仮面ライダートイック   作:テンカイザー

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初戦闘回です。


Part5

 気がついたら、目線が高くなっていた。

 

 僕は一体どうなってしまったんだ?

 

 なんとなくで箱をいじって、何故か「変身」と無意識に言って、それからどうなったのだろう。

 

 わからないけど、一つ気づいたことがある。

 今僕の身体からは力がみなぎってくるんだ。

 理由はよくわからないけど、今の僕はきっとさっきよりも強くなってる。

 

 そう思って僕は、目の前に立つスパイダーに向けて構えを取る。

 するとスパイダーは僕の方へ向かって走ってくる。

 

 それを僕は、右拳のパンチで迎え打った。

 するとスパイダーは凄く痛がるような素ぶりを見せ後ろへ数本後退る。

 

 さっきまでのパンチとはまるで威力が違う。

 これで確信した、僕は今強くなってる。

 

 これなら美名子さんを守れる!

 

「ソノチカラ、……ヤッパリオ前モアイツから力をォ!!」

 

 スパイダーがますます怒ってる。

 それにしても、今言ったアイツとはなんのことだ?

 

 おっと、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。

 

「僕はお前を許さない!

自分の家族をあんな目に合わせたお前を!美名子さんは僕が守る!」

 

「ウルサイウルサイ!」

 

 スパイダーはこちらに向かって突進してくる。

 僕はそれをジャンプで躱した。

 

「いてっ!」

 

 だけど、思ってた以上に高く跳んでしまい、僕はそのまま天井に頭をぶつけてしまった。

 なんとか着地出来たけど、頭が少しフラフラする。

 

「ウアァッ!」

 

「うわっ!」

 

 その隙に僕はスパイダーの引っかきを喰らってしまった。

 

 痛い。

 引っかかれた左腕がズキズキ痛むけど、僕はなんとか後ずさって追撃を避けていく。

 だけどこのままだとマズイ、いつまでも避けきれない。

 

 そう思っていると、突然お腹の箱の口から赤と青のボールが飛び出して来た。

 大体バスケットボールくらいの大きさかな。

 

 そのままスパイダーは目の前のボールを引っ掻いた。

 すると、ボールから赤と青の混ざった煙が吹き出した。

 

「アァッ!?」

 

 よし、なんとか目眩し出来た!

 この隙に僕はジャンプし、相手の背後を取る。

 そして今度は勢いよくキックをかました。

 

「はぁっ!」

 

「ウガッ!?」

 

 するとスパイダーは勢いよく吹っ飛び、屋敷の壁をぶち破ってそのまま外へと放り出される。

 

 さっきのジャンプの時も思ったけど、やっぱり今の僕の脚の力は凄い。

 

 僕はすぐにスパイダーを追って外へ飛び出す。

 

 奴を外へ出したのは、美名子さんから遠ざけるためだ。

 これで思う存分戦える。

 

 外へ出ると、そこには落ちてきたスパイダーがすでに起き上がっており、僕へ向ける視線がより鋭くなっている。

 

 僕は前へ出てもう一度パンチをお見舞いする。

 今度は躱されるけど、かまわず連続でパンチを繰り出す。

 

 その間に、ここだ!

 

「ウガッ!?」

 

 もう一度先ほどの煙幕ボールを出し、また相手を目眩しする。

 やはりこのボールは、僕が出したいと念じれば出せるものらしい。

 

 この隙にまた僕はジャンプで相手の裏を取りもう一度キックをお見舞いする。

 段々わかってきたけど、今の僕はキックの方が強いみたいだ。

 

 僕のキックを受けて地面に転がる。

 だけど、すぐに立ち直って今度は僕ではなく屋敷の方へ向かって系を出した。

 

 するとそのまま屋敷の壁の高い所へ張り付いたのだ。

 

 まさか、逃げるつもりか!?

 

 だけど、僕の予想は外れてスパイダーは系にぶら下がった状態で僕に向かって来た。

 

「うあっ!」

 

 僕に一撃を喰らわせると、また系を飛ばして別の壁に引っ付き、そこからあちこちを飛び交いながら僕に攻撃をしてくる。

 

 ダメだ、こんなあちこち飛び回られたら煙幕ボールは使えない。

 どうにかしてアイツの動きを止めないと。

 

 すると箱の口からまた何かが飛び出して来た。

 地面に落ちたソレを拾うと、それは黄色いバイクのような形をしている。

 後輪の部分は持ち手になっている。

 前輪の部分は回転ノコギリになっており、さらにフロントの部分に銃口がついている。

 

 これは、武器か?

 銃口があるってことは銃として使えるかもしれない。

 

 そう思って僕は持ち手の部分を掴み、銃口をスパイダーへ向ける。

 

 壁から壁へと行き交うスパイダーを、攻撃を躱しながら必死に目で追う。

 

 そこだ!

