殺人現場より、愛をこめて   作:トリスメギストス3世

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039:期末試験

「えー……そろそろ夏休みも近いが、もちろん君たちが30日間休める道理はない」

 

「まさか……」

 

「夏休み、林間合宿やるぞ」

 

 教室が興奮で沸く。

 そして相澤がチクリ。

 

「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は、学校で補習地獄だ」

 

「だる……」

 

「おい殻木今なんて言った」

 

 絶対に合理的虚偽だと思ったが、霊火は優しいので黙っておいてあげた。

 ステイン戦後、霊火は猫を被るのをちょっとだけやめていた。

 ……教室になじんで来たと言い換えてもいいだろう。

 

 ――――――――――

 

 時は流れ6月最終週、期末試験まで残すところ一週間を切っていた。

 

「赤点を取りたくないなら満点を取ればいいじゃない」

 

「今どきマリーアントワネットでもそんな事言わねえぞ!?!?」

 

「今どきのマリーアントワネット……?」

 

 前の席の上鳴(中間20位)に突っ込みを受けた霊火は首を傾げる。

 

 余談だが、霊火(1位)としても革命広場はぜひ行ってみたい所だ。1793年10月に、かの有名な王妃様が何を思って処刑されたのかは非常に興味がある。案外、件のケーキの話もちゃんと言っている可能性もなくはない。

 そしてなにより、あの時代のフランスを掘り返すのは絶対に面白い。とんでもない真相が沢山出てきそうだ。

 

「どうしよう殻木!!!! 体育祭やら職場体験やらで全く勉強してないよ!!!!」

 

「私も勉強してないけれど? 試験勉強なんてしたこと無い」

 

「殻木に聞いた私がバカだった!!!!」

 

 頭だけは本当にいい霊火は余裕の顔で、芦戸(19位)の頭をポンポンと叩く。

 勉強教えてと縋りついてきたのでそれは躱した。

 

「アシドさん、上鳴くん! 頑張ろうよ! やっぱ全員で林間合宿行きたいもん! ね!」

 

「普通に授業受けてりゃ赤点は出ねえだろ」

 

「言葉には気をつけろ!!」

 

 緑谷(2位)と轟(5位)も会話に参加してきた。

 上鳴がぐるんと緑谷の方を向き、そのまま半ギレで詰め寄っていく。

 

「ていうか緑谷ァ!!!! テメェは殻木に勉強教えてもらって試験は楽勝とかズルだろ!!!!!!!!!」

 

「ええっ!?!? 確かに霊火さんは凄いけど……」

 

「まあ出久くんは元々頭悪くないからね」

 

 上鳴は……と含みを持たせた言い方だったのだが遠回りすぎて通じなかった。まあここが雄英高校である以上やはり彼も一定レベルはあるのだが。

 

 ……緑谷の雄英入試対策での勉強時間は1日40分だったということは黙っておいた方がいいだろう。

 殻木霊火が勉学のサポートにつくというのはそういう事だ。ズルといえばズルである。もっとも彼は元からそこそこ頭が良かったが。

 

 ――――――――――

 

「怖いのは演習科目の方だよね。何やるか言われていないもん」

 

「僕も普通科目は何とかなると思うけど……そっちも突飛な事はしないと思うけどなあ……」

 

 食堂にて緑谷とそんな話をしていると、麗日(13位)が「普通科目は何とかなるんやなあ……」と嘆いていた。

 霊火は口元に手を当てて少し考える。

 

「うーん……素直に探ってみる? 試験内容」

 

「えっ? どうやって?」

 

 ……『透視』を使うつもりだなんて言えるわけがないので、曖昧に笑う。

 考えておいて何だが、透視をカンニングに使うのはやる事のしょうもなさが峰田とあまり変わらない気がした。

 そんな中、霊火たちは背後から話しかけられた。

 

「あれえ殻木、まさか試験の内容知らないのぉ? 入学試験満点で『ヒーロー殺し殺し』のキミが?」

 

「その異名もしかして流行ってたりするの?」

 

 振り返ってみると、絡んできた相手は物間だ。学校の食堂だというのにワイングラスにナイフとフォークなお洒落なフレンチ系をトレイに乗せている。

 彼は霊火を見下ろしてハン! と思い切り馬鹿にした後、こう続けた。

 

「入試の時みたいな対ロボットの実戦演習らしいよ」

 

「え、本当に? 何で知ってるの?」

 

「クラスの中に、先輩に伝手のある奴がいるのさ!!」

 

