殺人現場より、愛をこめて   作:トリスメギストス3世

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113:文化祭⑤

 ところで『神域』地下。

 エリのためだけに造られた街の中心部。

 地下だというのにお日様が高く昇る白昼の公園。ブランコの傍のベンチに座る『熾天使』は、巻き戻しの少女にこう問いかけた。

 

「ねぇ、エリちゃん。ちょっと質問してもいい?」

 

「なあに? 天使のお姉ちゃん?」

 

 人材の都合ですっかりエリちゃんの世話係みたいになっている『熾天使』は、傍から見れば姉妹を遊ばせに公園に来ている平和なお姉ちゃんにしか見えないだろう。

 しかし霊火の姿の天使様は、神域防衛システム『SERAPH』の長。

 

 『剛翼』『ゴースト』『チェンジリング』を搭載した、最も後発の戦闘用アンドロイドだ。

 デフォルト状態ならば『アマリリス』製アンドロイドの中でも、割とぶっちぎりで最強。

 百万を超える"天使"シリーズを束ねる熾天使様はとてもやさしい声でこう質問した。

 

「私とかデクさんの学校でさ、文化祭……お祭りというか……そういう遊びをするんだけど、エリちゃんは行きたい?」

 

「!!!!! 行きたい!!!!」

 

「そぉーだよね!?!? 行きたいよね!?!? あー困ったなあ!?!?」

 

―――――――――

 

「と、言うわけでエリちゃんを文化祭に連れていきたいのですが」

 

「バカですかお母様は。ママは知りません一人で頑張って下さい」

 

 そして『神域』深部。

 強いて言うならコントロールルーム。

 モニターが大量に並ぶ広くて清潔な一室で、全ての創造主たる殻木霊火は頭を抱えた。

 

 こちらはこちらで傑作機。

 八斎會攻略戦で猛威を振るった爆乳若奥様こと『美貌』は、本気で呆れた表情で自身の製作者を見下ろす。

 

 困り果てた霊火は泣きついた。

 

「そんな冷たいこと言わないで何とかしてよ真奈美さん!!」

 

「あんな精巧な死体まで用意してご丁寧に火葬まですませた女の子を文化祭に連れて行けるわけないでしょう。死んだ人間が蘇ったどころじゃないですよ。」

 

「一応『変身』を応用したガチの特殊メイクならあるけど、やっぱり危ないかなあ……!?」

 

「変装は案外高等な技術です。そして雄英はエリちゃんの顔見知りばかりです。彼女にそんな難しい腹芸を求めるのは酷でしょう。名前を聞かれてうっかり本当の名前を口走るのが目に見えます」

 

 ちょっと正論すぎる。

 自分で組み上げたAIに論破されそうだ。凄く苦しい。

 

「…………………っ!! そうだ!!」

 

「どうしました?」

 

「……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! 私も目を離さないようにする!!」

 

「仮にも世界の救済を目指している人物にここまで雑な見切り発車をされちゃうと、ママとしてはシンプルに怖いのですが」

 

「いーんだよそんな事。私の場合は計画なんて大抵想定通りには行かないんだ。こーいうのは何処までが許容可能かを厳密に定めて、後はそのラインを絶対に割らないのが大切なの」

 

 ここで基本を確認してみよう。

 

 何故犯罪者は逃げるのか?

 それは警察やヒーローに捕まって罰を受けるからだ。

 ならば、警察もヒーローも寄せ付けない難攻不落の城を堂々と構えた犯罪者は逃げ隠れする必要はあるのか?

