神ゲーの世界に転生したけど推しは死ぬかもだし世界は崩壊寸前らしい 作:深海潜水艦
「君、本気で言ってるの?」
開口一番に誘救にそう言われた。どこかこいつなら言うかもしれないかもしれない言う顔で、しかし本当に信じられないものを見たような顔の二つでこちらを見ている。
というのも、ついさっき誘救から『学園』への調査の依頼の件を話されたのだが、それを二つ返事で受諾したのが原因だ。
誘救からしたら大したメリットもない、が俺としてはまたとないチャンスである。というのも、今の状態では監視するのにも限界があった。そろそろ原作が始まるタイミングになるので、もっと身近で保護できる状態にするのが理想だった。
とはいえ経歴がまっさらな人間が学園の教員になることはほぼ無理だし、誘救に手伝ってもらおうにも、本人がメリットを感じないので手伝ってくれない。
ので、このタイミングで合法的に学園へ潜入できる依頼が来たのはとてもありがたい。
てなわけで早速依頼を受諾しようと言ったら、誘救に正気を疑われたのが現状である。
「本気と書いてマジ。これは受ける価値がある依頼だ」
「僕にはそうは見えないけどね。明らかに労力に対して成果が見合わない」
誘救は宮下からもらったであろう書類を指差す。そこには今回の報酬に対する依頼料が書かれていた。
約
ぶっちゃけった話この金額なら難易度低めのエリアを3,4軒回るだけで元がとれる。
確かに労力に対してこの金額では割に合わないかもしれない....が、ここで折れては
「確かに金額の面で言えば割に合わない.....が、それ以外で元が取れる可能性がある」
「それ以外って言うと?」
「上層の人間とのコネだ」
学園には様々な生徒がいるが、中には中層・上層の家の子息が社交と経験の場として入学していることがある。
例で言うとランクの高い探求者の子供なり、工房やKAMNABIのような軍需産業の後継者、一部の子供のわがまま.....と総数にしては必ず多いわけではないが、一定数影響力の高い人物がいる。
彼ら彼女らと関係を持てば、その親ともコネを取ることができるかもしれない。
「学園には幾らかの上層階級の子供がいるだろ?それなら潜入の過程でそいつらに擦り寄れればその親ともコネを作れる
そうしたら今後の依頼でも動きやすくなるし、依頼の斡旋や支援だってしてくれるかもしれない。そう考えたら得だろ」
「....なるほど」
顎に手を当てて考える誘救。こいつは損得を重視する性格だから、現状出せる限りのメリットを列挙してなんとか丸め込むしかない。
「それに、逆にそこから情報を取ることだってできる。上手くやれば報酬以上にメリットを生み出せるぞ」
「........確かにそうかもしれないね。けど、君さっき言ったよね「それ以外で元が取れる
別に確実にそれを保証できるわけじゃないし、君自身の行動に左右されることが多い。はっきり言って徒労に終わる可能性が高いだろうね」
「ぐ、それはまぁそうだが.....」
痛いところを突かれた。実際不確定要素しかないので、その指摘はごもっともだ。
流石に見逃されるとは思っていないのでどうにか言いくるめよう。
「ただ今後の機会と天秤にかけたら十分価値はあるだろ。普通に依頼やっててもコネを作るのは難しいしな」
「別にわざわざコネを作る必要もないんじゃない?むしろ面倒なことに巻き込まれるかもだよ」
「とはいえ使えるカードは多い方がいいだろ。面倒ごとを解消する時に利用できる可能性だってある」
「コネを作るにも相手の目利きがないとでしょ。碌でもないやつとコネ作って苦労するとか嫌だよ僕は」
「それはもちろん俺も気をつける。付き合うやつとそうでないやつはしっかり判断できるつもりだ」
誘救は深々と頭を抱えながら考えている。何度か眉をひそめると、なんとか自分の中で納得がついたのかこちらを向いて口を開く。