 それはそれとして試験内容は教えてくれるらしい。USJでの共闘が活きている。

 物間に丁重に礼を言ってここから退散してもらい、霊火はぴゅうと口笛を吹いた。

 

「ロボットなら楽勝だと思う」

 

「霊火さんならそうだろうね……」

 

 ――――――――――

 

 そして演習試験当日。

 

「それじゃあ演習試験を始めていく、諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々分かっていると思うが……」

 

「諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

「ダメだこりゃ」

 

 霊火は肩をすくめた。元からあんまり期待していなかった。

 人生なんてそううまくいかないように出来ているのだ。霊火の場合も基本的に失敗続きの人生を歩んでいる。誕生から間違っていたなんて説すらある。

 

 ……本当に”人生”なのかすら要審議なのは内緒だ。

 

 そして校長の説明を聞いて、演習試験楽勝音頭を踊っていた芦戸と上鳴の対物最強組が後ろでずっこけていた。

 

 ”個性”『ハイスペック』、動物に”個性”が生えた唯一の例。

 霊火としては是が非でも生体のまま確保したい雄英高校校長が、元気に説明する。

 

「これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ!!! つまり、二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

 

 ペアと対応する先生は事前に決まっているようだ。

 発表された内容はこのような感じだった。

 

 芦戸・上鳴ペア→根津校長

 麗日・殻木ペア→13号

 口田・円場ペア→プレゼントマイク

 砂藤・小森ペア→セメントス

 葉隠・角取ペア→スナイプ

 回原・峰田ペア→ミッドナイト

 尾白・取蔭ペア→エクトプラズム

 轟・緑谷ペア→ブラドキング

 鎌切・鱗ペア→パワーローダー

 吹出・常闇ペア→イレイザーヘッド

 

「わあよろしくね霊火ちゃん!!!」

 

「よろしくお茶子ちゃん。戦闘訓練以来だね」

 

 ――――――――――

 

「制限時間は30分だよ。君たちは”指定のハンドカフスを僕に掛ける”か”どちらか一人がこのステージから脱出”すれば勝利だと思ってね」

 

 バスの窓から差し込む陽光が車内に柔らかな明かりを投げかけていた。

 麗日と霊火は隣り合わせの席に座って、近くに座る宇宙服姿の13号の説明を聞く。

 

「え、逃げてもいいんですか?」

 

「もちろんです。今回は極めて実戦に近い状況での試験。僕らを敵そのものだと考えて下さい」

 

 麗日は熱心に聞いていたが、その横で霊火は意味ありげに含み笑いしていた。

 

 13号はそれを見て苦笑いの気配を漂わせる。霊火の方をハンドサインで制止しつつ、彼女は説明を続けた。

 

「……あはは、ちょっとやりづらいなあ。説明を続けるね? 会敵したと仮定し、そこで戦い勝てるならそれで良し、だけど実力差が大きすぎる場合は逃げて応援を呼んだ方が賢明だよね?」

 

「そ、そうだと思います」

 

 麗日が霊火の方を気にしながら返事する。

 13号はそれを聞いて”よしよし”といった感じで頷く。宇宙服コスチュームのせいでいちいち反応や感情が分かりにくい。

 そして彼女は、コスチュームからごっつい腕輪のような物を取り出した。

 

「そう、だから君らの判断力が試される。戦って勝つか、逃げて勝つか。……そして僕たち先生側には、こう言うハンデが付く」

 

「……もしかしてそれ発目のです?」

 

「お! 流石殻木さん! 良く分かりましたね。サポート科の発目明さんのデザインが採用されました」

 

 デザインというのは意外と個人の癖が出る。霊火も体育祭の車いすは癖が”出ない”ように気を使ったものだ。

 そして13号先生が今回のハンデについて解説する。曰く、先生方は体重の約半分の重りを装着するというルールとのことだ。

 

 超圧縮重りをがしゃりと手首に付けながら、彼女は続けた。

 

「本来は格上相手にどう立ち回るべきかを学んで欲しい試験なんだけど……。あの『ヒーロー殺し』を倒した子が相手じゃ僕もこんなハンデ付けてる場合じゃないんだけどなあ」

 

「……でも今回の先生は(ヴィラン)なんでしょう?」

 

 霊火はクスクスと笑った。

 表情の読めない13号に対して、こう指摘する。

 

「13号先生も悪い人です。『ブラックホール』を持つ(ヴィラン)とか、それこそ手が付けられない強さなんじゃないです?」

 

