キャサリン・ロングボトムは魔女である   作:Yumoru

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今回は、ハリー視点のバレンタインです。原作と違い、ハリーは日記と喋ることができません。
イギリスのバレンタインでもチョコレートって渡すんですね(原作でもロメルダ・ベインがハリーに惚れ薬入りのチョコを渡していました)


第12話 ハリー・ポッターの平和な?日常

2月14日 ホグワーツ

 

ハリーにとって今日は間違いなく人生最悪の日の一つだった。

朝から妙にテンションが高いギルデロイ・ロックハートが、バレンタインデーだ、と言って色々やらかしてくれたのだ。

ハリーは、ロックハートの小人をけしかけられ、カバンをびりびりにされた上、歌を捧げられた。

その歌は、ハリーがグリフィンドール寮の談話室に帰った後もウィーズリーの双子によって歌われ続けている。

 

“あなたの目は緑色、青い蛙の新漬のよう

あなたの髪は真っ黒、黒板のよう

あなたがわたしのものならいいのに。あなたは素敵

闇の帝王を征服した、あなたは英雄“

 

(……。)

 

悪夢のコーラスだ…。

このコーラスを止めるためなら、ハリーは、ポッター家のグリンゴッツにある金貨をすべて差し出しても構わないとさえ思った。

 

「~♪」

 

ハリーの隣に座るキャサリンまで、口笛で“あなたの目は~”と、歌いだしたため、ハリーは頭痛がしてきた。

思わず、クリスマス前に絶対ハリーの味方だと宣言したじゃないか、とハリーがキャサリンを睨みつける。

 

「悪い、悪い。それにしてもさぁ、ロックハートにバレンタインチョコをプレゼントしたやつ、マジで気が狂ってるよな」

 

キャサリンはまだ、笑みを口元に残したままだったが、一応歌うのをやめてくれた。

ハリーのふくれっ面を見て、クツクツと笑う。

横を通り過ぎたハーマイオニー・グレンジャーが嫌そうな顔をして、寝室に戻っていく。ハーマイオニーは、2月になってからようやく退院した。もう“ニャーマイオニー”と呼ばれることもない。

そんな彼女の驚くべき行動は、入院した際、ロックハートからお見舞いカードを貰い、枕の下に置いていたのだ。だが、キャサリンとハリー、ロンがお見舞いに来た日にそれがバレて、3人に頭がおかしい、信じられないという顔をされたのがショックだったらしい。

いまだにハーマイオニ―のロックハート熱は冷めていなかった。ハリーにもキャサリンにも理解不能である。バレンタインチョコをロックハートに渡した生徒の1人が彼女であることは、間違いがいなかった。

そして、声を潜めて話かけてきた。

 

「なあ、ハリー。“秘密の部屋の継承者は本当にいなくなったのだと思うか?」

 

 ハリーは、なんとも言えなかった。

クリスマス前からバレンタインまで2か月以上の間、秘密の部屋の継承者は新たな被害者を出していない。

ハリーも事件前に聞いたあの変な声をあれから聞いていなかった。

ハーマイオニーだけが忙しく何かを調べているが、彼女以外は皆もう事件は終わったのだと思っている。継承者は、マグル生まれ狩りに飽きたか、秘密裏に教師たちによって消し去られたと思っている生徒が大半だった。

 

「わからないんだ。でも、もう終わったのかな?」

 

隣に座ってきたロン・ウィーズリーにキャサリンが場所を空ける。ハリーはロンの鼻にいつものように泥がくっついており、ハリーの指摘で鼻をこすったが、泥はこびりついたままだった。

 

「そうだといいよな。もうハリーが疑われるのは勘弁だぜ」

 

キャサリンは、不満げに頬を膨らませる。

 

「わたしはノットが犯人だと思うんだが、誰も賛成しない!アイツも認めたんだぞ」

 

ハリーとロンは顔を見合わせた。

キャサリンは、2学期が始まってしばらくしてから、ずっとノット犯人説を唱え続けている。セオドール・ノットは、ハリーとロンの同級生だが、2人が顔も覚えていないくらい存在感の無い少年だ。

ノットは、なぜかキャサリンに執拗に嫌がらせをしているようだが、秘密の部屋の継承者というのは証拠に欠けると言うのが、ハリーとロンの意見だった。

また、スリザリン寮にクリスマスに侵入した際の収穫から、今の自分たちと学年の近いスリザリン生にまず犯人はいないだろう。

ちなみに、ハリーとロンは、ノットがキャサリンに嫌がらせをしたときも、キャサリンもそれなりにやり返しているとの目撃証言を聞くので、キャサリンをあまり心配はしていなかった。

