ふわふわ浮かぶしあわせ   作:夏野りお

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辻斬りナギリが諸々終えたあとの話


ジョンとナギリ

ヌリヌリヌン(ギリギリさん)ヌヌ ヌッショヌヌヌヌヌー(つぎ 一緒にコレやろー)!」

雨上がりの香りが微かに残る夜、ナギリはジョンと遊ぶ約束を交わしたため、ロナルド退治事務所(ジョンの棲家)を訪れていた。

周囲の指導によりある程度ならゲームが出来るようになった。その為今宵もジョンと暫くレースゲームをしていたナギリだったが、まだ慣れていない為か疲れと飽きがきてしまった。

その気配を察したジョンが差し出したのは、シャボン玉を飛ばすセットだった。

「丸、次はコレを一緒にやりたいのか?」

手渡されたセットをペリペリ開封しつつ、ジョンの頭を優しく撫でる。

「ヌン!」

嬉しそうにナギリを連れて開けてもらったセットを手に窓辺にいそいそと移動する。

シャボン液のボトルを開け吹き棒を浸けるジョン。ナギリもそれに倣い吹き棒を構える。

自然と息を合わせてふーっと吹くと小さめのシャボン玉が飛び出してふわぁ〜っと上空へ。体格差・肺活量の差でナギリのシャボン玉は大量かつ勢いよく生まれていく。

「ヌー!ヌヌイヌヌ〜イ(キレイキレ〜イ)!!」

キラキラと照らされるシャボン玉にジョンが興奮してる横で、同じくシャボン玉を眺めていたナギリの脳裏にはある光景が思い浮かんだ。

 

夕焼けに染まるマンション。そこの部屋のベランダからいくつもの小さな泡が飛び立ちふわふわと浮かんでいる。

「わー…シャボン玉、いいなぁ」

髪がぼさぼさでちょっと見窄らしい身なりの男児は公園のベンチに座り、その様子を見上げている。

「帰りたくないなぁ…でも帰らなきゃ…」

 

(これは誰の…俺の、記憶なのか…?)

 

ヌリヌリヌン?ヌーシヌヌ?(ギリギリさん?どーしたヌ?)

ポンポンと叩かれた腕の感覚とその声でナギリはハッと我にかえる。隣には心配そうに見ていたジョン。「何でもない」と頭を振ってそっとジョンの頭を撫でる。

安心したのかジョンはヌヒヒ、とくすぐったそうに笑い、再びシャボン玉を彼なりに勢いよく飛ばしていく。

「ふたりともとっておきのやつで遊びたくないかね?ちょっと屋上へ行こう。」

手持ちのシャボンボトルを使い切ったタイミングで声をかけられた二人は、ドラルクに続いて屋上へ上がる。

今夜は満月で、少し風が出てきたおかげで涼しく感じられる。

人間には暗いが、夜を生きる自分たちにとっては月の光と満天の星たちのおかげで明るい。喧騒も遠く感じられ穏やかな空間だ。

「よし、じゃあこれがネットで取り寄せたとっておきの玩具だ!事務所にて若造にぶちかましてやろうかと思ったが、せっかくだ。ジョンとギリギリさんの友好の一助となりつつ、威力のほどを試してからにしようではないか」

じゃ~んと効果音付きでドラルクはとっておきの逸品として披露したのは一見するとドライヤーに似た代物だった。

「人気商品でねこれ、やっと買えたんだ。このバズーカ型バブルガン。先端の約150ある突起からズバーーっと!!「ヌバーーヌっ?」そう、シャボン玉が噴出されるってやつなの。ささ、ギリギリさん。手元のトリガー引くだけだからやってみてよ!」

「ヌリヌリヌン、ヌンヌッヌ〜(頑張って)!」

手渡された淡いパープルカラーのそれ(・・)を興味深そうしばらく眺めてナギリは構える。

トリガーを引くと想像以上にキラキラとカラフルに輝くシャボン玉が大量に噴射される。その様子にナギリは目を瞬かせジョンは大興奮してゴロゴロと大回転。

「フッフッフッ、すごいだろう?LEDライトも搭載されてるから普通の物とはひと味もふた味も違うのさ!」

「たしかにスゴイが…。しかしコレをあの狭い部屋でやると掃除が大変になるのではないか?いくらなんでもあの赤い退治人が怒らないか?なぁ、丸」

「ヌ、ヌン…」

その光景がありありと目に浮かんで不安になるもののドラルクは『面白い』と思ったモノを辞める気はないようで。

「なあに、君が気にすることはない。シャボン玉ってのは石鹸の泡と同じものなのだからあの汗臭いゴリラごとドバっと洗い流してしまえばいいだけの事さ。なぁジョン!」

「ヌ、ヌゥ………」

仕方ないのでその懸念は置いておくことにした彼ら。その後しばらく遊んでいると、いつの間にか事務所に行っていたらしいドラルクがお盆を持って戻ってきた。

そこにはシャボン玉によく似た形状で中に果物が入っているモノが見える。

「まるい…」

「フフフ、これは香港のお菓子で『九龍球(クーロンキュウ)』という、フルーツを寒天ゼリーに閉じ込めて丸く固めたものだよ。ジョンからシャボン玉で遊びたいと聞いていたからね。それに似た菓子を作ろうと思って。シロップもかけてあるから甘くて美味しいよ」

「ヌヌー!ヌリヌリヌン、ヌヌヌ~(食べよ〜)!」

促されて席に着くと良い香りがする茶とともに“九龍球”がコトン置かれる。シャボン玉にもビー玉にも見えるその菓子は綺麗に球状でちょっと食べるのが勿体ないと感じたほどだ。

「ジャスミン茶も入れてあげたからね、ギリギリさんもどうぞおあがり」

「 ヌイシ〜!」

かわいい口でぱくりと頬張ったジョンがうっとりとしている様を見て、ナギリもオレンジ色のやつをぱくり。

「あまくてモッチリしてて、美味いな」

ナギリはもうひとつ頬張り、同じ様にモグモグしてるジョンを一瞥し、満月を見上げる。

辻バレ前に夢見てた、ジョンとの穏やかな時間。

「あぁ、幸せは丸い形をしているな」

 

後日、事務所でやらかし案の定赤い退治人に殺されたドラルクがいたのであった。

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