キャサリン・ロングボトムは魔女である   作:Yumoru

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今回は、ハリー視点で進みます。


第7話 キャサリンとハリー

決闘クラブの翌日は、大雪だった。

ハリーは憂鬱な気分で、昨日のハッフルパフの2年生、ジャスティン・フィンチ・フレッチリーを探し、図書室に来ていた。

 ホグワーツの図書室はとても広く、いつも古い羊皮紙とインクの匂いがする。

蔵書は膨大で、天井まで本が詰め込まれた本棚でできた迷路か森の中にいる気分にハリーはなった

誤解を解くのだ、そう、ハリーは思っていた。

 昨日は最悪だった。ハリーは、パーセルタングであることばれ、皆からハッフルパフ生を蛇にけしかけた“秘密の部屋”の継承者と言われている。

 朝からマグル生まれの生徒は声もかけてくれない。

ハーマイオニーとロン達は普段通りであることだけは救いだった。

ハリーは、パーセルタングが闇と結ばれやすいことも知らなかったし、そもそも秘密の部屋の継承者ではないのだ。

 ハリーは本棚の間を進み、ひそひそ話をしているハッフルパフの同級生たちを見つけた。

 

「やっぱりさ、ハリーだったんだよ」

「僕、聞いたんだ。あいつは一緒に住んでるマグルを殺したいほど憎んでるって」

「ジャスティンは気を付けてないと。石にされちゃうわ」

「サラザール・スリザリンだってパーセルタングだった。ハリーが継承者で決まりだ」

 

ハッフルパフの同級生であるアーニー・マクラミアン、アンナ・ハボットたちのひそひそ声がハリーの耳にしっかり届いた。

 

(僕は違う!それに、ダーズリー一家となんかと暮らしたらお前らも憎むようになるさ)

 

 これ以上我慢できなくなったハリーが本棚の陰から飛び出すと、皆ぎょっとした顔になる。

ハッフルパフ生が全員石化したように固まり、血の気のないアーニーがハリーを睨む。

ハリーはショックを受けながらも言葉を続けた。

 

「やあ、ジャスティン・フィンチ・フレッチリーがどこか知ってる?」

 

ハッフルパフ生は、ハリーが今からジャスティンを殺害しようとしていると考えたらしく、怯えた目でハリーを見る。

ハリーは今まで普通の関係だったクラスメイトにこんな目で見られることで最悪の気分だった。

 

「僕は蛇を追い立ててなんかいないんだ!」

 

集団のハッフルパフ生の1人は、そんなわけないだろ、とつぶやく。

 

「ポッター、僕はこの中の誰よりも純血なんだぞ!」

「私もよ!」

 

アーニーがハリーに言う。アンナも同調した。

ハリーは話も聞かずにハリーを決めつけるハッフルパフ生たちを見ていると、怒りが収まらなくなってきた。

もう会話しても無駄だ、そう悟ったハリーは踵を返して、図書館を出ようとする。

大きな足音を聞きつけた、マダム・ビンスは司書机の上でハリーの方向をじろりと睨んだ。

ハリーが図書室から出ようと、森のようにたくさんの本棚を抜けていくと、後ろから声がかけられた。

 

「あっ、ハリー!どうしたんだ?」

 

何の気配も無く、いきなり後ろに現れた少女に、ハリーはびっくりする。

グリフィンドールの1年生、キャサリン・ロングボトムだと、すぐに気づいた。

声をかけられるまで誰か本当にわからなかった。相変わらず、日本の忍者みたいにすばしっこく、気配を消すのがうまい。

ハリーが振り向くと、キャサリンは手に持っていた本を閉じ、適当に本棚に突っ込んだ。

“近代魔法使い犯罪史”そう黒い表紙に金字で書かれたおどろおどろしい本だ。

明らかに元の場所ではない気がしたが、ハリーは何も言わなかった。

そして、ハリーに何も無かったように笑いかける。

 

「ハリーも授業休みなんだ。1年生たちも休みだから退屈だ」

 

かわいい後輩には笑顔で話しかけられたが、ハリーは笑顔を返せなかった。

 

「キャサリン!調べもの?」

「んー、かもな。でも、もういいや」

 

ハリーが図書室から出ようとするとキャサリンもついてきた。退屈しているので、ハリーについてくるらしい。

ハリーは、怯えずに普通に接してくれるグリフィンドール生のキャサリンに心から感謝した。

歩きながら、キャサリンに話しかけられる。

 

「ハリー先輩は、“秘密の部屋”の継承者なのか?」

 

キャサリンから離れるように足を速めたハリーをキャサリンがクツクツと、いたずらっぽく笑う。

 

「だろうな、先輩はそんなことしない」

 