 

 別の壁へ引っ付く瞬間を狙い、僕は引き金を引いた。

 

「ガアァッ!」

 

 弾は見事命中し、スパイダーは壁に上手く貼り付けずそのまま壁に手をつけながら落ちていく。

 

 今の内に近づかなきゃ!

 

 そう思っていると、今度はどこからともなくウィップスが現れ、僕の持っているバイク型の武器に飛び乗ってきた。

 サドルは丁度ウィップスが乗ってぴったりのサイズだった。

 

Ride On!

 

 もしやと思い、僕は思いっきりバイクをウィップスごと投げた。

 

ウィップス!Let's Go!

 

 するとバイクは勢いにのって走り出し、一瞬でスパイダーの元へ飛んで行った。

 

 バイクに乗ったウィップスはスパイダーの足元をぐるぐる回り始めた。

 その最中にウィップスは手に持ったムチをスパイダーの足にひっかける。

 そしてあっという間にスパイダーの足はぐるぐる巻きになり、動けなくなった。

 

 その間に僕はスパイダーに近づいた。

 

「美貴子ぉ!」

 

 すると突然、ここにいないはずの声が聞こえてくる。

 美名子さんだ。

 

 どうしてここに!?

 まさか追いかけて来たの?

 

「お願い美貴子、もう元に戻って!

私たち今まで幸せだったはずでしょ?ワタクシもこれからもっと頑張るから、元のあなたに戻ってちょうだい!」

 

 美名子さんは涙を流しながら必死に叫んでいる。

 

 美貴子ちゃんがやったことは今でも許せない。

 もう取り返しがつかないことをしたのだから当然だ。

 

 だけど、あんな美名子さんを見たら、急に胸の辺りが苦しくなってきた。

 

 僕はついさっきまで、美名子さんを守ることしか考えてなかった。

 だけど、そしたら美貴子ちゃんはどうするんだ?

 

 あの化け物の姿のまま美名子さんと一緒に暮らすのか?

 もし元の姿に戻れたとしても、あの子が両親へしたことはなかったことにはならない。

 

 それでも、他でもない美名子さんが美貴子ちゃんとまた一緒に暮らすことを望んでいる。

 

 僕は、どうしたらいいんだ?

 

 こういう時、お母さんとお父さんはなんて言ってた?

 ダメだ、思い出せない……。

 

「ワタシは……ワタシはオマエがいたらシアワセにナレナイィッ!!

 

「……!?」

 

 僕が迷ってる内に、スパイダーは足に巻き付いたムチを手で切り裂き美名子さんに向かって走りだす。

 

 ダメだ!

 

 僕は咄嗟に、お腹の箱のフタを閉める。

 なんでそうしようと思ったのかはよくわからない。

 けど、僕が止めなきゃと思った途端なぜかそうするべきだという気がしたんだ。

 

Full Max!

 

 そして僕はスパイダーに向かって走りながらハンドルを一気に3回回す。

 

Gyaaao!!!

 

 そして僕は勢いに乗ってジャンプし、宙を舞いながら右足を前に出す。

 

ジャッキーパニッシュ!!

 

 スパイダーが美名子さんに手を下す直前に、僕の飛び蹴りが決まりスパイダーは大きく吹っ飛んだ。

 

ウガァァァァッ!!?

 

 吹っ飛んだ先でスパイダーの身体から火花が散り、次の瞬間物凄い爆発が起きた。

 

 それから少しして爆風が晴れると、そこにはもうスパイダーはいない。

 元の姿の美貴子ちゃんがいた。

 

 元に戻せたのか?

 

 だけど美貴子ちゃんの様子がおかしい。

 やがて美貴子ちゃんは突然、ポロポロと涙を流し始める。

 

「なんで……なんでなの?

私も幸せになりたかった、なのにお父さまもお母さまもみんな褒めてくれなかった。

私だってお姉さまみたいになりたかった、でもいくら頑張ってもなれなかった。

なんでなの?私もいっぱい頑張ったのになんで幸せになっちゃいけなかったの……」

 

 美貴子ちゃんが何を言っているのかは僕にはわからなかった。

 だけど、美貴子ちゃんのその姿を見てるととても胸が苦しくなるのを感じた。

 

 確かに自分の家族を傷つけたのは悪いことだ、絶対に許せない。

 だけど、どうしても今の美貴子ちゃんがさっきまで人を襲っていた化け物と同じだとは到底思えなかった。

 

 僕は何と戦っていたんだ?

 僕は何を倒そうとした?

 

 すると美貴子ちゃんの身体が手から徐々に黒くなり始める。

 黒くなった部分は焼けた灰みたいになっていき、宙に舞っていく。

 それは次第に広がっていき、僕にはとてつもなく嫌な予感がした。

 

「いや、……いやだぁ!

まだ死にたくない!まだ、幸せになれてない!

