9月1日 キングス・クロス駅 9と4分の3番線にて
とうとう夏休みが終わり、入学の日が来た。
キャサリンとフレイヤは、あの買い物の日のあと、新学期に向けてロンドンの下町でいつも通りの日常を過ごした。
その間、オリバンダーの店で起きたことやフレイヤの親戚の話は、一回も話題に上らなかった。
というか、あの名前を口に出した時のフレイヤの雰囲気を考えると何もキャサリン側からは言えなかったのだ。
あのときの母は、あまりにおかしかった。
そして、あのあと魔法界に行く機会のないキャサリンは自分で調べることもできなかった。
教科書を軽く読んでみたり、杖で簡単な魔法を試してみたり、あの件と母フレイヤと秋から離れることがときどき無性に悲しくなることを除くと、それなりに楽しい夏だった。
キャサリンたちは、ホグワーツ特急の前にいる。キャサリンの寝坊のせいで、ギリギリについてしまったが、どうにかなったようだ。
今日はマグルの地下鉄で来たし、9と4分の3番線は母ももったいぶらずに教えてくれた。あんなところに入り口があるのはやはり当日まで信じられなかったが。
親切な上級生がトランクを積むのを手伝ってくれる。
それにしてもすごい人だ。ホグワーツの全生徒に加えて、フレイヤのような見送りの家族まで広いホームに溢れている。
別れを惜しむ声に鳥かごの中のフクロウの鳴き声、いろいろな音も溢れている。
キャサリンが、ホグワーツ特急に乗り込もうとするところで、フレイヤはキャサリンを抱きしめた。
「かわいいカーチャ、私の宝物、私はあなたを世界でいちばん愛しているわ。ホグワーツに行ってもあなたをいつも思っています。」
フレイヤのブルーの瞳からツーと一筋の涙が垂れた。その様子はあまりにも美しかった。
「健康に気を付けて。手紙も送るのよ」
「ママ…。わたしもママのことが世界でいちばん大好きだよ」
キャサリンの頬も涙が伝う。もう、母にはどれだけ会いたくてもクリスマスまで会えないのだ。それを思うと心が張り裂けそうだった。
「ママも健康に気を付けて。手紙も絶対に書くよ。」
思いっきりフレイヤにキャサリンは抱き着く。母の抱擁はいつものようにかすかに甘い花の匂いがした。
ブオー
汽笛の音がした。発車の時間が近づいている。
キャサリンとフレイヤは互いの身体を離し、微笑みあう。
キャサリンはホグワーツ特急に乗り込み、フレイヤに向かって思いっきり手を振った。
「また、クリスマスに会いましょう!」
「またね、ママ!」
そして、ホグワーツ特急は発車した。ホグワーツに向かって。
駅が見えなくなり、窓に映る景色はどこまでも広がる野原になる。
キャサリンは、コンパートメントの中で一人杖を握りしめた。
(強くなりたい…)
最愛の母を守るために。
杖は応えるようにキャサリンの指を暖めた。
ホグワーツ特急はまだ、イギリスの果てしない荒野を走っている。
キャサリンは、誰もいないコンパートメントと景色に飽きてしまい、他の混じれそうなコンパートメントを探していた。
もしかしたら、そこでジニーやハリーにも会えるかもしれない。
しかし、混じれそうなコンパートメントはなかなかなかった。多くはもう上級生
たちで埋まっていて、新入生には出会えない。
そして、キャサリンはさっきから上級生に自己紹介するとこう聞かれるのだ。
“ネビル・ロングボトムの親戚か?”
