殺人現場より、愛をこめて   作:トリスメギストス3世

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037:職場体験③

 片足が悪い殻木霊火と同様に、ステイン側も決して万全では無かった。

 

 元々ステインは、保須市で偽りのヒーローを粛清しようとしていた。

 遠方で何かが暴れているようだったがやることはいつもと変わらない。

 今日のターゲットはネイティブというプロヒーローだった。その男は実力不足で、彼の信念に反する存在だった。

 

 しかしいざヒーローを殺そうとしたその時、白いアーマーを纏った学生が急に現れ邪魔をしてきた。

 白アーマー自体は仇討が目的のヒーローとして論外な存在だったが、その後に現れた緑髪と紅白頭が強かった。

 狭い路地裏で何とか一対一の状況を作りつつ粛正の機会を伺っていたのだが、最終的に白アーマーの復活もありステインは拘束されてしまう。

 

 しかしいざプロヒーローに引き渡されようというタイミングで、突如として黒い霧が広がった。緑髪が『黒霧!?!?』などと叫んでいた。

 その霧の中から出てきた脳みそ丸出しの大男や手を身体中に付けた奇怪な男がプロヒーローや学生に襲い掛かり、ステインは彼らに助け出されてしまったのだ。

 

 そして霧の男に「こちらですヒーロー殺し。我らは最終的には同じものを目指している」などと意味不明な事を言われて霧に呑まれ、気が付いたら大阪にいたという経緯だった。

 

 その時はあまりの急展開の連続に流石のステインも呆気にとられた。

 何しろあの霧の男も脳の男も手の男も、普通に初対面だ。

 更に雄英への襲撃を成功させたとかいう(ヴィラン)連合についても関与したことが無い。

 

 おまけに『ワープ』させられた先は何故か大阪の路地裏。そしてすぐに現地のプロヒーローに見つかってしまう。

 幸いにして襲い掛かるヒーローは大したことなかった。後から来た巨漢のヒーローだけは強かったがそれも『凝血』で対処した。

 

 しかし連戦も連戦。

 ステインといえども疲弊と怪我でパフォーマンスは落ちる。そんな彼の前に現れた相手はまたしても学生だった。

 

 蛍光色のラインが走るローブを纏う、人工物のように端正な造形の少女。

 一見して中学生か、下手をすれば小学生とも思える程の小柄な女学生だった。

 

 しかし、その目は違った。

 ヒーロー殺しである自分を見据えるその瞳は爛々と輝き、喜悦と興奮でその表情は歪んでいた。

 ステインを前にして恐怖どころか、あって当然の緊張すらも見せない少女の異質さに流石のステインも『何だこいつ』と混乱する。

 

 ……巨漢の男の発言からして目の前の女は間違いなくヒーロー志望の学生だ。

 しかしステインにはそうは見えなかった。

 

 豊富な実戦経験に裏打ちされたとしか思えない力の抜けた隙のない佇まい。

 底知れない理想と狂気を宿した瞳。

 ヒーローとしてはあり得ないクラスの研ぎ澄まされた悪意と殺意。

 そして何より、自分の行動に対する絶対の自信。

 

 ステインにとって鏡合わせのように、自分とよく似た少女だった。

 

 故に殺人鬼は思ったのだ。

 

 この少女も世界に対してあるべき姿を思い描いていて。

 そこに向かって走り続ける事しかできない壊れた夢想家なのではと。

 

 ――――――――――

 

 この時。

 ヒーロー殺しはある意味、この世界で一番真実に近い位置に立っていたのかもしれない。

 

 ――――――――――

 

 大前提として、『カリン』では『ステイン』に勝つことは出来ない。

 

 つまり霊火としては、この手しかなかった。

 

 ステインの指が閃き、刃渡り10センチほどの銀色のナイフが3本見えた瞬間、霊火は動いた。

 

 ……ところで大阪駅の連絡橋口改札前は、床から天井まで約5メートルの高さのガラス張りになっている。この壁面ガラスは、夜の街を一望できる大阪駅の象徴的な建築要素の一つだ。

 

 霊火はそれをターゲットに設定して、ぱちりと指を鳴らした。

 

 パパパパパパパァンッ!!!!!!!!!! と乾いた破裂音が何重にも鳴り響く。

 

