかないほどに鮮明で、強く、あまりにも眩しかった。

 

 ヒュドロはそれを力の限り否定した。

 短くない戦いが続いた。互いに存在が削れ合っている中で、ガッチャードは底知れない力で何度でも食らいつく。

 

「な……ぜ……それほど……」

 

 ガヴに負けた時に、同じ疑問を口にした。

 ガッチャードと拳を交えて感じた。この力は、人間と人造生命体の力が深く共鳴している証拠。

 

 分かり合い、認め合って、高め合う。

 狂おしいほどに焦がれてしまうそれを何と呼ぶのか、ヒュドロは知らない。

 

「これで……決める!」

 

 ガッチャードがドライバーを操作し、熱された蒸気が構える彼の姿を覆い隠した。

 

 刹那、圧倒的跳躍力で肉薄する鋼のバッタ。

 ガッチャードはその一瞬で肉体を再錬成し、人の形で超加速のキックを叩き込む。

 

《スチームホッパー!》

《フィーバー!》

 

 身体を貫かれたヒュドロが、ふと両手を組もうとした。だが、自身の終わりを悟って腕を下ろす。

 

 最期が近付くにつれて鮮明になる意識で、ヒュドロはガッチャードに告げた。

 

「板になった人間は……傷を付けず、縛りを断てば……戻る。人間……名前は……」

 

「一ノ瀬宝太郎。人とケミーが一緒に生きる世界を作る、未来の大物錬金術師だ!」

 

「我は、ヒュドロ……暗黒より生まれし存在……エストマ家の、永遠を実現する……者……」

 

 望めばそれが手に入ったのだろうか。

 わからない。何もわからない。

 ただ、手を伸ばすことも知らず、犯した罪に沈む。

 

「ガッチャァァァァァァ!!」

 

 ガッチャードの勝利の雄叫びと共に、ヒュドロは爆散。

 泥の塊は、生まれた世界で炎に焼かれ、完全に消滅した。

 

─────────

 

「ここは───!」

 

 激しい痛みで目を覚ました瞬間、勝利の確信と快感がべゼロの全身を突き抜けた。

 

 グラニュートハンター共の足掻きで暴走したゲートに飲み込まれ、時空の狭間で消滅するはずだったが、奴らの目論見は外れた。べゼロは生きて出口へと辿り着いたのだ。

 

「バカが……やったぞ、俺様の勝ちだ!! 俺様は生き残ったんだ!! 赤ガヴ……ストマック! 次こそ必ず殺す! 俺様の時代だああああああああ!!」

 

 人間が食える闇菓子の製法はこの手にある。

 ヒュドロはいなくなっていたが、もはやどうでもいい。この闇菓子を以てグラニュート界と人間界を支配し、今度こそエストマが世界の中心となるのだ。

 

「───ここは、人間界か?」

 

 冷静に辺りを見回し、べゼロはそこが知らない場所であることに気付いた。

 

 空気が重く、光が薄い。そして不快な蒸し暑さがある。グラニュート界に似ているようにも思えるが、根本から違うようだった。

 

 暴走したゲートに入ったのだ。元の時代、元の場所に戻れたとは思わない方がよさそうだ。世界線すら違っている可能性もあるが、べゼロにとっては問題なかった。

 

 まずは闇菓子の材料が必要だ。べゼロが少し歩き回ると、一人の人間の子供がいた。やはりここは人間界だと確信し、べゼロは口角を吊り上げる。

 

「俺様の闇菓子はストマックとは違う。必ずしも『幸せ』である必要はない。少しくらい嬲った方が『味』が出るからなァ…!」

 

 傷で痛む体を愉悦で動かし、子供の小さな体に爪を突き立てようとした、その時。

 

「ねぇオニーサン。アンタ、なんで自分がここにいるか、分かってる?」

 

 少年が振り返り、その大きく鋭い眼をべゼロへと向けた。

 背中から全身に寒気が走るのを感じた。細胞が今、この子供と関わるのを拒絶した。

 

「……黙れ。偉そうに喋るな、人間の分際でェェェェ!!」

 

「───わかんねぇなら教えてやる。

オマエがウソツキだからだよ」

 

 少年が指を鳴らすと、突如として現れたべゼロを巨大な脚が踏みつけた。混乱のまま見上げると、唸る三ツ首の黒い猛獣が、べゼロを見下していた。

 

