神ゲーの世界に転生したけど推しは死ぬかもだし世界は崩壊寸前らしい 作:深海潜水艦
夢を見る。何処か暗く深い、冷たい世界の中を一人歩いていた。
自分が今何処を歩いているのかも分からず、ただただ虚空の道を進んでいけば、虚空に映画館のスクリーンのように情景が映し出される。どうやらこの世界に来てからの最初の記憶だ。
生まれた時は何もわからなかった。無垢で白痴な赤子で、山奥の過疎化が進行している村で生を授かった。化粧をされ、丁重に育てられ多くの人に喜ばれた。
いくらばかりの時間が経って、次の場面には本殿で白無垢を纏った少年とそれを囲むように頭を垂れる人で溢れている。生まれた家系はその村では特別な家系だったようで、生まれてから丁重に扱われ、敬われ、崇められていた。
物心ついた時には、毎月に何度か少年を中心に村の人間が祈りを捧げるようになった。
それを当たり前のように受け入れて、日々を過ごして、そしてその日は訪れる。
その日はいつも以上に衣装を整え、化粧をされ、入念に手入れされた本殿で祈りを捧げて......そして、祈りを捧げていた村人全員の体が弾け飛んだ。
少年を中心として綺麗な花が咲いたように、血潮が床へ飛び散る。状況を理解できなかった少年は、しかし頭が「生きろ」とだけ警鐘を鳴らす。
反射的に神社を飛び出し、転がるように山を降りる。視界の中の村は原型を失っており、田んぼの水は地獄の釜のように赤く沸騰し、木々は捻れて剣のような枝が人を刺す。太陽は陰り、雲が渦を巻く。
建物は原型を留めることなく崩壊し、大地も安定さを失って崩壊し、地獄の入り口のような渓谷が生まれた。
無我夢中に走って、躓き、転び、立ち上がって脇目も振らずに走り続ける。あちらこちらから悲鳴が上がり、不気味なナニカの声が聞こえてもただ生存本能のまま足を動かす。
村の中心部は建物が上下逆さまになっていたり、浮いていたり、時には似合わないほど近代的な建物になっていたりと原型を失っている。
中心部を抜けようとすれば、何者かに足を掴まれる。瓦礫に埋もれた人だった。縋るようにして足を掴み乞いている。
一人ではなかった。何人もの手が掴み、それぞれが何かを求めて叫んでいる。
何をしようにも体は動かず止まるばかり。次第に数は増え、引き摺り込むように力を入れていく。
地面へゆっくりと倒れ込んでいき、体は抵抗できずに地面へ沈み込んでいく。最後に見えた光景は体を囲む無数の手と、嘲笑うように歪んだ空そのものだった。
体全体が飲み込まれる。
情景はそこで終わる。
この世界にて生を受け、『ディスコネクト』という世界だということを知らぬまま純真無垢に過ごしていた時のこと。そして『グラウンド・ゼロ』発生時の騒動のこと。
もう十年以上前のことだが、忘れようにも忘れさせてはくれないらしい。嫌な記憶程よく覚えてしまうものなのだろう。
しかして、こういう時に思い出すのは前世の記憶とかではないのかと思い少し笑ってしまう。
酷い目に何度も遭わされている以上、少しばかりご褒美をくれたったいいじゃないか。そう思って寝そべって上を見る。
あの後のことはあまり覚えていない。どうやって切り抜けたのかもうろ覚えだが、最後に一つだけ覚えていることがある。
暖かい光だった。全てを包むような日光のような光。
俺はその光へと手を伸ばして......
