キャサリン・ロングボトムは魔女である   作:Yumoru

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あんまり人気がないみたいなので更新やめようかなあと思っていたので、感想にとても励まされました。
これからも更新がんばります。


第10話 求ム・呪われた日記の捨て方

ホグワーツ 1月初めのある日 晴天

 

(ジニーから日記を取り上げなきゃいけない)

 

 キャサリンはクリスマスのあの夜が終わってからずっとそう思っていた。

クリスマス休暇が終わり、ホグワーツではいつも通りの日常が繰り返されていた。

秘密の部屋の継承者はクリスマスを挟んだせいでやる気を失ったのか、1か月以上犠牲者を出していない。

それ故に、ホグワーツは再び平穏に戻りつつある。

しかし、キャサリンの心は冴えない。

キャサリンは、クリスマスにトム・リドルの日記から得た情報について、そして、あの日記そのものについて考え続けていた。

怪しいトム・リドルの日記とハグリット犯人説は、他の生徒や教師に伝えられていない。

あの日記のトム・リドルから何とも言い難い嫌な感じがプンプンした。そんな奴からの情報を広めるのはリスキーだ。

なにより大好きな森番のハグリットを疑いたくない。

そして、あんな怪しい日記をジニーは捨てるべきだ。

しかし、キャサリンが今のジニーにそう言っても逆効果だろうし、ウィーズリー兄弟に言ったら、ジニーは怒られてしまう。

ジニーは、クリスマスが終わってますますトム・リドルの日記にのめり込んでいるようだった。いつも同室の生徒が寝静まったころに(キャサリンは寝たふりをしているとき)羽ペンを動かす音がするし、顔色は悪く、きれいな赤毛にも艶が無い。

いっそのこと、キャサリンがこっそり捨ててくるのはどうだろうか?

そう思ったキャサリンはトム・リドルの日記をジニーから取り上げること(そして、できれば、どこかに捨ててきてしまうこと)、ハグリットの無罪と、トム・リドルの実在を自分で調査することに決めた。

 

 

 

「トム・マールヴォロ・リドル、こいつか?」

 

キャサリンは、図書室でホグワーツの卒業名簿をめくっていた。

机の上には、書きかけの本がたくさん載っている。

“ホグワーツの歴史”は、ずっと貸し出し中だが、他にも過去の新聞や生徒名簿など参考になりそうな本は山ほどある。

ホグワーツの見取り図、過去の新聞、そして古い生徒名簿だ。

 そして、ついにトム・リドルを見つけ出した。

2日間の努力が報われた瞬間に思わず声を出してしまい、キャサリンは司書のマダム・ピンスの目を気にして、口を抑えた。

とりあえず、50年前の生徒を当たっていたら、ビンゴだった。トム・リドルは本当に存在した。

日記のトム・リドルは、自分はホグワーツの5年生でスリザリン寮に所属し、監督生であると語っていた。

本物のトム・リドルは、本当に優秀だったようで、監督生のみならず、主席名簿にも名前が載っている。

さらに、“特別功労賞”と“魔術優等賞”をホグワーツ在籍期間に得ている。

例えるなら、ハーマイオニーやパーシー・ウィーズリーみたいなやつだったらしい。

キャサリンの胸に本当にいたんだ、というトム・リドルに対して妙な実感が湧く。

キャサリンが絶対になれないタイプのパーフェクト人間だ。

感心しながら名簿を直そうとして、キャサリンは顔をしかめた。生徒名簿の1つの名前に気づく。

 

(んー、もしかして、あいつの友人って…)

 

1人だけ同学年に東欧系の名前が記載されていたのだ。

東欧系の名前で、当時のホグワーツ生でスリザリンに所属し、トム・リドルと学年が近く、同性で接点がありそうなのはコイツしかいない。

 

(わたしの兄杖の友人?やっぱり碌な奴じゃないな)

 

キャサリンは、やっぱりトム・リドルを信用しないことに決めた。トム・リドルの日記は、やはり邪悪な闇の魔術による代物だと確信する。たぶん、優等生だが心に闇を秘めたやつだったのだろう。

次に調べるべきは秘密の部屋だが、キャサリンはこの前に古新聞を読んで気になる記事を見つけた。

こっちの方が、存在するかよくわからない生徒を調べるよりもはるかに調べやすかった。

50年前に女子トイレで一人の女生徒が死んでいる。死因や“秘密の部屋”については書かれていない。

また、ハグリットが退学したり、捕まったという記事は見当たらなかった。

今のホグワーツの状況を考えれば、“秘密の部屋”が開いても、魔法省とホグワーツが隠蔽したのは事実かもしれない。

死亡者の名前は、マートル・エリザベス・ワーレンである。

これが、秘密の部屋の事件の死亡者なのだろうか?

