竜大戦時代〜黒き風は何を齎す?〜   作:ヒック

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潜入開始

一匹の黒い竜が積乱雲の中を突っ切って行く。

 

乱気流が吹き荒れていることこそ厄介だが、その分隠れて近づくことができるので潜入任務にはある意味、雷雨という天候はありがたいものだった。

 

『HQ。』

 

『こちらHQ。』

 

その竜はよく見ると、その漆黒の鱗とは真逆の純白の角の様なヘルメットをつけていた。その透き通った中に紅雷を閉じ込めた角をもって竜は遠くの誰かと連絡をとっていた。

 

『こちらcode:black。もうじき乱気流を突破する。』

 

『了解。その雲さえ抜ければ目的地までは障害がない。潜入時に発見されない様気をつけろ。』

 

『了解。ではこれよりベセスダへの潜入セッションを開始する。』

 

『幸運を祈る。』

 

『感謝する…ってか親父。いつまでこの堅苦しいの続けんの?HQったってどうせ親父一人だけで他の火竜はトランプでもやってるんでしょ?だれも聞いてないしやめよーぜ。ってかcode:black?なにそれ中2?』

 

『黙れcode:black。今は任務中だ。私語は謹め。』

 

息子にバッサリと切られ、少したじろいだ義父の声が聞こえる。

 

 

 

積乱雲を抜けた。

 

優しい月光がマガラを照らす。

 

親父はこういうときにテンションあがるからめんどくせー、とマガラは通信機に音が入らないようにひとりごちた。

 

時は少々遡る。

…………………………………………………………

場所は移動用ジェンモーランの上。第一次奇襲航空大隊作戦会議の直前だった。

 

テオとヘリオス、そしてマガラが会話をしていた。

 

「えーーーーーーーーーー!!!!」

 

人間態にも関わらす、本来の姿なみの大声をだした。そう確信できるほどマガラは驚いていた。

 

「奇襲作戦は2段階に分けて行って、しかもその一段階目が俺一人の潜入ミッションだあ⁉︎」

 

「おい、静かにしろ。他の竜が怪しむだろーが。」

 

ヘリオスがマガラに注意する。

 

「そうだ。如何に私含めこれだけのエリート火竜で殲滅作戦を行うと言っても、都市一つを完全に吹き飛ばすのは骨が折れる。そこで攻撃のはじめに一つ景気良く粉塵爆発をおこす。貴様のミッションはその下準備として、粉塵…まぁ鱗粉だな。それをばら撒いてこい。」

 

「工兵もどきじゃねーか!」

 

「そうとも言う。」

 

「というより、ほぼ工兵だろ!なんだよ俺も漸くカッコよく戦えると思ったのにさ…。」

 

「は、カッコよく?マガラが?無理無理。テメーなんかただの黒い煙の塊吐くしかできねーじゃん。」

 

プププ、とヘリオスが笑う。

 

「テメェは黙ってろ!まぁ…実際の所…そうなんだけどさ。」

 

普段は意識して抑えられている黒い鱗粉が溢れ出てきて、マガラのテンションが如何に低いかを示していた。

 

「まぁそう気にするな、マガラ。お前が選ばれたのはお前以上の適役はいないからだ。可燃性の粉塵をばらまけ、目くらましができ、飛行が最もうまく、かつ飛行中も手が自由だ。その上攻撃で粉塵を燃やすことはない。完璧じゃないか。ほら、お前のエリアルレイヴか?あれの出番だぞ。」

 

「う…それをだすな。」

 

ここで初めてマガラは呻いた。

 

「いやぁ、お義父さんは嬉しかったぞー!なんたって自分の息子が中2の良さを分かってくれたんだからなぁ!」

 

「やめろー!その話題をだすなー!」

 

「お?照れんてんのか?かわいいなーこのやろー」

 

テオは息子の頭を揉みくしゃにし始めた。

 

「こ、このヤローガキ扱いするなぁ!」

 

 

「あ?俺に挑むか?いつも通りケチョンケチョンにしてやんよ!」

 

「上等だ!このクソ親父!」

 

 

 

血のつながりこそ無くとも、そこには親子のじゃれ合いがあった。

 

 

時暫くして。

 

 

「「ハァ、ハァ、ハァ。」」

 

「まだまだだなこのクソガキ。俺の本気はこんなもんじゃないぜ。」

 

「嘘つけ!途中から髪の毛が真紅になってるから丸わかりなんだよ!大人として子どもに本気出すくせに嘘つくなんてやっぱ最低だなこのクソ親父!」

 

「なんだとゴラァ!まだボコラれ足りねえようだな「あのー。」ん?」

 

 

「あのー二人とも俺のこと忘れてないっすか?」

 

「「あっ。」」

 

ヘリオスの言葉で目を覚ました二人。

 

「あーあ。負けたか。まぁいいや。よし!。単独ミッションは引き受けよう。その代わり、敵中単独潜入ミッションなんてするんだ。最高レベルの勲章を寄越せ。」

 

「ふん、漸くやる気をだしたか。いいだろう。成果に応じて勲章はくれてやる。キッチリ働けよ?」

 

「あいよ。」

 

「よし、じゃあ事前ミーティングだ。集合をかけるとしよう。」

 

「あっ!待ってくれ親父。おわったらどうやって連絡したらいいんだ?下手すると俺まで真っ黒焦げになっちまう。」

 

「テメーはもとから黒だろ。」

 

とまたヘリオスが笑う。

 

「いい加減お前は黙れ!で、どうなんだそこらへん?」

 

「ふん、それに関してはだな。とっておきのものがある。

 

そう言ってテオ・テスカトルは笑った。

 

 

……………………………………………………………

『まぁ、確かにとっておきのものだな。こんな離れた所でも話ができるなんて。これさえあれば生活が物凄く楽になりそうだな。どうやって手に入れたんだ?』

 

『こちらHQ。いい加減言葉使いを改めろ。あとこれに関しては機密なので話すことはできない。』

 

『へいへい。こちらcode:black了解。』

 

いよいよ町…今回の目的地ベセスダが目前に近づいてきた。

 

 

風をきる黒き竜は月光を背に、漆黒の粒子を立ち昇らせて少年の姿となって降り立った。

 

『潜入成功。これよりmission:seedingを開始する。』

 

 

 

 

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