どうせ、自分たちもマルフォイ一派とは仲が悪いのだし、同じようなものだろう。そして、マルフォイもまるで自分が秘密の部屋の継承者のようにふるまっている。本当は違うことはクリスマスに証明済みだ。

ロンが話を変えようと、キャサリンに話しかけた。

 

「キャサリン、ジニーは寮の中だとどんな感じだ?」

「んー。だいぶ元気になってきたかもしれない。ただ、わたしとはあんまり話してくれないんだ」

 

ケンカしたのか、とハリーが聞くと、キャサリンはちょっと不思議そうに考え込み、大きく首を振る。心当たりが無いらしい。

キャサリン曰く、同室のロメルダ・ベイン含む女子生徒たちのグループと共にいることが多いとのことだ。ロメルダは、良くも悪くも女子らしい女子で、同室のキャサリンとあまり相性が良い生徒ではない。

ハリーから見ても、ジニーは、一時期よりもはるかに体調が良くなったようだ。絶好調とは言い難いかもしれないが、こけていた頬は色が戻り、明るい声で友達と話すのを見かけるようになった。

トム・リドルの日記が無くなったおかげだ、ということはキャサリンしか知らない。

あの真っ黒な日記は、永遠に湖の中だ。

今日のジニーが、ハリーを見るたびに真っ赤な顔をしていたのは、バレンタインチョコを贈りたかったからだろう。

廊下でハリーと鉢合わせしたときに、ジニーはハリーにチョコを渡そうとしたのだが、ロックハートの小人が歌いだしたため、贈ることができなかったことをキャサリンはグリフィンドールの女子たちの立ち話から聞いてしまっていた。

もし、ロックハートがあんなことをしなければ、ハリーはバレンタインチョコが1つはもらえていた。ハリーは、ジニーに対して恋愛感情を一切持っていないが、ジニーにチョコレートをもらえるのは悪い気はしない。

 

「まっ、女の子って不可解だよな」

 

ロンはニヤッと笑い、キャサリンに、気にすんなよ、と付け加える。

ロンの言い方だと、ジニーと不仲の理由がわからないキャサリンが男の子みたいだし、さらに言うと、ジニーはロンの妹だ。そうハリーは思ったが、何も言わなかった。

キャサリンは軽く笑って受け流すと、おやすみ、と言って、寝室に消えていく。

ハリーが再びロンに向き合った途端、柱の陰から現れたジニーが駆け寄ってきた。

まるで、キャサリンが消えるのを待っていたかのようだ。

 

「あのね、ハリー…。友チョコと思っていいから…」

 

ジニーは、自身の赤毛と同じくらい顔を真っ赤にしながら、ハリーの手にチョコを押し付けた。

 

「えっ⁉ありがとう。ジニー」

 

ハリーが少し驚いた顔でチョコを受け取ると、ジニーは恥ずかしくてたまらないという顔であっという間に寝室に帰っていく。その姿をロンはぎょっとした顔で見つめていた。

談話室にいた他のウィーズリー家の兄たちはそれぞれの作業に没頭し、ジニーの今の様子に気づいていないようだ。

 

「わあ、このチョコ素敵だ!」

「冗談だろ…」

 

ハリーはさっそくチョコの箱を開けてみる。

ジニーからもらったチョコは、ハリーが愛する箒、ニンバス2000を模したかわいいもので、包装も1年生が作ったにしてはとても凝っている。

ハリーは、思っていたよりも自分が嬉しくなったことに驚くと同時に、その思いに応えることができないため、頭を抱えた。彼女は、友チョコだ、と言って渡してきたが、それ以上の意味があるのは気合の入り方から言っても明らかだ。

ジニーは、ハリーの親友の妹で、ハリーにとってどうやっても妹のような存在でしかない。

ジニーの愛に今のハリーが応えることはできないのだ。

ロンは、ロンで妹の思いがけない大胆な行動に驚愕している。兄貴の目の前で、バレンタインチョコを渡すとは思っていなかったらしい。

妹の成長に悶々とする兄の姿がそこにはあった。

 

 

こうやって、ホグワーツの時は、1月、2月と平和に過ぎていった。

ホグワーツの教師も生徒ももう事件は終わったと思っていたのだ。

ハリーは、この日、トム・リドルの日記と語り合うことは無かった。




読了ありがとうございました。

きっと、ジニーは元通りになったんですよ…

ロメルダ・ベイン
ハリー・ポッター原作登場のハリーより1学年下のグリフィンドール生。6巻では、ハリーに好意があったらしく、惚れ薬入りのチョコを贈り、ロンが間違って食べたことで大変な騒ぎになった。
この二次創作では、良くも悪くも女子らしい女子で、キャサリンとジニーと同室という設定です。
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