「んーと、画用紙に輪ゴム、掃除に使うヤツも入れた。窓に貼るシールも入れたし、これでもう無いかな?」
ホラーホスピタルで使う備品を買いに100均へ、散歩もかねてあっちゃんも連れて来ていた。
最近の100均ショップは種類も豊富で、見ていて飽きなくて楽しい。そして勿論何かと便利なのでしょっちゅう立ち寄るのだ。
レジに向かうためあっちゃんを探しながら通路を歩いていると、ちょうど玩具コーナーから顔を出した彼女が手招きしてきた。
そばまで寄っていくと「こ れ」とシャボン玉セットをおねだりされた。
「シャボン玉かー、なんか懐かし~。いいよ、買おう買おう!」
売り場には意外にも多くの種類が並んでいる事に軽く驚きつつ、折角だから…と3つ程選んで購入。
帰宅後、正面玄関の所で早速手に入れたシャボン玉で遊ぶことに。
まず1つ目、昔からある定番の吹き棒を俺が使って飛ばしてみる。
小さめのシャボン玉が勢いよく空に昇っていく。
人工的な灯りは薄暗い玄関灯のみ。それに覆いかぶさるように照らす月の光がシャボン玉をキラキラと輝かせる。
「わ あい、キ レイ」
そうたくさんの瞳を輝かせてキャッキャとはしゃぐあっちゃん。その手をのばして触ろうとするが、どれもこれもすりぬけていく。
どんどん空へ昇っていく様子を見ていくうちに、思わず“あの曲”を口ずさんでいた。
「シャボン玉とんだ 屋根までとんだ 屋根までとんで こわれてきえた… えー、ら〜ららんらんら〜ら〜ら〜 シャボン玉とばそ」
シャボン玉と俺を見比べつつぱちぱちと手を叩くあっちゃんはニッコリと笑う。
「とお る に いちゃ、じょー ず。もっか い やって」
「ハハ、ありがとあっちゃん。途中の歌詞飛んじゃったけど…まぁ、いいか」
すごく久々に歌ったこともあってか、2番もあったはずだが歌詞が出てこない。しかしまぁ出てこないものは仕方ない。気にしないことにしてリクエストに応えながら次のシャボン玉を作る。
…後で調べたところ『生まれてすぐにとばずに消えた』とあった。まるで【産まれてすぐに死んでしまった子供】のことのようだと考えてしまった。あっちゃんの前で歌うのはなんとなく憚られるというか、“子供の幽霊”の前で歌うのはどうかと思った歌詞だったので、唄わなくて唄えなくて良かったかもしれない。
自分もやりたそうに見てたので彼女にも吹き棒を渡してみるが…
「〜〜っ、で きな い…」
あっちゃんにはうまく出来なかったようで、ちょっとシュンと項垂れそうになった。
「じゃあほら、こっちならどう?」
2つ目のパッケージには、ハート型、星型、複数の円がくっついてる型などデザインの『バブルリング』(という名前らしい)が入っていた。
沢山シャボン玉が飛びそうに見えた複数の円型を渡すと、あっちゃんは不思議そうに輪の中から俺のほうを覗く。
自分は小さい星型を手に取り、手本として実演してみせる事に。
「えーとたしか、こうやって浸して。こう、ブワーッと…!!」
こちらもかなり久々だったので初めの一度は失敗したものの、その後すぐにちゃんとした形になって浮かんでいく。
あっちゃんも数回やってみてこちらはコツを掴んだらしく大はしゃぎだ。そのあとはぶんぶん腕を振って器用に大小混在したシャボン玉を量産させていた。
さて最後の3つ目だが、なんと置型・電動で作れるシャボン玉メーカーなるものだ。100均ショップで買えるものなのか!と思わず手にとってカゴに放り込んだ代物なのである。
電源を入れると次第に大量のシャボン玉が飛び出し、先の2つの残り玉と相まって辺りをシャボン玉が包み込む。ただ空に消えてしまう様は儚いが、シャボン玉に囲まれる瞬間は面白いと感じた。
「そういえば前に屋外イベントとかで飛ばしてるの見たな。
「き らきら、き れい、いっぱ い?」
「そうだよいっぱい飛ばしてお客さんにも楽しんでもらいたいね〜。いや、ホラーにするなら…色を付けて狐火とか人魂っぽくしてみるとか…?」
「き つね…?」
そうこう考えごとをしているうちに、置型のシャボン液が切れたのかシャボン玉が出てこなくなった。最後の泡沫が夜空に向かう様子を見つつ、全てを片付けて部屋に戻るため歩きはじめる。
「お店でミルメーク買ってきたから飲みながらシャボン玉を使った仕掛け考えようか。イチゴとバナナとココア、どれがいい?」
「わ あい、いち ご、の む」
ニコニコと笑う妹の手をひいて、自分はココアにしようかなと独り言ちて。
その話を後日聞いた長兄がシャボン液の特大ボトル数本と中古のイベント用バブルマシンをどこからか仕入れてきたのはまた別なお話。
なおシャボン玉自体には薄い色しか着かなかったため、セロハン付ライトで対応したという。