ここは、20××年7月2日。日本は、第三次世界大戦勃発により、3億を突破していた人口が戦争に駆り出されたり、飢餓による栄養失調による死の影響によって、約7800万人にまで減少していた。そこまで行った時、人々は国へ反旗を翻した。その数約2000万人。規模だけでいえば小国に匹敵する数、更にその団体は一人一人が屈強かつ不屈の精神を持っている。日本政府は、海外と戦うよりまずそれらを抑えなければまずい、と考え、その団体を纏める総大将暗殺が決行された。
『はぁ、、っはぁ、、、っ!!!』
一人の男が、傷だらけの姿で駆け回る。周りを見ると、死んでる人ばかり。これは彼が全て殺した人達だ。数だけでいえば、恐らく数万を超えるだろう。美しい緑の森は全て、一本残らず真っ赤な色に染まっていた。
「オワリダ。」
そう聞こえた直後、足に何かが貫かれた。見てみれば、ショットガンだろうか。左足にまばらに穴が空いている。
『っ!!!!!』
恐らく、もう既に真後ろにいるだろう。ならば、と思い振り返り、自らの銃で反撃しようとする。
直後、二発の銃弾が俺の両腕を貫く。
「アマイ。」
両腕から血が流れる。もう、長くは無いだろう。いや、すぐにでも俺は失血で死ぬだろう。
『へぇ、やるじゃん、零殺人徒(れいさつじんと)のNo.2。』
零殺人徒、日本が誇る最強の人斬り集団だ。規模は100万、世界で見ても有数の殺人特化型の組織だ。
『見逃してもらえたりは、、、』
「ソンナコトスルハズナイダロウ」
だろうな。
「オマエガシネバ、コノハンランハシズマルダロウ。ソシテ、日本」
そんなことを言う彼に、俺は笑わずにはいられなかった。だってそうだろう、仮にこの反乱を鎮めた所で、また同じ様な奴らが湧くに決まってる。そもそも、俺が死んだ所でアイツらが諦めるわけないだろうに。根本を解決しなきゃ、環境なんて変わんない。馬鹿でも分かる様なことを、奴らは解らないのだ。
『はっはははははははは!!!』
「ナニガオカシイ」
『悪い悪い、あまりにも教養がねぇ言葉にびっくりしちまって、笑っちまったわ。』
「コノヤロウッ!!!」
男は激昂したのか、更に銃を俺の体に撃ち込む。痛めつけるかの様に。
「ハハハ!オマエミタイナ〝フコウ〟ヲバラマク〝ヤクビョウガミ〟デモ、シネバオレノヤクにタツゾ」
笑いながらそう言う男。ああ、なんで馬鹿なんだ。もうその手に持つ銃の中の弾を使い切ったというのに、コイツは俺の言葉にキレて気づいていない。こんな戯言なんて聞かずに冷酷に頭を撃てばお前は勝って、No.1に近づけたかもしれないのに。
『ははは』
「ナニヲワラッテイル?オマエハモウシヌンダゾ?」
『じゃあ、さっさと終わらせてみろよ。』
「フム、ソウダナ。オマエヲノバナシニシテオイタラナニカヘンナコトヲシデカスダロウシナ。カクゴハイイカ、《史上最悪の叛逆者》」
『。。。。。。』
なにが叛逆だ。先に戦争を始めたのはそっちだろうが。
この国を、、、俺の家を壊したのは、俺たち家族を不幸にしたのは、俺からオマエらだって言うのに。
ガシっと俺は彼の手を掴む。
「。。。ナニヲ。」
『お前なんかが勝者になれるわけねーだろ?』
「ズニノルナ!!」
俺の頭に照準を合わせ、素早く指を引いた。だが、弾が放たれることはなく変わりにカチリ、と情けない音が俺の耳元で鳴る。
『はは!弾の数も数えられねぇテメェに俺が負けるはずがねぇだろ!』
俺は後ろ手に隠していたスイッチを押す。
「オマエ!!!」
『残念だったな、俺は不幸をばら撒く疫病神なんだ。俺が今から食らう不幸も、お前にお裾分けしてやるよ。』
(じゃあな野郎共。今回ばかりは遅刻してくれて助かったぜ。おかげで、死ぬのは俺一人で済みそうだ。)
『まあ、あいつらが来ない様に仕向けたのは俺だがな』
直後、爆音が響いた。
◇ ◇ ◇
『、、、ここは。』
俺は、死んだと思っていた。死んで、地獄の蟻地獄やら、針地獄やらにでも落とされるんだろうな、と思っていた。
だが、俺の目に映る景色は想像していたものとは真逆の世界だった。
美しい、夕焼けに照らされた木々、紅葉が舞い散り、なにやら荘厳な城がある。そしてその街のど真ん中に巨大な石像があった。
『。。。異世界転生ってやつか。』
それか、地球のどっか知らない場所にまた生まれ落ちたかのどっちかだ。
『まあ、どっちでもいいけどな。』
新しい人生を得た俺がすべき事はただ一つだ。
『人を沢山沢山数えきれない程助けて死ぬ。』
前世の俺では出来なかったことを、今世では沢山やるとするか。
「。。。なにか、声がしたと思ったら。」
んー、と伸びをしていると、何やら後ろから声が聞こえた。女性っぽいな。
『現地の人か?丁度いい、ここはどこか教えてくれないか?』
そう言って後ろを振り返ると、綺麗な金色の髪をたなびかせた美少女が立っていた。
「ここはどこ、、、ってことは、貴方は私と同様に別の世界から来たの?」
あ?。。。あー、そうだな、別の世界。。?一度死んでると思うから違う気もするが、、、まあ、いいか。
『ああ、俺は別の世界からここへ来た。』
「なるほどね。。。なら、貴方の居た世界を、私に教えてくれない?」