私も幸せに–––––」

 

 美貴子ちゃんは最後まで言えなかった。

 言い終わる前に美貴子ちゃんの身体は全て真っ黒になり、全てが空へと散っていった。

 

 もう美貴子ちゃんは()()()()()()()

 

「美貴子……?」

 

 美名子さんは妹がいた場所をぼーっと見ながら、静かにそう呟いた。

 

 

○×△

 

 

 飾城美名子は、もう何もわからなかった。

 

 両親は死に、妹は化け物となり、その妹もたった今目の前で消えた。

 

 どうしてこうなった?

 

 自分は今まで両親の教えに従って全てを頑張って来た。

 そうすれば永遠の幸せを過ごせると信じて。

 

 習い事も全て頑張った。

 両親の期待に応えるために。

 

 妹にだって優しくしてきた。

 自分に追いつきたくて必死に努力してる姿をひたすら励まし続けた。

 

 なのに、結果は全て消えた。

 両親も、妹も、何もかも。

 

 どうして?

 今まで自分は頑張ってきたのに。

 どこで間違ってしまったのか。

 

 とにかく理由が欲しかった。

 

 それがあったとしても結果は何も変わらない。

 けれど、美名子にそんなことを考えられる余裕はなかった。

 

 そんな時目に写ったのは、()()()()()()()

 自分が良心から拾って来た男の子、その成れの果て。

 

 思えば、事態がおかしくなったのは全て彼を拾って来てからだった。

 

 次第に今の行き場のない悲しみをぶつけたい美名子の心は、物事の点と点をあらぬ方向につなげていった。

 

 そうだ、彼を拾って来てからだった。

 そして彼は化け物だった。

 

 なら、全てはこの()()()()()()()

 この醜い化け物が、自分の幸せを奪ったのだ。

 

 絶対に許せない。

 

「この化け物!」

 

 

○×△

 

 

 –––––化け物

 

 美名子さんは僕のことをそう言った。

 物凄く怒りのこもった目つきで。

 

「ワタクシたちの幸せを返して!

なんでワタクシの家族を、妹を奪ったの!

 

この人殺し!

 

 人殺し。

 僕が……?

 

 どうして?

 僕は美名子さんを守ろうと必死に頑張ったのに。

 僕はただ、良い子であろうとしただけだったのに。

 

 だから僕は、自分の家族を殺した美貴子ちゃんが許せなくて。

 美貴子ちゃんは美名子さんまで殺そうとして。

 だから僕は美貴子ちゃんを……。

 

 美貴子ちゃんを、僕はどうしたんだ?

 

 美貴子ちゃんは灰になって消えた。

 それは多分死んだのと同じ。

 

 どうして?

 僕が美貴子ちゃんにキックをかましたからだ。

 

 僕が美貴子ちゃんを殺した?

 

 

○×△

 

 

 あれは、まだ僕が保育園にいた頃。

 僕は意地悪をしていた子を殴ったことがあった。

 意地悪をされていた子を助けるためだ。

 

 だけどその日、僕は家でお母さんに怒られた。

 

『いい、灯流?意地悪されてた子を助けようとしたのは立派よ。

でもね、だからってすぐに力で解決しようとしちゃダメなの』

 

 この時の僕はわからなかった。

 相手は人を泣かせる悪いやつなのに、なんでそんなやつに力を使っちゃいけないのか。

 

『確かに力で解決するのは簡単よ。でもね、力に頼ったら必ず誰かが泣くことになるの。

泣くことが出来るのは、心に優しさがある証明よ』

 

 優しさがある証明。

 あんな嫌な奴にも、優しさがあるの?

 

『だから、灯流にはそんな誰かの優しさに気づいてあげられる子になって欲しい。

だから、簡単に力に頼っちゃダメよ。まずは誰にでも歩み寄ってあげて』

 

 それから少しして、僕が殴ったやつは意地悪をしてたはずの子と仲良くなっていた。

 

 後に聞いた話だと、どうやらそいつは本当はただ一緒に遊ぶ相手が欲しかったけど、どうしたら良いのかわからなくてやってしまったらしい。

 

 だからって意地悪をしたことが許されるとは思わない。

 だけど、こうして仲良く出来ている所を見ると、殴る必要なんてなかったんじゃないかと思う。

 ちゃんとそいつに人と一緒に遊ぶ方法を教えてさえいれば、意地悪はしなかったのかもしれない。

 

 お母さんが言ってたことを、僕はこの時やっと理解出来た気がした。

 

 

○×△

 

 

 そうだ。

 僕は美貴子ちゃんを許せないって気持ちがいっぱいで、美貴子ちゃんの心に歩み寄ってなかった。

 

 もし僕が、もっと早く美貴子ちゃんの心に寄り添えていたら、こんなことにならなかったのかな。

 

 だけどもう遅い。

 どうして今になってこんなこと思い出したんだ。

 

 僕は、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 僕はもう、お母さんの望む良い子じゃない……。

 

 その事実が、僕の胸を、心をズシズシ痛ませて、止まらなくて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 僕は、気がついたらその場所から思いっきり逃げ出した。




と言うわけで、第一話はこれにてひとまず終了です。
第二話からの更新は未定ですが、どうか気長にお待ちください。
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