 麗日がギョッとした顔で13号の方を振り向いた。

 

 ステイン戦で霊火自身が見せたように、同じ力でもヒーローが使うのと(ヴィラン)が使うのでは全く違って見えるものだ。そして『ブラックホール』は、間違いなく(ヴィラン)が持っていた場合のほうが“怖い“。

 意味ありげに首を傾げる宇宙服に、少女は苦笑い交じりで聞いてみる。

 

「……先生。自信が無さそうな言い方して、実は普通に正面から私たちをねじ伏せる気でいたんじゃないですか?」

 

 宇宙服は霊火の問いに答えず、そっぽを向いた。

 

 ――――――――――

 

「それにしてもオールマイトは期末試験見てくれないんだね。……というか最近休みがちだし」

 

「あの人ほど多忙な人もいないから……」

 

 USJにて麗日と共に試験開始の合図を待つ。

 話題はオールマイトだ。霊火は試験の相方の疑問に適当な相槌をうつ。

 

 オールマイトは1か月も前に『そろそろ引退だよ』とか言っていた癖に、一応まだ現役だ。

 1日30分の時間制限で忙しい人助けを続けている。ヒーロー精神ここに極まれりといった感じだ。ステインが狂うのも分かる気がする。

 

 とはいえ、最近の彼はマッスルフォームとトゥルーフォームの誤魔化しすらも限界といった感じだ。

 マッスルフォームの維持だけなら1時間保つのだが、それでも授業にフルで出られないことも多い。

 緑谷と霊火には『流石にそろそろ引退を表明するつもりだが、あとちょっとだけ』と説明していた。霊火としてはそこまでやるならもう本当の限界まで好きにやればいいと思う。

 人助けはきっと、彼にとって文字通りの”生き甲斐”や”生き方”そのものなのだろう。

 

 今の霊火は、平和の象徴に一定の敬意を払っている。

 ひと昔前は大嫌いだったが実際に近くで接してみると、確かに彼は強烈に人を惹きつける逸材と認めざるを得ない。

 

「うーん……13号先生か……もう私が全力全開で勝ちに行ってもいいけれど、お茶子ちゃんは何か策がある?」

 

「う、ううん!! 私は霊火ちゃんの作戦に従うよ!!」

 

「それはそれでどうなんだろうな……ほら、私と先生があれするとUSJが全壊しかねないんだけれど……」

 

 それを聞いて麗日は「ああ……」と納得したような声を出す。十中八九ステイン戦の大阪駅の惨状を思い出しているのだろう。

 職場体験以来、授業で『ヒーローたるもの建物にはあまり被害を出さないようにね』という話になるたびに釘を刺され続けている霊火としてはカリキュラム内で大破壊はあまりしたくなかった。というかあんまりやり過ぎると普通に赤点になりそうだ。

 Mt.レディがデビュー以来苦労し続けていることから分かる通り、建物への被害なんて無ければ無い程いいに決まっている。

 

 そして霊火に立案を投げられ、いい案が無いかと考え続けている麗日からちょっと聞き流せない呟きが漏れてきた。

 

「デクくんなら……多分……」

 

「……お茶子ちゃんも大概分かりやすいね」

 

はっ!!!!!!!!! 違うよ霊火ちゃん!!!!!!!!! デクくんの事を横取りなんてするつもりは全く!!!!!!!!!」

 

「語るに落ちるってやつだよそれ。 横取りも何も出久くんとは恋仲じゃないってば」

 

 ネコミミフードは顔を真っ赤にして否定する麗日を落ち着かせようとする。

 一方で麗日の方は意外なほど真剣な表情だ。少し顔を伏せて、小さな声でこう続けてきた。

 

「……それは半分嘘じゃん。デクくんの方は分からないけど、霊火ちゃんはデクくん好きでしょ? ……そもそもデクくんはそう言うのじゃないけどね!!!!