ネビルって誰だろう。
話から聞くに、ホグワーツの2年生らしい。あと、聖28族のロングボトム家の出身。
フレイヤも代々魔女のロングボトム家の出身なので、本当に親戚ではあるかもしれない。
キャサリンは会ったことも、聞いたことも無かったが。
何個もコンパートメントを通り過ぎ、やっと夏休みに会った赤毛を発見した。
「ジニー!久しぶり!」
コンパートメントを開けた途端、ジニーがうれしくてたまらないという笑みを浮かべる。
「あっ、みんな、この子がキャサリン・ロングボトムだよ。キャサリン、また、会えたね」
このコンパートメントにいるのは3人。ジニーと、ジニーと同じく新入生らしいのはコルクを首からかけた少女。そして、窓際でカエルをなぜか必至で掴んでいる丸顔の上級生らしき少年だ。
「入っていい?」
「もっちろん、あんたもお好きな席どーぞ、あたしはルーナ・ラグフット。」
「ありがと、わたしはキャサリン・ロングボトム」
「僕は、ネビル・ロングボトム。君って僕の親戚なの?」
この丸顔の少年がネビルだったようだ。
さっき会ったスリザリン生たちが、言っていた意味が分かった気がする。見るからに気が弱く、ドジそうだ。でも、雰囲気は優しそうでキャサリンはネビルに好感を持った。
そして、ネビルがそういったとたん、カエルが大きく飛び跳ね、コンパートメントから出ていこうとした。
「トレバー、だめっ」
大きく躍動感たっぷりに跳ねたカエルがキャサリンの横をすり抜けようとした瞬間にキャサリンの手がすばやく動き、カエルを捕まえた。
「ありがとう、助かったよ。この子はトレバーって言うんだけど、すぐ逃げちゃうんだ。」
ネビルにカエルを渡すと、大げさなくらい感謝された。
大したことじゃないという風にキャサリンは、軽くうなずき、コンパートメントのルーナの隣に座った。
「百味ビーンズどう?」
ルーナから箱に半分くらい残った百味ビーンズを差し出された。
百味ビーンズは魔法界でポピュラーなお菓子の一つで、その名の通り100の味が入っているといわれている。リンゴ味、塩味、コショウ味など、常識的なものからゲロ味、耳くそ味などとんでもないものも入っているらしい。まあ、キャサリンはめったに買ってもらえなかったこともあり、変な味に当たったことはなかったが。
キャサリンはルーナと1つずつ取った。
舌で舐めるようにしてからかみ砕く。もちろん、妙な味ならすぐ吐き出せるようにだ。
レモンの味が口内を満たす。レモン味だったらしい。まあまあだ。
「ありがとう、ラグフットさん」
「どういたしまして。ルーナでいいよぅ」
ジニーがキャサリンに質問してきた。
「ねえ、キャサリンってネビル先輩の親戚だったの?」
「でも、僕、君に会ったことないよね」
不思議そうにネビルが口を開く。
「わたしも他のコンパートメントの先輩にも代々魔法使いの一族のロングボトムだって言ったら、ネビル先輩のことをみんなから言われたよ。わたしはママと二人暮らしで親戚と会ったことがない」
「えー、そうなの。お母さんってこないだのあのすごいきれいな人だよね。」
母を美人認定されたことでキャサリンは少しうれしくなった。
「そうっか、僕もおばあちゃんと二人暮らしだよ。せっかくだし、今度フクロウを送って聞いてみようか、お母さんの名前は何?」
「フレイヤ。そうしてくれると嬉しい」
初対面にも関わらず優しいネビルの対応にキャサリンはうれしくなった。また、ニコリとしたキャサリンを見てネビルはドキリする。
手紙を書く時間があれば、キャサリンもフレイヤに手紙を書いてみよう。郵便代は10回分くらいは持たされている。
「ねえ、あんたは組み分けのこと教えてもらった?」
キャサリンが手紙のことでぼんやりしているとルーナが話しかけてきた。組み分けが不安らしい。
キャサリンも組み分けについては不安だ。フレイヤはキャサリンにホグワーツのことをたくさん語って聞かせたが、組み分けのことだけは断固として教えてくれなかった。
「いいや。教えてもらえなかった。」
「やっぱりそうなのね。みんな教えてもらってないの。うちのお兄ちゃんたちったら、トロールと戦わせるなんて言うのよ。」
ジニーが少し不安げな顔になった。
それはないだろうな、とキャサリンは思った。失礼だが、正面に座るネビルがトロールと戦えるとは思えなかったからだ。
「キャサリンはどこの寮がいい?」
ジニーが聞いてくる。キャサリンは困った。キャサリンはあまり考えていなかった。親が特定の寮に入ることを期待することはあるが、フレイヤはそんなそぶりを見せたことが無かった。