 

 答えは否。

 敵の少女は人差し指をたててこう強調した。

 

「そう、実は(ヴィラン)とバレてもいいのよ。何故なら私はヒーローや警察に負けないから」

 

「はあ」

 

 ドクターの元で日陰の犯罪者時代が長かった霊火としては、軽いパラダイムシフトだ。

 オールマイトの不在が何よりも大きい。『神域』を有する今となっては、世間に(ヴィラン)だとバレることも禁忌というわけでも無い。

 何故なら今の霊火は戦力的に捕まらないからだ。

 

「『美貌』の貴女はどう思う? 私たち、そろそろ国家相手に全面戦争してもいいかな?」

 

「推奨はしませんが可能です。何しろ、仮にお母様が死んでもこの『神域』は止まりませんから」

 

「国家権力側に私たちが負ける可能性は?」

 

「オールマイトが不在です。そして我々には文明レベルに2世紀程のアドバンテージがあります。たかが軍隊の一つや二つ歯向かってきた所で蹴散らします。一蹴です」

 

 だから霊火は裁かれない。

 剣無き契約はただの言葉に過ぎず、強制力を持たない法など存在しないと同義だ。

 つまり、霊火は敵としての犯罪者としての隠遁生活を捨て、力による衝突が可能な段階に達したことを意味する。

 

 ここまで来たら、霊火は超一流の(ヴィラン)と名乗れるだろう。

 とてもいい響きだがここで問題が一つ。

 『美貌』が片手を頬に当て、ため息混じりにこう言った。

 

「しかし、目標の為にはプロヒーロー『デク』の戦力的な完成の前に全ての事を為す必要があります。逆に言うと、彼が完成したら我々の負けです」

 

「なんで私は出久くんを一生懸命育てているんだろうね?」

 

「惚れた弱み。恋は思案の外。こういうのはとにかく理屈じゃありませんから」

 

「誰か私を助けてくれ。いっそのこと振ってくれたら私だって……やっぱり振らないで……」

 

「なんでよりにもよって片想いの男の子が『OFA』継承者なんですか」

 

「信じられないことにマジで偶然なのよ。運命ってあるのかなあ……?」

 

 二人でため息をついた。

 話を戻す。エリちゃんを文化祭に連れて行く計画についてだ。

 

「……はぁ。分かりました」

 

「分かってくれた!?」

 

「熾天使の『チェンジリング』及び脳無の『転送』による緊急脱出手段を常に保持することで、リスクの分散を図りましょう」

 

「私には『混濁』もあるからね。大抵の事は現場でどうにか出来ると思うよ」

 

「この『神域』があるとしても、やはり正体の秘匿には気を遣って下さい。お母様が努力して保っている隠匿性は、依然最大の防御手段ですから」

 

 

―――――――――

 

 

「失礼しま~す。A組の霊火ちゃんが敵情視察にやって来ました~」

 

「帰れや、殺す!!!」

 

 BOMB!!

 

 爆裂音が鳴り、空気が波打つ。

 爆豪勝己がドラムスティックを片手に握り潰す勢いでドラムセットの上から霊火へ身を乗り出していた。

 

 癇癪男は目じりを吊り上げながら怒鳴り続ける。

 

「テメェ何しに来やがった悪趣味女!!! あぁ!?!? ぶっ殺す!!!」

 

「ドラム担当の爆豪じゃん。え、仮免試験落ちたんだって? 劣等生が天下のプロヒーロー様に楯突こうとはいい度胸だこと」

 

 少女は少女で極めて好戦的な笑みを浮かべて一歩前へ出る。

 その小さな両手を握り込んだ瞬間、ざらりと砂を擦るような音が響いた。

 

 黒いクレヨンで塗り潰したかのような四足歩行の怪物。

 それは現実感を欠いた凶悪な輪郭のまま顕現し、眼光を爛々と揺らめかせて喉奥から低く唸り声をあげる。

 

 爆豪は青筋を浮かべ、凶暴に歯を剥き出しにした。

 

「……おもしれぇ……!!! 試してぇ新技がある。来いや病弱悪趣味チビ女今ここでぶっ殺す!!!」

 

「売られた喧嘩は買う主義だけど本当にやる? 普通に死ぬよ?」

 

「やーめーてーーー!!!!!」

 

 割り込む声があった。

 

「今、練習中なの!! 爆豪は落ち着いて!!! あと邪魔するなら出てって殻木!!!!!」

 