 

「…………まあそれ込みで譲ってあげる気ではあるけれど」

 

 ……流石に同性相手では恋心を隠すのは不可能らしい。誤魔化しても無駄だと思い、霊火は彼への好意をさっさと認めてしまう。

 まあ元々無理があったともいえる。女の子は大抵の場合、男の子よりもずっと他人の感情に敏感なものだ。

 

 そして女の子同士、友人の好きな人を横取りするのは割と洒落にならない大罪だ。

 女の子社会のパワーバランスにもよるが”それってどうなの?”的な視線を一身に受けることは間違いない。

 

 そして麗日お茶子はそのような略奪(?)を出来る性格ではない。

 底抜けに明るくて、性格が良くて優しい彼女はこう言う場で一歩引いてしまうタイプだ。

 

 ……麗日お茶子。

 同性視点でもここまでの優良物件は珍しい。性格も顔の造形もスタイルもいい。

 

 霊火としては緑谷に変な女が出来るよりは、麗日みたいな女の子とくっ付いてくれる方がまだ諦めがつく。

 ただこの調子だと霊火自身が障害になってしまっているようだ。

 

「譲るって……それはダメだよ……デクくんも霊火ちゃんと話している時が一番楽しそうだし、私の出る幕は無いかなって」

 

「……まあ譲ってあげるつもりなのは本当だけれど、出来れば早めに言ってね。私、あんまり自制が効く方じゃないから……こう……勢いに身を任せてみたいな……」

 

勢いって何?!?!?! いや別にデクくんの事なんて何とも思ってないんやけどね!?!?!?! はー何言っとるんやろこの子は!!!!!!!!!」

 

 麗日はまだ無意味な抵抗を続けていた。

 ……緑谷が麗日と話すときにぎこちないのは100%緊張の為なのだが、わざわざそれを教えてあげるほど博愛主義では無い。

 

 麗日は無意味に一通りぐねぐねした挙動不審な動きを繰り返した後、ふうん!!! と気合を入れた。

 

「よし霊火ちゃん!!!!!!!!! 試験頑張るよ!!!!!!!!!」

 

「それで”デクくん”ならどうするの?」

 

「霊火ちゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 ――――――――――

 

 因みに試験は普通にクリアした。

 

 『報告だよ、条件達成最初のチームは麗日・殻木チーム!!!』

 

「これはやられた。性格からして殻木さんが、単独で自信満々に仕掛けてくると思っていました」

 

「先生方の間で私そんな猪みたいな扱いなんです? お茶子ちゃんが良い案を出してくれたのでそれに乗ったんですけれど……。いやあ……『ブラックホール』にUSJの全てを呑み込ませてみても面白そうだったけどな……」

 

「やられなくて良かった……!!」

 

 最速クリア。クリアタイム40秒。麗日の出した案がピッタリはまった。

 

 麗日お茶子の『無重力』をかけられた霊火が『ブラックホール』完全無視で飛行。そのままゲートを突破して勝利。

 

「やっぱり『無重力』は『ブラックホール』に優先するんですね。……本当に宇宙に存在するブラックホール相手だと本当に通用するか怪しかったですけれど」

 

「僕がそんな物を出したら地球が滅んじゃうからね!! いやあお見事! 麗日さんの作戦勝ちだね!!!」

 

 演習も終わり、てれてれと恥ずかしそうにしている麗日を連れて学内バスで移動中だ。

 霊火はふっ……と遠い目になり、いきなり毒を吐いた。

 

「相変わらず『無重力』自体は最低最悪の感覚だったけれど……」

 

「なしてぇ!!?!?!?! 霊火ちゃんなんでそんなに私の”個性”を嫌うん!?!?!?」

 

「落っこちる感覚なのあれ。ごめんだけど本当の本当に苦手で……」

 

 無重力下でどちらが上でどちらが下かも見失いそうな中で『ブラックホール』に追われながら飛行する感覚は最低の一言だった。

 このペアと対戦相手の設定をした誰かさんは、間違いなく霊火の高所恐怖症を抉り出そうとしたのだろう。

 

「イレイザーあいつマジのガチで一回ぶっ殺す……」

 

「ちょ、殻木さん!?!? ちょっと今のは先生として聞き逃せないよ!?!?」

 

「ごめんなさい13号先生今のは失言でした」

 

 悪いと思ったら謝れるのは霊火の数少ない良い所だ。そもそも失言が多すぎるという話はあるが。

 

 ……まあ人の恐怖症を弄るのはどうかとも思う。霊火のこればかりは訓練や慣れで克服できるものではない。

 あまりこういう事をやられ過ぎると下手したら悪化しそうだ。相澤は”どうしてこうなったか”を知らないのでしょうがないのかもしれないが。

 

「……謝れたので不問にします。それで二人とも控室で……」

 

「あ、ごめんなさい。私保健室で……ケプッ

 

「うわあ霊火ちゃん!?!?!?!?!?!? 大丈夫!?!?!?」

 

