『双龍会』
ディスコネクトにおいては厄介者のならずもの集団だ。エリアの不法占拠、密売品の取引、人身売買、違法な賭博場の運営.......などなど、ヤクザであればするであろうシノギは大抵やっている
ゲームではダストを殺した後、復讐に駆られた誘救を殺したクソ野郎共
ダストの死体動かして誘救騙し討ちしたの未だ許してないからな。テメェらのボスごと腑ぶち抜きフェスティバル開催してやるよ
ルート次第ではうまく利用することができるがそこまで関わりたくない。こっちから願い下げだ
「よぉ兄ちゃん、うちらのシマで何のようだい?」
銃を向けてる連中の奥から間をかき分けるように現れたのは、刺青を身体中に彫った大柄の男。両腕からは龍の刺青がこちらを威嚇するように顔を覗かせている。確かディスコネクトでは序盤の中ボスとして登場したはずだ。主人公に突っかかってスキルの練習代にされる可哀想なやつ。名前は知らん
「いやぁ、あいにくと今日はいい天気なもんで。ちょっと散歩でもしようと思って」
「そんなら俺らがいいとこ教えてやるよ。ほら、こっち来いや」
「いやぁ、お誘いは嬉しいがあんたらのデートプランなんざ、目に悪い色したカジノでバレないようにイカサマするとか、港の一角でやってる人身売買のオークションに出るか、気持ちよくなれるブツを売るとかだろ。そんな一ミリも楽しくない夜なんざこっちから願い下げだぜ」
『馬鹿!何煽ってんだ!!』
「んだお前、舐めてんのか?」
「誰がお前なんか舐めるかよばっちぃ。一瞬で全身末期ガンになるわ」
『君ってやつはさぁ!』
いやぁだって殺す気ですやん。明らかお前のこと殺して身ぐるみ剥ぎますよってオーラピンピンしてるやん
明らかこっちのこと生かす気が無い連中のご機嫌取りなんざ死んでもごめんだね。俺は死なないけど
「言うじゃねぇかガキ。だがなぁ、ここは俺ら双龍会のシマなんだよ。ここのモンは砂利一つだろうが俺らのモノだ。だからさっさともってる物全部置いてきな。命だけは取らねぇでやるよ」
『交渉の余地はないみたいだね…..ダスト、僕が合図するからタイミングに合わせて煙幕を張って。渡した薬品の中にあるはず』
「あいわかった」
そういって腰のポーチに入っている薬品を手に取り、いつでも取り出せるように準備する。向こうからは怪しまれないように、危機感のない顔でポーチに手をかけて
向こうもいつでもこちらを蜂の巣にできるように、しっかりと引き金に指をかけている
まさに一触即発の空気。殺意が針のように体を刺しているのかと思うほど、全身が総毛立っていく
そうして、後一歩で血祭りが始まるその一歩手前で…….稲妻のような閃光が線となり通り過ぎた
目を眩ませる閃光は、瞬く間に俺を取り囲んでいた連中の銃を両断したそれが、まさかそれが一人の少女によるものだと気づくことは難しいであろう
細かな刺繍と煌びやかな装飾が施された制服に、複数の円に囲まれた目のマークが刻まれたバッジ。政府公認シーカー育成機関『学園』の制服と、
「…..動いたら次は首を切る。それが嫌なら動かないで」
凛とした突き放すよう声と、凍てつくような冷たい眼に体を震わせる。首筋に立てられた刃が単なる脅しではないことを物語っている
「私はL.E.A.D*1の依頼を受けてここら一体の調査をしてる。現場での判断は一任されてるから、ここであんたらを突き出すこともできるし、場合によっては.......」
「連中がテメェみたいなガキを雇うとは思えないが?」
「それ、人のこと言える?それなら今試そうか?」
刃を一層深く突きつける。薄皮一枚がギリギリ切れてしまうほどの距離。双方睨みを効かせて……..最初に折れたのは双龍会の方であった
「流石にパクられたくねぇ。ここは俺らが一歩引いてやる。だがシーカー、テメェだけは絶対にいつか殺してやるからな。覚えておけ」
