あの威力のボールをぶつけられて骨が折れる事も、腕に痣が出来る事も無いレイザーは頑丈過ぎる。
恐らくG.Iのシステムで一定以上の威力の攻撃ではダメージを受けないのだと思う。
そうでないならゴレイヌの一撃で顔にダメージが入った理由が分からなくなるだろう?
ゴンはレイザーにジンの話を聞きに行ってしまったし、キルアはレオリオに無茶を叱られながら手当を受けてクラピカからも自己治癒能力の強化をしてもらっている。
レイザー達がアジトにしていた灯台にイベント進行のお姉さんと一緒に訪れて「海神の棲み家」について教えてもらう。
灯台の外壁のレンガが外せるようになっており、そこのスイッチを押すと灯台から光が放たれその真下に海底洞窟があるそうだ。
財宝はただの一人歩きした伝説で漁師にとって神聖な場所であるだけの洞窟。
「私にとってはこの景色が何よりの宝」
思えばクルタ族は移住を繰り返しているから故郷の景色にピンと来ないかもしれない。
ボス戦はともかくイベントとしては好きなシナリオだったのだけど皆の反応はどうだろう。
漁師の島で育ったゴンは感情移入しているようだ。
「おーいあくまでこれはゲームの中のシナリオだからな」
キルアに釘を刺されるくらいは思う所があったみたいだ。
情に厚いレオリオも故郷を想うお姉さんにじーんと来ているのか少し目が潤んでいる。
「故郷か……」
闇落ちしそうなセリフは止めてくれないか?クラピカ。
お前さんだとシャレにならないだろう。
真面目で優しく責任感があるなんて闇落ちフラグ三本セットに見えてしまう。
友人として支えられる自信は無いが同期のハンターとして何かあったら頼っていいからな?
◇◇◇
ここからは正直、消化試合になる。
懸念はゴン達の格上との戦闘経験を削ってしまう事だが、時間を無駄に使って助けられる相手を見殺しには出来ない人命優先だ。
ゴレイヌの見せ場を削らない様に配慮したからか無事ツェズゲラと組む事になったようだ。
便利な能力持ちで死なずに別れる事が出来る相手は再登場する可能性があるので縁を大事にしたい。
『一坪の海岸線』を増やして分けた後灯台から出てこれからの事をツェズゲラ達とゴンが話していると『
「お前たちの生命の安全は保障するかわりに「一坪の海岸線」をよこせ」
G.I内で何をしたのか忘れているのか、指定カードを使う事が出来る程度に集められるプレイヤーなら誰でも爆弾魔を攻撃可能な状態になってしまっている事に気が付いていないのか?
詰んでいる事に気が付かずこちらを挑発する為にこのイベントを発見する際、一緒にソウフラビに行ったプレイヤーを全て殺したと伝えて来るゲンスルー。
ゴンが怒りから声を上げようとしたが、手で制して自分がゲンスルーに話しかける。
「
「誰だ?お前、ふざけた事を抜かしやがってお前からバラしてそいつらに晒してやろうか?」
後ろの二人からも嘲り笑う声しか聞こえてこない以上通告は十分だろう。
「では排除を開始する」
準備してあったアイテムのカードを仲間がゲインで戻し天に掲げて相手の名前を唱える。
「ゲンスルー‼」
「サブ‼」
「バラ‼」
「師範代と二人はここで待機。ハリギリ、ゲンスルーが動けるなら手首を斬り飛ばし無力化しろ」
アイテムによる攻撃を行った仲間に指示を出しながら、皆をカードの範囲に巻き込まない様に前に出る。
「『
倒れているが動きそうなゲンスルー、これはハリギリに任せる。
動けないダメージはバラ、独占してアイテム状態で持っている闇のヒスイでサブから逸れた『天罰の杖』の効果を喰らったのだろう。
リスキーダイスは大凶の効果で死人を出しているのに大量に人を殺していても天罰で死なないのはハンター世界の命の軽さが出ていると思う。
これを知っていたから中堅のプレイヤー達は爆弾魔に『天罰の杖』で攻撃を仕掛ける事をしなかったのだろうか?
