殺人現場より、愛をこめて   作:トリスメギストス3世

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018:ふわり

 雄英高校の正門前には、騒動の余韻が残っていた。

 日に照らされた校舎を背に、各所でプロヒーローたちが集まり事態について確認を行っている。

 その中で、根津と相澤の二人は正門――通称『雄英バリア』の前で言葉を交わしていた。

 

「オールマイトは帰したよ。これ以上メディアを喜ばせる必要はないからね」

 

「その方がいいでしょう。あの方は良くも悪くも目立ちますから」

 

 『悪くも』の割合が大きそうだなと根津は思った。

 

 雄英高校のセキュリティは堅牢だ。

 特に施設の入り口となる雄英バリアは、学生証や通行許可IDを持たない者が接近すれば即座にゲートを閉じるようになっている。

 もちろんバリア自体の強度も銃火器や爆発物から、あらゆる”個性”攻撃まで想定された特別性だ。

 

 そして校舎の正面口には二つの集団が分けられていた。

 

 一方には拘束されたチンピラたちが座り込まされている。多くが軽傷を負い、中には意識を失っている者もいる。

 警察のサイレンが近づいてきており、間もなく彼らの身柄が移されることだろう。

 そして反対側では、無謀にも侵入を試みたマスコミたちが集められていた。カメラマンやレポーターたちは決まりの悪そうな顔でヒーローからの事情聴取を受けている。その足元には、没収された取材機材やカメラが山になっていた。

 

 マスコミまでここに留めている理由は、なにしろ半分がマスコミで半分が敵という編成内容の、前代未聞の襲撃事件だったからだ。

 おそらくマスコミ側にも事情聴取が行われる事だろう。相澤個人としてはそのまま逮捕してほしいぐらいだった。

 

「それで……これはどういうことなんです?」相澤は正門に手を触れながら、最大の疑問を口にする。

「ミッドナイトさんから雄英バリア自体は開かなかったと聞いているのですが」

 

 ペタペタと触っても雄英バリア自体には傷一つない。

 しかし敵もマスコミも校内には侵入出来ている。

 事態の発生から少し遅れて現場に来た相澤には、その辺りの事情が良く分かっていなかった。

 

「その情報は正しいよ。どうやらワープのような"個性"を使ったものがいるらしいね。 マスコミの彼らが言うには門の前に突然現れた黒い靄のようなものを通り抜けたら、気がついたら校内にいたとのことだ」

 

「ワープ……(ヴィラン)の"個性"として最悪ですね。 それでマスコミを雄英内に入れ、同じタイミングで(ヴィラン)も送り込んだという事ですか」

 

 少しの間二人の間に沈黙が下りる。

 そして根津が、今気が付いたというように口を開いた。

 

「あ、そういえばブラド君と黒瀬君を知らないかい?  彼らもここに呼ばれているはずなのだが」

 

「……そういえば見当たりませんね。今は……彼らは確かUSJで救命訓練の授業だったはずです」

 

「ああ、オールマイトが出る予定だった授業だね。 USJはここから少し遠いとはいえもうとっくに着いてもおかしくない時間だ。遅れるにしても連絡ぐらいは……」

 

 そこまで根津が話して、ふと、二人の教師は顔を見合わせる。

 

 相澤は一つずつ状況を整理する。

 ワープの"個性"を持つ敵がいる。USJで授業中のブラドキングと13号に連絡が取れない。その授業は本来ならオールマイトが担当するはずだった授業だった。

 大仰な割に実態は路地裏レベルのチンピラしかいない正門への襲撃。その対応にプロヒーローのほとんどがこの場所に集結してしまっている現状。

 

 そして二人の脳内に同じ疑問が浮かぶ。

 

 そう、殆どの教員がここにいる中、USJの方では何が起こっているのだ?

