仮面ライダーガヴ×カシバトル スイート・ジェネレーションズ   作:壱肆陸

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グミチョコの出会い

 こんにちは、ショウマです。

 いつもみたいに人間を襲う悪いグラニュートと戦ってたら、べゼロっていう知らないグラニュートが現れた。なんだかストマック社を敵視してるみたいで、俺の事も知ってて……

 

 そしたら、そのグラニュートも絆斗も一緒に変なモヤモヤに吸い込まれちゃった!

 目が覚めたら知らない場所。そして俺は、空腹で力が───

 

__________

 

 

「しっかりしろ! おい!」

 

「食べ物買って来たよ!」

 

「食べろーー!! 食べて目を覚ませーー!!」

 

 痛む体を揺らされ、近くて遠い声が耳に響く。

 ゆっくりと暗闇に沈んでいきそうだった意識は、口に押し込められた何かに吸い寄せられるように浮上した。海苔と米の混じり合った香りに、自然と口が動く。これは───

 

「おにぎり!」

 

「わ、本当に起きた」

 

「うむ! 無事でよかった!」

 

「起きたの絶対偶然だろ……こういうのって水から飲ませるとか無かったか?」

 

 目を覚ましたショウマの前にいたのは、自分より年下に見える3人の少年。どうやら彼らがショウマを介抱してくれたようだ。ショウマが感謝の気持ちを伝えるより先に、おにぎり一つでは誤魔化せない空腹感が、腹の音となって鳴り響いた。

 

「……ごめん」

 

「謝ることは無い。腹が減っては何も出来ん、人間とはそういうものだ」

 

食いしん坊(チョコ)が言うと説得力ちげーな」

 

「まだあるからどんどん食べてよ。コンビニで買ったヤツだけど……」

 

「ありがとう! いただきます!」

 

 細目の子───レモネドがショウマに袋を差し出すと、ショウマは深くお辞儀をして手を合わせ、中の弁当に手を伸ばし、口へと運んだ。その間わずか数秒。

 

「んーーー!! うまい……! 生き返る!」

 

 のり弁ひとつ平らげると、次に唐揚げ。そしてお茶と一緒に2つ目のおにぎり。コンビニ袋の中身が瞬く間に消化されていく。その勢いを前にレモネドとポップンは、驚いたような、少し引いたような目線で眺めるしかなかった。

 

「念のために多めに買ってきたけど、よく食べるね……」

 

「にしてもすげー美味そうに食うな。オレも腹減って来た」

 

「あ。これなんだろう……初めて見る」

 

 ショウマの食べっぷりをもう一人の食いしん坊(チョコ)も物欲しそうに凝視する中、ショウマが見つけたのは良い香りがする白い塊───『肉まん』。人生をグラニュート界で過ごしたショウマにとって人間界の全てが、特に食べ物は未知なる存在だった。

 

 急いで買ってきたからか温められてなかった他の食べ物とは違い、肉まんはじんわりと温かく、その柔らかさも相まって小さい生き物を抱えているよう。ショウマは高揚を顔いっぱいに表現し、そのまだ見ぬ食べ物へとかぶりついた。

 

「う……うま~~っ!! 外側はふわふわもちもち、ほんのり甘くて、中はトロトロのお肉でいっぱい! シャキシャキしてるのは野菜かな? すっごく美味しい!」

 

「初めて肉まん食べたのか?」

 

「外国の人? それかめちゃくちゃお金持ち?」

 

「これが『肉まん』なんだ! ノートに書いとかないと……あ、そうだノート!? もしかしてノートも取られて……あ、あった! よかった~……」

 

 ショウマは懐から青いノートを見つけ、胸をなでおろした。忘れないうちに感動をノートに書き留めると、一気に肉まんを食べきり、残っていたお茶も飲み干す。

 

「ごちそうさまでした。ありがとう! 本当にお腹空いて死ぬかと思った……お礼になんでも手伝うよ! あ、悪いこと……以外なら」

 

「そんなことはしない。それよりもまずは教えてくれ! なぜキサマはあんな場所で、腹を空かせて倒れていたのだ! 何があった!?」

 

「チョコちゃん、圧。圧がすごいから。いやオイラ達、一応正義の味方とか……まぁそんな感じのことやってんの。だから詳しく話聞かなきゃってわけ」

 

