殺人現場より、愛をこめて   作:トリスメギストス3世

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お久しぶりです


074:壊れかけたこの世界で

 随分と久方ぶりの感触だと、素直にそう思った。

 

 黒髪ロングの姫カット、大きな赤い瞳に華奢な身体つき。殻木霊火の黒いブーツの靴底が、壊れたビルの屋上のひび割れたコンクリートの感触を確かに得る。

 頭上は既に夕暮れ。

 ”ピースキーパー”制度施行からは既に3日。日本は未だに大混乱の中にあった。

 

 「到着~!!」

 

 金属製の”空飛ぶ箒”から降りた魔女は、屋上の縁から街を見下ろす。

 

 東京都心部は、『ギガントマキア』災害の中心地だ。

 赤坂付近のここはかつては大型の高層ビルが立ち並ぶ大都会だったが、他ならぬ霊火自身がギガントマキア戦の過程で都市建造物の大破壊を引き起こした事もあり、破壊の爪痕は未だ色濃く残っている。

 

 更には”ピースキーパー”以後には霊火が『ふうか』の性能テストを兼ねてこの都心で再度大暴れさせたため、都内の被害規模は大きく広がり更に悲惨な事になっていた。

 因みに霊火製造の戦闘用アンドロイドちゃんこと『ふうか』はMt.レディの『巨大化』の捕食に成功したことで、ありとあらゆる”個性”による攻撃行動の攻撃力と射程が爆増したようだ。結果、彼女はヒーローや”ピースキーパー”ユーザーとの戦闘の過程で山手線内全域を殆ど瓦礫の山にしてしまっている。

 我が製造物ながら恐ろしい戦闘力というのが霊火の率直な評価だ。目を凝らせば東京タワーがど真ん中で斜めに切り飛ばされているし。

 

(まあそんな彼女も今は撤退させて『工場』内にて休息中だし……まあそれに限らず大型懸賞首たちは大体潜伏しちゃったなあ……。『美貌』も撤退させたし、『生体人形』も回収済みだから……)

 

 見渡す限りの倒壊したビルの山で構成された東京だが、今の霊火の傍にいつもの緑のモサモサ頭はいない。現在、霊火は緑谷とは別行動だ。

 首輪の位置情報を見るに彼は愛知近郊で救助活動やら敵退治やらをしているはずだ。彼の平和への貢献という名のオーバーワークぶりは結構な事だとは思うが、霊火にはついていけない。

 

「……悪いけど私はそこまでモチベーションないんだよねえ……」

 

 霊火とて緑谷に同行したいのは山々だったが、霊火は別に平和を愛する正義のヒーローというわけではないため、”ピースキーパー”による敵退治に対する気力が湧かなかった。

 そもそも体力があまりない霊火である。まあまあ体力お化けかつオールマイトの狂信者でもある緑谷出久とは精神的にも肉体的にも歩調が合う訳が無く、”ピースキーパー”活動は自然と別行動になってしまったのだ。

 

 つまり緑谷出久は只今単独行動という事だが……

 

(……まあ出久くんは放っておいても死にはしないでしょ。もう『検死官』としての私でも手が付けられない強さだもん)

 

 少女は軽く頭を振って想い人への心配を振り払う。

 というよりむしろ単独行動が不安定なのは、耐久力に難を抱え不意打ちや初見殺しの一発で即死する霊火の方という話もある。

 

(……出久くんは、私は休んでてって言ってくれたけど……)

 

 とはいえ、今回の場合は彼をこの都心に連れて来なくて正解だったかもしれない。

 なにしろ高層ビルの屋上にいる霊火のもとにもかなり強いプトレシンやカダベリンといったアミン類、そして硫化水素やアンモニアなどが混ざった匂いが届く。

 これは大規模な災害現場、特に多くの遺体が取り残された状況で深刻な問題となる悪臭だ。

 

 つまりは「死臭」。ヒトの死体が腐った匂いである。

 

 この手の腐敗臭は気温や湿度が高い環境、特に今のような8月などは腐敗の進行が速くなる。

 そして臭いはより早く、より強くなる。遺体が瓦礫の下などすぐには収容できない場所にある場合、臭いは広範囲に、そして長期間にわたって漂い続けることになる。

 

 (まあ戦場然り災害救助しかり、常に「死」を意識させられる過酷な状況は活動後のPTSDの非常に大きな要因となるからね、出久くんは連れてこなくて正解だったかも?)