念を使えると死刑囚でもハンターに雇用されてムショから出ているケースもそこそこある。
それに自分達のギアススクロールでの契約が関係しているのが少し悔しい。
ゴミをゴミ箱から散らす手助けをしてしまうなんて。
だからせめて、目の届く範囲で犯罪を犯した連中はキチンと片付けたい。
サブを逃がさず死なせない程度に
「クソっここまで来て‼」
何か言っているが意味のある内容ではないだろう。
確か人が生きられるのは-50度までだそうだ、規模を抑え足を狙っても最悪の場合死ぬが大量にプレイヤー達を殺しているのに殺されるのが嫌だなんて泣き言は言わないだろう?
念弾のバリエーションの一つ『
◇◇◇
「さてゲンスルー達は傷を『大天使の息吹』で治す事を条件にカードをこちらに渡す事に同意した」
捕縛したゲンスルー達を皆の元に連れて行く間に、バインダーを出させる為の条件を決めたのでこれからの事を話し合う必要がある。
「君達はゴンの仲間なのだろう?なら話し合いも何も彼等がクリアする事になるだろう?」
「ツェズゲラさんにやって欲しい事があるんだ。それが達成されるなら一番にクリアするのはあなたでもいい」
バッテラ氏の恋人が生きている間にクリア出来たので、持ち出すアイテムに制限のある状況なのだ。
『大天使の息吹』と『魔女の若返り薬』は必要だろうから残りの一枠をビスケの『ブループラネット』にしてもらえるか聞いて来て欲しい事、手放すつもりだろうG.Iをいくつか譲って欲しいと伝えてもらえないかをツェズゲラに尋ねた。
ハンター協会のダブル以上の星持ちなら弟子を鍛えるのにいい環境だから興味を持つ可能性もある。
G.Iを全て手放すつもりだろうから、混乱を招かず有効利用出来る手段として副会長じゃないトリプル辺りに投げて置きたい話だ。
「ゴン達がアイテムは要らないから、どうしても一番にクリアしたいって言うならそれでもいいがどうする?」
「500億は正直惜しいけどよ、これから忙しくなるだろうからしばらく使う当てが無いしな」
受験に必要な分だけでなく医大の座学で学ぶ所を頭に入れた上でスケルトンメガネを悪用せず、人体の理解度を深める為に使っていたので原作より精度の高い発が作られるかもしれないとレオリオには期待している。
「どーせそのカードでこっちもクリアすればいいだけなんだから、お前らがG.I本体欲しくての協力だったなら譲るのもしゃーないだろ」
ごねそうなレオリオとキルアがこちらの意見に反対せずいてくれたので話は拗れず進んだ。
彼等はゴレイヌと分ける50億の報酬もあるし大丈夫だろう。
「バッテラ氏と交渉してこよう」
ツェズゲラがゲームの外に出て進展待ちになったので、ゲンスルー達をこの後どうするのか話しておこう。
「流石に大量殺戮と言っていいだけの人数を殺している以上野放しはありえないんだが……」
しかし、ここは建前はゲームで命を落とすリスクも知った上でプレイヤーは入って来ている場所なのだ。
「ここも現実だがどこの法律が適用されているのか、ゲームマスター達の治める自治区扱いなのか分からないんだよな」
ジンの事だプレイヤーがやった事で手を煩わせられる様な隙のある状態にはしていないだろう。
師範代も腕を組み考えてくれているがこの場でなにか出来る案は出ないだろう。
「ここで考えていても埒が明かないし、私刑なんてものに手を出させる気も無い」
ここに集まった連中なら私刑なんて事はしないと思いたいが、他のプレイヤーまでは信じきれないから守る意味も込めて側に置く必要があるだろう。
「俺は島を出てからハンター協会本部に用事があるからこいつらを引き受けて専門家に押し付けて来よう」
師範代の用事か……最強の前座としてレイザーを見ていた以上、会長の所に行くつもりなのだろう。
