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「……ちょっと趣向を間違えたかな」
クリーム色の革張りシートがソファのように配置された、天井の低い空間だった。
赤い目の少女は一人でだらしなく、クッションの上に仰向けにひっくり返って独り言を呟く。
L字型に配置された高級感あふれる座席と低い天井が特徴的な空間だった。
席の間には柔らかな光を放つ間接照明付きのテーブルがあり、その上にはタブレット端末が置かれている。
壁にはそこそこの大きさの液晶ディスプレイが埋め込まれている。
足元には分厚い絨毯が敷かれ、外の世界とを隔てる窓には濃いスモークガラスが施されていた。
(8時間20万円……これを高いと捉えるか安いと捉えるかは人次第だと思うけれど……)
どちらにしても端金だ。それに金で買える安全は買った方がいい。
属性としては”お嬢様”というより”ギャングのボス”系統な極悪女子高生は一人でそんなことを思考する。
液晶の隅に書かれた数字列をただ漫然と眺める。そろそろ時間だった。
そして朝の8時。
霊火の指定した時間通りにドアが開いた。
私服姿(無地に『シーツ』とカタカナで書かれた、信じられないダサさのTシャツ)の緑谷が姿を見せる。
少年は少女を見つけ、目を剥いて叫んだ。
「れ、霊火さん!?!?!?!? これどういう事!?!?!? 一体何!?!?!?」
「え~……出久くんはお気に召さなかった?」
「お気に召さないも何も……!!!!」
霊火はシートの上で仰向けに寝転がったまま緑谷出久を出迎えた。
プラチナブロンドのセミロングが重力に従って座席から垂れ下がり、床に軽く触れている。
少女はひっくり返ったまま、逆さまの視界に待ち人を捉えると極めて雑な手招きをする。
呼び出し人に招かれ、緑谷は恐る恐るといった感じで霊火のいる空間に乗り込む。彼の背後でドアがバタンと閉じた。
緑谷はシートの端にちょこんと座る。全体的に不安感が全身からあふれ出していた。
小動物緑谷は一通りきょろきょろとした後、この空間で唯一理解の及ぶ対象について話し始めた。
「れ、霊火さん良く似合ってるねその洋服」
「え、そう? いつもとちょっと違う感じだけど……え、出久くんはこういうのが好みだったりするの?」
「ちょっと新鮮だなって。霊火さんの私服って可愛い系のイメージだったからギャップが……でもいつもの服も好きだよ!!」
今日の霊火は黒のカーゴパンツにオーバーサイズの白Tシャツに黒キャップ。
いわゆるストリートファッションだった。似合っているようなら何よりだ。
……今日この服をチョイスした理由には脚の怪我で下半身のシルエットが隠れる恰好をしなければならないという事情もあったりするのだが、それを緑谷に説明する必要は無いだろう。
服を褒められてご満悦な霊火はシートの上で伸びをすると、ぐるんと身体を回転させてシートの上に座りなおした。
「おはよう出久くん。本日もお誘いに乗ってくれてありがとうございます。……これ、ちょっと借りてみたけどどう?」
「霊火さんのメッセージの時間通りに家を出てみたら、マンションの前に全長8メートル以上ある真っ黒なリムジンが停まってた時の僕の気持ち分かる!?!?」
「本来パーティー用だからね。そこの液晶でカラオケも出来るみたい」
8人乗りリムジンのレンタルサービス(運転手付き)を利用した霊火は、興味なさげに肩をすくめた。
霊火達のいる所は運転席とは仕切られているため、防音設備付きのこの広い空間にいるのは二人だけだ。
そして当たり前だが、リムジンは車だ。霊火と緑谷を乗せて滑らかに走り始める。
何の説明も無くどこかに連れていかれ始めた少年は慌てたように叫んだ。
「ちょ、霊火さん!?!? これどこ行くの!?!?」
「京都」
「京都!?!?!?!?」
「ごめんうそだよ出久くん」
緑谷が仰天する。
少女は楽しそうに笑って、話を切り出した。
「ちゃんとした事情があるから安心して。……まあとにかく、体育祭優勝おめでとう出久くん。 後から映像で見たけどカッコよかったよ」