 耳郎響香だった。

 B組のバンドガールは霊火と爆豪の間に割り込むと、霊火に対して腰に手を当て立ち塞がる。

 

 霊火はくすくすと笑った。

 

「ごめんって響香。あのバカが喧嘩売ってくるから」

 

「せっかくドラムしてくれることになったんだから刺激しないで危険物なの!!」

 

「聞こえてんぞ耳!!!!!!」

 

 ここは雄英高校の多目的室。

 音楽室ほど整然としておらず体育館ほど広くもないこの空間には私物か備品か判然としないアンプが積み上げられ、床を這うコードはガムテープで雑に固定されている。

 その先に鎮座するドラムセット。何度も叩かれたシンバルは鈍く曇り、スネアのヘッドには細かな傷が無数に刻まれていた。

 

 ギタースタンドにはエレキギターが二本、ベースが一本。散らばったピック。

 譜面台には走り書きのコード進行。霊火は一瞥して不審そうに眉を顰めた。

 

「ダンスミュージックなのにバンドやるんだ。EDMの方が楽でウケると思うけど」

 

「みんな楽器やりたいんだって。ていうか殻木ってロック分かるタイプ?」

 

「知識としてはまあ。音楽理論とか歴史とか好きなのよ」

 

 ギターを手に取りながら少女は軽く首を傾げる。

 霊火の主戦場はバイオリンだ。ギターもある程度はこなせるが、こうやってアンプに繋げるギターは初めて触った。

 

「『ギターやってる』って『スポーツやってる』と同じぐらい当たり判定デカいよね」

 

「殻木の言ってることは分かるけど……」

 

 耳郎響香は恐る恐るカゲマルの脚に触れながら、霊火に質問する。

 

「ていうかこの子何? 殻木の新技? もしかして戦えるの?」

 

「カゲマルっていうの。勝手に戦ってくれるし私の『呪い火』も撃てる。可愛いでしょ?」

 

 霊火の新たなる相棒こと忠犬カゲマル君は、耳郎響香に軽く頬擦りした。

 バンドガールは感嘆のため息を漏らす。

 

「相変わらず凄い”個性”だね……。ただでさえ中遠距離”個性”持ちは『呪い火』との差別化に苦労してるのにこんな応用までされちゃったらもう……」

 

「そう? 貴女の”個性”は索敵にも攻撃にも優れた器用でいい能力じゃん?」

 

「でも『呪い火』って催眠波とかの搦手もあるでしょ? 炎も氷も電気も音響もガチで何でも出来る虹色の『呪い火』に、一応専門の音波分野で負けるのは悔しいのよ」

 

 霊火は申し訳なさそうに首を縮めた。

 『死因』は、本来は非常にストックが難しい類の”個性”だ。現在は『神域』内部で鬼火の大量生産をしているため供給が安定しているが、これは霊火が人道を外れた敵であるからこそ出来る荒業だ。

 その対価としての応用力なのだが、やはり他所から見ると単なる万能”個性”に見えてしまうらしい。

 

 カゲマルに関しては外付けの”個性”機械を”個性”と言い張っているだけなので、そこを褒められても居心地が悪いだけだ。

 

「……まあ確かに遠距離”個性”最強なんて言われる事もあるけど、ほら、索敵は自分の目が頼りの状態で実際それが弱点にもなって大怪我してたりするしさ。なにより響香は私よりだいぶ性格がいいから」

 

「なんか一生懸命フォローしてくれてありがとうね殻木。十分優しいよ」

 

 そういえば、呼び出したカゲマルを消すタイミングを見失った。

 カゲマルはバッテリー式というわけでもないため出し続けることも可能なのだが、デカくて威圧感があるためタイミングを見計らって消したい気持ちもある。

 そんな霊火にシンセサイザー担当のお嬢様が声を掛けた。

 

「お久しぶりですわ、殻木さん」

 

「久しぶりヤオモモ。キーボード担当なんだって?」

 