「まぁ......わかった。わかったよ。そこまで言うなら仕方なく。本当に仕方なく僕が折れてあげよう。ただし、いくつか条件がある」
「それは?」
「まず期間のこと。調査期間は1ヶ月。長くても2ヶ月以内にすること
そして報酬の面。潜入方法にもよるけど、依頼料をさらにふっかけるから君も協力して
最後に......」
誘救はソファーから立ち上がるとツカツカとこちらへ歩いて勢いよく足を振り上げた。
慌てて首を傾けて避ければ、右耳のすぐ真横でソファの背もたれに力強く誘救の足が置かれていた。これ避けなければ顔面に直撃してただろこれ。
そんな急なことに動転していると誘救がこちらの目をまっすぐと見ながら言った。
「最後に、絶対に無理をしないこと。僕の言うことはしっかり聞いて、無茶しないこと
いいね?」
「え、あ......はい?」
「OK。なら良し」
誘救はゆっくりと足を退けると、ポケットから携帯型の小型デバイスを開いて小さめのパソコンのようなもので何度か打ち込む。
俺はどうするべきかわからなくて、落ち着きなく事務所の中を見回したり用もなくスマホを開く。
頭の中では何時間も経ったように感じるが、実際は数分も経っていないのだろう。
何かを終わらせたのか誘救が画面を向けてきた。
「はい、これ偽造した証明写真とエントリーシート。枠組みだけ作っておいたからあと書けるとこは自分で書いてね」
画面には都市で発行されている証明書に、企業の面接でも使われるような書類が映っていた。
名前の欄には『灰咲慎吾《はいざき しんご》』という偽名が書かれている。
「さんきゅ.....ってこれ志望理由とか書いてあるんだけど、これ清掃員とかのやつだよな?」
「いや?全然普通に教員用のやつ
君には臨時教師として動いてもらうから」
「......お前本気で言ってる?」
「本気と書いてマジ。一番情報取れるポジションにしておいたからがんばってね」
「おま、なに他人事みたいに言ってやがる!?」
「いいじゃん別に、こっちの方が楽ではないけど情報取れるし調査もしやすいでしょ」
目を細めてニヤニヤとした笑みを浮かべる誘救。こいつ俺であそぼうとしてやがるな。
明らかに不機嫌ですと言う顔で誘救を見ると、軽く笑声をあげている。なにわろてんねん。
「君のわがままを僕が仕方なく聞いてあげたんだよ?
それなら少しは僕の言うことを聞いてもらわないとだよね〜?」
「いや俺が教師とか無理だろ。なに教えろって言うんだよ
それに受かるとも限らねぇし」
「まぁそこら辺は僕が上手くやっとくから心配しないで
それに、なにも真っ当に教師する必要はないよ。あくまで調査だけなんだから、適当でいいのさ適当で」
「簡単に言いやがって.....」
とはいえ願ったり叶ったりだ。期限付きとはいえ学園で動けるようになったし、主人公をサポートしつつやっていこう。
誘救からデバイスを強引に受け取ると、黙々とエントリーシートを埋めていった。思ってもないようなことをそれっぽく書くのは何処となく前世を思い出させる。
嫌だなこれで前世を思い出すの。
誘救がいつの間にか淹れてくれていたコーヒーを片手に偽の人生を書いていく。
資料が完成した時には辺りがすっかり暗くなっていた。
ダスト(中の人)的にはコーヒーより紅茶派です
TIPS:Hollow Cityの言語について
Hollow Cityではその経済規模から多様な国籍の人が訪れる。そのためさまざまな言語が飛び交うため意思疎通が難しいと思われているが、Hollow Cityでは入居時に専用のインプラントの導入が義務化されている。
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これにより世界中から人が訪れても円滑にコミュニケーションを取ることが可能となっている。
なお、これ以外にもインプラントは販売されており、日常を支えるものから戦闘に利用できるものまでさまざまなものが揃っている。