「そうなんだ。えっと……ショックでなんだか記憶があやふやで、確か……」

 

 ショウマは慎重に記憶を辿り、チョコ達にその仔細を伝えた。

 ただし、自身の正体───グラニュートであることは隠して。

 

 ショウマが目を覚ましたのは数日前だ。あの黒い渦に呑まれ、気付けば知らない場所にいた。一緒にいたはずのヴァレンや、あのグラニュートたちの姿も近くに無く、同居人であり上司の甘根(あまね)幸果(さちか)にも連絡が付かない。

 

 自分がどこにいるかもわからず、しばらく途方に暮れ、周囲を彷徨った。持っているお金は何故か使えず、食べ物も手に入らない。ここに来る前に偶然助けた子供から貰った、袋いっぱいのお菓子を少しずつ───いや結構な勢いで食べてなんとか帰る方法を探していた。

 

「はぁ……幸果さん、心配してるだろうなぁ。絆斗もどこにいるんだろう。無事だといいけど……」

 

 お菓子も底を尽き始め、空腹で気力も弱まっていた頃、ショウマが大切に持ち歩いていたお菓子袋が突然何者かに強奪された。

 

「はははーっ! 菓子狩りだ! この時世に菓子を持ち歩いてるなんて馬鹿な奴だぜ、コイツは没収だ!」

 

「えっ!? ちょっと……返せ俺のお菓子!!」

 

 一瞬何が起こったか分からなかったが、お菓子を奪われたことに気付くとショウマは怒りのまま駆け出した。しかし、体に力が入らない。いつもなら簡単に追いつけるのに、速さもスタミナも冗談みたいに衰えている。

 

『米も肉も野菜も食べねぇと馬力が出ねぇ! そんなんだから倒れちまうんだ』

 

「おじさんの言った通りだ……お菓子だけじゃ、力が全然……!」

 

 前にお弁当をくれたおじさんが言っていたことを思い出すが、それでもあのお菓子はショウマの生命線。無い体力を振り絞り、ショウマはなんとか菓子泥棒へと追いついてみせた。

 

「お菓子……返せ!」

 

「コイツ……! しつけぇんだよ!」

 

 そこでショウマは泥棒から何かしらの攻撃を受け、その衝撃と体力の枯渇で気を失った。そしてチョコに倒れているところを見つけられ、今に至る。

 

「そりゃ完全に菓子取団のしわざだね」

 

「マジかよ。四天王がほとんど落ちたってのに、全然大人しくならねーな!」

 

「お菓子を奪うだけに飽き足らず、腹を空かせた者に暴力を振るうとは……許せん!!」

 

「かしとり……? でも、本当にありがとう! この辺は人がいないのに、よく気付けたね。おかげで助かった!」

 

「そうだよな。チョコが急に変な方向行くもんだからビックリしたが、まさか人が倒れてるなんてよ。ラッキーだったなアンタ」

 

「ラッキーではない。オレはコイツの声に導かれたのだ。その先にキサマが倒れていた」

 

 チョコの掌に乗っていたのは、褒めてと言わんばかりに笑うゴチゾウだった。

 それを見たショウマの顔色が一気に青ざめる。ゴチゾウはショウマの眷族。それ即ち、ショウマの正体へと繋がりかねない証拠であり、極力他人に見せられないものなのだ。

 

「んだコレ。子供のオモチャか?」

 

「でもなんか鳴いてるし、ピョンピョン動いてるよ。生き物でしょコレ」

 

「分からん! ただ、何やら甘い香りがする! まさか……」

 

「え……えっと、それは……」

 

「まさかキサマも菓子能力者(カシマスター)なのか!? コレがキサマの菓子能力だというのなら納得だ!」

 

 必死に言い逃れを考えていたショウマに、チョコの口から知らない単語が付きつけられた。訳の分からないショウマだったが、その言葉に「あーなるほど」と理解の兆しを見せるレモネドとポップン。

 

「う、うん。そうなんだ! 俺も、その……カシマスター? なんだ!」

 

 よく分からないまま勢いで便乗してしまった。ショウマの心を満腹感以上の不安感が満たす。

 

「ふぅん……てかさ、この人の言ったことが本当なら、まだ近くにいるんじゃないの。菓子取団」

 