「あたしはレイブンクローがいいなあ」
ルーナが”ザ・クィブラー“を閉じてそう言った。
”ザ・クィブラー”は魔法界のとんでも系雑誌で有名だ。0.1%くらいの確率で存在するかもしれない魔法生物や宝物をよく特集している。
もしかして、ルーナの胸のコルクも“ザ・クィブラー”の表紙の記事由来だろうか。
だとしたら、自分の世界を持っているルーナは確かにレイブンクローが合いそうだ。
「わたしはたぶんグリフィンドールになると思うわ」
なぜなら家族全員グリフィンドールだからという。それも悩まなくていいかもしれない。
キャサリンはネビルを見た。彼はどこの寮なのだろうか。
「ネビル先輩はグリフィンドールなんですって。わたしの兄たちやハリー・ポッターと一緒なの」
「ハリー・ポッター!!」
ルーナが大きく反応した。
「すごい!」
キャサリンは本屋で聞いていたので驚かなかったが、その気持ちには共感した。
“生き残った男の子”はすごいのだ。
キャサリンは、ホグワーツに行ったら、というか、この汽車のどこかにいるだろうハリーと話してみたいと思った。まずは、本屋であった件を誤りたい。
「ねえ、ハリーを探しに行きましょうよ。わたしの兄も一緒だろうし、ちょっと喋りたいの」
「僕もロンとハリーに会いたいなぁ、みんなに汽車の中で全然まだ会えてないんだよ。」
「んんん、面白そう。」
「わたしも行きたい」
ハリーを探しに行きたいとコンパートメントの全員が言い出す。キャサリンもついていくことにして、みんなと共に座席から立ち上がった。
「ハリーはすごいのよ。今年の夏はわたしの家に遊びに来ていたのだけど、かっこいいし、クィディッチのシーカーなの。1年生なのに、よ。100年ぶりなんですって」
ジニーはずっとハリーの話をしていて、ルーナがときどきズレたことを言う。キャサリンは相槌を打ちながら、あまりにおかしいときは口を挟んだ。ネビルはニコニコと人のよい笑顔で2人の話を聞いていた。
他のコンパートメントを覗くと、ジニーのロン以外の兄達、ネビルの同級生でグリフィンドール生のハーマイオニー・グレンジャー、ディーン・ト―マスや、ハッフルパフ生のアンナ・ハボットたちなどと遭遇し、親切にしてもらった。
しかし、ロン・ウィーズリーとハリー・ポッターはキャサリンたちがどれだけ探しても見つからなかった。
キャサリンたちは知らない。ハリーとロンが屋敷しもべ妖精のドビーによってホグワーツ特急に乗り損ね、空飛ぶ車でホグワーツに行こうとしていることを知る由もなかった。
壮麗な古城ホグワーツ城に、キャサリンたち新入生はたどり着き、マクゴナガル教授の案内で大広間で待機していた。
あのあと、結局どこを探してもハリーは見つけられなかった。
しかし、キャサリンは組み分けのことしか考えていなかった。
ルーナはもうそれどころではなく、胸のコルクをいじっている。
ジニーは兄も行方不明というのでどこか不安そうだったが、もう組み分けのことしか頭にないようだ。
キャサリンもあれだけ探してもいないというのは不思議だったが、上級生のことだし、どこか1年生の考えもつかない場所が汽車の中にあるのだろう。これから会う機会もあるだろうと思っていた。
それよりも、これから始まる組み分けが不安だった。
「キャサリン、実はわたしの家はみーんなグリフィンドールなの。わたしも絶対に入れるはずよね?」
ジニーが不安げにささやく。血の気が失せてきており、プレッシャーの凄さがわかる。
大丈夫だよ、とキャサリンも小声でジニーを宥めた。
大広間に入ってからやっと知ったのだが、ホグワーツの寮の組み分けというのは組み分け帽子という名の魔法の帽子を被ればよいだけだったのだ。
ありえないと思いつつもトロールと戦う方法を考え続けていたキャサリンはほっとした。
キャサリンは、攻撃に使える難しい呪文は使えない。体格がキャサリンの何倍も優れており、怪力のトロールに魔法なしで戦うのは難しいだろう。“ルーモス”あたりで光の目くらましをして逃げ続けるという戦略を考えていたのだが。
そして、それでも同時にやはり自分はどこの寮になるのかわからなかった。
組み分け帽子の歌が終わると胸が不安でいっぱいになった。
レイブンクロー:知恵を求めるもののための寮
ハッフルパフ:母の出身寮。辛抱強く、努力するものの寮
スリザリン:どんなことがあってもしたいことを狡猾と呼ばれてでもかなえるもののための寮。近年は、闇の魔法使いを多数輩出し、評判が悪い。
