キャサリン・ロングボトムは魔女である   作:Yumoru

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あけましておめでとうございます!2025年もよろしくお願いします。



第四話 クィディッチと第二の犠牲者

ハロウィンのあとのホグワーツには、それまでとは違う陰鬱な気配が漂うようになった。

“秘密の部屋”という言葉があちこちでささやかれ、生徒たちは1人で行動するのを恐れるようになった。

噂によると、秘密の部屋はサラザール・スリザリンが作ったもので、彼の作った怪物がその部屋には閉じ込められているのだという。そして、サラザール・スリザリンの認める能力を持った者がその部屋の継承者に選ばれ、その力を開放し、ホグワーツのマグル生まれを殺すらしい。

(バカらしい)

そうキャサリンは思っていた。

今更純血主義を掲げてマグル生まれを殺す?

11年前まで続いていた魔法戦争の時代ならともかく平和な今の時代に?

ヴォルデモート卿、“例のあの人”もいないのに?

もし、本当にそんなものがあるならそれこそ11年前までに純血主義者が開放していそうだ。彼らには極めて優れた魔法使いが山ほどいたのだから。

それに今回石化していた猫は死んでいない。怪物が出たなら死んでいるはずだ。

アレはきっと誰かの悪質ないたずらだ。

キャサリンはまわりの同級生、特に明らかに顔色を悪くしていくジニーに対してそう言って回ったが、あまり効果はなかったようだ。ジニーは日に日に憔悴の色を強めている。他の兄弟を中心とした慰めも耳に入っていないようだ。

 

とにかく今回のおかげで、キャサリンの快適なホグワーツ生活には盛大に水が差された。

図書室で目を付けていた“ホグワーツの歴史”という本は半年先まで予約が埋まり、借りれなくなってしまった。

 図書室でハーマイオニーもがっくり肩を落としていた。まあ、彼女は秘密の部屋について真剣に調べているようだったが。

 あと、いちばん禁書の棚の本を見るために必要なサインを楽にくれそうなのは誰だ、と聞かれたので、あの顔だけ教師ギルデロイ・ロックハートを推薦しておいた。

 

 かわいそうなのはハリーだ。なぜか第一発見者というだけで継承者だと噂で指名されている。一部のマグル生まれの生徒にもすでに避けられているのも見た。

なぜ、“生き残った男の子”がマグル生まれを殺すという妄想にたどり着くのかキャサリンには理解不能だった。

 グリフィンドール内では、容疑者はドラコ・マルフォイ説が上がっているが、どれも根拠は欠いていた。

 純血で、周囲をバカにした傲慢さがあり、闇の魔法使いが身内におり、グリフィンドールとけんかしているという点では納得できたが、2年生にそこまでの実力があるといえば微妙だ。

セオドール・ノットは、純血でドラコの同級生だが、同じ理由で継承者からは不採用だろう。

 

 難しいことを考えるのをやめよう、とキャサリンは思った。人を疑っても腹は膨れない。

良いことは何もないのだ。

 そして、今日はグリフィンドールのクィディッチの初戦、グリフィンド―ルvsスリザリンなのだから。

 

 

 なんだか蒸し暑く、雷でも来そうな土曜日の11時に試合は開始された。

 

「いけー!」

「やっちまえ!」

「グリフィンドールの鼻をもげ!」

「成金のスリザリンに思い知らせろ!」

「負けるなー!」

 

 キャサリンもグリフィンドールとしてスリザリンに負けぬ大声で応援する。

 ちなみにスリザリンとグリフィンドールは絶望的に仲が悪く、試合開始からほどなくして罵倒と罵詈雑言が混ざり始めた。

キャサリンはクィディッチが大好きだ。幼少期から箒に乗ったことはほとんどなく、写真が動くような形の試合映像をときどき母が買ってくれるだけだったが、あの映像だけでもキャサリンを十分に興奮させてきた。

マグルのスポーツをマグルの友人と遊ぶこともあり、それも楽しかったことは認めるが、空を飛ぶという快感には及ばない。

 