「煽り効きすぎだろセンチメンタルか?」
カルシウム取れカルシウム。大体のことは平気で受け流せるようになるからいいぞ。前世は身長伸ばしたくて毎日牛乳飲んでた俺を見習え
「お前らズラかるぞ!チャカは回収しろ、アシがつくと困る」
大男が部下たちに号令をすると、そそくさと繁華街の闇に姿を消していく。完全に姿が見えなくなった後、少女は俺に向けた剣を下ろして向き直る
「別に俺まで剣向ける必要なかったんじゃないか?」
「あんたに味方してると思われたらすんなり行かなかった可能性があるでしょ。後、純粋に癪」
「先輩にそりゃないだろ『夢』!?」
『坂平夢』
目の前の少女こそがディスコネクトの主人公であり、この世界の悪意を一身に受ける人物。そして、俺らが生き残るために必要な最も重要なピース
彼女は幼い頃にグラウンド・ゼロの発生により家族を目の前で亡くし、歪みに対しての復讐を誰よりも願うようになった。そんな哀れな少女に(邪)神が授けたのが、歪みの『撹拌と収束』の権能である
歪みの影響を無効化し、エリア含む歪みの効果を周囲に散らす『撹拌』
歪みを一つに集中させ、自身の支配下に置く『収束』
端的に言うと一人だけ歪みによる精神崩壊も肉体融解も多元生命体化も起きずに手ぶらでエリアに入って、あまつさえエリアの主導権を自分の手で握ることのできる権能。
そんな異次元の力だが、それができるのは終盤の、それも最終決戦の時ぐらいだ。今の彼女では歪みの効果をちょっと受け辛くなるぐらいで精一杯だろう
「馴れ馴れしく名前を呼ばないで。別にあんたのことは先輩だなんて思ってない」
「相変わらず刺刺してんなぁ。色々教えてやってのは誰だと思ってんだ?」
「..........」
自分が不利になったからってだんまりしやがった。いや、不利な時は下手のこと言わない方がいいって教えたのは俺だけどさ
「てか、L.E.A.Dの依頼受けてるってほんとか?」
「本当、特務課の宮下って人からの依頼でここら一帯の捜査というか、巡回を頼まれてる」
あぁ、あのシスコンサイコパスか
「な〜るほど。ま、ガキにはもう遅い時間だから気をつけろよ〜。悪いやつに捕まっちまう前にな」
「もう手遅れだからその気色悪い手を切り落としていい?」
「ひっでぇ言い草」
う〜ん、なんでこんな子になってしまったのか。育て方を間違えちゃったかしら?
『しょうがないよ、こんな奴を師匠みたいに尊敬するとか無理だろうし』
「誘救く〜ん?」
『僕は事実を言っただけで〜す』
生意気言う相棒に圧をかけるがすぐに逸らされてしまう。こいつめ。
さて、なんで俺が原作主人公に教えているのかといえば理由は一つ。バッドエンドルートを回避するためだ。
正確には誘救とダストが最も長く生きられるルートを確定させる必要がある。
ディスコネクトでのバットエンド率はあまりにも高く、そのどれもが悲惨な末路を辿る。ハッピーエンドもあるにはあるが、その難易度はとても高い。
セーブとロードを駆使したトライ&エラーありきで多大な犠牲を払う必要があったというのに、
原作知識を持っているのでどうにかカバーできるかもしれないが、そこで問題なのが主人公の性格だ。
『ディスコネクト』では主人公の人間性や性格を自由に設定することができる
「社交的」であれば人間関係に+補正や会話の選択肢が増えたり、「真面目」であればステータスの成長に+補正が入ったりする。
組み合わせ次第でルートが左右されることもあるため、現状それを把握してチャートを組むのが必須なのだ。
では、その肝心なこの世界の主人公についてだが.....
「......何」
「いや、RTA走者がオリチャーを発動する気持ちに共感してた」
「なに急に」
はっきり言おう、人付き合いがど下手。そう、ど下手すぎるのである!