 

 まだまだ甘ちゃんだもんね~、と霊火は誰にも聞かせる事のない独り言を呟く。まあどちらにしても腐敗した死体のでろでろになった洋服を弄って、身分証明書を見つけ出して死体と名前を一致させる作業など高校生にさせていい経験ではない。

 もちろん少女自身は『検死官』。死の匂いなんてほぼ実家の匂いだ。今更トラウマになんてなりようがないのだが……。

 

「ふう」

 

 幼くも甘いため息が一つ。

 少女は取り留めもない思考を一旦停止させ、眼の前の光景に注視する。

 

 ”ピースキーパー”アプリユーザー。

 獲得賞金額46億2000万円の”第二位”。

 世間の方々には霊火がアプリ登録時のニックネーム機能に悪趣味で入力した『令嬢(フロイライン)』と呼ばれる事が最近多くなってきた少女は、その名前に似合わない悪い笑みで壊れた街並みを睥睨した。

 

「さてさて、お仕事お仕事。悪い事した人はどこかな~?」

 

 霊火が肩から掛けている旅行用の大きなショルダーバックから、小さな羽音と共に小さな”ホーネット”が何匹も飛びだした。

 少女は軽く義腕の左手をあげて小さな”それ”を軽く摘まむ。

 

 全長約5mm弱。

 一見すると大型の蜂に酷似しているが生物的な質感はなく、マットブラックと蛍光色のピンクでカラーリングされた硬質な装甲で覆われた小型デバイス。

 複眼部分はマルチスペクトル・レンズになっており、静音性に優れた翅は時速40キロでの飛行を可能とする。そして数百、数千の”ホーネット”が連携して都市の一区画全体を死角なく同時に監視する。

 一個体が見失っても別の個体が即座に追跡を引き継ぐため、一度捕捉されたら逃れることは不可能に近い。屋外はもちろんカーテンの隙間や換気口から侵入してくる”ホーネット”により、屋内ですら完全な私的空間は存在しない。プライバシーという概念を完全に置き去りにした監視装置。

 そして翅は半透明のソーラーパネルを兼ねた極薄のグラフェン製でエネルギーハーベスティングを兼ねるため充電の必要すらない、完全にオーバーテクノロジー一歩手前の一品だ。

 

 正式名称:広域監視用自律飛行体 WASP-7 (Wide Area Surveillance Probe - Model 7)。

 霊火を緑谷を最強の”ピースキーパー”アプリユーザーたらしめた、霊火特製の情報収集デバイスだ。

 

(”ピースキーパー”も民間人のスマホカメラを使って懸賞金を懸けるなんて回りくどい事しないで、直接自前のカメラを飛ばせばいいのにね)

 

 ブウウウウウぅぅぅウウウンン―――、と霊火によって数千匹もの”ホーネット”が街中に放たれた。

 それに呼応するように少女のすぐ傍にて浮遊する金属製で仰々しい『魔女の箒』が微かなモーター音を発しながら半透明のモニターを複数展開し、カメラの映像を映し出す。

 ”空飛ぶ箒”の他にも”ホーネット”の中継地点や指令機の役割も兼ねている霊火の乗物は、大量の極小端末を自動的に操り、壊れた都心を効率的にサーチし始める。

 

「……参ったな。こんな監視端末持ってることが世間とか警察にバレたらまた私の危険度が上がっちゃうよ」

 