グリフィンドール:勇敢な勇気あるもののための寮。
キャサリンはどこに自分がなるかよくわからなかった。
強くなりたい、大切な人を守りたい。
それだけが望みだ。7年の中でどの寮がキャサリンにいちばん力をくれるのだろうか。
「組み分けを始めます。」
厳格そうな女教師、マクゴナガル教授が組み分けの開始を告げ、新入生の名前を呼び始めた。
最初の一人が呼ばれ、歩き出す。正面の椅子に座り、帽子を被った瞬間に帽子は叫んだ。
「ハッフルパフ!」
鮮やかな黄色が目印のハッフルパフのテーブルから歓声が沸き、最初の少年はハッフルパフのテーブルに迎えられた。
組み分けは次々と進む。
「スリザリン!」
1年生が組み分けされるたびに、組み分け帽子の嗄れ声が響き渡り、大広間に拍手が響く。
「クリービー・コリン」
小柄な男子が組み分け帽子を被った。組み分け帽子は初めて少し悩んだのちに、
「グリフィンドール!!」
と、絶叫した。
コリンは満面の笑みでグリフィンドールのテーブルに走り出す。
そのあと、何人かが選ばれた後に、とうとうキャサリンの番が来る。
「ロングボトム・キャサリン」
キャサリンは待っていましたとばかりに組み分け帽子に走り被る。
(なるほど、なるほど、これは難しい子が来たね)
被ったとたんキャサリンの頭の中で声がした。キャサリンは驚き、帽子を脱ごうとした。
頭の中を見られているような嫌な感じがしたのだ。
(落ち着いて、私はホグワーツのために作られた組み分け帽子。君の敵じゃない。)
キャサリンは、帽子から手を話す。小さくつぶやくように誤った。
「ごめん。」
(私は気にしない。私は組み分け帽子。君はとても難しい。
君はとても強さを求めている。君が今自覚していなくても心の奥底は力への渇望がある。
君は母のために強くなりたいと思っているようだが、それは君の本質ではない。
君は力を求めるために何でもできるだろう。それはとてもスリザリン向きだ。
しかし、同時にどのような敵に対しても立ち向かう意思もある。とてもグリフィンドール向きだ。
知識に対して貪欲で真摯であるという点ではレイブンクローも悪くない。
さあて、君はどこがよい?)
キャサリンは、組み分け帽子の声に困惑した。“母を守りたい”は、キャサリンの本質ではないといわれてしまったからだ。こんなにそう思っているのに…。
(スリザリンはどうかね。君によく似た子供はスリザリンで力を手に入れた。)
(わたしは…。わたしの望みは…。でも…。
強くなりたい。そして、大事な人を守りたい。
それ以外なんて絶対にない!)
(ふうむ、それほどまでに、か。君が最後まで意思を貫くことを望むなら、むしろ君は…。)
「グリフィンドール!!!」
最後の組み分け帽子のセリフは、テレパシーではなかった。
グリフィンドールのテーブルから大きな拍手が上がる。
キャサリンは、呆然としながらもグリフィンドールのテーブルに向かった。
「ラグフット・ルーナ」
ルーナが少しつまずきながらも組み分け帽子にたどり着き、少し、しかし、キャサリンよりは早い時間をかけてレイブンクローに入れられた。
「ウィーズリー・ジニー」
組み分けは続き、ジニーに帽子が触れた途端、帽子は、グリフィンドールに入れた。
「キャサリン、一緒の寮になれたわね!」
「僕もだ。これからもよろしく!」
「おめでとう、グリフィンドールにようこそ」
ジニーとコリン、ネビルがキャサリンに満面の笑みを浮かべた。正面にはネビルとコリン、横にジニーと2席開けて、小鳥の巣のような茶髪で出っ歯の上級生のハーマイオニーが座っていた。
すぐに、組み分けの終了を告げる声と共に、ダンブルドア校長の挨拶が始まった。
「今年も一年が始まる!新入生入学おめでとう!それでは夕食じゃ」
2文、3文の挨拶は、あまりにも簡単で適当なものだったが、夕食を食べたいと思っていたキャサリンとしてはうれしい配慮だった。
あのギルデロイ・ロックハートも教員の紹介の際に立ち上がり、主に女子生徒の歓声を浴びている。
ハーマイオニーは狂気乱舞していた。
ダンブルドア校長先生は威厳があり、見た目も堂々としているのにどこか飄々としたものを漂わせた不思議な人だった。彼のブルーの目はまるで吸い込まれるようで、キャサリンの目とグリフィンドールのテーブルを見たときに確かに合った気がした。
祝辞が終わったとたんにテーブルに現れたごちそうはキャサリンは、歓声を上げる。貧乏暮らしのキャサリンには今まで見たことが無いようなごちそうだ。
