殺人現場より、愛をこめて   作:トリスメギストス3世

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029:プライドバトル

 選手用の控室で霊火は手持ち無沙汰に次の試合を待っていた。

 窓から差し込む陽光が白い壁に長い影を落としている。

 

 壁に掛けられた時計の秒針が規則正しい音を刻み、観客の歓声が遠くから聞こえてくる。

 居心地の悪い静寂に耐えきれず霊火が液晶のリモコンへ手を伸ばしたとき、控えめなノックの音が響いた。

 

「…………………………霊火さん、入っても大丈夫?」

 

「どうぞ?」

 

 ドアから緑谷が顔を覗かせる。

 ホッとしたような表情だった。まずは一勝したことに安堵していた。

 そしておそらく、霊火に会うまで口を開かないという教えを律義に守っていたのだろう。

 

「お疲れ様出久くん。 まずは初戦の突破おめでとう!」

 

「ありがとう霊火さん……また助けられちゃった。今回僕が勝てたのは本当に霊火さんのおかげだよ……」

 

「今回に関しては本当に私のおかげだけれども……」

 

 何しろ”個性”が初見殺し過ぎる。騎馬戦前に心操がしくじっていなければ緑谷どころか霊火や爆豪ですら負けていただろう。

 それに霊火が提案したパントマイムというのも、終わってみればいい対処法だったと言える。傍から見るとややシュールだったが。

 

「……ポニーちゃんと飯田の対戦見なくていいの? カードが面白そうだから私も見たいぐらいなんだけど」

 

「それは気になるけどまずは霊火さんに会っておかないとって思って……。 もし霊火さんが緊張してたらって思ったんだけど余計なお世話だったかな……」

 

「あーごめん超緊張してるよ私。うん。来てくれてありがとう出久くん!!」

 

 彼は困ったように笑って霊火の傍に座った。

 そのまま霊火の手を両手で包む。

 澄ました顔の少女が内心で動揺しているのを知らぬまま、緑谷は車いすの少女をじっと見つめた。

 

「頑張ってね!! 霊火さん!!」

 

「……これをするのは私限定にしてほしいかも」

 

「霊火さん以外には緊張して出来ないよ……」

 

 ――――――――

 

『次の対決!!!!』

 

『皆様お待ちかね!!!! 雄英高校入試テスト全科目満点の天才少女!!!! 一週間で作り上げた極悪車いすを操る病弱アイドル!!!! 殻木霊火!!!!』

 

『対』

 

『入学試験ギリギリ!!!! 学内でも既に赤点数回!!!! 障害物競走での集団感電事件と騎馬戦でのサポート科殺しで悪名は十分!!!! スパーリングキリングボーイ!!!! 上鳴電気!!!!』

 

「ちょ、ちょ酷くね!?!?!? 何もこんな大舞台で暴露することないっしょ!!!!」

 

「え、私そもそも入試満点だったの?」

 

 グラウンドに出ると霊火は注目の的だった。

 霊火が観客席に手を振ると、それに呼応するかのように歓声が大きくなるのはちょっと面白い。

 

 Bzzzzz……と火花の音が響く。

 振り返って見れば、上鳴はやや不満そうに霊火に威嚇していた。

 

 上鳴はニヤリと笑った。

 

「でもさ、悪いんだけど殻木は俺との相性悪くね? その車いすも結局は機械っしょ?」

 

「だからサポート科と同じように感電で楽勝って? ああ……そういえば言伝を頼まれてたんだ。サポート科の皆がね、アイテムを壊された敵討ちを頼むって」

 

 少女は細い指先を口元にあてて、目を細めて妖しく嗤った。

 

「……ねえ、もしかしてだけど、貴方のその”貧弱”でえ、”単調”でえ、ビカビカ光る”下品”な放電でえ……本当に私の車いすを壊せると思っていらして?」

 

「……………は? え、マジで言ってる? …………お前ガチで後悔すんなよ!!!! 本気でぶっ壊す!!!!

