クラーケン以外の想定外の事態に絡まれる事無く、新大陸を発見出来てしまった。
しっかりと事前準備をしたおかげで計画が動き出してから二年たった、1968年に大型事業の要となる大陸を自分の目で確認している。
時間の掛かった原因は横槍を防ぐための調整で、航海自体は理想に近い順調さだった事に疲労を覚えるがここには余計な事をする連中はいないので大変でも仕事はやっていけそうだ。
現在は大陸の周囲を船で一周して外から見て分かる範囲の大陸の様子を観察しつつ、上陸して拠点を構える地点の選定をしている。
大陸を一周したなら地図を使ってどの程度の面積があるのか判明するのも良い点だ。
ただ気になる事がある。
生き物が大きいのは想定していたが、こちらに対して害意や敵意を感じない。
空を飛べるならこちらを襲う事も出来るが、興味なさそうに通りすぎるのだ。
歩いている時に雑草に花が咲いていたら、わざわざ踏み潰して歩こうとは思わず少し避ける。
そのくらいの感じだろうか?
かなり嫌な予想が頭によぎったのだが、これ古代の人類やらかしてる?
暗黒大陸から逃げ出したのではなく門番と言われる魔獣の一族が隔離するために作った檻に追放されたのではないだろうか。
暗黒大陸の沿岸部には五大厄災がいて、現在の人類の生息域にも人を騙し餌食にする生物がいる。
人類による生態系の破壊を食い止める為、メビウス湖中央部に内外の生物の出入りを制限する結界を築き、それから人類の隔離を行ったのだろう。
その方が人類が暗黒大陸から逃げ出すのに手を貸して、暗黒大陸の生物から箱庭を守るために何らかの手段で行き来を制限している事も納得できる。
ネテロ会長の回想に出て来た暗黒大陸は人類に見向きもしない、生物としての規格の違いが描かれていた。
ジンがゴンに語った暗黒大陸もスケールの違い、広大さこそが主題だった。
人類の生息域だけが悪意や醜悪さを持った生物が描かれているのだ。
それに暗黒大陸探検隊にジンが語った厄災の対処法は隔離して近付かない事。
暗黒大陸側から見た人類への扱いが正にそれなのだ。
◇◇◇
五大厄災は暗黒大陸の産物にしては大きさが小さく、能力も人間を相手に想定している様に見える。
創造したのが人類で、標的として考えていたのが同族なら辻褄も合うように思う。
少なくとも兵器ブリオンは暗黒大陸にいた頃の人類が創造したものだろう。
無人都市の意味が人の姿をしたものが居ない事なら、都市を構成するビル群の中身が脳髄だけを納めている場合もあるか。
精神疾患を含め万病に効くなら肉体を失った事での変調などは起こらない。
究極の長寿食やあらゆる液体の元となり得る水があればシリンダーの中で機能を生かしたまま長期間の保全も不可能ではないはず。
または、人間の欲望が向く先として『不老不死』は現実の権力者でも、創作の中でも使い古されるくらいの有り触れている。
つまり、ニトロ米とゾバエ病だ。
長寿と無病が叶った後でさらに欲が出て不死を求めたのではないだろうか?
ゾバエ病の発生させるリスクは万病に効く香草で踏み倒そうとした。
しかしゾバエ病で変質した者をブリオンは自身を創造した人間と判断せず、都市に不法侵入した脅威として殲滅した、故に無人の都市だけが残された。
殺意を伝染させるヘルベルは、ニトロ米を他に渡さない為の番犬代わりに作った生物兵器だったりしないだろうか?
頭が二つある蛇が生まれる事は稀にあるみたいだが、ヘルベルは尾が二本ある。
双子の片方が死に一部だけがもう片方に融合する事で死後の念と共に消えずに残る。
それを種として定着するだけの数が揃う程に作り、犠牲になった蛇の怨念が新たな種に宿ったなどの誤算があったなら、制御できなくなる生物兵器のお約束が発生するだろう。
アイは何を目指し作ろうとしたのか分かり易い、聖杯や魔人のランプなど願いを叶えるもの。
アイの生息地付近のリターンはあらゆる液体の元となり得る「三原水」。これと、もしかすると錬金植物の「メタリオン」も使って造られた人工生命体なのかも知れない。
願いを叶えるといった強力な能力を求めた為に勝手に誓約が発生し、それが三回のおねだりになった。
願いを叶えた人では無く他の人に負債を押し付けるのは、強力な能力に反動や誓約が発生する事を知っていた為にリスクの回避として仕込んでいたのだろうか?