 ”ホーネット”は録画対応もしているため首相官邸の執務室に最高裁判所の評議室といった行政機関から会社の秘密の会議室や工場と言った産業スパイ、そしてあの子のスカートの中まで楽々盗撮が可能という一品だ。霊火のクラスメイトに滅茶苦茶欲しがりそうな人がいるが、まあ善良なる世の皆様はこれの存在自体を決して許してくれないだろう。後ろ暗い何かがある人はもっと許してくれないだろう。

 毎度おなじみの『作れるのに作ったらいけない』系の発明品だ。これを興味のままに作り上げてしまうからこそ霊火は敵にしかなれないのだが……。

 

「まあこんな”ホーネット”なんて大仰なシステム使わなくても、監視カメラとスマホレンズとドラレコが街を埋め尽くすこの時代にプライバシーなんて幻想は元々存在……おっと!」

 

 1分も経たない内にピーッ!! と、半透明のウィンドウが赤く点灯した。

 "ホーネット"が標的を見つけた音だ。思ったよりもターゲットは霊火の近くにいた事になる。

 

「んん、これぐらいなら移動しなくても直接……」

 

 霊火はちらりと半透明のスクリーンを見て座標関係を確認する。

 

 少女は目的の方角を見据えると、右手の人差し指と中指に"鬼火"を灯して唇に軽く当てた。

 エッセンスは"交通事故"に"鈍器による撲殺"。

 霊火はそのまま遥か彼方に向けて、小さなリップ音と共に投げキッスをする。

 

 それとほぼ同時に遥か先、4000メートルほど離れた壊れかけの倉庫の外壁をぶち抜いた。

 霊火から見たら米粒の様にしか視認できないが、一応被害規模としては直径10メートル級の楕円形がコンクリートを消し飛ばした感じだ。

 

 大破壊から10秒以上遅れて響いた衝撃音を聞き流しながらも霊火は自身のスマホをチラ見する。

 表示されているのは”ピースキーパー”の画面。撃破報告だ。

 懸賞金7000万ゲット。霊火は滅法危険な犯罪者と対等な撃ち合いなんかに付き合うつもりは無い。

 超ロングスナイプによる一方的な駆逐で易々と目標を無力化した華奢な女子高生は愉快そうにくすくすと笑った。

 

「は~い一軒家ゲット〜。うわー、世の中ちょろいなあ」

 

 神経を貫く強烈な頭痛と後頭部を打った時のような危険な吐き気は、顔には出さなかった。

 

 ”個性”『死因』の副作用は現在進行形で霊火を蝕んでいる。

 少女は、自身の不調にこう思わざるを得なかった。

 

 ……次は、何を失う事になるのだろうか。

 或いは、自分では気が付けないだけで、自分は既に何かを失っているのか?

 

 ――――――――

 

 因みに『ギガントマキア襲来』『神野の隕石』『未確認の敵団体による警察襲撃』『”ピースキーパー”前後の大混乱』による日本国内の死傷者・行方不明者の数は、ざっと500万を超えた。割とちゃんと国家存亡の危機だ。

 参考までに、所謂大震災と呼ばれるような災害でも死者数は3万人は越さない。ついでに第二次世界大戦時の日本の死者数は軍民合わせて300万人程度だと言われている。

 

(んっん~……。なるほど。これで一応避難所経営が上手くいっているのは流石の災害大国だけれど。まあ物流が壊れたこの社会で、有限の備蓄を頼りにどこまで理性的な避難所経営が出来るかは見物だなあ……)

 

 都内の小学校だった。

 ……都内と言っても死の山手線の外。23区を外れた西側のベッドタウンに位置する、公立のありふれた校舎だ。

 

 霊火は周囲を見回す。

 

 時は午後8時。一面が暗いのは停電により天井のLEDに電気が通っていないからだ。

 外に面した窓という窓は即席の合板で塞がれている。廊下には机や椅子が乱雑に積まれただけのバリケード。この辺りは治安悪化における敵の襲撃に対する防御反応か。

 仮に避難所と化した小学校を襲うような凶悪敵がいたとして、そのような外敵にお手製のバリケード防衛が意味があるのかはかなり判断に困るところだが……。

 