「僕は、パーシー・ウィーズリー。ジニーの兄だ。監督生だから頼ってくれたまえ。」
ご馳走を食べながら、ジニーにどこかよく似た真面目そうな赤毛で眼鏡の青年の紹介をはじめとして、上級生やゴーストの自己紹介も始まった。
ジニーは6人兄弟で、親兄弟全員がグリフィンドールらしい。今は4人がホグワーツに通っており、ジニーのすぐ上の兄ロン以外は、近くのテーブルにいた。4年生の双子の兄弟は、堅物のパーシーと違い、陽気なジョークで場を和ませていた。
また、みんなからネビルの親戚かと聞かれ、ネビルと一緒にわからないという返答を飽きるほど繰り返す羽目になった。
「ええ、やっぱりみんなハリーとロンを見てないの⁉」
ハーマイオニーは自己紹介を終えると、ハリーとロンがいない、と、騒ぎ始めた。
キャサリンは、デザートのプティングを食べながらやっぱりいなかったのか、と、不思議に思う。今年はホグワーツに来ない気なのか。
「ごめん、隣の席いいかな」
キャサリンが、皿の上のプティングの最後の一口を噛み締めたとき、後ろから声がかかった。
ハリーとロンは、初日から疲れ切っていた。
ホグワーツ特急に乗り損ね、空飛ぶ車は暴れ柳に衝突し、ロンの杖は折れ、マクゴナガルとスネイプの二人の教授に怒られた。しまいには大広間にたどり着いても、ごちそうはなくなっている。
二人の口から同時にため息が漏れた。グリフィンドールのテーブルに向かう足は鉛がついたように重い。
あのドビーという妖精がやったのなら余計なお世話にもほどがある。イギリスにホグワーツほど安全な場所はないといわれているし、ホグワーツに行けないほうが、危険なことではないのか?
テーブルのみんなの自分たちにいぶかしげな視線もつらい。
癖のある茶髪の少女の後ろ姿を見て、ハリーは弱弱しい笑顔を浮かべる。ロンは仏頂面だった。
ハーマイオニーは何というだろう。怒り出すこと確定だ。
ハリーとロンは、ハーマイオニーとその隣の見覚えの金髪ある女子に声をかけ、隣に座ろうとした。
「ごめん、隣の席いいかな」
女子が振り返り、驚いたように目を見張った。
「ハリー・ポッター…。」
そして、大きくうなずく。
「キャサリン!グリフィンドールになったんだね。おめでとう!」
「ハリーもロンもどこにいたの!探したのよ」
ハリーがうなずき、笑顔を浮かべる。キャサリンとハーマイオニーの間にハリーとロンは座った。
もうプティングすら残っていない。最悪だ。
その上、ハーマイオニーはさっそく怒っている。
「いろいろあったんだよ」 と、ハリー。
「ホント最悪だったな」 と、ロン。
キャサリンを始めとして、グリフィンド―ルにはジニーを始めとした見覚えのない顔が2,30人ほど座っていた。
何人かは明らかにハリーの主に額を見て、隣と喋り、ハリーに話しかけたそうにしていた。
ハリーは、去年からこういう視線には慣れていたが、疲れており、彼らにサービスする気にはなれない。
ただ、食事の終り頃というのもあって、そんな大広間の時間はすぐに終わった。ロンは空腹に負け、好きでもないハッカ飴を口いっぱいに放り込んだ。
「そろそろ寮に帰ろう。ロングボトム、こっちだ。一年生は監督生の僕についてきて」
パーシーが宣言し、1年生を引き連れて、寮に行き始めた。
ロングボトムという姓に反応し、列の先頭に並んだのはキャサリンだった。
「あの子、もしかしてネビルの親戚?」
1年生の後ろをついていく2年生のシェーマス・フィネガンの問いに、ネビルは少し困った顔で答えた。
「わかんない。今まであったことないし。でも、名字一緒だからもしかしたら…。」
「あの子がネビルの親戚だったらネビルがうらやましいな」
ディーン・トーマスがからかうように声をかける。ネビルは赤くなった顔を隠すように歩き続けた。
しばらく歩いて、グリフィンドール生たちは「太った婦人」の肖像画の前にたどり着き、合言葉を教えてもらい、自らの部屋のベッドに散った。
キャサリンも教えてもらったベッドに向かった。
「キャサリンと同じ部屋でうれしいな。これからもよろしく」
相部屋のジニーとロミルダ・ベインと初対面の挨拶を交わしたキャサリンは、すぐにベッドに横たわる。
初めてのホグワーツ、組み分け帽子の不吉な言葉、親戚かもしれない少年の存在に疲れ切っていたが、それゆえか、夢すらみない深い眠りに落ちていった。
キャサリンはグリフィンドールです。読了ありがとうございました。
元気爆発薬
校医のマダム・ポンフリーお手製の風邪薬。飲むと数時間耳から煙を出し続ける。
元気にはなれるらしい。