 霊火の横の一枚を除いた全ての超大型ガラスが室内方向に弾けた。狭い通路内に何十万もの鋭利なガラスの破片が横殴りに降り注ぐ。

 

 超広範囲の面攻撃。

 ガラス片による爆風にも似た圧力で霊火に投擲されたナイフの軌道は折れ、その絶大な範囲でステインを攻撃圏内に捉え、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()理不尽極まりない全域攻撃。

 

 ただ一人、安全圏に立つ少女は涼しい顔だった。

 

「避けられるかな?」

 

 ステインは咄嗟に構内の備え付きベンチの下に潜り込み、ガラスの雨をやり過ごそうとする。

 その動きを少女の瞳孔が無機質に追いかけ、再びぱちりと音が鳴った

 

 恐ろしい破断音と共に、今度はその鉄製のベンチが壊れた。

 

 地面との固定金具を引きちぎって”車に轢かれたかのような”挙動で吹き飛ぶ金属板を、ステインはギリギリのところで回避する。

 そして体勢を崩した殺人鬼の耳に恐ろしい音が複数回届いた。

 

 パチンパチンパチン と。

 

 金属製の手すり。床に固定されたゴミ箱、液晶付きの自販機、壁に埋め込まれた券売機、天井からぶら下がる電光掲示板。

 小さく乾いた音が鳴るたびに、一つ一つが何十、何百キロもある金属塊が次々と高速で吹き飛ばされる。

 

 自動改札を地面から毟り取って攻撃に転用した時に何かの回路を引き千切ったのか、駅全体がパツン!! と音を立てて電灯が消えた。

 

 そして霊火は、既に踵を返して北側の広場に戻っていた。

 

 霊火の背後の狭い通路内で、莫大な質量を持つ金属が何個も跳ね回る轟音が何度も響く。

 一般人も多い通路内を死の攻撃判定で塗り潰し、死のピンボールで強引にステインを圧殺しようとする霊火はそれでも笑みを絶やさなかった。

 

 遠方から響くファットガムの怒声を聞き流して、北側の広場まで戻った少女は嘯く。

 

「もっと派手にやった方が面白かったかな?」

 

「貴様だけはこの俺が必ず粛清する!!!!」

 

 もはやどっちが(ヴィラン)なのかも分からないやり取りに、霊火はケタケタと笑った。

 狙い通りにステインは、プロヒーロー達にとどめを差すよりもヒーロー志望の霊火の方を優先した。それが愉快でたまらない。

 

 北側広場には上階から北側広場に降りる為の長いエスカレーターが2基存在するが、その根元を4つの鬼火を使って完全に無音で切断。

 

 霊火はちらりと背後を確認すると、ぱちりと指を鳴らして悪夢を始めた。

 

 大質量の金属塊がひしゃげる恐ろしい音を立てて、長さ15メートルものエスカレーター2本がステインへ殺到する。

 

 そう、当たり前の話。

 『カリン』で勝てないのなら、ヒーローでは取れない選択肢を使って戦えばいいのだ。

 

 即ち『検死官』の顔を使う。

 誰もがヒーロー対(ヴィラン)の戦いだと思うこの対戦カードは、実は(ヴィラン)(ヴィラン)の戦いなのだ。

 

 ――――――――――

 

 今回の霊火の目的は、生きてファットガムを助け出すことだ。

 

 逆に言えばそれだけだ。

 ヒーローとしての評価も建物への被害も霊火への非難も何もかもどうでもいい。

 

 最悪、(ヴィラン)とバレても構わないのだ。

 

 雄英退学? 批判殺到? 損害賠償? 犯罪者として逮捕?

 それはそれでやりようがある。その方がむしろ動きやすいかもしれない。

 最悪でも、明けない夜が始まるだけだ。

 

 終末論の魔法使い。

 その気になれば世界を滅ぼせる霊火の判断は理不尽なまでに軽く、その心根は際限なく傲慢だ。

 

 殻木霊火は『自分がやることは世界の為になっていて、自分の邪魔をする奴は世界の敵だ』を地で行く破綻者だ。

 この辺りはただひたすらに理想を追い求めるステインと似ているのかもしれない。

 

 とにかく霊火としては本当に何でもいいのだ。

 例えるならばこの心理状態はビデオゲームに近い。

 この場合霊火がプレイするゲームの最終目標はまさに世界を救う事で、その他の事は誤差の範疇だ。

 メインクエストに大きく影響しないサブクエストが成功しようが失敗しようが、結局大筋と結末は変わらない感覚に近い。

 