「あ、ありがとう!!!! 最初から最後まで霊火さんのおかげだよ……決勝の相手はかっちゃんで凄い追い詰められたけど、何とか100%スマッシュで勝てて……!!!!」
「あの怖い幼馴染に無事勝てたようで何より。 ……正直、私も地力はまだ爆豪の方が上だと思ってたから厳しいかなって思ってたけれど……上手に逆転出来たって感じだったね? ……腕は大丈夫?」
「う……うん!!!! ちゃんと『治癒』で治してもらったよ! 結構小言はもらったけど……。 あ、あれ? そういえば霊火さん、車いすは?」
緑谷がリムジンの中を見回すも、車いすがどこかに置かれている様子はない。そしてトランクに格納されているわけでも無かった。
霊火が緑谷に見せるため、カーゴパンツの右脚の裾を上げる。
金属製の骨組みから構成されたある種のギプスが晒された。
「あの”ギプス”を作る時についでに作ってたの。 歩行機能だけの半義足。万全とは程遠いけれど……」
「す……凄い……!! 体育祭で使ってたあのギプスだよね? これ世に出したら色んな人が助かるんじゃ……」
「パワーローダー先生が煩かったから、ちゃんと設計図書いて渡したよ。特許とか全部放り投げちゃったけれど、臨床試験とか色々手続きが通ったらいつか日本中の現場で見るようになるかもね」
あれはまさに根負けだった。
霊火としてはこれはあくまで自分用で世に出すつもりは全く無かったのだが、パワーローダー先生はそう思わなかったらしい。
安全性とか人体への長期的な影響とか色々あるだろうが、そのあたりの手続きに霊火が関与しないという条件で設計図を書きだして先生に渡したのだ。
その内エクトプラズムあたりがこれを着けることがあると思うと、少しおかしな気持ちになる。
「霊火さんって本当に凄いんだね……あの車いすもだけど、あんな才能があるなんて知らなかったな……」
「……正直あんまり趣味じゃないからね。ものづくりにプライドはあっても好きかと言われるとそうでもないというか……」
「……霊火さんはもう世間の役に立ててるのに僕はまだまだだな……もっと頑張らなくちゃ……」
昨日雄英体育祭に優勝したというのに、何故かネガティブを発動させるナンセンス緑谷に霊火は肩をすくめた。
彼は、『OFA』を受け継いだにも関わらず、すぐにオールマイトみたいになれない自分に焦っているところがあった。
こうやってすぐにネガティブを発動させてオールマイトや霊火に呆れられるのもいつもの事だが、今日の議題はまさにそれだ。
「……オールマイトがさ、『私はこの力を受け取った時から感覚で扱えてたからなあ』とかなんとか言ってたじゃん。私たち、その意味をちゃんと考えた方がいいと思うんだけれども」
「え? どういう意味? オールマイトは天才だったって話なんじゃ……」
「オールマイトが天才で出久くんは凡才だっていうのもちょっと乱暴な理論じゃない? それはあくまで仮定の一つであって結論ではないはず」
少女は人差し指をピンと立てて説明し始めた。
必要なのは理論だ。才能の差というのは確かに存在するが、
「そもそも私、オールマイトが天才だという所から懐疑的なんだけども……」
「えっ!?!?」
そこまで難しい話でもない。
ゴクリと唾を呑み次の言葉を待つ緑髪の少年に対して、赤い目の少女は今度は自身の髪先を指先でくるくる弄びながらこう伝えた。
「『OFA』って元をたどれば『譲渡』と『力をストックする』”個性”の混ざりものなんでしょう? ”個性”である以上、いくら古くても120年ぐらい前に発生したわけだ」
「……そうだね。それで間違ってないと思う」
「それじゃあオールマイトが受け取った時の『OFA』は今ほど強力な”個性”では無かったって考えるのが普通じゃない? だって120年の歴史の内、あの平和の象徴が大暴れしていた40年分の力のストックが無い状態でしょ?」
「あっ……確かにそれは……」
「逆に出久くんは、いきなり平和の象徴40年分が上乗せされた”個性”をポンと渡されたわけだ。そりゃいきなり扱うのは難しいというか……仮に十代の八木さんが受け取っても上手く扱えなかったかもしれないよ」