 喉から変な音が出た。全然大丈夫ではない。

 実は霊火は酔っていた。つい失言したのもこれを堪えるのに気が散っていたからだ。

 

 慌ててエチケット袋を探す13号先生を眺めていると、霊火の背中を麗日がさすってくれる。

 彼女はコスチュームから酔い止め薬を取り出しながら、しみじみしたような声で呟いた。

 

「……私以外の人が吐きそうな事ってあるんだ……。なんか不思議な気分かも」

 

「……お茶子ちゃんも苦労してるんだね」

 

 ――――――――――

 

「あんたら早いね! まだ始まったばかりだよ」

 

 今回の試験の為にテント内に設置された保健室は、なんか監視室のような雰囲気を醸し出していた。

 室内は暗く、壁際に並べられた複数のモニターの青白い光だけが空間を照らしている。少なくとも保健室という感じではなかった。

 

 モニターには霊火たち以外の9つのグループの演習試験の様子が映し出されていた。

 

「わあ凄い皆頑張ってる……でも私たちは何となく分かったけれど、これどういう組み合わせなんだろうね?」

 

「それぞれの課題があるんだろうけれど……ぱっと見じゃ分からない組もあるね」

 

 保健室まで付き添ってくれた麗日と、モニターを見て好き勝手話す。

 

 

▶『VS根津校長』芦戸・上鳴ペア

 

『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!!!!!!!!』

 

「うわあ三奈ちゃん大丈夫かなあ……校長先生はテンション高くない?」

 

「根津は昔、人間に色々弄ばれているからね……こういう時うっかり素が出るね……」

 

「え、なにその話すごく気になるんですけれど……」

 

 

▶『VSプレゼントマイク』口田・円場ペア

 

『YEAHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!』

 

「……ここ詰んでない? 私もこの盤面は無理だと思うんだけれど……」

 

「ここは難易度高いからねえ……」

 

「わあ……頑張れ口田くん、円場くん!!! あ、耳が……!!!!」

 

「…………鼓膜が破れた時って、どう『治癒』するんです?」

 

「ん? そりゃあ耳にチューーー!!!! と……」

 

「うわ……」

 

「うわってなんだい」

 

 

▶『VSセメントス』砂藤・小森ペア

 

『ダルイ……眠イ……』

 

『うわあ置いていかないで欲しいノコ!!!!』

 

「ここはもうダメだね……セメントス先生が強すぎる」

 

「希乃子ちゃん……一緒に林間合宿行きたかったな……」

 

「確かにここも難易度高いが……、あの子たちもあんたたちも諦めるのが早すぎやしないかねえ」

 

 

▶『VSスナイプ』葉隠・角取ペア

 

I'm gonna k〇ll that f〇cking sniper for sure.(あのク〇芋スナイパー絶対に〇してやる……)』

 

「霊火ちゃんあれなんて言ってるの?」

 

「『私は負けない。絶対にクリアしてやる』ですって……いつもは優しい子なんだけどな」

 

「あの留学生、試験開始と共にド派手に撃ち落されてから恨みつらみって感じだねえ」

 

 

▶『VSミッドナイト』回原・峰田ペア

 

『やってられっかこんなクソ試験~~~~~!!!!』

 

「……ああこれ接敵した瞬間に回原やられたのか。……この対戦カードそもそも辛くない?」

 

「峰田くん……あんなに合宿楽しみにしてたのに……」

 

『女体触りたい……モテたい……』

 

「直球だね」

 

「”女性”ですらないのがもう終わってるね。人は性格だよ峰田……」

 

 

▶『VSエクトプラズム』尾白・取蔭ペア

 

『強制収容ジャイアントバイツ』

 

「ここは割と優等生コンビだけれど、そもそもエクトプラズム先生のスペックが高すぎるね」

 

「でも尾白くん避けたよ!!!! 普通に凄い!!!!」

 

「エクトプラズムに関しては分身の方に超圧縮重りが無いからね。付き合うだけ損だって事に気が付けるかだね」

 

 

▶『VSブラドキング』緑谷・轟ペア

 

『ぬううううううううんん!!!!!!!!!!!!! A組も中々やるではないか!!!!!!!!』

 

「轟くんもデクくんも凄い!!!! カッコいい!!!! ……はっ!!!!!!!!

