竜大戦時代〜黒き風は何を齎す?〜   作:ヒック

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プロローグ

ゴゥと私の身体が

蒼い空を駆け上がっていく。

体を撫でる風がひんやりと気持ちいい。

「凄いじゃないか!コツを教えた瞬間にそれを実行できるなんて!君は天才だね!」

下から先輩が上昇してくるのが分かる。

「…そんなこと…ない。貴方の教え方が上手いだけ。風にも温度の違いがあるなんて
言われるまで…気付かなかった。しかも飛ぶことに利用する…貴方の方が天才。」

「そう言われると嬉しいな。」

弾んだ声と共に、優しいポカポカがやってきた。

ただ眩しさしか感じないレオス種のそれとは違う、心から安心できるポカポカ。

できることなら貴方とずっと一緒に飛んでいたい。

でもそれは時代が許さない。




竜大戦開幕
〜飛翔〜


『1:00より第一次奇襲航空大隊の壮行式が行われます。生徒の皆さんは10分前には大講堂へと向かって下さい。繰り返します。1:00より第一次奇襲航空大隊の壮行式が行われます。生徒の皆さんは10分前には大講堂へと向かって下さい。繰り返します…』

 

「やべぇ、このままだと遅れちまう!急げ!遅刻したらお終いだ!急げ!ゴマちゃん!」

 

「うっせぇ!だれのせいだと思ってんだ!後、ゴマちゃんやめろ!」

 

二人の生徒が講堂へと向かう道を突っ走っていた。彼らは壮行式で見送られる側なので、一般生徒よりも先に着いて準備しなければならなかったのだが、会話に夢中になり過ぎて忘れていたのだ。

 

「はっ、あんだけお前だってさっきの最終飛行訓練の時の、ネブラ科の女の子、フェルナちゃんか?あの子について語りまくってたクセによ!よく言うぜ!」

 

この発言をした銀髪青眼の男、レウス科の希少種である彼は名をヘリオスという。原種より全体的に優れている希少種であり、努力家である彼は正にスーパーエリート。唯一飛行能力においては第2位の成績であるが、戦闘面において並ぶもののないその実力は学園席次1位の肩書きが証明している。エロガキであるのが玉に瑕のナイスガイだ。

 

「なっ!」

 

こちらの顔を赤らめた黒髪の目を閉じた長身痩躯の青年はこれまた希少種であるマガラ科の、ゴア・マガラである。レウス希少種よりもさらに希少であるマガラ科の生物は彼以外確認されておらず、故に名前も学名のままだ。彼こそ飛行能力においてヘリオスを上回る男だった。攻撃能力がやや貧弱なため、総合席次はかなり低い。しかしその優美な飛行と優しい性格でヘリオスに負けず劣らずの有名人だった。むっつりスケベなのは本人だけの秘密だ。

 

もっともヘリオスにはバレてるが。

 

「ふ、ふん!彼女の真の美しさは目でしか物を見れない君にはわからないだろうね!熱感知の僕にはわかるよ!彼女は清楚で優しい女の子だ。きっと見た目だってセレーネちゃんより美しい!」

 

「なんだと!言ったな、この野郎!」

 

「何回でもいってやるさ!」

 

 

 

そうこうしている内に彼らは大講堂へと着いた。入り口前に赤髪灼眼の大男がたった大講堂へと。

 

『遅すぎるッ!』

 

声がそれなりに離れているにも関わらず、反響して響いてくる。

 

「無茶苦茶怒ってんな、アレ。」

 

ヘリオスがマガラに話しかけた。

 

「ああ、無茶苦茶怒ってるわ親父。」

 

マガラが答えた。

 

モンスターを導く龍であり、この学園の校長であり、そしてマガラの義父である彼はテオ・テスカトル、別名『炎王龍』と呼ばれ、恐れられていた。

 

本来の姿がもつ燃える鬣を思わせる髪の毛が通常よりも紅く、そして天を衝いているのを見て二人は縮み上がった。

 

得に熱で世界を見るマガラは、義父の怒り具合がはっきりとわかった。義父の周囲に陽炎が発生している。マガラは気が重くなった。

 

義父の顔がこちらを向く。一体どうやってかは分からないが、とにかく気付かれたようだ。

 

『やっときたかぁぁぁッ!』

 

一瞬でテオ・テスカトルは二人の目の前に来た。目をもたないマガラは兎も角、視力に優れるヘリオスにも分からない速さであった。

 

「「ひっ!」」

 

「すみません、校長先生!実はお宅のムスコのせいで遅くなりました!」

 

「ごめんなさい、お義父さん!実はコイツのせいで遅くなりました!」

 