 

 

 

『両者気合は十分!!!! さあ、START!!!!』

 

「無差別放電!!!!130万」

 

「えい」

 

 霊火の対上鳴電気の作戦はあまり複雑なものではなかった。

 

 上鳴にはああいったが『帯電』はとても優秀な”個性”だ。

 そして霊火の『帯電』に対する相性はあまり良くない。上鳴の言う通りで、霊火の車いすも機械である関係上大電流には弱いのだ。

 サポート科のアイテムほどガードは薄くないにしても出来れば喰らいたくない攻撃ではある。

 うっかり何かの電池が吹っ飛んだりしたら大怪我に繋がるし。

 

 だから敢えて煽った。

 上鳴電気のプライドが一番傷つくような形で、対戦相手の思考を誘導した。

 車いすを”個性”で壊させることだけを考えさせた。 

 

 しかし実際のところは上鳴電気が警戒するべきは元々有利な車いすではなく、霊火本人の方なのだ。

 

 試合開始と共にパチリと指を鳴らした。と同時に上鳴の胸に着弾する。

 

「ウェ!?!?」

 

 6つの鬼火をシンプルに。何の工夫もなくただ最速で。

 バイク、軽自動車、トラック、ダンプ、電車、電車。6つの交通事故分を一度にぶつける。

 

 ドン!!!!

 

 それこそ交通事故のような鈍い音が響き、”放電”発動前の上鳴電気の身体が宙を舞って一瞬で場外に吹っ飛んで行った。 

 

 ”早撃ち”は”個性”絡みで一番訓練した分野である。 

 その時設定した目標は『相手が拳銃を取り出したのを視認してから、引き金が引かれるまでの間に拳銃を破壊』だった。

 (ヴィラン)としてやっていくにはこれぐらい出来ないと話にならないのだ。

 

 そして上鳴の放電攻撃は一瞬の溜めが必要だ。

 上鳴本人もあまり気にしたことが無い弱点だろうが、少なくとも霊火にとっては十分すぎる時間だった。 

 

『瞬殺!!!! 敢えてもう一度言おう!!!! 瞬殺!!!! 自慢の車いすを使うまでも無い!!!! 指鳴らし一つで相手を吹き飛ばし、何もさせずに完全勝利!!!!』

 

『殻木の口車に乗せられたな。上鳴が一番気にしなければならないのはあの車いすではなく『呪い火』だったが、殻木の話術で上手く意識を逸らされた』

 

 ――――――――

 

「ちょっとやり過ぎたかも私。 悪いことしたな……」

 

「あれはエグいよ霊火さん……!!!! 強い”個性”を持つ上鳴くんに何もさせずに勝利した……あれが意識誘導の力と相手の動揺を誘うメリット……これは決して無視できない要素だ……もっとパターンを探って自分の力に落とし込む方法は……」

 

「こ、怖かったよ霊火ちゃん……え、これ仮に私が対戦相手だったらどんな事言ってたん?」

 

「私も出会う人全員にあれを言う訳じゃないよお茶子ちゃん。 上鳴には効きそうだから試してみただけだし。 ……まあでも折角だからお互いに決勝まで出たらやってあげるね☆」

 

「うわあ全く楽しみじゃない……私、普通に滅茶苦茶落ち込む自信ある……」

 

 和やかに話しているように見えて、麗日はかなり緊張した様子だった。

 首をこくりと傾げて麗日を覗き込み、霊火は提案する。

 

「……お茶子ちゃんも切島に何か言ってみる? 私彼のこと良く知らないけど一緒に何言えばいいか考えるよ?」

 

「……ううん。大丈夫。ありがとう霊火ちゃん! 今回は自分の力で戦ってみるよ!」

 

「まあお茶子ちゃんはこういう方針は似合わないかもね……あとそこのブツブツ言ってる人も【挑発の効果】なんてメモしないで? 出久くんにこういう盤外戦術は似合わないよ。どちらかというと爆豪の芸風でしょこれ」

 

「か、かっちゃんは確かに凄い似合いそうだけど……」

 

 実際、挑発というのは決して無意味なスキルではない。

 効果的な場面は確かにあって、上手さ下手さも明確にある立派なテクニックなのだ。

 

 プロヒーローの中にもやたらこの手の挑発が上手い連中がいて、それがそのまま人気になってしまう例もある。

 とは言え人畜無害な緑谷や麗日に合うかと言われるとちょっと微妙だ。

 

『さあ次の試合だ!!! 盛り上げてけぇ!!!!』

 

『優秀!! 優秀なんだが拭い切れぬその地味さは何だ!!!! 瀬呂範太!!!!』

 

『対』

 

『堂々たる優勝候補!!!! 同じくヒーロー科!!!! 轟焦凍!!!!』

 

「霊火さんはどっちが勝つと思う?」

 

「流石に轟だと思う」

 

『レディぃぃ!! START!!!!』

 

 試合開始の合図が鳴り響き、瀬呂が即座に動き出した。

 