「……本当に霊火さんの言う通りだ。なんでこれまで気が付かなかったんだろう……?」
呆然とした様子の緑谷を見て、霊火はため息をついた。
何で気が付かなかったかというと、絶対にオールマイトが教育者として雑なせいだ。
あの平和の象徴はヒーローとしては超々一流ではあるが、”感覚派”と”師匠”という属性の食い合わせが悪すぎる。
海浜公園のトレーニング計画を見る限り、彼は筋肉を作ることに関してはやたら正確で効率的なのだが”個性”の扱い方の教授に関しては雑極まりなかった。
「……ほら、オールマイトは……その……結構色んな物を感覚でやって来た人だから……出久くんもあの人のいう事を鵜吞みにするのはちょっと気を付けた方がいいと思うよ……?」
「僕がオールマイトファンだからってそんなに気を使わなくていいよ……僕は霊火さんの事も信じているから」
「……そう思ってくれているなら、私も嬉しいな」
かなり複雑な気持ちになった霊火だった。
「オールマイトと言えばだけど、あの人まだ結構色んな事を私たちに話していないよ」
「え? そうかな……? 監視塔の上でちゃんと深いところまで話してくれていたような……」
「……100年ちょっとの歴史で9代目ってどれだけ継承スパンが短いんだよって思ったよ私。しかもその内40年は8代目が持っているんだよ? それ以前は多分、一人10年も保持出来ていないよ『OFA』」
「言われてみれば……」
「話はまさにそこ。過去に8人いる継承者から、オールマイトを除いた7人。貴方の先輩方について今からちょっと調べてみない?」
これは普段の『検死官』としての調べ物とよく似た作業だった。
霊火の『死因』は場所と名前が分かっていないと鬼火を抽出できないため、こういう調べ物をする機会もそこそこあるのだ。
「賭けてもいいけれど絶対オールマイトはこれを調べていないよ。……折角のお休みだし、私たちで情報収集でもしてみない?」
「……敵を知ることは有効な手段だし、『OFA』の制御のヒントもあるかもしれない……凄くいい案だ!! ……それで霊火さん、このリムジンはどこに向かっているの?」
「国立国会図書館」
永田町にある日本で唯一の国立の図書館だ。
納本制度により国の全ての出版物が集められる図書館で、故に調べ物には最適な場所である。
「私、体育祭のバカ騒ぎで疲れちゃった。それにたまにはこういう落ち着いた感じのもいいでしょう?」
「そうだね……なんとか有益な情報を見つけてオールマイトを驚かせるぞ!!!!」
「あ、そういう感じでやる気出しちゃった?」
実は調べ物を程々に切り上げて、都心でデートするつもりだった霊火は遠い目をした。
「ところで、どうして霊火さんはいきなりリムジンを借りたの?」
「貴方の”個性”の話を電車の中でする訳にもいかないでしょ? タクシーとかでも運転手に筒抜けだし。 そもそも私たち、昨日行われた雄英体育祭で片方ベスト4で片方は優勝しているんだよ?」
「あ、そっか……そこら辺を歩いてたら滅茶苦茶目立つね……」
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4時間もかからなかった。
国立図書館は通常の図書館と違って蔵書の持ち出しが出来ないので、二人は資料のコピーを取ってリムジン内に戻っていた。
因みに学生証が必要だったのは調べ物のためだ。
本来、この図書館は閲覧やコピーにも色々と制限があるのだが、雄英高校の学生ならばそれを色々とスキップ出来るとのことだった。
学生証があれば博物館入場料金半額の亜種みたいなものである。
「霊火さん調べ物上手すぎない!?!?!? え、もう4人も見つけてここまで調べ終わったの!?!?!?」
「よ、喜んでくれてもいい場面じゃない?」
まだ13時にもなっていない。
4時間もかからずに7代目、6代目、5代目、4代目。4人の名前を特定し名前と”個性”と活動期間までまとめ上げた霊火は、リムジン内のテーブルに資料を広げて少し居心地悪そうにしていた。
ちゃんと全員写真まで特定する徹底ぶりだった。