同じタイミングで互いに擦り付けようとする二人。

 

「「ハァ⁉︎」」

 

そして二人は再び口喧嘩を始めた。

 

「何いってんのお前!馬鹿なの?お前のセレーネ自慢のせいだっていってんだろ‼︎」

 

「お前こそ馬鹿だろ!お前のフェルナちゃんの話が長すぎるからだっていってんじゃんかよ!」

 

大男が震えた。

 

『お前らァ、誰の前か分かってんのか?アアん?』

 

大気が震えた。

 

「「す、すみませんでしたぁ!」」

 

「まぁいいや。まだ時間はギリギリだがある。さっさと中に入って他校の奴らと挨拶してこい。特にヘリオス。お前は中隊長なんだからな。」

 

「「りょ、了解であります!」」

 

 

二人は駆け足で中へと入っていった。

 

 

 

 

残ったテオ・テスカトルはひとりごちる。

 

「あの、むっつりにも好きな雌が出来たか…」

 

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

・・・

 

 

 

『…である!故に我々はヒトを絶滅させねばならない!』

 

講堂でテオ校長が演説している最中、挨拶を終わらせた二人は

全校生徒の前にも関わらすまた会話に華をさかせていた。

 

「おい、お前のいってたフェルナちゃんってのはあの上の列の右から3番目の奴か?」

 

「うん?あ、そうそうその子。お前の目からしてどうよ?」

 

「そうだな、薄いくて珍しい水色の髪の毛に赤い目のほっそりした体つき。きっと目は見えてないんだろうが、確かに可愛い子だな。」

 

「ふ、お前の目でも素晴らしいことぐらいは判るか。手ェだすなよ。

あの子は俺のだ。」

 

「はっ、まだ告白もしてない癖に彼女気取りか?笑わせんなよ。テメエが好きになっても告白できずに終わった雌の数、俺が忘れたわけないだろ?」

 

「本当に煩いな、お前は。そんなフェルナばっかり見てるとセレーネにぶっ殺されるぞ。ほら、彼女お前のことみてるぜ。」

 

「おい!兄弟!そいつをさっさと教えてくれ!俺の命がガチで危ない!」

 

セレーネはヘリオスの彼女でリオレイア希少種である。結婚前だというのに、ヘリオスが彼女の尻に敷かれているというのはかなり有名な話だ。

 

とそこでマガラはフェルナが自分をみていることに気付いた。

 

手をふってみる。

 

彼女も手を振り返してくれた。

 

マガラはポカポカした気持ちになった。

 

「ヘイ、ヘリオス。今の俺なら世界だって獲れるぜ。」

 

「何いってんだ。お前?」

 

 

『…以上、戦の先陣を切る彼らに惜しみない声援と拍手を!』

 

 

どうやら終わったようだ。

 

クルペッコ演奏隊による演奏が始まる。

 

それは雄大で、美しい自然をイメージさせつつ、勇気を讃え、友ともに困難を乗り越えようという、

今まさに、戦いにうってでようとする飛竜達を奮い立たせる素晴らしい曲だった。

 

ガコン、と何かが外れたのような音の後、大講堂の屋根が開いて飛び立てるようになる。突き抜けたような青空がひらけた所から見える。

 

まるで僕らを歓迎しているかのようだ、とマガラは思った。

 

「いよいよ始まるんだな、ヘリオス。」

 

「そうだな。でもヒトの街まで遠いらしいし、気がはやいんじゃないか?」

 

「でもこれが戦争の始まりだと思うとワクワクしないか?俺たちが先陣を切るんだ。」

 

『飛行隊形に開け!』

 

テオ校長の指示に従い、各員が互いに所定の位置へと動いた。

人間態を解除すると基本的に皆体積が大きくなる為だ。

 

「そう考えると確かに、興奮してきたぜ!」

 

『人間態、解除!』

 

ヘリオスの体が眩い銀の火竜の姿に、マガラの体がまるで漆黒の外套を着込んだかのような竜の姿に、そしてテオ校長の姿が偉大なテオ・テスカトルのものへと変化した。他の生徒は基本的にリオレウスのようだ。

 

最後の号令は龍の咆哮によるものだった。

 

『Guaaaaaaaruuuuuuuaaaaaaaaaa!』(飛翔せよ!)

 

その合図と共に一斉に竜は飛びたった。作戦の成功を祈る声援を背に。先導はテオ・テスカトル。

 

 

今、竜大戦が始まろうとしていた。

 

 




初投稿です!正直のんびり更新ですがお付き合い頂けたら嬉しいです(^∇^)
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