 彼の"個性"『テープ』は、これまでの競技でその実力を証明してきた優秀な”個性”だ。

 障害物競走では難なく『ザ・フォール』を乗り越え、騎馬戦では移動手段から相手の拘束、鉢巻の奪取などその応用力の高さを見せつけていた。

 

 彼の両肘から放出されたテープが空中で舞い、一瞬で轟の体を絡み取った。

 そのまま器用に対象の遠隔投げに移行する。

 

「あ、上手い」

 

 ”個性”の巧みさと狙いの良さに思わず声が漏れる。

 

『場外狙いの早技!!!! 正直最善の選択では!?!?』

 

 ……しかし敢えて言うならば、相手が悪かった。

 

「悪ィな」

 

 キィン!!!!!!!!!!!! というガラスにヒビが入ったようなサウンドと共にグラウンドに高さおよそ50メートルの大氷塊が出現し、哀れな瀬呂はなすすべなく全身氷漬けにされてしまった。

 結果から言うと、これで終わりだった。

 

 轟の極大氷結攻撃に流石の霊火も言葉を失う。

 

(なんだこれ、本当に第5世代か……⁉ 前々からイカれた出力だとは思ってたけれど……!!!!)

 

「瀬呂君……動ける……?」

 

「動けるハズねぇでしょ……クソ……痛え……」

 

「瀬呂君戦闘不能!! 轟くんの勝利!!!!」

 

 霊火は呆然と首を振って緑谷の方を見た。

 空気が物理的に冷たかった。

 

「え、次は私があれと戦うの?」

 

「……頑張ってね霊火さん」

 

 ――――――――――

 

『さて次の試合は~~!!!! こいつらだ!!!!』

 

『中学からちょっとした有名人!!!! 堅気の顔じゃねえ!! ヒーロー科爆豪勝己!!』

 

『対』

 

『ていうかなんだそのアイテム!! サポート科唯一の生き残り!! 発目明!!!!』

 

「本当になんだあれ」

 

「え、霊火さんも知らないの!?!?」

 

 麗日が控室に行ってしまったため返事が緑谷からしか返ってこない。

 ……そして何気に上鳴が帰ってこない。霊火がやったこととはいえあまり落ち込んでいないといいのだが。

 

「……あの発目って子、サポート科の一年生で唯一私に”呑まれなかった”子なんだけど、それにしても初戦で爆豪ってのは運が無いね」

 

「へえ……優秀な人なんだね。 そう言えばあの人だけサポート科なのにヒーロー科の騎馬に紛れてたけれど……」

 

「まあサポート科でもちょっと浮いている子ではあるよ。私かなり工房に入り浸ってたはずなのにあのアイテムは知らないし、私たちとは別の場所で作ってたのかもね」

 

 グラウンドには、一台の異様な姿のパワードスーツが姿を現していた。観客席が動揺でざわついている。

 

 二本の脚で立つその姿は大まかには人型を模したシルエットをしている。頭部は半球のヘルメット。

 表面は艶消しのメタリックで、所々に配管やケーブルが露出している様子はどこかレトロフューチャーな印象がある。

 

 特徴的なのはその両腕だ。指を持たない丸みを帯びたボクシンググローブのような形状で明らかに打撃に特化した設計。

 関節部分には古めかしい油圧シリンダーが露わになっており、攻撃的ながらスチームパンクな雰囲気だ。

 

 動くたびに機械音が響き関節から蒸気が漏れ出す。

 そしてその佇まいからは確かな存在感と威圧感が漂っていた。

 

「でもデザインは凄くハイセンス。 私ああいうのが好きだよ。ロマンだよね」

 

「へええ……意外な趣味かも……霊火さんはレトロな物より近未来的な感じが好きだと思ってた」

 

「ヒーローコスチュームとかがまさにそうだもんね。……出久くんが私の趣味を見ていた事が一番の驚きなんだけど」

 

 霊火たちがそんな無駄話をしている間にグラウンドでは爆豪とパワードスーツ発目が相対していた。

 爆豪は闘志の中に『なんだこのロボット』とでも言いたげな顔をしていた。

 

『さあ第五戦!!!! START!!!!!!!!!!!!』

 

 爆豪の両手が同時に爆発し、推進力で一直線に加速。

 空気が揺れ砂埃が舞い上がる中、彼は一瞬でロボットとの距離を詰めた。

 

「死ねええええ!!」

 