 

「相澤先生!!!!」

 

 背後から聞き覚えのある声が聞こえ、相澤が振り返ると二人の生徒が正門前に駆け込んできた。

 片方はA組の学級委員長、取蔭切奈だ。その隣には鎌切尖もいる。二人とも相澤の受け持つ生徒だが、その表情には強い焦りが滲んでいた。

 

「相澤先生!  あの後集合と点呼をしたけど、霊火ちゃんと緑谷の姿が見当たりません!」

 

「何!?!? どういうことだ!?」

 

「皆で探したけどどこにもいないんです!!」

 

 A組の生徒の失踪。更に加わる不穏な要素にいよいよ危険な匂いがしてくる。

 そして教員たちが具体的な行動に出る直前で、答え合わせの時間がやってきた。

 

「すみません!! 緊急です!」

 

 新たな叫び声が響き渡る。

 全身をアーマーで覆った眼鏡の男子生徒が、猛烈な勢いで駆け込んでくる。

 そのコスチュームは泥まみれであちこちが大きく損傷している。まるで激しい戦闘を潜り抜けてきたかのような有様だ。

 

「B組の飯田……!? 何があった!! 状況は!?」

 

 そしてB組の委員長は、息を切らしながら切迫した声で告げた。

 

「USJでB組が(ヴィラン)の攻撃を受けています!!」

 

 ――――――――――――――――――――

 

 殻木霊火の戦闘能力は、実はそれほど高くない。

 

 その理由はいくつかあるが、第一に霊火が相当な虚弱体質であることがあげられる。

 脳無としても比較的改造度合いが軽く、身体の強度は同年代の一般人にすらも劣る。

 そもそも保持する"個性"の中に運動能力が下がる『摂生』がある時点で、設計の段階から直接的な戦闘要員を想定していないのだ。

 

 生来(?)の"個性"『死因』も戦闘能力としては制限が多い。

 一つの死因からたった一つの鬼火しか生成できず補充効率が極めて悪い上、鬼火は対人では効果が著しく低下するという致命的な弱点を持つ。

 

 つまり、普通に戦うならば常闇踏陰の『黒影』轟焦凍の『半冷半燃』爆豪勝己の『爆破』そして緑谷出久の『超パワー』辺りの真っ当な戦闘型”個性”の方が圧倒的に強いのだ。

 『死因』で戦うのは例えるならば虫眼鏡を使って相手を殴っているようなもので、本来のスペックを全く発揮出来ない。霊火に言わせれば『死因』の本領は死亡原因の解析の方にあるのだ。

 

 こんな風に、どこまで行っても殻木霊火は非戦闘員だ。

 本人が強くなる必要は無く、本人よりも強いものを作ってそれに戦わせればいい。

 殻木霊火はそういう道を選んだ研究者で、このあたりはドクターの考え方を真っ当に受け継いだといえる。

 

 とはいえ、霊火はこれでも(ヴィラン)だ。 潜った修羅場の数や経験だけなら既にベテランに片足を突っ込んでいる。

 例えば、『70メートル先には中心から真っ二つに折れた沈みかけのクルーザーがあり、目の前には3人の敵が迫っている』程度ならば通常業務の圏内だ。

 

「そこのガキ!! ぶっ殺してやブボボボボボ?!?!?!?!?!?!?!?!」

 

 霊火がぱちりと指を鳴らすと、鬼火が直撃した血気盛んなチンピラ3人が唐突に溺れ始めた。

 

 『溺死』

 水辺ならばどこでも存在するありふれた死亡原因の一つでありながら、極めて苦しい死に方の一つでもある。

 極大の恐怖と凶悪なパニックに呑まれて極限までもがき苦しむ最期の数分は、様々な死に方を見てきた霊火基準でも最悪な部類の死因だ。

 

 そんな鬼火のヒット時の効果は呼吸困難を引き起こすというものだ。具体的には『地上で溺れる』という実に奇妙な現象が起きる。

 初見だと相当ビックリするだろうが、冷静になれば普通に耐えられる程度でしかない。大した時間稼ぎにもならないだろう。

 

 しかしこの鬼火、水中にいる対象に当たると少々話が変わってくる。

 そう、相手がどんなに泳ぎに優れた名人であっても『水中で溺れて呼吸困難』までがセットになるのだ。

 こうなってしまうと危険度は地上版とは桁違いだ。水中で姿勢を崩して、一瞬とはいえ泳げなくなり、呼吸困難に陥る。

 肺の中に水が入り込み、判断能力を取り戻せないままそのまま本当に溺れて死んでしまってもおかしくない。

 

 目の前の(ヴィラン)を沈めて沈黙させた霊火は、サポートアイテムの斧をバトントワリングのように軽やかに半回転させた。

 その動きに合わせるように、カンテラの中で新たな鬼火が燃え上がる。更に斧本体の両端からもオレンジ色の輝きが漏れ始める。まるで長柄の内部で炎が燃えているかのような光り方だ。