(大方避難民の『何か意味ある事をしていたい』という逃避かな。何か有益な意図をもって手を動かしていないと、重圧で心が先に潰れてしまうから動くみたいな……)

 

 窓が全て封じられた上に廊下もあちこちバリケードで寸断されているので歩きにくい。

 そしてそこかしこの壁に寄り掛かるように老若男女が思い思いにしゃがみこんでいた。まるで野戦病院のようなありさまだ。

 停電の影響で冷房もついていないためとても蒸し暑い。実際、断水の影響もあり熱中症患者も相当出ているようだ。

 

(一応私が神野に落とした”天落”の影響でこれからプチ氷河期は来る予定なんだけれど……)

 

 沈鬱な薄暗い廊下のあちこちから神経質な視線が突き刺さる。

 殻木霊火。この悪夢の八月の切っ掛けを作った女。

 霊火が”ピースキーパー”でいくら敵を退治しようとも、未だに『殻木霊火が最初にステインに殺されていたらそもそも全ての問題は起きなかった。殻木霊火のせいで今の俺たちは家族を亡くし、こんな苦しい目に遭っている』という意見は根強い。

 困ったことに、実際は神野に隕石を落とした件(その他余罪多数)に関しては本当に霊火が実行犯なため、こちらとしても特に反論する気も起きない。

 

 とはいえ霊火も用もなくこの避難所に来たわけではなく……。

 

「見~つけた」

 

 保健室の中に目当ての人物を見つけた霊火はニヤリと笑った。

 少女は迷いなく無造作に引き戸を開け、室内に踏み入る。

 

 その人物は、脚を怪我した避難民の男性に触れ、”個性”を用いて治療をしている途中だった。

 霊火は遠慮がちにその人物に声をかけてみる。

 

「……どうも~? 初めまして~?」

 

「……殻木霊火。この俺に何の用だ?」

 

「わあ塩対応。でも私たちは同業者じゃないですか。折角だから挨拶ぐらいはしておこうと思ったんだけれど?」

 

 鋭い殺気に苦笑する霊火は相手の許可も取らずに、保健室内のパイプ椅子に腰かけた。

 男から鋭い舌打ちが返ってくる。怪我を治された避難民の男は、霊火の姿を見て酷く動揺した様子で保健室を飛び出していった。

 

 2人きりとなった保健室に恐ろしい沈黙が下りる。

 霊火は肩をすくめて、ひとまず社交辞令から入った。

 

「……素晴らしい”個性”ですね」

 

「だから何の用だ?」

 

「世間話でもと思っただけなんですけど……」

 

 酷薄な目元にトレードマークの赤いペストマスク。

 紫色のファー付きのモッズコートに黒シャツと白ネクタイ。

 敵名『オーバーホール』。本名”治崎廻”。

 

 現役のヤクザは、深々と溜息をつくと和やかな表情を顔面に貼り付けてこう言ってきた。

 

「殻木霊火……何か治して欲しい所でも? 悪くした右脚の調子はどうですか?」

 

 少女はつい抑えきれなくなって小さく笑った。

 確かに彼の”個性”ならばUSJ事件にてズタズタになった右脚の治療は可能だろう。しかし、この提案に応じるほど霊火は世間知らずではない。

 

「それは遠慮しておきます。極道相手に大きな借りを作る事ほど悍ましい事は無いので」

 

「酷い言い草だ。俺は善意で”個性”を市民の皆様に振るっているというのに」

 

 ”ピースキーパー”アプリユーザー。

 獲得賞金額10億300万円の”第三位”。登録名『オーバーホール』。

 オーソドックスな敵退治の他にも建物の再建や怪我人の治療で凄まじい実績を上げ、市民人気を欲しいままにしている極道は困ったような低音で霊火に笑いかけた。

 尤も、目の奥が全く笑っていないため普通に怖かったが。

 

 ――――――――――――

 