グリフィンドールのチームは優秀だった。スリザリンチームのスポンサーのドラコに買ってもらったニンバス2001を全員が保有するチームとかなり互角に競り合っている。

グリフィンドールの箒はハリーのニンバス2000が最高でそれ以外は普通かそれよりちょっと上くらいだ。

ハリーは、シーカーとして凄すぎるとキャサリンは思った。試合開始からほぼずっとブラッジャーに狙われているのに、すべて避け切っている。あのブラッジャーは明らかに呪われているが、没収試合にせずに試合と向き合う姿勢をキャサリンはすばらしいと思った。

 隣のジニーもキャサリンと共に手に汗握り、見守っていた。今日はジニーの体調も良さそうだ。

コリンは、パシャ、パシャとハリーに向かってカメラを余すことなく向けている。ここ最近、コリンはハリーからうざがられ、避けられているのでファン心理を満たせてうれしいのだろう。

 コリンはハリーのファンを公言しており、ハリーの時間割を把握して出会えたときに写真をとるというストーカー的行為を日常的にしている。

キャサリンはコリンのことを友人だと思っているが、コリンのハリーもいついかなる時も把握したがり、写真に撮りたがるところはよくわからなかった。

 試合開始からほどなくして小雨が降ってきて、タイムアウトが取られた。しばしの休憩だ。

 応援席にも魔法の透明な天蓋が現れた。

 タイムアウトの後はビーターがハリーから離れる。そして、ハリーはドラコに突っ込んだと思ったら、なんとスニッチを見つけ出していた。そのままドラコも追う。

ハリーは地面に突っ込む。そして…。

 

「グリフィンド―ルの勝利!ハリーがスニッチを取りました。おめでとう!」

 

解説がグリフィンドールの勝利を宣言した。

会場が歓喜に沸く。

 

「ハリー!すごい!」

「グリフィンドールが勝った!」

 

 キャサリンはジニーに抱き着く。ジニーもうれしさと安心感でキャサリンの力強く抱きしめ返した。

 コリンはもっと至近距離でこの感動を写真で取りたいのだろう。スタンドからグラウンドに下りて、ハリーに近づいていった。ハリーはもちろん、コリンの暴走が心配だったのでキャサリンもコリンの後を追う。

 ハリーはグラウンドで横たわっている。呻いているので生きているようだった。しかし、顔は歪み、周囲に話しかける気力もない。右腕を抑えているのは右腕が痛いからだろうか。

 

「やめとけ、コリン」

 

ハリーの苦しむ姿を撮っていたコリンに声をかける。

 

「なんで?邪魔しないでよ、キャサリン」

 

こいつ、本当にぶん殴りたい。

そうキャサリンは強く思った。

 明らかにハリーが嫌がっているのが分からないのだろうか。

キャサリンがそれでも撮ろうとするコリンを制止していると、さらに面倒な教師がやってきた。

ギルデロイ・ロックハートは白く輝く歯を見せ、ご自慢の完璧な笑みを浮かべる。トルコ色のマントが曇り空に翻った。

 

「私が直して差し上げましょう!」

 

杖をハリーに向ける。

 

「先生、やめてください。」

 

キャサリンがコリンではなく、ロックハートの制止を優先することにして走る。コイツは絶対になにかしでかす。ハリーが爆発しかねない。

ハリーは弱弱しく呻いた。

 

「先生、やめて…。」

「先生!」

 

それでもロックハートはハリーに杖を向け続け、力を使った。

ハリーは筆舌しがたい気持ち悪さを味わい、骨を抜かれてしまった。

 

「うん、骨は折れていない。それが肝心だ。それではハリー君を医務室に運んでもらえるかな」

 

ゴムのようにありえない方向に曲がった腕を見て、周囲のグリフィンドール生は後ずさった。

コリンの狂ったようなシャッター音が響き渡る。

ハリーは速やかに医務室に搬送された。

 

 

 

「コリン。もうやめたほうがいいと思う」

 

 数時間後、談話室でキャサリンはコリンを問い詰めていた。

きっかけはコリンが今日の写真を現像して持ってきたことだった。グリフィンドールの今日の試合がハリーを中心に余すことなく撮られた写真はすばらしく、グリフィンドールの絶賛を浴びていた。