 

 そして斧をくるりと後ろ手に回すと、霊火はその長い柄に横座りするような体勢を取った。

 

 次の瞬間、ふわり、と。

 

 少女の足が地面から離れた。

 斧が霊火を乗せたまま、魔法の箒のように宙に浮いたのだ。風にあおられたコスチュームのネコミミフードとスカートが風に揺れる。

 

「おい、飛べるのかよ、このガキ!」

 

 仲間がやられたのを見て接近して来た敵の一人が霊火を見上げて荒々しい声を上げる。

 霊火は石突の部分を前に水上5メートル程度の高度を維持してぴゅーんとクルーザーの方向に飛びながら、敵を見下して笑った。

 

「ふーん、飛べない雑魚がいるね」

 

 無意味に煽る霊火だが、実はそれほど余裕はない。

 

 霊火の『飛行』能力の絡繰りはこのようなものだ。

 

 まず、『死因』の鬼火には特殊な性質がある。実は、鬼火は蝋燭やランプといった火をつけるタイプの照明器具に灯すことができるのだ。

 鬼火は燃焼反応ではないため蝋燭が溶けることも油が尽きることもないのだが、霊火がいなくても明るく燃え続ける。

 全くの余談だが、鬼火は長く見ていると精神の調子が狂うので光源としての利用には向かない。

 

 さらに、霊火は出現させた鬼火を自在に操れる。指鳴らしをして標的に飛ばしたり、自分の周りを周回させたりといった使い方だ。

 そしてこれは照明器具に灯された鬼火にも適用される。これで蝋燭に灯した鬼火を動かした場合、蝋燭自体も鬼火に引っ張られて動くのだ。

 

 この性質を活かして作られたのが、彼女のサポートアイテムの斧だ。

 というより元々霊火が開発と設計をして敵活動で使っていた物を被服控除の時に設計図を送り付けてコスチュームに盛り込んだという経緯があり、使用期間はなんだかんだで3年を超える。

 

 この斧には括り付けられた通常のランタンに加えて、長い柄の内部に鬼火を灯せる仕組みを備えている。その二つの鬼火を操作することで、霊火は斧そのものを手を触れずに動かすことが可能になる。

 それに乗ることで霊火は『死因』による飛行を実現するのだ。

 

 しかし実際のところこの飛行方法には多くの欠点がある。

 まず、速度面は最大速度、加速度共に原付程度だ。さらに重い物を載せるとその分だけ速度は著しく低下してしまう。

 更に重心が極めて不安定で細心の注意を払ってバランスを取る必要がある。誰かを同乗させるのはまず不可能で、ちょっとした衝撃でも墜落の危険があるため、戦闘での使用は非常にリスクが高い。

 おまけに霊火自身が割と高所が苦手だった。霊火は空を飛ぶことが根本的に大嫌いなのだ。

 

 そもそも空を飛ぶという使用法に関しては『雲』がほぼすべての面で上位互換だ。故にこの飛行方法は複数”個性”が何らかの事情で使えないときのための代替としてしか使わない。

 

 そんな曲芸飛行で水面からの(ヴィラン)の高圧水流攻撃を器用にひゅんひゅんと躱しながら、黒猫フードの魔法少女は空路であっさりと壊れたクルーザーに辿り着いた。

 

「おやおやおやおや空を飛んできた君は誰だい? もしかして僕らを助けに来ちゃったって感じかなあ!?」

 

「なんだどうした私たち初対面だよね命の危機でテンション壊れてない?」

 

 クルーザー上に降りると、焦っているのか笑っているのか泣いているのかよく分からないテンションの金髪の生徒がすごい勢いで馴れ馴れしく話しかけてきた。

 霊火に縋りついてくる手をひらりと躱しながら周りを見回す。このクルーザーに取り残されていたのは遠目で見たら3人だったが、メンバーは欠けてはいないようだった。

 

「いきなりごめんなさい、物間ちゃんも悪気はないのよ」

 

「マジでワリい知らない人……俺らもいきなりここに飛ばされてイマイチ状況が掴めてねーんだ。 それに梅雨ちゃんがこの船に俺らを放り込んでくれてなかったらとっくに全員死んでた」