「幼少期からピアノを嗜んでおりましたので。皆様のお役に立てればと」

 

「無視すんじゃねえ俺を!!!!!」

 

 怒声と同時に爆発音。

 反射的に、霊火は長大な『プリムローズ』を構えていた。

 

 虚ろな表情のまま杖のヘッドに親指を添え、刃を僅かに持ち上げる。

 

「っ……!?!?!?!?」

 

 それだけの所作で耳郎響香は首元を押さえた。

 爆豪勝己は腰を低く落とし、八百万百は背後で何かを生成する。

 

 耳郎は怯えた目で自身の肩のあたりを見た。

 

「ひッ……!? い、今……斬られ……て……ない………!?!?」

 

「落ち着け、耳。ただの圧だ大したことねぇ」

 

 霊火の”個性”は『死因』。

 ちょっとした副次効果として、あらゆる攻撃行為に死の気配が付き纏うという性質がある。

 そのせいで、攻撃の前兆が読みやすく回避が容易いという弱点にもなっているらしい。これを指摘してくれたのはオールマイトなのだが、霊火もその時に初めて気がついた。

 

 自動操作のカゲマルが、主の背中を鼻先で突いた。

 霊火はわずかに目を見開く。

 

 軽い苦笑。

 まさかこんな形で『黒影』の個性機械が役に立つとは思わなかった。影の怪物を従える女はくるりと得物を回し死の刃を収める。

 

「……失礼。怖がらせちゃったね。ごめんねみんな」

 

「殻木さん……あなた……」

 

「ちょっと自制が無さ過ぎるね私は。最近警戒心ばかり強くなってどうにも……」

 

 爆豪は僅かに肩の力を抜き、忌々しげに舌打ちした。

 豪胆なのか鈍感なのかよく分からない八百万は心配そうに口を開く。

 

「大丈夫ですか、殻木さん? 何か悩み事でもありましたら、いつでもご相談ください」

 

「ありがと、ヤオモモ。助かる―――」

 

「あれあれあれあれ〜!?!? A組じゃあないか!!! なんでA組の君がウチのバンド練習に顔を出しちゃってるのかなあ!?!?」

 

 ガラリと引き戸が開き金髪の男子生徒が喧しく入室した。

 

 カゲマルが低く唸って耳郎は頭を抱えた。

 四つ目、鋸歯状の口を持つ真っ黒な獣が教室内に存在することに気が付いた物間寧人は、脚を絡ませながら後ろへ飛び退く。

 

「なんだいこれ!?!?!?!?!?!??!!?」

 

「カゲマル、捕まえて」

 

「ちょちょちょちょちょちょ〜っと待った殻木さん同学の友よ少しは待ってくれてもぐわぁぁぁ〜〜!?!?!?

 

 体長三メートルの影が物間の胴体を咥えてそのまま宙へ吊り上げた。

 悲鳴を上げて釣り上げられた魚のように暴れる物間寧人だが、カゲマルは微動だにしない。

 

 霊火は呑気に言った。

 

「無理だよ物間。咬合力は3000トン以上あるから」

 

「待ってくれ殻木さんそれってどれぐらいだい!?!?」

 

「廃棄用の乗用車を、段ボールくらいに圧縮しちゃう機械とか見たことない?」

 

「人体に向けていい力じゃないね!?!?」

 

「アレの5倍ぐらいかな」

 

「人体に向けていい力じゃないね!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 だから物間が元気に話せていること自体が結構な神業だ。

 感覚的には、鉄筋コンクリート解体用のアームで生卵の殻を割らずに持ち運ぶぐらい繊細な事をやっている。

 

 犬に咥えられた骨状態の物間は、恐る恐るカゲマルの頭を撫でた。

 返ってきたのが不機嫌極まりない低い唸り声だったため彼は慌てて手を引っ込める。

 

「本体に触れないと『コピー』出来ないんでしょ?」

 

「いいから出してくれよ!!!!!!」

 

「ワガママだなあ。ほらカゲマル、ペッして!!!」

 