それが手合わせなのか死合いかは分からないが、雰囲気から見るに実戦に近いが手合わせになるだろう。
「ミザイやチードルが怒りますよ?面倒ばかり持ってくると」
「ジンも十二支んだ。なら十二支んの起こした問題をあいつらに持って行っても仕方ないで済ますだろ、苦労人だからな」
聞かれていたら発を使った攻撃を受けかねない人物評だったが、実際常識人だから問題を投げ出さずどうにかしてくれるだろう。
こいつらみたいなテロ能力持ちを副会長の手駒にされたら嫌だろうから。
せめてアベンガネの事も紹介してやろうと縛った爆弾魔を転がしているけど、クイズで人が集まるまで彼は来ないだろう。
「あの十二支んってなに?」
親の肩書に興味が出たのか質問を挟んで来たゴンに対してクラピカが、自身の所属しているハンター協会の幹部職の名前くらい知っておくべきだろうとため息交じりで解説してくれていた。
◇◇◇
出した条件にOKが出たのでツェズゲラに爆弾魔のバインダーから『闇のヒスイ』と自分達のバインダーの『奇運アレキサンドライト』を渡してクイズイベントが始まった。
『大天使の息吹』は爆弾魔を治療するのに連中の物を使った事でツェズゲラの引換券が交換されたので渡す必要がなかった。
むしろ治療に使う分を増やして貰った。
プレイヤーが続々とツェズゲラ達の周りに集まって来る中で自分達が待っていた人物もやって来た。
全身を覆うゆったりとした服が時折蠢いている、あれがアベンガネだろう。
皆がクイズに集中している間に接触しておこう。
「アベンガネ捕まえた」
死角の多い服装なので後ろから肩に手を置き小声で声を掛けた。
ビクッとならなかったのは流石の冷静さ、後で「上客にあんたを会わせる話が有る」と言って密談できる物件を押さえている街の名前を書いたメモを渡しておく。
彼はこれでいい、逃げられたなら除念師であるとの情報と接触していた時間の写真を『思い出写真館』で撮れば顔も手土産に出来る。
彼にも旨味のある話だから聞いてくれたら権力も金もある客との繋ぎを出来るが裏切られたばかりだから聞いてくれるかは分からないな。
楽しんでいるゴン達には水を差す様で話せないが、ゲームの為に協力して貰っていた仲間に殉職者が出た。
レイザーと対戦の際に仲間の大半を投入したが、島から出る港の監視だけは人員を置いたままだった。
彼もカウンター型なので犯人は死んでいるのだが、死因となった傷から見てやったのはフェイタンだろうと思われる。
しばらく大人しくしていた彼が我慢出来なくなるような情報が現実に待機している側から来たなら、また団員が欠けたのだろうか?
酷い貰い事故を起こされた気分だ。
死んだ本人が「仇討ちとか自分の能力で済ませたし、
仕事の為とは言え自己犠牲前提の能力なのは死んだ後でも自由を満喫できるならばそれでいいだろうと、自棄なのか達観なのか分からない理由だったらしいが本当に満喫しているのを見ると元が同じ魂の自分でも困惑が先に来る。
ここでやるべき忘れている事はないか?
ああ、レイザーに封印系の能力を使ってゲームにログインしている人物を外に出した場合どうなるのか聞いておけばよかった。
リストやドゥーンに聞いてもらうようツェズゲラに後で言っておかないと。
ゲンスルー達の輸送が楽に出来るかがこれで決まる訳だし。
クイズの勝者がアナウンスされた。
これで……ゲームもクリアされて何をしたいか決められないまま、自分は次どんな仕事をするんだ?
「ポイ捨てする奴等滅ばないかな」
ゴミが多い世界だが、それでも確かに綺麗だと思えるモノもある。
汚いモノばかり見せられて、自身を押さえつける上にいる連中がゴミだったモレナとは身を置いていた環境が違う。
だから希望を見失わなければ自分は大丈夫なはずだ。