「そっか! ちょっと待ってて。お腹もいっぱいになったし、俺のお菓子取り返してくる!!」

 

「いやいや、それはオレ等に任せ……っていねぇ!? 速ぇ!?」

 

 ポップンがショウマの肩を叩こうとしたら、その姿はもう遥か遠方へ。余りに人間離れした走力にポップンは口と目を全開にして唖然。

 

「ビックリしてる場合じゃないよポッちゃん! 追いかけないと!」

 

「お、おう! いくらなんでも元気になり過ぎだろアイツ!!」

 

「なんという身体能力……! 凄腕の菓子能力者(カシマスター)に違いない!」

 

 取り敢えずで街の中心に向かうショウマ。それを追う菓子能力者の3人。

 

(アレが菓子能力……ねぇ)

 

 そんな中レモネドだけが、冷静な頭でショウマという存在を見定めていた。

 

__________

 

 適当に人がいそうな方向に走っていると、辺りを見回らせていたゴチゾウがショウマのもとへ帰って来た。どうやら何か騒ぎが起こっているらしく、ゴチゾウの案内で到着したそこは百貨店。

 

 ただ、店の中は荒らされ、店員や客は何者かに痛めつけられていた。店内を我が物顔で漁る連中は、ショウマからお菓子を奪った男と同じ服装の集団。オアズーケ王国の菓子取団だ。

 

「あったぜ~! 瓶サイダーの箱が山ほど出てきやがった!」

 

「そ、それだけは……! お菓子が食べられない中、子供たちが楽しみにしてるんです! どうかそれだけは許して……!」

 

「お菓子禁止令は甘い飲料も没収対象だバカが! どーにもこの街は菓子狩りが甘ぇな。どんどん狩ってやろうぜ!」

 

 涙を流す訴えも足蹴にし、当然対価も払わずサイダーを強奪していく。ショウマ自身も、彼らも、ただお菓子を持っていただけだ。それなのに、こんな理不尽があっていいはずがない。

 

「あ? なんだオマエ。何見てんだ!?」

 

「……どうしてこんなことをするんだ。そのサイダーはその人たちのモノでしょ? それをなんで人間同士でこんな乱暴に奪って、独り占めしようとするんだよ!」

 

「決まってんだろ、お菓子がウマいからだ! ウマいもんは独占したい! 強いヤツには独占する権利がある! むしろ優しいくらいだぜ、お菓子なんかで我慢してやってるんだからな? 命を奪うわけでもねぇのに文句言うなよ」

 

「違う! お菓子って、食べると幸せになるんだ。嬉しい時はもっと嬉しくなるし、辛い時は頑張ろうってなれる。その幸せを奪うのはきっと、命を奪うのと同じくらい、許されないことだ!」

 

 自身の優位に酔う菓子取団がショウマの言葉に耳を貸す理由が無い。暴力を以て黙らせれば解決する話なのだから。それに対してショウマも服のジッパーに手をかけたが、そこで躊躇してしまう。

 

(駄目だ! 悪い人でも生身の人間だ! 変身したら……手加減できない!)

 

 変身はショウマの中のグラニュートを解放する行為。人間とグラニュートでは生物としての強度が違い過ぎて、それこそ本当に命を奪ってしまう。ショウマは考えたことも無かったが、人間を殺したらきっと───

 

「キサマの言う通りだ! お菓子を食べる幸せは、誰にも奪うことは許されない!」

 

 菓子取団が振るう躊躇の無い暴力を弾いたのは、さっき会った3人の少年。チョコ、ポップン、レモネドは堂々と菓子取団の前に立ち塞がった。その姿を見て怯え切った人々が沸き立ち、逆に菓子取団は戦慄する。

 

「オマエ等……レジスタンスの!」

 

「ウソだろ!? あの軍団長を3人倒したっていう、鐘木チョコとその一行!?」

 

「ありゃ。オイラ達もすっかり有名人だね」

「オレ達がまとめてチョコのお供になってんのが、なんかな……いやいいんだけどよ」

 

「ゆくぞレモネド、ポップン! 戦闘開始だ!」

 

「オイやめろ。それすげーお供っぽいから」

 