 

 カエル顔の女の子とバンダナを巻いた男子生徒に謝られてしまった。

 バンダナの生徒が霊火に話しかけながらもクルーザーの亀裂が入った部分に手を当てると、どういう理屈かその部分が結合する。霊火が改めて周囲を見ると、このクルーザーのあちこちに同じ補修の跡があった。

 『物間ちゃん』と呼ばれていた金髪の生徒もバンダナ生徒と同じようにクルーザーを補修し回っていた。

 

(同一”個性”……? なるほど、損傷具合の割にクルーザーが中々沈まないなとは思っていたけど、壊された傍から”個性”で修復を続けていた感じ……?)

 

 霊火は内心感心する。

 そしてカエルの女の子――梅雨ちゃん?に確認を行った。

 

「ところで梅雨ちゃん……ここにいるB組はこの3人で全員?」

 

「? ええそうよ。 今は皆この船の上にいるわ」

 

「了解。 それを確認したかっただけだから」

 

 ――――――――――――――――――――

 

 水難ゾーンの水際で緑谷出久は戦っていた。

 相手は裸の少女だ。手にしたナイフが不気味な反射光を放つ。

 

 緑谷も同年代の女性が裸であることはものすごく気になっていたが、今は流石に思春期を爆発させる余裕も無かった。

 というより初撃で頬をザックリやられて、血が首筋を伝ってコスチュームを濡らしていく感覚が気になって仕方がない。

 

「すごいねえ君、カッコイイねえ」

 

 少女は楽しそうに笑いながらとととんと軽やかにステップを踏んで接近し、素早くナイフを振るう。

 顔面狙いの横薙ぎの一閃を咄嗟にバク転を繰り返して回避して距離を取る。

 

 緑谷にとってこれはヘドロ事件以来二度目の実戦だ。しかし緑谷は自分があの時に比べれば意外と冷静に戦えていると感じていた。

 やはりオールマイトの力は偉大だ。まだまだ使いこなせているとは言えないが、実戦でも取れる選択肢が多く冷静に動ける。

 緑谷は全身に緑色のスパークを纏いながら、再度対峙する敵を見定めようとする。

 

「また……!!」

 

 が、その姿が視界から消え失せる。これでもう四度目だった。

 慌てて周囲を見回して姿を探す。このトガという敵、どういう理屈か少しでも目を離すと姿を見失ってしまうのだ。

 最初は透明化のような"個性"かと思ったが、そうなると先ほどの変身能力との整合性が取れない。変身能力の応用の可能性も捨てきれないが……。

 

「ここです」

 

 そして突然、背後から強い力が加わり、緑谷は前のめりに倒される。

 冷たい地面の感触が頬を打つ。遅れて自分が、背後から押し倒されたことに気が付いた。

 

「……え!? 」

 

 真後ろ。全く想定していなかった方向から接近され、地面に押し付けられたまま両腕を背中側で押さえつけられた。

 慌てて力を込めようにも既に全く身動きが取れない。そのまま首筋に冷たい刃物を押し付けられる。

 

(いつの間に後ろに!? というかマズイ!!!!!)

 

 詰み。拘束された体は少しも動かせず、緑谷にはこれ以上打てる手が無い。

 首に押し付けられる冷たい金属の感触を強く意識する。

 緊張で呼吸が荒くなる緑谷の耳元で少女が甘い声で囁いた。吐息が耳たぶをくすぐる。

 

「ねえ、お名前を教えて?」

 

 意図の分からない質問だ。

 戸惑いもあるが、他に取れる選択肢もない。緑谷は時間稼ぎのつもりで答える。

 

 「……緑谷出久」

 

 「イズクくん……イズクくんって言うんだ!! 私、トガヒミコって言うの! お友達になろう!」

 

 その声色に全身総毛立つ。強烈な価値観の違いを本能が感知し、強烈な忌避感に晒されて硬直する。

 そして返事も出来ないまま、トガは勝手に一人で話を続けていく。

 

 「ねえ、イズクくん。 一緒にいたあの女の子、好き?」

 

 質問の意図を理解できず、一瞬緑谷の意識が空白で満ちる。

 それを聞いてどうするのだと思うが、やはり今の状況だと答えるしかないだろう。

 言われるがままに一生懸命に考えて、緑谷は結論に達した。

 