願いの実現の為に運命か何かを捻じ曲げているために、願いを叶えた後でそれを補填しなければ反動が発生する。
つまり捻じ曲げた反動によって全身が捻じれ絞られるか、反動を受け止められず圧し潰される。
パプは人間から可能な限り長期間エネルギーを搾り取っている様に見えたが、それを何に使っているのか描かれていない。
単なる捕食ならば自然発生した可能性の方が大きかっただろうけど、パプは獣であるにも関わらず人の望む快楽を理解しているはずだ、そうでなければ等価交換は成り立たない。
パプの生息地にあるリターンは無尽石だ。
エネルギーを大量に得られる土地で他人にエネルギーを渡さない為にパプによって他者から搾取しているのが作られた理由なら、皮肉の効いた話になるだろう。
暗黒大陸の探索を考えた時は向こうの人類との接触が有益な手段だと思っていたが、新大陸の環境を見てからでは悪手に思えて来た。
◇◇◇
新大陸を一周して把握できたのは、ここは人類に毒されていない命に溢れている事だった。
自身が強く無ければ生き残れない。
そう主張しているかのように、生まれ持った性質をより強化する方向に進化している印象だ。
門番が暗黒大陸から厄災を持ち帰らせているのは「お前らの尻拭いをしているのに余計な仕事を増やすな」と言う事なのかも知れない。
こちらの大陸にある資源からでも貧者の薔薇のような兵器が作られている、ならば暗黒大陸の常識を超えた資源を悪意や欲望によって使われたら悲惨な事になるのは当然の事だ。
人類に厄災としての名を付けるとしたら「悪意を感染させる獣」等だろうか?
ジャイロは世界に悪意をばら撒こうとした。
彼とその配下達を捕食して取り込んだキメラアントは悪意に感染した。
もっと直接的な能力がモレナの「
悪意をばら撒き人を殺して社会の枠組みや秩序、国家を崩壊させても止まらないだろう可能性のある能力だ。
でもまあ、その対策をするのは俺じゃないか。
俺の役割は対人戦と体術の教導だ。
そこにクレスの対怪物の役割分担で今までどうにかなっていたが、怪獣サイズには打つ手が無かったのがなぁ。
処理部隊は極秘にしておきたいし、物理攻撃が効かない相手も彼等の担当だから負担を増やす訳にもいかない。
念獣の能力込みならウボォーやフィンクスにも正面から殴り勝てるくらいには俺も成長しているのだが……
個人で発動可能な能力も念獣と併せる事で強力になったと思っていたが、俺達の強みはやはり数だな。
通常攻撃や対象の操作で対処できない相手なら、今回のような破壊かあるいは除去で対応するべきだろう。
事前準備が大変な仕様になるが、封印の為の能力をジョイント型で作るべきだろう。
封印のための札の作成は神字を使いオーラを込めて事前に準備しておく必要がある。
封印する対象のサイズによって必要な枚数が変わり、当然大きい方が枚数が増える。
放出系で札にオーラを留め、貼った対象を札で形成した念空間に飛ばす。
具現化系で空間に対象からオーラの徴収を行う機能をつけて封印の維持に充てる。
封印対象は念空間に閉じ込め、札の束が外部からバラされなければ封印を維持する。
後は札に色で封印可能かどうかを知らせる機能を付ければ、封印に札が足りなかったり過剰に使う事が無いだろう。
◇◇◇
俺達の中でハンターとして歴が一番長いから今回の引率をする事になったが、能力が環境と全く嚙み合わないな。
クレスの方がこの環境に馴染むだろうけど、ネテロ会長に支援を頼んだのが俺な訳だし他のハンターと顔合わせしないまま責任者変わりましたは無責任すぎて出来ないな。
初期の拠点が安定するまではやらないと、あちらこちらの顔を潰す事になってしまうし自分で始めた事だ。
野生の素晴らしい機能美を持った生き物を見れた事は、来たかいがあったと思わせてくれた。
無駄に醜悪な姿をしている生き物がいなかったのは、ここに人が入り込まなかったからだろうか?
ああ、もっと楽してこの世界を楽しみたいのに。