この手の探し物や調べ物のプロフェッショナルである霊火の、完全な独壇場だった。
緑谷の前でいい所を見せたくて本気を出し過ぎた霊火は心の中で猛省しながら話を進める。少し手加減という物を覚えたほうがいい。
「これ以前の継承者はもう見つからないと思う。 でも4代目からは当時の新聞、本、雑誌、ヒーロー史、ヒーロー研究、その他諸々にキチンとアタリをつけてちゃんと探せば普通に見つかる範囲内だよ」
「……霊火さんって本当に凄いんだね」
「頭の良さだけは自信があるの、私」
(……1代目、2代目、3代目辺りは『AFO』の方から逆算で見つかりそうだけれど、その調べ方をすると出久くんに共有できないんだよな……)
そしてここまで調べてしまったら、後は『死因』で鬼火を回収してしまえば大抵の事が分かるのが『検死官』だ。
後で一人で家族関係も洗い出しとこう、と霊火は心のメモに残した。
『あの人』の事だ、どうせ継承者の血縁にも死ぬほど嫌がらせをしている。
(……考えてみると今代の継承者である出久くんも、引子さんが誘拐とかされてとんでもない事になる可能性もあるか。……最悪私が利用するパターンもあるかも。うっわあ……嫌な事に気が付いちゃった……)
ヒーローの家族を利用するというのは昔から有効な手段だ。霊火自身も轟冬美にちょっかいをかけたことがある。
そして緑谷引子は気の弱そうな優しい母親だ。
一人息子と仲が良く、無害。あれ程人質として有効な人材もいなかろう。
……そう考えるとオールマイトの後継の緑谷出久も、彼女選びは本当に慎重にやってくれないと困る。
緑谷出久の恋人というだけで相当なリスクを背負うことになるのだ。
というか正直、ヒーローは恋人を作らないのが一番安全だ。
(……言われてみればオールマイトの女性関係って聞いたことないな。 でたらめな噂未満の話なら結構あるけれど……)
オールマイトの恋人の顔が割れたら、多分1週間で3人は刺客が来るだろう。気の毒すぎる。
あの平和の象徴は、世界で一番多くの恨みを買っている男でもあるのだ。
霊火が忙しく考え事をしている間、緑谷はまとめられた資料を真面目な顔で読んでいた。
真剣そのものな表情でじっと資料に見入っていた彼を霊火はつい観察してしまうが、そこで緑谷がこう言いだした。
「……今気が付いたんだけど、僕、多分この人たちを一度見たことがあるかも」
緑谷が変な事を言い出した。
「…………んん?? ちょっと待って? どういう事?」
「いや……今この7代目の写真を見て、この人って先々代の人だったんだって思ったんだ。 それにこの6代目も他の人もいたと思う」
「どういう事……??」
霊火が緑谷の横から資料を覗き込む。
四ノ森避影、万縄大悟郎、揺蕩井煙、志村菜奈。この4人を緑谷はどこで見たというのだ?
「……うん。霊火さんと一緒にいる時に見たんだ。……オールマイトに似た人もいた気がするけど」
「嘘でしょ!?」
「バレンタインデーの日、覚えてる? 一緒に海浜公園に行ったよね。なんかかっちゃんがチョコ貰ったとか貰ってないとか話したりして……」
「……した。 私も覚えている」
心臓が気持ちの悪い跳ね方をした。
ポーカーフェイスを保つ。
霊火は、いつの間にか自分が危険地帯に突っ込んでいる事に気が付いた。
前回のバレンタイン。
”
「あの日、電車の中でなんか影みたいな人が何人か乗っているのを見たんだよね。僕あの時はボーっとしてて夢でも見てるのかなと思ってたんだけど……」
「そんなこともあったね。……それでその人がこの写真の人だったの?」
「多分……僕あの日が、初めて『OFA』の制御に成功した日なんだ。 ……もしかしたらこの人たちが僕の事を助けてくれたのかな?」
「……そうかもしれないね。学校に行ったら2人でオールマイトに聞いてみましょう? それこそ何か知っているかもしれないよ?」
電車の中というのは、まさに『混濁』をかけた時間だ。
オールマイトもいたというのは気になるが、おそらく”個性”因子由来だろう。
『OFA』の中に何かしらの意識が混入していたのかと霊火は当たりをつける。