予想にはなるが、設定できる項目である「人間性」「性格」「出自」はおそらく
・人間性『復讐者』
・性格『孤高』
・出自『孤児』
だろう
いわゆる孤高の一匹狼タイプというのだろうか。誰も近づかせないオーラ全開で、口を開けば毒舌をマシンガンのように吐いてくる。そのせいでこれといった友人もいない。
そうなってくると基本ソロでエリアに挑むことになるし、何かトラブルがあった時に味方になる人が少ない。
結果いろんな人の悪意に押しつぶされてす〜ぐハッピーエンドからルートが外れる。この世界じゃセーブポイントからロードすることできないわけで、少しでもミスると俺と誘救の首が飛ぶのが確定してしまう
そのため、一人でも生きていける術とコミュニケーション能力を鍛える必要があった。ただ、理由もなしに接触するのは不審がられるし、誘救にも怪しまれる。
現状は死んだ知り合いに頼まれて世話をしているという設定にしているが......ぶっちゃけいつかバレる。が、別に嘘がバレても問題はない。不測の事態にいち速く駆けつけることができればそれで問題はない。
最も避けるべきは夢の行方を把握できない状態になること。もっと言えば監視できない状態になることだ。
今は誘救の力を借りて動向を把握しているが、それもいつまで続くかはわからない。一応手はあるんだが....それはそれで面倒なことになるので最大限注意していこう。
「それじゃあ私はもう行くけど」
「はいよ。それじゃまた」
夢に向かって手を振るが返されることはなく、一人繁華街の奥へと進んでいった。まだまだ前途多難だと頭を軽く抑えながら、俺は帰路へついた。
◆
気だるげに手を動かしながら、事務所の自室で誘救は「坂平 夢」の位置情報を監視していた。付近の監視カメラなどをハッキングし、そこから位置情報をリアルタイムで割り出すというプログラムを組んでいるおかげでそこまで手間はかからないが、とはいえその行為自体に疑問は残る。
「.......いつものことだから一応はやるけどさ、やっぱここまで厳重にする必要あるかな?」
『仕方ないだろ、俺だって頼まれたんだ』
「知り合いに頼まれたんでしょ。それも遺書にまで名指しで書かれてたらしいけどさ、ちょっと過保護すぎるんじゃない?」
『それぐらいがちょうどいいんだってさ。それに、親もいない子供がこの町で生きていくならまだ足りないぐらいだ』
前にもした同じような会話を繰り返す。知り合いに頼まれたから、それだけの一点張りでそれ以上のことは教えてくれない。5,6年ほどの付き合いなのに隠すことはないと思うが、僕も人のことを言えない立場ではあるので詳しく聞くことができない。
ただ、言っていることはわかる。この町でなんの後ろ盾もない少女が生きていくのは難しい。実際、学園への入学を斡旋したのも、探求者として生活できるように鍛えたのも、僕とダストが鍛えたからだ。それがなければどうなっていたことか。
水を売るか春を売るか、それとも犯罪に手を染めるか.....最近では
「まぁ、何かあっても僕は別に君の味方しないからね〜。あの子にストーカーって誤解されても知〜らない」
『誤解されてもおかしく無いことを言いやがって。その時はちゃんと事情を話すからカバーぐらいはしてくれ.....誘救も誤解されるぞ』
「大丈夫、その時は君に全部責任投げるから」
『薄情者が!』
カメラ越しに映るダストの顔にケタケタと笑う。やはりこの相棒を揶揄うのは楽しい。
「まぁ〜?どうしてもって頼み込んで、僕に貢ぎ物をくれるなら考えてあげなくも無いけどな〜」
『ここぞとばかりに集りやがって.....そんなふうに器が小さいから背も小さいんだろ』
「よし、それじゃあ夢ちゃんのスマホにデータを送りつけようかな!」
『なんでも言ってください誘救様!』
「よろしい」
もちろんそんなことをするつもりはないが、貰えるものは貰っておく方がいい。それに向こうも本気で言ってるとは思ってないだろう。
.........多分。
「それじゃあ、なんかスイーツでも買ってきてもらおうかな」
『また
「そうそう。あそこは下層どころか都市一番の店だからね」
『同感、あの人以外のチーズケーキ食えない』
「僕はモンブラン」
「........わ〜った買ってくるよ。代わりに今日の依頼の処理頼んだ。ついでに換金してくる」
「了解〜、早めに帰ってくるように」
そう言われて通信を切り、依頼の達成のメールと依頼品の納品、報告書の作成をほぼ同時に行う。
AIのおかげでこういった実務を並行して進められるのはいいことだ。相棒はこういうことに疎いからほとんど僕が担当しているが、それも役割分担という物だろう。
チラチラと時間を確認しながら、素早く作業をする。
それがこれから来る貢ぎ物を楽しみにしているのか、それともそれを持ってくる本人を待っているのかはわからなかった。
ダスト君(の中の人)が疎いのは逆ジェネレーションギャップで今の技術に慣れてないからです。
知識で知ってたもいざ使ってみると全然思ってたのと違うことってあるよね。
TIPS:探求者
エリアに存在する禍具やエーテル、鉱物資源や素材などを収集し、その利益によって生計を立てる者たちのこと。
探求者になるには探求会に登録をする必要があるが、強制ではなく自由度のためにわざと登録しない者もいる。
エリアの難易度と同様に探求者の貢献度をⅠ〜Ⅹのランクで表しており、ランクの高いものほど探求会やスポンサー企業からの支援を受けることができる。
経歴や職歴を求めないため、一攫千金やスリルを求めて探求者になるものは多い。
しかして輝かしい未来を手にしようとするものは、故にその身を焦がすことになる。