 彼らも生身の人間のはず。止めなければとショウマが飛び出そうとした瞬間、彼らはそれぞれお菓子を取り出した。

 

 ポップンが『ポップコーン』を口に放り込むと、掌から爆発と共に発射されたポップコーンの連射が菓子取団を撃ち抜く。

 

 レモネドが『ラムネ』を噛み砕くと、炭酸の電撃を纏ったキックで敵を返り討ちに。

 

 そしてチョコが『板チョコ』を齧ると、チョコレートの剣『チョコレー刀』がその手に現れ、瞬く間に店内の暴漢たちを切り捨てた。

 

(お菓子を食べて、強くなってる!? それってまさか……あの子たちもグラニュート!? それか絆斗と同じ改造された人間!?)

 

 ショウマの驚きも、飛び気味な思考も、彼の背景からすれば妥当なものだ。

 彼はお菓子を食べることで眷族『ゴチゾウ』を生み出し、それを『ガヴ』で食べることでその力を引き出す。そしてゴチゾウの力を引き出すために改造された人間の実例も知っている。

 

 ただ、チョコたちが眷族を生み出している様子も、眷族の力を使っている様子もない。ただお菓子を食べているようにしか見えなかった。

 

(あっ! もしかして、あれが菓子能力者(カシマスター)ってヤツなのかな!?)

 

 ショウマは冴えていた。

 言われてみればショウマは人間のことをよく知ってるわけじゃない。お菓子を食べて特別な力を出せる人間がいても全然おかしくない……ような気もする。世界は広いなぁ、でショウマは結論付けた。

 

 なんて考えているうちに、3人は菓子取団を圧倒。

 剣を持ったリーダー格の男が自棄になってチョコへと襲い掛かるが、それを最小限で躱すと、チョコはチョコレー刀を自身の体に突き刺した。

 

「とろける剣術」

 

 すれ違いの一瞬。チョコの右腕から溶け出たチョコレートの刃が、男の体を切り裂く。

 自身の体内にチョコレートを流動させ、全身どこからでもチョコレートの刃を出現させる変幻自在の必殺技『とろける剣術』。チョコの圧勝を以て戦いは決着した。

 

「ぐっ……こうなったら!」

 

 しかし、店の端に倒れていた手下が一人立ち上がり、刃物を持って客へと走り出す。人質を取って逃走を図るつもりだ。チョコ達が離れた瞬間を見計らった卑劣で巧妙な悪あがき。だが、

 

 その男が狙った客の横にいたのがショウマだったのは実に不運。

 迫り来る男をショウマが両手で軽く突き飛ばすと、男は指で消しゴムを弾いたような勢いで商品棚へと吹っ飛ばされ、激しい衝撃音と共に今度こそ気を失った。

 

「あっごめん! やりすぎた……」

 

 菓子取団、完全制圧完了。

 

____________

 

「帰って来た~~!! 俺のお菓子~~!!」

 

「うむ、良かった! これで一件落着だな!」

 

「警察も来る頃だし、あとは任せよーぜ」

 

 菓子取団を倒したことで奪われたお菓子が手放され、その中にはショウマの菓子袋もあった。ただ、中身を見て驚愕。残りはたったのチョコ1枚だけ。希望から絶望とはこのことである。

 

「でも、どうしてお菓子ばっかり泥棒してたんだろう……そういうのって普通、お金とかじゃないの? そんなにお菓子が好きだったのかな」

 

 不意に呟いたショウマの一言に、チョコたち3人は目を丸くして顔を見合わせた。

 時が止まったような沈黙。何かマズいことを言ったのではとオロオロするショウマを連れ、3人が向かったのは、近場のコンビニ。

 

「無い……! 無い無い無い!? お菓子がどこにも無い!!? なんで!?」

 

 ショウマの認識ではコンビニは何でも売ってる便利な場所だ。お菓子も沢山の種類が売っている。だが、そのコンビニには不自然とも言えるくらいお菓子が置いてなかった。

 

 慌てて他の店も探してみる。しかし、街中どこに行ってもお菓子は売ってない。レストランのメニューにはデザートが無く、スイーツ専門店は一つも無い。

 

「どうしてこの街にお菓子が一つも……!?」

 

「この街だけじゃねーよ。お菓子禁止令で世界中お菓子不足だ」

 

「世界……中……!? いつの間にそんな……」

 

「3年前からずっとだぞ」

 

「3年前!??」

 

 ポップンの口から語られる現実に、何度も雷に打たれたような反応でショウマは跪く。

 

(どういうこと!? 3年前って、俺まだ人間界いないし! もしかしてここって知らない国とか……でも世界中って言ってたよね!? デンテおじさんが言ってたみたいに、俺の記憶が無くなってるってこと……? じゃあ俺が食べたお菓子は!? ゴチゾウは!?)