「実際、治崎さんは何を目当てに”ピースキーパー”なんてアプリに協力していたんです?」

 

「……………………………………………………」

 

 校舎の屋上。

 白い”鬼火”を傍らに灯して光源を確保している霊火は世間話のテンションで治崎に問いかけてみるが、返ってきたのは氷のように冷たい沈黙だった。

 

 まあ『オーバーホール』が”ピースキーパー”にて治安維持に貢献しているのは資金の確保と影響力の拡大が主な動機だろう。治崎に限らず一般論としても、この手の反社会的勢力にとって大規模な災害は、伝統的な任侠道でも組織のイメージアップと宣伝でも、極道としての組織の存在価値を社会に示す大チャンスでもある。

 

 ヤクザは霊火の質問には答えないまま、こう切り出した。

 

「……殻木球大は、残念だったな」

 

「ん? あ、ああ……。そうですね。……私の父親は殺されてしまいましたが……」

 

 予想していたのとはかなり違う方向の話だったため反応が遅れてしまった。

 確かに霊火の”父親”である殻木球大は表向きには死亡したことになっている 。

 ギガントマキアが都心を襲撃し、「殻木霊火を殺せ」と叫んだことで発生した集団パニックの最中に霊火の養父であるという理由で、狂乱した市民が彼の運営する蛇腔総合病院に雪崩れ込んだのだ。そして、彼はその場で市民たちの”個性”によってリンチを受け、殺害されたと報道されてまでいる。

 

 まあ実際は殻木球大はある意味”生きている”上に、そもそも彼はギガントマキアを霊火に差し向けた『ドクター』でもあるため霊火としてもこの事件は悲しむ要素が無さすぎるのだが、確かに治崎のような外部から見てみたら今の霊火ほど可愛そうな境遇も無い。

 ”暴徒と化した民衆に親を殺される”など、エピソードとしては少年漫画の悪役の過去編にすらなりそうなレベルの”悲劇”だ。

 

 そもそも霊火が”ピースキーパー”の登録時に『令嬢』と名付けたのはその皮肉も込みだったのだが、正直民衆に父親が殺されたこと自体は霊火にとってはさして重要な話では無かったのだが……。

 

「……まあ、私の父親についてはまだ色々と心の整理がついていなくて……うん……そういえばあの人の葬儀とかどうなってるんだ……?」

 

「……。俺は、かつて君の父親が経営する施設の世話になっていた。今回の事件については、俺としてもとても残念に思う」

 

「そう……ですか……」

 

 そういえばそうだったなあというのが、霊火の正直な感想だった。

 治崎が『ドクター』が経営する孤児院に居たのは霊火どころか戻橋火燐が産まれる前の時代の為、直接の接点は全くない。しかし、確かに死柄木弔の『崩壊』コピー元はドクター培養製の『オーバーホール』だという事を思い出す。

 

 内心かなり動揺する霊火に、治崎は懐から一枚の紙を取り出して霊火に渡して来た。

 少女が受け取ったそれは、名刺だった。

 

「何か困った事があれば、これに連絡してくれ」

 

「……ありがとうございます」

 

 霊火は少し迷ったが、名刺は受け取る事にした。

 これで用は済んだとばかりに立ち去る治崎の後姿を見ながら、思案を巡らせる。

 

(……判断に困る。ヤクザとの関わりを持つこと程おっかない物はないんだけれど……)

 

 『検死官』としての霊火はとにかく、表の身分の『雄英生徒のヒーロー志望』としてはヤクザの名刺は絶対に持ってはいけない物だ。故に模範解答は、今すぐこの名刺を破り捨ててしまう事なのだろう。

 但し、今の『オーバーホール』は”ピースキーパー”獲得賞金額3位の大物だ。”個性”の有用性込みで、連絡先を持ち続ける価値はリスクを上回るかもしれない。

 

「………………………そもそも死穢八斎會は、あんなに資金を集めて何をしたいのやら……」

 

 霊火は、一先ず治崎の名刺をバッグの中に放り込んだ。




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