……あの日に『OFA』の制御に成功したのは霊火の抑制剤が正常に働いたからなのだが、なんか偶然いい感じの所に着地していた。
霊火にとっては抑制剤を盛った日だが、緑谷にとっては初めて『OFA』の制御に成功した印象的な日なのだ。
彼が『先代たちが”個性”の制御を助けてくれた』と解釈するのは自然ではある。
まあそれなりにありそうな話ではある。
研究者としては論外で大減点な精神論ではあったが、どちらにしてもそれで納得してくれるなら本当にありがたい。
(……一旦窮地は脱したかな。………本当に焦った)
……念のため、今後緑谷に『混濁』を掛ける事はやめた方が良いだろう。
抑制剤と『混濁』のどちらが悪さをしたのか正確に分からないが、『OFA』に残った”個性”因子の残滓が何か変な働きをする可能性がある。
思い返してみると、霊火もつい先日に心操の”個性”にかかった時、ドクターと白雲朧の幻覚を見た。
(”個性”因子に精神感応系が効かなかったりする事があるのかな……二重人格に”個性”が変な働き方をする事があるって論文は読んだことはあるけれど……)
なんにしてもここで『混濁』の脆弱性を知れたのは思わぬ収穫だった。
緑谷に……衝動的になんかやっちゃった後に証拠隠滅気味に『混濁』を使うような展開は、霊火の性格からして普通にあり得た。
……実はバレンタインの時点で既に取り返しのつかない致命的なミスをしているという可能性もあるが、霊火はそれは考えないことにした。
後からリカバリー出来ない事を気にしても仕方がない。精々逃走経路をキチンと確保しておくぐらいだろう。
全く想定しないところに特大の落とし穴を見つけてしまった霊火は、自分を落ち着かせるように息をついた。
あえて話を切り替える。
「それでどう? 出久くんはその資料を見て他に気が付いた事がある?」
「え? ……うーん、皆早死にだなとは思うけど……」
「貴方も気を付けてね。 まあそれ関係なんだけど……」
少女は細い指先を顎に当てて、少し悩む仕草を見せる。
「オールマイトが貴方に『OFA』を渡した時言っていたこと覚えてる?」
「『食え』」
「そうじゃなくて……、ほら『DNAを取り込めるなら何でもいい』って話をしたって言ってたじゃん。その話を聞いた時から一つ気になってたことがあるんだけど……」
霊火は横に座る緑谷に近づいて、彼の手を取った。
不思議そうな緑谷の目をじっと見つめて、最大の疑問点を提示する。
「『OFA』は何人もの極まり身体能力が一つに収束されたもの。生半可な身体では受け取り切れず『四肢がもげ爆散してしまう』。私はあの監視塔でこう説明されたけど、記憶違いは無いよね」
「う……うん。僕もオールマイトにそう説明された」
「これおかしくない? 実際に、誰かが不十分な状態で『OFA』を受け取って爆散したことがあると思う?」
「あ……いや、それはないはず。『OFA』は一つしかないから……誰かが爆散したら死んじゃって伝わってこない……?」
「そう、登場人物が全員死んだのに私たちに伝わってる『ほんとにあった怖い話』みたい。……オールマイトに言う通りに本当に爆散した例があるなら今ここにある『OFA』はなんだってなるよね?」
少女はテーブルの上の一点。
4代目、四ノ森避影の写真を指差した。
「この辺りにヒントが隠されてる。……正直思ったより面倒な物が見つかっちゃったけれど、早めに確かめた方が良さそう」
「どういう……? 正直僕、ちょっと話についていけてないんだけど……」
「オールマイトに『半端な力で受け取ったら爆散する』って話が伝わった以上、過去に何らかの形で『OFA』の反動を受けた人がいたんじゃないかと思って」
「……オールマイトも知らない危険があるかもってこと?」
「そういうこと」
霊火は真剣な目で緑谷を見つめた。
「『OFA』が本当に大丈夫な力なのかを確認したい。……私、貴方の力に何かとんでもない潜在的なリスクがある気がしてならないの」
1話で終わるかと思ったら長くなりすぎて分けちゃった……
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