「彼女は……僕の恩人だ。 霊火さんに手伝って貰って僕はここまでこれたんだ」

 

 これは間違いなく本心だった。

 トガにもそれは伝わったのだろう。彼女はふーん……と呟いた。

 

「信頼してるんだね。 でも……」

 

 ズヴァチィッッ!!!!! と。

 

 隣接する水難ゾーンから凄まじい音が響き渡った。

 

 日常生活ではまず聞かないような大電流の轟音に緑谷が体を強張らせる。

 一体何を見たのか、背中に乗るトガも「うわあ……」と困惑したような声を漏らした。

 

「……そこまでするんだ」

 

 ――――――――――――――――――――

 

 緑谷出久は殻木霊火の事を甘く見ていた。

 もちろん、彼はいつも隣にいた少女の正体を知らないのだからそれは当然の話なのだ。

 しかし起きてしまった事態については取り返しがつかない。

 

 そう、世界最悪レベルの負のギフテッドに『お願い』するというのは、こういう事なのだ。

 

「(ヤバいちょっとやり過ぎた?)」

 

「ちょっと君ぃ!?!? いまボソッて小さくなんて言った!?!?!?!?」

 

『感電死』

 人体への通電で発生する死。

 感電自体が神経のマヒ、火傷、壊死、臓器不全、様々な悪影響を出す凶悪な事故ではあるが、やはり一番危険なのは心臓や中枢神経に通電したことによる心停止だろう。

 

 その鬼火を人ではなく、水面にあてる。すると対物の威力で水に大電流を流せてしまうのだ。

 飛行機を『転落死』させるのと同じ、途中に物体を噛ませることで莫大な威力を実現する霊火の必勝パターンの一つである。

 

 問題があるとすれば二つ。

 一つ目は無差別放電な事。霊火も水に触れていたら当然感電する。

 わざわざ嫌いな『飛行』を使ってまでもクルーザーに乗り込んでB組の人数を確認したのもそのためだ。感電攻撃を仕掛けた後に『実は水中にも同級生がいました』とか言われると物凄く面倒な事になる。

 

 二つ目は威力が高すぎること。

 計算上、感電そのものでは心停止させるほどのものではない……はずだ。しかし繰り返すようだが敵は水中にいる。

 水中にいるという事は、うっかり気絶なんかしちゃったらそのまま水面にプカプカ浮くか、水の底に沈む事になる。筋肉が弛緩して泳ぐことが出来ない場合も同じだ。

 この際、プカプカ浮かんでたとしても水上に呼吸口を出せなければそのまま溺死コースだ。

 

 まさかの対人で電気漁業を行ったビリ漁師の殻木霊火は、遠方の緑谷出久にのしかかるトガヒミコに交通事故系の鬼火を指鳴らしで差し向ける。

 そして水面にプカプカ浮かぶ白目をむいた(ヴィラン)を指さして、B組のヒーローの卵たちにこうお願いした。

 

「悪いけどちょっと今から救助訓練(レスキュー)してくれない? USJって事は元々そういう授業でしょこれ?」

 

「助けてくれたのはありがたいけどクレイジーよあなた」

 

 そう言い残して梅雨ちゃんと呼ばれていた女の子と、金髪の男子生徒が水中に飛び込んでいった。

 

 遠目に緑谷たちを観察すると、鬼火に弾き飛ばされたトガはクルーザーの状況を見て、撤退する判断をとったようだ。水難エリアから中央広場に走っていくのが見える。

 緑谷はトガを追いかけていたが、あの感じだとおそらく途中で見失うだろう。

 

 逃げるトガヒミコを見ていると、彼女は100メートル先から霊火の方を見て満面の笑顔で笑いかけてきた。

 そして両手を口に当ててメガホンのようなジェスチャーをして、声に出さずに口の形だけでこう伝えてきた。

 

か・た・お・も・い

 

「は? なんで私煽られたの?」

 

「うおおい! 何にキレてるか知らないけどお前も手伝ってくれ!! 俺は急いでこのクルーザーを修繕するから!!」

 

「私壊す専門なんだよねえ……」 




ヒロアカURのUSJマップ凄い役に立ちました

感想や評価ありがとうございます。大きな励みになっております。
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