しかし、最後の写真はいただけなかった。キャサリンがロックハートに殴りかかろうとし、骨を抜かれたハリーがグラウンドで苦しんで担架で運ばれていく写真だ。

ちなみに、ハリーはまだ医務室から帰還していない。今日は泊まるらしい。かわいそうに。やっぱりロックハートはクソだ。

かなりキャサリンらしくないが、自分が写っていたこともあり、キャサリンは怒っていた。

 

「ハリーも嫌がっていただろ」

 

コリンがそんなことない、と言いたげな顔をする。

 

「ハリーはクィディッチの選手になるころには思い出になるさ!“衝撃!ハリーの骨が抜かれる”ってな。」

「生きてるからいいじゃないか」

 

談話室に引き上げ際、2人のグリフィンドール生が言い残していった。

この2人はハリーの気持ちを考えていない。コリンのこともだ。

キャサリンはため息をつく。ここ最近のコリンはやりすぎだ。ストーカー的にハリーにまとわりつき、写真を撮る。相手が嫌がろうともだ。

 ハリーからも避けられているし、そろそろ本格的に嫌われているだろう。

 

「だってハリー・ポッターなんだよ。いっつも見ておきたいんだ。」

 

コリンが叫ぶ。

それで付きまとって苦しむ姿を撮る意味がわからない。キャサリンはハリーの苦しむ写真を手に取る。

 

「ハリーもコリンのことが嫌いになるだろうな」

 

気づけば、夜も遅くなり談話室には誰もいなかった。

 

「そんなことない!」

 

静かな空間にコリンの声は悲鳴じみて響いた。

 

「でもここ最近会ってくれないんだろう。避けられてるんだよ」

 

 コリンの顔がゆがむ。心の奥底では気づいていたのだろう。自分がハリーに避けられていたということを。

 

「だって、ハリー先輩すごいんだ。僕、絶対にあんな風になれないから」

 

キャサリンはコリンになだめるように語りかけた。

 

「今やめたら、まだ間に合うと思う。ハリー先輩優しいから」

 

キャサリンは泣きそうな顔のコリンの前に写真を置く。

キツイ言い方をした自覚はある。でも、これ以上友人が大好きな先輩から嫌われる姿を見たくなかった。

これでもうやめてくれるといいのだが。

そう思いキャサリンは談話室を出て、自室に帰り、疲れ切った顔のジニーの隣のベッドで眠りについた。

 

しかし、コリンが翌日ハリーに謝罪することはなかった。

コリンは校長室の前の廊下で石化していた。

医務室に行こうとしていたらしく、隣にはブドウが1房落ちていた。

秘密の部屋の2人目の犠牲者だった。

 

 

 

ホグワーツは、2人目の犠牲者が出たことによって、さらに陰鬱な雰囲気を纏うようになった。ある赤毛の少女は、常に不安を抱えていた。

今日も今日とて黒い日記帳に相談を書き込む。

 普段は他愛もないことしか書かないが、今日は違った。

 

“こんばんは トム”

“こんばんは ジニー”

 

“ねえ、わたし、昨日の記憶がないの。それに同級生のコリンが秘密の部屋の怪物に襲われたのよ”

 

“コリン君は亡くなったのですか?”

“いいえ。でも、石化してしまったわ”

 

日記の主は心の中で舌打ちをした。

 

“なら、大丈夫ですよ。また会えます。”

“でも、怖いわ。怖くて堪らないの。”

 

“大丈夫ですよ。他に相談事はありますか?”

“あるわ。友達にキャサリンって子がいるの。とってもかわいくて、わたしよりも勉強ができて運動神経もいいの。彼女がハリーと仲良くなっちゃった。”

“それは心配ですね。僕はただのノートです。ジニーの悩みに答えたいと思っています。好きなだけ話してください。秘密は守ります。

 

ジニーの瞳から涙が零れ、ノートに吸い込まれた。

 

“ありがとう、あなたを誰よりも信頼するわ”

 




読了ありがとうございました。
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