 人類の存続。一人の人間が背負うにはあまりにも重すぎる重圧。

 これを最終目標に設定してしまった時に、そのあまりの重大さに耐えきれず霊火は破綻したのだ。

 

 逆にそれさえクリアできれば拍手喝采大歓声。

 この時霊火は、心の底から『よくやった』と自分を褒めることが出来る。

 

 つまりその『ハッピーエンド』さえ達成できるなら後は何でもいいのだ。

 ヒーロールートでも、敵ルートでも、内通者ルートでも単独ルートでも何でも構わない。途中経過はあくまで途中経過に過ぎず、大事なラストさえ外さなければ何をしてもいいのだ。

 精々がゲームクリア後のリザルト画面の片隅に小さく書かれる情報に過ぎず、そこに拘りはないのだ。

 

 結果良ければ全て良し。そう思えたことは霊火にとってきっと幸運だった。 

 ……墜落現場にて一人一人の人間が持つ重みに押しつぶされた身としては、あまりにも本末転倒な逃避ではあるが。

 

 故に霊火の行動は気まぐれでこだわりが無い。

 何となく気になったから、緑谷を助けた。

 ちょっと心が動いたから、障害物競走で轟を引っ張った。

 別にどっちでも良かったけれどたまたま女の子に話しかけられたから、愛着が湧いてきたファットガムを助けるような行動をとった。

 

 ……だからこそ。

 始めて好きになった男の子がよりにもよって『ハッピーエンド』最大の障害になってしまって未完成の内に殺害できないぐらい本気になっちゃったことだけは。

 現在進行形で本気で頭を抱えるぐらいのウルトラミスだったりするのだけれど。

 

 ――――――――――

 

 『カリン』でヒーロー殺しに勝てないのなら、『検死官』としての顔で戦えばいい。

 殻木霊火はそう結論づけた。

 

 そして実は『検死官』の対ステインの相性は、直接戦闘に限った話でもそれほど悪くない。

 

 第一、赤黒血染の”個性”は『凝血』で直接攻撃系ではない。

 彼のメインウェポンはあくまでその体術と武術で振るわれる刃物なのだ。

 

 故に彼の攻撃手段には常に『死因』が素通しだ。

 日本刀でもナイフでもメスでも何でも、少女は遠隔から安全に破壊が可能という事になる。感電死なども面白いぐらい刺さる。

 

 いつでも霊火の天敵は、その両の手を振るうだけで最大の破壊力を産み出すチンパンジーみたいな奴なのだ。

 道具の恩恵を受けるタイプであればあるほど霊火の”個性”は攻撃力を増す。

 

 更に『検死官』特有の事情として、『死因』は殺人犯相手に強い。

 殻木霊火に『死人に口なし』は通用しない。被害者がどのような方法で加害者に殺害されたか、その全てのデータは霊火の頭の中にある。

 

 そしてヒーロー殺しは、現代日本最高のヒーロー殺害記録を持つ(ヴィラン)だ。

 つまり霊火はステインの渾身の攻撃を10回以上体験し、分析し、研究していることになる。

 いくら史上最強の格ゲーマーでも、一方的にキャラ対策を積まれた状態で未知のキャラクターと対戦したら実力差なんて簡単にひっくり返る。つまりはそういう戦いだった。

 

 暗器のように投げられるメスも血舐めと日本刀投げの2択もその太刀筋の癖も咄嗟に取る行動も回避パターンも何を言われれば一番イラつくかも状況の処理能力の限界も思想も感情も何もかも霊火の前では既知だ。

 そしてステインの方はそれを知る手段がない。ただただ霊火が”まるで知っているかのような”動きで全てのパターンに対応することに混乱するしかないのだ。

 

 なお悪い事にヒーロー殺しはあくまで”ヒーロー”殺し。正義の味方の論理を相手にしてきた。

 だからこそというべきか、一般人も一緒くたに巻き込んで放たれる即死級の範囲攻撃への経験はあまりないのだろう。彼の戦いに元々想定されていない攻撃とも言える。

 天井から降り注ぐガラスの雨も天井落としも床抜きも一面を薙ぎ払う大火災も地を這う大放電も、彼は必ず一手反応が遅れる。

 