「どんな世界だったのか、知りたいの。」
俺の目を見てそう話す彼女。
無表情ではあるがどこか期待、というよりかは何かに縋りたい、救ってほしい人特有の目をしていた。
まあ、そんな目をせずともここで答え無いと言う選択肢はないが。
『俺のいた世界は、腐り切っていた。
第三次世界大戦に発達して核爆弾が飛び交った。
上を見上げた時に見えた夜空に輝く星々は雲に遮られ見えなくなった。
鮮やかに彩る自然は腐敗し、
80億人という数えるのも億劫だった人間は俺がいた頃には既に1億人を切っていた。
俗に言う、終末世界ってやつだ。
これが、俺のいた世界だ。』
一通り話し切ると急に彼女が抱きついてきた。
「ごめん、辛い話をさせて。」
彼女は、泣いていた。
『いや、大丈夫だ。もう、あそこと俺は関係がないからな』
「だとしても、貴方にとって辛い話を、強いてしまった」
『はぁ、大丈夫だって。この境遇は俺だけじゃ無いんだ、一部のクソッタレな爺共を除き、全ての人が同じ境遇だったからな。この不条理は、全ての者に平等に分布されてたんだ。』
『俺だけが辛いんじゃねぇ、皆辛かった。それを変えようとして立ち上がったんだよ、俺達は。』
『皆、覚悟を以て戦ったんだ。だから、同情なんて要らねぇよ。』
「ーーーうん、わかった。」
俺の話を理解したのだろう、泣き止んだ彼女は己の事を話し始めた。
「実は私、お兄ちゃんを探してるの。500年間ずっと旅してきたお兄ちゃんを。」
『ほう、、成程。。。500年、、、、ん?500年?』
「うん。」
おいおいおい待て待て待て、え、500年?5年の間違いじゃなくて?
『ーーー失礼、貴女の年齢を教えてくれませんか?』
いや本当に気になる。見た目どう見繕っても20いくかいかないか位なんだが。
「私?私は。。。うーん、600位を超えてからは数えて無いからなぁ。」
『oh....』
なんてこった、俺より全然年上ですやん。。。
彼女が特別なだけ?それとも、ここに住んでいる人々は皆こんくらい生きるのか?
俺の居た世界は長生きして6.70くらいだったんだがな。。。
「あ、そういえば名前を聞いて無かったよね。私は蛍、貴方の名前は?」
『俺ーーーいえ、私は久遠 護(くおんまもる)と申します。』
『よろしくお願いします。』
「なんで急に敬語?」
『目上の人に敬意を表するのは当たり前ですから。』
「え、貴方何歳なの?」
『26歳です。』
「え」
『26歳です。』
「。。。ほんと?」
『はい。』
ふむふむ、なるほど。と何か納得した様な表情になった蛍さん。
「じゃあ年上命令、敬語はやめて、さっきの喋り方に戻して。その喋り方、ちょっときもい。」
『酷い。』
「だって急に変わったじゃん。」
『まあそれは確かに。』
「まあ、私と話す時はその喋り方でね。」
『おう。』
「それで、さっきの話に戻るんだけどね。」
『おう。』
「私もお兄ちゃんも、別の世界からここへきたの。でも、この世界へ来る前、天理という人と戦ってたんだけど、負けちゃって。。。」
『おう。』
「それで目が覚めたら、ここに居たの。」
『おう。』
「それで、私はお兄ちゃんを探すためにずっと旅に出てた。」
『おう。』
「おい」
『ハイ』
「敬語はやめろって言ったけど、話を適当に聞いてなんて、私言ってないよ?」
『スミマセンデシタ』
「はあ、、、さっきの話に戻るけど、私は旅をしていた。その旅もやがて終点に近づいていく。。。けれどお兄ちゃんは見つからない所か、きっかけすらも無い。それで、自棄になっている時にこの場所へ来たんだ。あと、この辺りにはヒルチャールがでてくるから、それもついでに退治していたら、奥から声が聞こえた。」
『おu「おい?」ハイ。。。』
「...はぁ。、、、で、それで話を聞いてみたら、貴方も私と同じ様に別の世界からこの世界へ来たんだと教えてくれた。」
「だから、もしかしたらお兄ちゃんの事何か知ってるかもって思ったの。」
『成程ねぇ。』
だからあの時期待と不安が入り混じった表情で俺にあの質問をしたのか。
「でも、知らないならしょうがないよね。」
『俺が今持ってる情報は全部吐いたぜ。』
「聞きたい事はそれだけ。...じゃあ私は一旦戻ってキャサリンに任務完了の報告をする。」
そういって彼女は血のついた剣を振り落とした後に、鞘に納めた。
...うーん、俺はこれからどうしようかな。。。未だわからない事が多すぎる。
「それで、貴方はどうするの?」
『うーん。。。』
「貴方は来たばっかりでここの事何も知らないでしょ?」
『あぁ』
どうするか、、、まあ、ここで得られる情報はここまでだな。次は目の前にある街に行こうかな。
『俺はとりあえずあそこの街を目指すよ。』
そう言って俺は最初に見た街を指差す。
「モンドに行くってことだね。」
モンドというのは、あの街の名前だろう。
『おう。』
「それなら案内するよ。ついて来て。」
おーおりがてぇ。
『さんきゅ。』
そんなこんなで、俺の第二の人生がスタートした。
前世とは全く違う美しい俺の理想を体現した様な世界に、俺は、少しだけワクワクしていた。
ちなみに、彼の前世で出てきた人達はこれ以降出てきません。