 吐き出された物間は一度床で伸びたあと、ゆらりと立ち上がった。

 そのままびしりと霊火の事を指さして高笑い。

 

「フフフフハハハハハハハハハハ!!!!!! それで殻木さんはこのB組の我らがBバントに何の用だい!?!?」

 

「カゲマル」

 

「あ、待て待て待て待って待って良くないと思うなあそういうのは用事を聞いただけじゃないか僕は答えてくれても良くないかい!?!?!?!?!」

 

 迫るカゲマルから必死に距離を取る物間を横目に、耳郎響香に向き直る。

 親指で指し示して一言。

 

「何? 物間も楽器やるの?」

 

「ギター担当。まだ初心者だからウチが色々と教えてる途中」

 

「文化祭まで一か月も無いのによくやるね。というか問題児ばっかりだなこのバンド……」

 

「おー殻木!!! 何しに来たんだ?」

 

 今度は鉄哲徹鐵が入って来た。

 霊火は彼の肩に掛けられたストラトタイプのギターに視線を落とす。

 

「……鉄哲もギター担当だっけ? 経験あんの?」

 

「無い!!」

 

「B組も大変だね……」

 

 実に潔い返答だった。

 爆豪が鼻で笑い、耳郎は改めて霊火を見た。

 

「で? 本当に何しに来たの? 殻木ってA組の脚本家兼演出家兼制作全般でしょ? 忙しいんじゃないの?」 

 

「私が一人で出来る仕事はほぼ終わってるから逆に暇なのよ。B組があんまり苦しんでるようなら助け船でもと思っていたけれど―――」

 

 カゲマルを呼び戻しながら、少女は軽く肩を竦める。

 

「―――この分なら余計なお世話だったかな。マジで様子を見に来ただけ」

 

「ならいいけど……」

 

「でも一応見てみる? 私の『サンドボックス』」

 

 ―――――――――

 

「B組も『サンドボックス』を使いたいんだってさ」

 

「それはそうだよ霊火さん……」

 

 B組への技術提供が決定した霊火はちょっと嬉しそうに首を傾げた。

 バンドメンバーに向けて、A組にしたのと似た軽いデモンストレーションをしたら一瞬だった。

 気が付けば耳郎響香に両手を握られ、ぜひ貸してほしいと頼まれていたのだ。

 

 緑谷は慈愛に満ちた声で言った。

 

「でも嬉しそうだね霊火さん。そんなに反応が良かったんだ?」

 

「まあ必要とされるのは悪い気はしないよね。……これでA組が持つB組へのアドバンテージはかなり無くなっちゃったけど」

 

「誰も気にしないと思うよ霊火さん。ヒーロー科全体で文化祭を盛り上げることの方が大切だよ」

 

 そういう考え方もあるのかと、霊火は素直に感心した。

 技術なんて皆に使ってもらえる方がいい。B組との勝負はあくまでクオリティを上げるためのスパイスで、厳密に勝敗に拘る必要なんて全くないのだ。

 

「そういえば芦戸さんがそろそろ話したいって言ってたよ。台本の練習はしなくていいのかって」

 

「基本的に本人役だからね。役作りの時間は必要ないつもりだけど、それでもどこかで立ち稽古とかはしなきゃだね。結構大変だと思うよ」

 

「うーん……つまり、僕たちはいつもの自分を意識して台本を読めばいいの?」

 

「一応それで話は成立するようにしたつもりだけど、それでも練習は必要かな」

 

 ミュージカルにはミュージカルの話し方やルールがあるため、そこの練習は必須だ。

 他にも立ち位置といい台詞といい、演者が覚えないといけないことは何かと多い。

 

「先生役の出久くんは落ち着いた喋り方とか大人っぽい所作が必要とされるし、轟とかは台本の都合でかなりキツめの性格になっちゃってるし、ポニーは流石に覚えることが多いし……」

 

「……なんか霊火さん、明るくなったね」

 

 霊火は思い切り咳き込んだ。

 

 




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