「なッ……んだ……!?」

 

「そいつはネコカラス、オレっちのペットだ。そんでオレっちは───」

 

 べゼロがケルベロスから目を逸らすように少年を見る。

 しかしそこにあったのは、更なる恐怖。神の如き威圧が、住む次元の違いを知らしめる。

 

「初代閻魔大王、地獄王(ジゴクオー)

 

 死後の世界を統べる王。

 罪を裁く、罰の権化。

 

 ここは人間界でもグラニュート界でもない、文字通りの『地獄』。

 裁かれる罪人は、べゼロだ。

 

「オマエが犯した罪は既に聞いている。闇菓子とやらを作るために大勢の人間を殺し、数え切れない不幸を生み出した。普段ならウソ暴きから入るところだが、もはや釈明の余地もねェ。大地獄、決定だ」

 

「ッ……! 待て、ふざけるな!! 地獄……地獄だと!? 俺様は……負けてない、死んでねぇ!! 俺様は世界を支配するんだ!」

 

 こんなところで終わっていいはずがない。

 べゼロ・エストマは神になる存在のはずだ。

 

「俺様は……エストマだ、グラニュートだぞ!? 人間とは違ぇんだよッッ!!」

 

「人間だろうがバケモノだろうが関係ねぇよ。オレっちからすれば、オマエはただの罪人だ」

 

「罪……だァ!? 俺様だけが悪いとでも言いてぇのか!? 人間だって、生きるために殺してんだろうが! あぁそうだ俺様の何が悪い!? 俺様はただ、殺してる奴に罰を与えてるだけだ!!」

 

「思ってもねぇ事をペラペラと。人間とは違うんじゃなかったのか?」

 

 地獄王の言葉はべゼロに届いていない。故に、ケルベロスにべゼロを放させた。

 

 当然、べゼロは全開の臨戦体制で地獄王へと襲い掛かる。

 地獄王はそれを、圧倒的な力で正面から捻じ伏せた。

 

「あ……あ゛ぁッ……!?」

 

「確かにオマエの言う通り、生物である以上は殺す事を避けられねぇ。だが! 人間はその罪から逃げねぇ。人間は感謝し、自分の罪とウソ無しで向き合い、背負って生きることを学ぶ!」

 

「待て……待ってくれェ……!!」

 

「心を持ちながらそんな事にも気付かず、己と他者にウソを押し付け、自己顕示欲と道楽で命を弄んだ罪に、罰を与える」

 

 もはや屈辱すら湧いてこない。

 言葉が真実となる、絶対的な言霊。

 

「悪漢、」

 

 地獄王の両手がペンチとなり、べゼロの口と『ガヴ』から2本の舌を掴んだ。

 

「べーーー!!!」

 

 舌を抜かれたべゼロが行く先は、地獄の最下層。

 無間地獄へ続く扉。

 

 永劫の苦しみという罰を前にして、『ウソをつけない舌』で、べゼロは叫ぶ。

 

「ヒュドロ……助け───」

 

 扉が閉じた。

 

 審判を終えた地獄王は、懐に隠していたゴチゾウ───べゼロと共に地獄に来たチョコドンをつついて笑いかけた。

 

「ありがとなっ、アンタがアイツのこと教えてくれたから早く終わった。約束に遅れたら怒られちまうからな〜ケケケッ!」

 

 そう言って地獄王が行く先は、生きた人間が住む現世。

 ニャアカァと鳴くペットと共に八百小の『ウソツキゴクオー』として向かうのは、いつもの駄菓子屋『まつした屋』。

 

 そこでお気に入りのチョコレートを購入。すると、女の子が驚いた様子でに現れ、すぐに申し訳なさそうに慌てふためく。

 

「あれ、ゴクオーくん早い……もしかして、待たせちゃった!? ごめん!」

 

「そーだな待ったぜ、100年くらい!」

 

「そ、そんなに!? ってウソツキーーー!」

 

 人間の人生は短い。その短い時間で、どんなウソをつき、どんな幸せを掴むのか。それが面白くて仕方がないのは、ウソじゃない。

 

 細やかなウソが込められた、タバコのようなチョコレートを軽く噛み、閻魔大王はその苦さと甘さに思いを馳せた。

 




これで本当に終わりです!
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

仮面ライダーガヴもカシバトルも大好きです!
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