 

 何をどう考えても意味が分からない事態に、ショウマは無声で唸るしかできなかった。その様子を見てチョコ達3人は、小さく集まり小声で会合を始める。

 

「マジで禁止令知らないみたいだぜ。どういうことだ? なんか不思議ちゃんっぽさは感じてたけどよ、いくらなんでも意味わかんねーだろ」

 

「待てポップン。そういえばヤツはさっき、襲われたショックで記憶があやふやと言っていた。もしや……!」

 

「記憶喪失ってこと? でも、そうでもなきゃ禁止令知らないワケないよね……どうする? 警察に任せるのが一番安全だと思うけど」

 

「確かに警察に任せれば間違いないだろう。しかし、ヤツは自分が菓子能力者(カシマスター)と言っていた」

 

「うーん、なるほどね。チョコちゃんが言いたいことわかったよ。つまり、いっそオイラ達で───」

 

 チョコ達が何かを話し合っているのを気にする余裕なんてなく、衝撃のあまり膝を付いたままショウマは動けずにいた。ここまで絶望したのは人間界に来てから初めてかもしれない。自分の身に何が起きたのかはさっぱりだが、お菓子が無いという事実がショウマの心全部を塗りつぶしていた。

 

「じゃあ俺、このまま一生お菓子食べられないってこと……!? ソフトクリームとか、ゼリーとか、あとケーキ! 俺まだ食べたいお菓子たくさんあったのに……」

 

「心配するな! オレ達がオアズーケ王国を倒す! そして誰もがお菓子を食べられる世界を必ず取り戻す!」

 

「君たちが……?」

 

「そっ。そのためにオイラ達は戦ってるわけよん♡」

 

「アンタも菓子能力者(カシマスター)なんだろ? 記憶が戻るまで力を貸してくれよ、オレ達『レジスタンス』に!」

 

___________

 

 黒い渦を通った先は薄暗い建物。もうとっくに見慣れたその場所は、かつてお菓子の工場だったらしい。お菓子禁止令で工場は廃業、誰からも忘れられてもぬけの殻だ。

 

「あー、これ遅れた感じっスね。いやマジ聞いて欲しいんスけど、転移先が海上で死ぬかと思って」

 

「すまない、やはり100年であの人数となると座標が大きくズレる。悪いことをした」

 

 2024年でショウマ達を観察していた2人。白髪の男と、濃いクマの少年。

 そしてもう一人、血よりも幽かで桜よりも紅い、まるで消えかけた炎のような赤をした目の少女。

 

「おーフラン、久しぶり。いやこっちだと一瞬か、ややこい」

 

「海上に出たくらいで情けないよヤイガ。そのみっともないクマも、いつになったら体調管理が出来るの。そんなに眠けりゃ寝ればいい、後の作戦に支障が出ると先生がお困りになるというのを理解して」

 

「可愛くねぇ~~~」

 

 美しく整えられた長い髪、その隙間から少年───ヤイガを刺す凍てつくような視線。街に置いておけばスカウトされるくらいキレイな顔なのはヤイガも認めるが、昔から本当に愛想というものが無い。年下なのにもう自分より強いのも少し嫌だ。

 

「ま、結局のとこ休んでる暇なんざ無いわ。だろ、センセイ」

 

「そうだな。彼らが見つかり次第迎えに行く。軍団長と副軍団長の大半が裏切り、王国から離れた。王国の力は確実に不安定になっている。好機は今しかない」

 

 時を超え、ショウマたちをこの時代へと呼んだ彼ら。

 目的はただ一つ。その一つの理想の為に、彼らは心を封じて力も時間も捧げる。

 

「ワタシ達がオアズーケ王国を倒す。そして世界を救うんだ」

 

 

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