 ステインの油断などそういう話ではない。スタートラインが間違っている。

 目の前の少女が『ヒーロー志望に化けている、倫理の壊れたネームド(ヴィラン)』であるというド級の真相にこの土壇場で気が付くことが、彼の勝利の最低条件だったのだ。

 

 ステイン手持ちの最後の日本刀が少女の首を捉える寸前、その得物は燃えて炭化して塵となって”消失”する。

 返しの霊火の反撃は単なる右手。それが頭に伸びた時、ステインは直感のままに無理やり触れられるのを回避しようとした。

 ”個性”『混濁』。触れた相手の記憶を前後5分混濁させてしまう必殺の掌を奇跡の直感で回避したステインだったが、後が続かなかった。

 

 ステインは不安定な状態から足元を払われ、そのまま地面に叩きつけられる。

 背後からのしかかられ、首筋にはステイン自身の投げナイフが押し付けられた。

 

「残念、私の勝ち」

 

「ふざけるな……!! お前はヒーローじゃない!!!! この偽物が!!!!」

 

 文字通りの意味で全くもってそれがドンピシャな正解なのだが、根本的に霊火をヒーローだと思っているが故の発言でもあった。

 

 パトカーのサイレンが近づく。『凝血』が切れたらしいファットガムがダッシュで近づき、霊火とステインの状況を見て言葉を失った。

 

「一般市民を巻き込むヒーローなど論外そのもの……!!!!」

 

「わあ珍しく真っ当な事言ってる。……それにしても貴方、そんなに余裕が無かったんだね」

 

 ネコミミフードのヒーロー志望は、ニヤリと笑って勝利宣言をした。

 

「怪我人はいないよ。 貴方には無差別ランダム攻撃に見えたかもしれないけれど、ちゃんとギャラリーに当たらないように気を付けていたから」

 

 邪魔な位置にいるギャラリーを安全地帯に無傷で吹き飛ばしたり、最初の通路のガラス攻撃が実は『焼死』軸でガラス片が残らないようにした見た目重視だったりと色々頑張っていたのだ。

 ……まあ勝手に逃げて勝手に転んでみたいなのは流石に面倒見きれないけれど。

 

 殻木霊火の最大の武器は頭脳だ。

 ”反応しきれなかった”や”対処できなかった”はあっても”処理しきれなかった”はまずあり得ない。ギャラリーを致死圏外に逃がす程度は片手間でこなせる。

 

「じゃあね”ヒーロー殺し”。私貴方の事そんなに嫌いじゃ無かったよ」

 

 霊火にしては本当に珍しい完全勝利だった。

 

 ――――――――――

 

 プロヒーローと、警察と、学校に10時間怒られた。

 

 合計ではない。それぞれ10時間だ。

 

 霊火は『摂生』を切った反動で寝込んでいたというのに、大人たちはお構いなしだった。

 こちらも最初は神妙に謝っていたが、如何せん霊火はかなり短気なためすぐ臨界を迎えて全ての相手に全力全開の口喧嘩に発展した。

 

「ハッ!!!!!!!!!! 規則を守るために情けないプロヒーロー達を助けず見殺しにするのが正解だったってお巡りさんは言うんだ!!!!!!!!!!」

 

「資格未所得者が保護管理者の指示に従わずに”個性”で危害を加えるのは立派な犯罪だ!!!!!!!!!」

 

「うっふふぅぅぅうううう⤴⤴⤴!!!!!!!!!!!!! 実はですねえ……私、ステインに一つも傷を負わせないで制圧したんですよねええええええ!!!!!!!!!!!!! プロヒーローより凄いよ私!!!!!!!!!!!!!」

 

「傷を与えたかどうかの問題じゃない!!!!!!!!!!!!! あからさまな攻撃を加えたのが問題なんだ!!!!!!!!!!!!!」

 

「あーあ!!!!!!!!! やっぱり人を殺すのは悪役じゃなくて正義の側なんだ!!!!!!!!! 規則を守るためなら人が死んでもいいって言ってる自覚あります~~~!?!?!?!?!?!?」

 

「それに一般人を巻き添えにするなど言語道断!!!!!!!!!!!!! 貴様にヒーローの資格はない!!!!!!!!!!!!!」

 

