不死鳥~あの時、僕の一言が無ければ~   作:味噌村 幸太郎

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受け継がれる腐の意思

 

 201X年、待望の第一子が我が家に生まれた。

 性別はどちらでも良かった。ただ元気な赤ちゃんとして、生まれてくれれば、それ以上は望まなかった。

 

 長女が生まれて一歳になったころ、実家で親戚を招いて”餅踏み(もちふみ)”をすることになった。

 ”餅踏み”というのは、たぶん九州で行われるお祝いだと思う。

 場所によっては、他のお祝いがあると思うが。

 

 うちは福岡だったので、我が子に草鞋を履かせて、餅の上を踏ませるという行為をした。

 まだ一歳になったばかりでしたので、ギャン泣き。

 しかし、その前夜に事件は起きた。

 

 僕と妻、それに長女は先に実家で一晩、泊まったのだが。

 赤ちゃんだった娘がなかなか寝付けないでいたので、妻も眠れずにいた。

 その時、姑である僕の母さんが「代わるよ」幼い長女を寝かせるため、しばらくおんぶしてくれた。

 少しでも妻が眠れるように。という気遣いだったのだけど。

 別にこちらが”望んでいないもの”まで、置いていった。

 

 僕の妻は特別、BLというものに興味も偏見もないのだけど。

 たまにうちの母さんは、BLぽいマンガで僕の妻を沼に落とそうと試みている。

 ライトなものからハマらせて、段々とハードルを上げて相手の様子を見る。

 いつものやり方だ。

 

 この際、疲れた妻は母さんが置いていったBL本に気づかず、眠ってしまった。

 僕は眠れなかったので、そのマンガでも読もうと思い、日常系の作品かと思っていたら。

 中盤からガッツリ絡みのシーンがあり、僕は飽きれてしまった。

 

 ~翌日の朝~

 

 餅踏みを行う前に、親戚などが一気に集まるので、実家のリビングを掃除していた時。

 その時、事件は起きた。

 長女がハイハイし始めて、間もないころだったので、祖父である父が見てくれていたのだが。

 あるものを、長女が手にしてしまった。

 昨晩のBL本だ。

 

 可愛い盛りだったので、寡黙だった父も長女にはデレデレだ。

 

「うわぁ! 絵本かな? なんだろね? 読んでみようか」

 

 もちろん、この時。父は何の本か知らない。

 近くで見ていた僕は、一瞬で気がつき、長女から取り上げようとしたが、既に遅かった。

 

「あうあう……」

 

 読みあげてしまった。

 

「お、上手上手! もっと読んでごらん!」

 

 愛する孫が初めて声を出したと思い、ビデオ撮影まで始める始末。

 父親である僕は、この光景を見るだけで何もできなかった。

 

「ワンワン、あうあう」

「上手だねぇ! ワンワンの漫画かな? じぃじにも見せてごらん」

 

 そのあとは、地獄だ。

 愛する孫が初めて読んだ本はBLだと知り、怒鳴り声を上げる。

 当然、その怒りは母に向けられた。

 長女からマンガを取り上げると、物凄い力で壁に叩きつけた。

 

「こんな汚いものを置いておくなっ!」

 

 この時、壁に当たって、するすると落ちてきたBL本を拾う母の姿は。

 さすがにかわいそうだと思ってしまった……。

 

 しかし、そんな長女も今ではガッツリ祖母の血を受け継ぎ、次女とBL本にGL本まで読み漁るようになってしまった。

 ”腐女子のばぁば”の部屋で育ったので、避けることはできなかったようだ。

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