 大きく振りかぶった右手から破壊的な一撃が繰り出される。

 頭狙いの最大火力。ここまでは霊火にも予想できた展開だったが、問題はここからだった。

 

 パワードスーツは流水のように滑らかな動きで、そのボディを後ろに反らして頭狙いの爆破を躱した。

 

 そして即座に反撃。ロボットの左アームがコンパクトに振るわれ、完璧な精度で爆豪の顎を捉える。

 放たれた左ジャブにギリギリ反応した爆豪は、咄嗟に自分から首を回すことで脳に伝わるハズの衝撃を逃がそうとする。

 

 爆破音が二発。

 空中をポップするようにロボットから距離を取った爆豪は、ステージの範囲内に着地。

 

 目の焦点が合わない彼は、そのままぐらりとバランスを崩して地面に膝をついた。

 霊火たちのいる観客席やプロヒーローたちに動揺の波が走る。

 

「……嘘でしょ? え、そんなに性能高いの?」

 

「かっちゃん!?!?」

 

『なにぃぃぃ!!!! サポート科発目明!!!! 最終種目でいきなり持ち出してきたパワードスーツで優勝候補の爆豪勝己をまずワンダウン!!!! 大番狂わせ発生だあ!!!!!!!!!!!!』

 

 ステージの端の爆豪に向かって、今度はパワードスーツが距離を詰める。

 重厚な装甲が軋むような音を立てながらも二足歩行で、予想の上をいく俊敏さで接近。

 

 爆豪との距離が2メートルまで縮まった瞬間、パワードスーツの背部から青白い炎が噴射される。

 突如として放たれた推進力でその巨体が弾丸のように加速。空気を切り裂くような音と共に破壊的な右ストレートを繰り出した。

 

 しかし爆豪の反応は更に速い。

 轟音と共に両手から爆発を放ち、膝をついた状態から一瞬で真上へと身を躱す。

 パワードスーツの拳が空を切る中、爆豪は空中でしなやかに一回転。アクロバットのような美しい軌道を描いてステージ中央に着地し、再度安全な距離を確保した。

 

 ロボットはその中が見えない半球状のヘルメットをぐるりと回し、捉え損ねた獲物を見た。

 

【お見事ですね爆豪くん!!!! 出来れば初撃で倒してしまいたかったのですが!!!!】

 

「マイクとスピーカー付き!?!?」

 

 いきなり会場中に響く大音響でしゃべり始めた発目に霊火はびくりとする。

 ステージ中央の爆豪は息を荒げながらも意識はハッキリとしているようだ。最初の左は何だかんだで直撃しなかったらしい。

 

『発目明、まさかのパフォーマンス開始!?!? 何をするつもりだ!?!?』

 

【ええ!!!! もちろん宣伝!!!! ここにいる皆さんにこのベイビーちゃんの魅力を余すことなく紹介いたしませんと!!!!】

 

 そのままぐるんと爆豪に向き直りファイティングポーズ。

 ととんと軽やかなステップで数メートルの距離を軽やかに詰め、左ジャブの連打を行う。

 

 爆音を響かせながら器用に回避を行うジャンプ中の爆豪に対して右アッパーで撃墜を狙うが、彼はそれを回避。

 BOOOOM!!!! と大きな反撃を顔面に貰うも、煙が晴れてみるとそのロボットには傷一つ無かった。

 

【見てくださいこの頑丈さ!!!! 俊敏さ!!!! そして何よりこの動きを!!!! 何とこれプロのボクサーから動きを読み取った半自動操縦!!!!】

 

 爆豪の反撃をダッキングのような動きで潜り抜けて左のロングフック。

 空中の爆豪にかすらせ、姿勢を崩すことに成功する。

 

【サポート科に来た殻木さんは言いました。 サポート科は本来何でも出来る存在だと。 準備をすれば必ず勝利に近づくと!! しかしサポート科はヒーロー科のように戦う訓練を受けていない!! なのでサポート科とヒーロー科の直接対決では、ヒーロー科に軍配が上がると私は予想しました】

 

「これ霊火さんも言ってたよね?」

 

「言った。 私もまさにそう思ってたの。……サポート科の前では敢えて言わなかったんだけど、発目は気が付いていたんだ」

 

【だからこその半自動操縦です!! 一介のサポート科に過ぎない私でも、ヒーロー科の方々と戦えるように!!!! この体育祭に勝つために!!!!】

 