キャサリンは図書室の端の机で一人で頭を捻った。

この名前からなんとなく手がかりが見つかったような、わからないような気分である。

金髪をガシガシと掻き毟る。手持無沙汰な気分で、情報整理用のノートにトム・リドルの情報を書き込んだ。

しばらく考え込んだキャサリンは、ふと思いつき、トム・リドルの名前で遊び始めた。

アルファベットをすべて分解し、また組み立てる。

 

“TOM MARVOLO RIDDLE トム・マールヴォロ・リドル”

 

T,O,M…とアルファベットを分解し、また並べ直す。何回かやり直すと、それは、意味のある言葉となった。

 

“I AM LORD VOLDEMORT 私はヴォルデモート卿だ”

 

に、トム・リドルの名前は簡単に変形した。

 

(トム・リドルがヴォルデモート⁉)

 

そんなばかな。ただの偶然だ。

トム・リドルは邪悪な魔法使いかもしれないが、それはあり得ないだろう。

キャサリンは、一瞬でも本当かもしれない、と思った自分に軽く笑う。

魔法で遊んだ跡を消すと、ノートを閉じ、大きく伸びをした。

大きく上げた手が通りがかった誰かに当たる。キャサリンはすぐに謝る、いいや、謝ろうとした。

 

「あー、ごめん」

「キャサリン、今日はグリフィンドールのお友達はいないんだな」

「なんだと!ノット」

 

セオドール・ノットの声が頭上から聞こえる。キャサリンはシャーと唸った。

キャサリンが振り返ると、スリザリンのローブを纏った2年生のノットは冷笑を口元に浮かべている。

 ノットは、休暇前の決闘でキャサリンに惨敗している。

そのおかげか、あの決闘からキャサリンに絡んでいない。さらに言うと、学年の近いスリザリン生も成績の良いノットを打ち破ったキャサリンを恐れて避けていた。

マルフォイも取り巻きのクラッブとゴイルもキャサリンをうっすらと恐れているようだった。

ノットにこんな風に絡まれるのも久しぶりである。

ノットは、杖を取り出すと、キャサリンの手がノットにぶつかった拍子にインクで汚れた図書室の本を魔法できれいにする。

そして、再び口を開いた。

 

「クリスマスはホグワーツだったんだって?

半純血の貧乏人は大変だな」

 

スリザリンらしい差別発言にキャサリンはイラッとする。相変わらず、ノットはキャサリンをイライラさせるのに全力を尽くす気らしい。

そして、なんでキャサリンが半純血(キャサリンは父親を知らないし、母は絶対に父親の話をせず、キャサリンは自分を半純血だと思っている)であることを知っているのだ?

キャサリンは、自らが半純血を別に恥ずかしいことではないと思っているので、問われたら言うが、吹聴したことはない。

 

「継承者は穢れた血を粛清し終わったら、次は半純血と血を裏切るものだろうな。身の程をわきまえて、穢れた血と付き合うのをやめたら順番が下がるかもしれないぞ?」

 

キャサリンの疑問を余所に、ノットはさらなる嫌味を飛ばす。キャサリンは杖を懐から出した。

 

「お生憎様だけど、わたしはお前より強い。ケンカを売る相手を考えたらどうだ?」

 

キャサリンが好戦的に笑うと、ノットは痛いところを突かれたという顔をした。

バーカ、とキャサリンは小声で吐き捨てる。

ノットは、話を変えるように目線をあちこちに飛ばした。逃げ出す気はないらしい。そして、目の前に広げられた生徒名簿に目を奪われる。

 

「へえ。俺の父上のことでも探ってたのか?」

 

キャサリンは胡乱げに眉を顰める。

ノットの父親?誰だ、それ?

ノットは開かれたページの一行をトントンと叩く。確かに、ノット姓の男の名が記されていた。

そんなわけないだろう、とキャサリンは胡乱げな顔をする。

キャサリンは、ノットの父親なんて会ったこともないし、興味もない。

それを察したらしく、ノットはふん、と鼻を鳴らした。

 

「なんでお前の親父にわたしが興味を持たないといけないんだ。ああ、それともあれか?

50年前にも秘密の部屋は開かれたんだ。もしかして、お前の父親が昔の継承者で、今はお前が継承者か?」

 

キャサリンは、ノットを挑発するように睨む。

言ってから割とありえる気がしてきた。とりあえず、道理は通る。ノットは誰が見ても純血主義者だし、スリザリンだからたぶん純血だ。

ノットは、一瞬だけ驚いた顔をした後にキャサリンを睨み返す。

 

「いいぜ、俺が継承者ってことでも。そしたら次の犠牲者はお前か、お前の周りの穢れた血になるだろうな」

 

ノットは、最後に好戦的に笑うと、肩をそびやかし、図書室の本棚の森の中に去っていった。

キャサリンは、ノットの後ろ姿が見えなくなるまで睨みつけていたが、完全にいなくなったことを確認してから、椅子に座り直そうとした途端、司書のマダム・ピンスの癇癪がキャサリンに向かって炸裂した。

 

「ミス・ロングボトム、図書室で魔法もお喋りも禁止です!出ていきなさい!!」

 

キャサリンが謝罪しようとすると、黙れー、と言い放ち、マダム・ピンスは杖を振る。本やノート、羽ペンが宙に浮かび、キャサリンを攻撃した。ツンツンつついたり、頭をはたいたり、キャサリンは持ち前の運動神経を活かして必死に攻撃をかいくぐる。しかし、最終的には図書室の外にたたき出されてしまった。

キャサリンは、すべてノットのせいだと悪態を吐きながら、ハーマイオニ―のお見舞いに行くために医務室に足を向けた。

 

 




読了ありがとうございました。

マダム・ピンス
ホグワーツの図書室の司書。本の取り扱いや図書室の利用にとても厳しい。
しかし、ホグワーツ生は図書室で、世間話したり、ハリーとジニー(5巻)のように本棚の陰でお菓子を食べたりしていることもあるので厳しいのはしょうがないかも…

セオドール・ノットがキャサリンに絡むのは、理由が無いわけではありませんが、こんな言い方だと普通に嫌われますし、現在進行形で嫌われてます。この辺の絡みもかけたらなー

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