からかわれたのだ、とハリーはすぐに気づいた。笑みを顔に残したキャサリンが足を緩めたハリーの横に再び並んだ。

ハリーとキャサリンは、そのままハッフルパフ生が多い場所を回ろうとした。

その間、キャサリンはハリーの気を紛らわせるためか、最初はクィディッチの話をし、それでもハリーの気分が上向かないのを見て、母親の恋人のせいでクリスマスに帰れなくなった話をした。ダーズリー家でお邪魔虫扱いされているハリーは、キャサリンの気持ちに深く共感した。

普段は興味のないこと以外はあまり口を開かず、無口な方に入るキャサリンなりのハリーへの配慮だった。

その話の中でハリーはキャサリンの家庭が片親で、キャサリンは母親が大好きなこと、そして、母親は魔法使いだが家はあまり裕福ではないことを知った。

 

「ママの彼氏はマジで最悪だよ。今回もママを騙したんだ。いっつもわたしを目の敵にしてる。わたしはあいつが死喰い人でもまったく驚かないね」

 

 キャサリンは、足をドンドン、と、大きく踏み鳴らした。

 両親のいないハリーには、母親だけでもいるキャサリンがうらやましかったが、キャサリンの話を聞いていると、片親というのも大変なものだとよくわかった。ちなみに、死喰い人はヴォルデモートの手下のことである。それぐらいひどいと言われるキャサリンの母の恋人に虐められるキャサリンはかわいそうだ、とハリーは同情した。

ハリーはキャサリンを慰めるために、ホグワーツのクリスマスがいかにすばらしく、良いものかを力説した。

ハリーにとって去年のクリスマスは、すばらしい光景の中で友人と過ごし、クリスマスプレゼントまでもらった今までの中で最高のものだったのだ。

しかし、楽しいことを語っていても、冷たい廊下を歩いているとやっぱり“秘密の部屋”について考えてしまう。

みんなの責め立てる目、そして、ハリーがパーセルタングであること、石になったコリン。

キャサリンとハリーの革靴がカツカツと石畳を打つ音が静かな廊下に響く。

 

「僕は、実はスリザリンだったのかもしれない」

 

歩きながら、1年生のときのこと、夏休みやクィディッチのドビーのことをキャサリンに話していたハリーはふと、そうつぶやくように言った。

 

「へえ、先輩もスリザリンを勧められたのか!実はわたしもそうだった、何しろわたしの兄弟杖は死喰い人のものらしいから」

 

 軽い調子で返ってきた言葉にハリーはぎょっとする。

「さっき読んでた本見えただろ」

 

確かに、さっきキャサリンが読んでいた本は、ヴォルデモートに味方した闇陣営の犯罪などについてまとめたものだった気がする。

アレにそいつのことが載ってたと、キャサリンは何でもないことのように言った。

返答は期待していなかったにも関わらず、キャサリンがそう返答したことにハリーはひどく驚いた。

あのオリバンダーの店で、兄弟杖はほとんどないと言っていた。それなのに、同じく闇の魔法使いの杖を兄弟杖とする魔法使いがこんな身近にいたなんて。

 もちろん、ハリーの兄弟杖とするヴォルデモートに匹敵するほど有名ではないだろうが、“闇の魔法使いが兄弟杖”仲間がいたことに、ハリーはうれしくなった。

 

「僕もなんだ。兄弟杖はヴォルデモートの杖らしい。」

 

 ハリーは声を潜めて、キャサリンに打ち明ける。

さすがのキャサリンも、その事実とヴォルデモートの名前を恐れずに言ったハリーに驚き、ぴたりと足を止めた。

 

「すごいな!“例のあの人”か。さすがハリーだ。わたしの兄杖の魔法使いのネームバリューはそんなのに比べたら断然カスだよ。

ハリーの杖はなんでできているんだ?」

「柊に不死鳥の尾羽だよ」

 

不死鳥の尾羽がヴォルデモートと同じものらしい、と、付け加える。

ハリーは、キャサリンがそんなことをするわけがないと知ってはいたが、キャサリンが自分を怖がらなかったことにほっとした。

そして、キャサリンは、いかにも珍しいものを見る目つきでハリーのポケットから半分飛び出た杖を見る。

ハリーが軽く笑って杖を取り出し、軽く振る。柔らかな黄金と真紅の火花が杖から噴き出した。

 キャサリンもいたづらっぽく笑って、自らの杖を取り出した。リンボクの中にドラゴンの心臓の琴線が閉じ込められた杖は、まっすぐで黒く艶々としている。ハリーには、キャサリンには長すぎるように見えたが、キャサリンの雰囲気によく似た杖だと思った。

リンボクの杖というものは、ハリーは知らなかったが、まあまあ希少で柊と同じくらい珍しい。

その上、リンボクの杖は持ち主に強い自我と苦難を要求するため、完全な忠誠を捧げさせることが難しい杖の一つだった。

実は、キャサリンも杖から気に入られたが故に、杖の主となっていたが、キャサリンが魔法使いとして未完成であるように、杖もまだその能力のすべてを開放することはできていなかった。