 グラウンドで激しく動き回り爆豪と対等以上に渡りあうパワードスーツを見て、霊火は戦慄する。

 発目明――凄まじい発想と恐ろしい技術力を持った傑物だとは思っていたが、まさかここまでの存在だったとは。

 

 発目の言っていることは霊火の思想と全く同じものだ。

 才能たる”個性”を努力たる”技術”で追いつかせる。この考え方を霊火以外の他人から初めて聞いた。

 

 そして一介のサポート科をヒーロー科のトップ層に届かせるあのパワードスーツは、ハッキリ言ってやりすぎだ。

 半分オーバーテクノロジーの塊な霊火の車いすとはまた違う。発目に理解できる地に足の着いた技術を堅実に積み重ねて組み上げる”誰にでも扱える暴力”。

 

 ……そのパワードスーツが世界中の軍や国が数千億円を払ってでも手に入れる価値がある存在になってしまっていることに、彼女は気が付いているのだろうか?

 

【サポート科の皆さん!!!! 悔しいとは思いませんでしたか!?!? 急にヒーロー科から現れた一人の生徒にこれまでの常識を全部覆されて!!!! 物凄いものをポンポン作られて!!!! 雄英高校で最高の技術者がヒーロー科なんて悔しくないですか!?!? 私は悔しかった!!!!】

 

 ……発目明は、いつか殻木霊火に届きうる存在だ。

 サポート科の工房に最初に入ったその時に、霊火は間違いなく大虎の尾を踏んだのだ。

 

【こんなパワードスーツはサポートアイテムではありません。 これ単体で戦え過ぎます。 しかし私は!!!! これでもって雄英最強のメカニックが私であることを証明させていただきます!!!!】

 

「ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃうるせぇんだよ!!!!!!!!!!!! このダッサいお間抜けロボットで優勝だぁ!?!?!?!?!?!?!? 寝言は寝てから言えや!!!!!!!!!!!!」

 

 爆豪が吼えた。

 

 素早い動きでパワードスーツの背後を取る。

 相手の強力なパンチに付き合わず、爆破で背面のブースターを壊した。

 

「ボクシングつったなあ……!?!? それじゃあ背後への攻撃手段が無いんじゃねぇかよ!!!! あぁ!?!?」

 

 爆破を使った素早い空中機動で常にパワードスーツの死角に回り込む。

 パワードスーツが振り向こうとする度に爆豪は更に素早く位置を変え、影のように相手の背後に張り付き続ける。

 

 重厚なパワードスーツはその装甲の重さゆえに急激な方向転換が苦手だ。爆豪はその弱点を完璧に突いた。

 相手が振り向く前に次の位置に移動し、背後から絶え間ない攻撃を仕掛ける。

 

 ガシャガシャと軋む音を立てながらパワードスーツは必死に対応を試みるが、爆豪の動きは常に一手先を行っていた。

 

「おらぁ!!!!!!!!!!!!」

 

 バキンと、何かの金具が壊れた音がした。

 半球状のヘルメットが開く。素早く爆豪はパワードスーツの上に陣取ると、片手を内部に突っ込んで発目を引きずり出した。

 

「死ねぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 ドン!!!! と爆破音とともに発目を連れて飛翔。

 そのままぐるんと空中で三回転ぐらいすると、勢いそのままに場外のセメントに発目を叩きつけた。

 

 スタジアム中に響き渡る鈍い音に霊火は顔を顰める。

 

「……死んでないよねあれ」

 

「縁起でもない事言わないで霊火さん!!!!」

 

『発目さん場外!!!! 爆豪君二回戦進出!!!』

 

 

 ――――――――――

 

「ねえ出久くん。 先に謝っとくね?」

 

「え、何?」

 

「轟の事どうでもよくなっちゃった。うん。私はここで一番優れた技術者が誰かを、皆にちゃ~んと教えてあげないといけないかも」

 

「ちょ、ちょっと霊火さん!! 物凄く悪い笑顔してるよ!?!? え、もしかしてこれプライドの話だったりする⁉」

 

「ヒーロー科だから勝てた……? ハッ……だったら私は”個性”を使わないで轟を叩き潰してやる。 ”無個性”の”右脚大怪我”で”エンデヴァーの息子”をぶっ殺して、弱”個性”の風呂嫌いの小娘に本物の”技術”って奴を見せてあげないとね☆

 

「霊火さん!?!?!? ヒーローが絶対にやっちゃいけない顔してるよ!?!?!?」




霊火の『死因』はこの手のパワードスーツに超強いです。あとすぐ発火しないで

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