 

「…………いやこれブラドキング先生が強くない? 超圧縮重り付けてこれ? 普通に出久くんと轟を真っ向から抑えつけているし」

 

「雄英教師たるものあれぐらい出来ないと務まらないね」

 

「その基準は結構な人手不足になりません?」

 

 

▶『VSパワーローダー』鎌切・鱗ペア

 

ケヒヒヒヒ…………ヒヒヒヒヒ!!!

 

「ここは普通に行けそう? まあ鎌切の反応なら地中からの強襲も避けられるか」

 

「ここは鱗がいかにして戦闘傾向の強い鎌切を落ち着かせるかだからね。……パワーローダー相手に撃破を優先すると逃げが強すぎて地獄を見るよ」

 

「でもクリアしそうだよ!!!! 凄い!!!!」

 

 

▶『VSイレイザーヘッド』吹出・常闇ペア

 

『ドカッ!!!!!!!! ドン!!!!!!!! ドン!!!!!!!! ドーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

「何にも出てない!!!!!!!!」

 

「ここはちゃんと落ち着ければちゃんと勝ち目はあるんだけどねえ……」

 

「”個性”特化で本体のフィジカル不足ズだし、私もここに入れられてたら辛かっただろうな……」

 

「あんたは一瞬の隙で取れる選択肢が割と多いし、対応力だって証明出来ているからね。担任的にはやはりこっちを見ておきたかったのだろう」

 

――――――――――

 

 演習試験終了後、一日明けた朝。

 教室はお通夜みたいな空気だった。

 

 試験をクリアできなかった者は4名。

 芦戸(校長に完封)、上鳴(同じく)、砂藤(後半は半分寝てた)、小森(セメントを突破できず)だ。

 

「皆……お土産話、っひぐ、楽しみに……うう……してるっ……から……!」

 

「……芦戸にも上鳴にも、ちゃんと勉強教えたのになあ。それじゃあ私たちは楽しんでくるね」

 

「殻木!?!? お前鬼か!?!?」

 

 霊火がニヤニヤしながら煽っていると、円場硬成(土壇場で音を防ぐ壁を作り出し、それを盾にして突破)が止めようとする。

 しかし少女はその程度では満足出来ない。

 悪い笑顔でうーん……と悩む素振りを見せると、試験を通過したメンバーの方へ振り返り満面の笑顔で言った。

 

「それじゃあ皆!! 合宿のために一緒に買い物に行こうよ!! 水着とか服とかお菓子とか!!!! あ、花火とかも買っちゃう? 私打ち上げ花火買う!!!! 楽しみだね~~!!!!」

 

「霊火ちゃん!?!? いや私もそう提案するつもりだったけど後ろの人たちの事考えてあげて!?!?」

「どうしたの!?!? 霊火さんがこんなにテンション高いの初めて見た!?!? ほらどんでんがえしも……」

 

 葉隠(角取がムキになってスナイプ相手に大暴れしている隙に全裸ストリーキングで突破)と緑谷(轟と組んでブラド先生相手に真剣勝負の末、辛勝)が霊火の暴挙を慌てて止めに来る。

 背後の小森から本泣きの気配を感じて、霊火はケラケラと笑って席に着いた。この辺りが限度だ。

 

 ガラリと扉が開き、相澤先生が教室に入ってきた。

 教壇に立ち、直接本題に入っていく。

 

「おはよう、今回の期末テストだが、演習試験で残念ながら赤点が出た。したがって……」

 

 霊火の前の席の上鳴から背後からでも分かる絶望オーラが発せられていた。

 

「林間合宿は全員行きます!!!!」

 

「どんでんがえしだあ!!!!」

 

 霊火が爆笑していると、斜め後ろの席の取蔭(尾白がなんとかエクトプラズムを抑えている間に全身分割しながらゲート突破)が声をかけてくる。

 

「……霊火これ気が付いてたでしょ」

 

「だって合宿って元々特訓でしょ? 成績悪くて休んでたら差が開いちゃうし……」

 

「…………まあ殻木が言った通りの理由だ。合理的虚偽ってやつさ」

 

 直後赤点メンバーに回原(ミッドナイトに接敵した瞬間入眠。峰田が1人で一世一代の名演技ぶりを見せて試験突破)が加えられ、別途に補習時間があることも付け足されると補習組の興奮も収まる。

 

 ……霊火はそもそも林間合宿が楽しくなるかどうかも懐疑的だったりするのだが。




割と原作に近めの展開なのでちょっと早足です
あとI・アイランドに行きます。テーマ的にちょっと外せないので……
劇場版ヒロアカを見たこと無い人でも内容は分かるようにするつもりです
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