キャサリンが、ハリーの視線に気づいて杖を軽く振ると、紫の炎が杖から噴き出す。鞭のようにそれを振るうと、先にあったハリーの炎と混じりあい、美しい光のハーモニーが作り出された。

紫と赤の炎は時折金の火花を散らしながら燃え上がり、薄暗い廊下を煌々と照らす。

2人が杖を下すと、炎はゆっくりと溶けるように消えていった。

 予想もしない美しさにハリーは何も言えなかった。

 キャサリンは、不意に真剣な顔になる。

 

「あのさ、どこに選ばれそうになったんじゃなくて重要なのは何を選んだか、だと思う。わたしもハリー先輩も、闇の魔法使いと繋がりのある杖に選ばれた。でも、わたしたちは、グリフィンド―ルを選んだ。

たぶん、それが大切なんだよ。

わたしは厳密に言うと、スリザリンは嫌だって言ったわけじゃなくて、ママを守る力が欲しいって願っただけだけど」

 

そして、キャサリンはハリーをまじまじと見た。

 

「だからさ、わたしはハリー先輩の味方だ。何があっても」

 

 ハリーは朝から暗かった気分が初めて晴れたのを感じた。

自分を怯えるホグワーツ生に対するイライラもどうでもよくなった気がする。

そうだ。ロン、ハーマイオニー、キャサリンなどのグリフィンドールの仲間は絶対にハリーの味方だ。これからもホグワーツ生の一部はハリーを嫌い続けるだろうけれど、こんな心強いハリーの味方が存在する。

ハリーは、まだまだ戦えるのだ。

 

 

 

「あっ、ハグリット!」

 廊下をさらに歩くとハリーとキャサリンは、ハグリットに遭遇した。

ハグリットは外から来たらしく、身体中雪だらけで、なぜか死んだ雄鶏を持っていた。

 

「ハグリット!もしかして、またやられたのか?」

 

 キャサリンは、死んだ雄鶏にまったく臆することなくハグリットに話しかけた。

ハグリットは大きくうなずく。

そして、首が裂けた雄鶏を大きく掲げて見せた。寒く、雄鶏も半分凍っているせいか、血は流れていない。

 

「ああ、今月になって2度目だ。校長先生に鶏小屋の周りに魔法をかけさせてもらおうと思っとる。」

「酷いな!何が襲ったのかわかるのか?」

「まだわかっとらん。でも、“吸血お化け”か、キツネかもしれんなぁ」

「“吸血お化け”!ロンドンにはいない!どんな魔法をかけるんだ?私も手伝いたい!」

 

キャサリンは、今まで見たことのない魔法生物の名前を聞いて、興味を抱いたようだった。

楽しそうにハグリットに話しかけている。ハグリットも害虫駆除に使う魔法をキャサリンに楽しそうに説明し始めた。

しかし、ハリーには、その死んだ雄鶏はどうにも不気味に思えた。

 

「僕は次の授業があるからもう行くよ。またね、キャサリン、ハグリット」

「またな、ハリー」

「ハリー、じゃあな」

 

話し込んでいた2人は、ハリーに大きく手を振って、校長室の方向に歩んでいった。

ハリーは、反対方向に歩き、階段を上がり、次の廊下の角を曲がった。そこは、一段と暗く、隙間風が松明の灯りを消してしまっていた。

 ハリーは廊下の真ん中で何かにつまずき、転んだ。

ハリーは、何につまずいたのかを確認しようと前を向き、危うく悲鳴を上げそうになった。

“ほとんど首無しニック”だ。彼が空中に黒焦げになって浮かんでいる。

そして、ハリーが恐る恐る立ち上がると、ジャスティン・フィンチ・フレッチリーが足元に転がっていた。ハリーはこれにぶつかったらしい。こっちは、冷たく硬直し、恐怖に満ち満ちた目を虚ろにハリーに向けている。

 不自然なことに、蜘蛛が窓から逃げるように一列になり、外に移動していた。

ハリーは、逃げよう、と思った。

 

「また、殺した!また、殺した!ハリーは秘密の部屋の継承者!!」

 

不意に現れたビーブスがまるで学校中に響くような大声で歌いだした。

気が狂ったような高笑いがハリーの耳に響く。

教師や生徒がそこかしこから現れ、ハリーと犠牲者の周りを取り囲んでもハリーは動くことができなかった。

皆、ハリーを犯人だと思っている。

 

「僕は秘密の部屋の継承者じゃない!」

 

冷たい視線で見つめられ、ハリーの言葉はまったく聞いてもらえなかった。

マクゴナガル先生がハリーを立たせ、歩かせる。

ハリーはこれからどうなってしまうのだろうか、と困惑し、暗い廊下をマクゴナガル先生の後について、ふらついた足取りで歩き始めた。




読了ありがとうございました!!
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