「ヒーロー殺しと言ってること一緒だぞ警察それでいいのか!?!?!? それに脳髄から全ての神経が腐っているIQ100の平均公僕が天才たる私に何かを語ること自体片腹痛いわ!!!!!!!!!!!!! 全ての攻撃が一般人を巻き込まない繊細な配慮で満ちた計算づくの物だという事も分からないのなら国の捜査機関なんてで~~~~っかい看板背負うのや・め・ろ!!!!!!!!!!!!! こっちが貴様より100倍有能なAI開発したるわ!!!!!!!!!!!!!」

 

 とまあ全てがこんな具合だった。四角四面な警察はとにかくド正論で静かに詰めてくる相澤先生は難敵だったが。

 もしかしたら反抗期なのかもしれない。後から落ち着いてみると途端に恥ずかしくなる例のあれだった。

 『インターン出禁』『犯罪で逮捕』『相澤必殺の除籍』の全てが本当の意味で効かない無敵の人は怒られている間ずっとふんぞり返っていた。申し訳無いが、ステインを相手にした後に見ると皆イマイチ迫力不足だったのだ。

 霊火とて10代、全ての正義が自分の元にあると心の底から信じている年頃だ。

 

 まあ今回の場合霊火自身がステインを呼び寄せたので本当に霊火が悪いのだが。

 

 因みに公安は名乗られた瞬間に中指を立てた後親指で首を掻っ切って追い返した。

 おそらく今頃霊火は、不思議な力が働いてヒーロー免許所得が出来なくなっている。

 こうなるといよいよヒーロー科に行く意味が無くなってきた。

 

 おまけに霊火の出した施設への被害総額は全てドクターが補填してくれた。

 因みに警察に呼ばれた彼は、警察官相手にブチ切れてる霊火を見るなり爆笑であった。  

 親が娘を叱ると当然のように思っていた警察が、それを見て呆然とするのは胸がスカッとしたものだ。

 この調子だと結局最大の理解者はドクターだったというオチになる。

 

 余談だが『カリン』VS『ステイン』はなんと全国生中継だったらしい。道理でヘリコプターの音がすると思った。

 どうやらステインがファットガムたちを粛正しようとする前からライブだったらしく、一般市民からの霊火の評判はうなぎのぼりであった。

 霊火は見直していないが、おそらく過去3年間のあらゆる敵退治動画で一番派手だっただろう。

 『死因』は火の玉から多種多様な属性攻撃みたいな見た目の為、割と戦闘映えするのだ。光るし派手だし大規模だし。

 

 そしてヒーロー志望の高校生が、何人ものプロヒーローを殺した凶悪(ヴィラン)と1対1で勝負し勝利というのも評価点だっただろう。

 更に霊火は自分で言うのもなんだが物凄く可愛いのでそういう意味でも人気が出たようだ。流石に内容が内容の為否定意見もそこそこ出たらしいが。

 

 結局民衆はヒーローが(ヴィラン)をぶちのめしていれば何でもいいのだ。

 霊火的にはここが一番の残念ポイントだった。市民の人気なんていう本当に一番いらないものだけ手に入れてしまった。

 

 ついでに生中継はステインのシンパも大量に生み出し、自動的に霊火の熱烈なアンチも大量発生した。マジで勘弁してほしい。

 

 そして結局どういう力学が働いたのか、雄英高校は霊火をしばらくの間ヒーロー科で飼い殺す事にしたようだ。

 

 何故かいきなり拘留が解け、テレビのプロヒーローたちがいきなり霊火を擁護し始め、相澤先生にちゃんと除籍されたのにお上から勝手に爆速復学をかまされた霊火は流石にヒーロー社会への不信感がMAXであった。頼むからヒーロー科を辞めさせてくれ。

 大人も社会も何もかもがちゃんと真っ黒だった。暴露本でも出してやろうか。

 

 殻木霊火が第2のステインになる日も近いのかもしれない。似た者同士というのはそういう意味では無かったのだが。

 

 ――――――――――

 

 ファットガムは怒ってはいたが彼だけは霊火にお礼を言ってくれた。

 霊火の働きと何か不思議な力で、何とか減給処分なども免れたようだった。

 彼に謝られている瞬間だけは流石の霊火も罪悪感で頭がおかしくなりそうだった。




持ち込みナシ平坦なフィールドの体育祭トーナメントは実は非常に苦手な戦場でした。

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