◆
「や、おはよう」
目が覚めると仰向けになって照明を浴びていた。光の眩しさに目を細める。
何度か瞬きをして視界を安定させ、周囲を見渡すとどうやら手術台の上に寝かされているのだと理解した。
直前までの記憶を辿る。確か学園に作成する資料を作成しようとして......その後疲れからか眠ってしまっていたらしい
横に立っている誘救が覗き込んできて、ちょうど良く手術灯の光を防いでくれた。
シンデレラの視点ってこういうものなのだと、少し実感してしまった。男の俺が言うことでもないと思うけども。
「あぁ〜っと誘救さん?これって一体どういう状況なんです?」
「いや何、一生懸命頑張っていた相棒が机に突っ伏していたから労ってあげようと思って」
「それなら俺を手術台に拘束する必要ないと思うんだけど?」
「君の寝相悪いから落ちないようにしてたんだよ」
「そもそもなんで手術台なんですかねぇ〜?」
「いやぁ、疲れている君にぜひ受け取って欲しいものがあるからさ。やっぱ素直に受け取ってもらいたいじゃん?」
「だからって拘束は酷くね?」
「まぁまぁまぁ、君には日頃の感謝もあるから僕のじっk....コホン、ささやかな感謝の気持ちを受け取ってもらおうとね」
「今実験って言いかけたろお前!?やっぱりそうじゃねぇか!」
「そんなわけないじゃないかこまるなー。大丈夫だよ、最終的にはきちんとこれまでの疲れも取れるし、今後も楽になるし」
「過程が問題なんだよ過程が!?同意のないサプライズはドッキリだぞ!」
「は〜い落ち着いてくださいね〜。痛かったら手を挙げてくださ〜い」
「歯医者かよ!拘束されてるから手挙げらんねぇよ!手じゃなくて足出すぞ、おお〜ん?」
手術台の上でもがきながら距離を取ろうとする。なんだったら蹴りあげようとするが姿勢のせいもあってか避けられた。
少しずつ歩んでくる誘救。嗜虐的な笑みを浮かべているのでめちゃくちゃに怖い。
まさに処刑を待つ罪人のように、ただ訪れる運命を待たないといけないというのか。あぁ神よ、あなたはどこへ行ってしまったのですかと、祈りを捧げたくなる。
そうやって半ば諦めていると、別の場所から女性の声が聞こえた。
「はいはい、お二人さん。イチャつくのはいいけどそういうのは他に人がいない時にやってくれないかしら?
ここ私の店なのだけれど」
そういうと部屋の隅から長身の女性が現れる。紫の瞳にブラウンヘアの女性は、何かの器具片手にやれやれとした顔をしていた。
その姿には見覚えがある。Hollow Cityにおいてインプラントを埋め込むための手術やサイバー化(自主的にインプラントを導入した人の総称)を行った人の観察、カウンセリングなどを行う専門の医者。いわゆるアナトドクの一人だ。
名前は『シルヴィア・ルブラン』、イタリア出身の名医のはずだ。確かゲームでも序盤から優秀なインプラントを販売してくれたから何度もお世話になった記憶がある。ストーリーだとあまりダストと誘救の絡みはなかったが、互い認知していたし、実際にこの世界でもシナリオ開始前から協力してもらっているので非常に助かっている。
「ドク!いいところに!
ちょっとこいつを引き剥がすの手伝ってくれ!こいつ言っても聞かな......
待てお前の店?」
「そう、私の店。誘救くんが連れてきたのよ、インプラントを導入しに」
「誘救...?」
「ま、流石の僕も人の店で勝手に実験するようなことはしないさ〜。ちょっとしたおふざけだよ、お・ふ・ざ・k....わぷっ!?」
誘救の方へ首を向ける。そこにはテヘッと擬音がつきそうな顔でウインクをする誘救の姿ある。
少しムカついたので仕返しに左手の触手を伸ばして誘救のフードを勢いよく被せた。急に視界が塞がったから慌ててウロウロしてるのが滑稽だ。
「それで、導入するインプラントってのはなんなんだ?」
「遠距離通信用のインプラントね。通常のとは違って主に産業スパイや諜報機関が使うものよ。とはいえ高性能な物は揃えるのは難しいから、本職のよりはちょっと使いずらいかもしれないわ」
あぁ〜、脳内に埋め込むタイプの....遠距離通信用のインプラントは複数あれど、一般のものでは通信の妨害、傍受される可能性が高いので通信を暗号化できる特別なものを使用する必要がある。
確かに学園に潜入するなら必須のものではあるが....わざわざ寝てる間に連れてくる必要はなかっただろと言いたい。
「それじゃ、今から手術でもすんのか」
「いえ、もう導入は終わったわ」
「手際いいな。それとも俺が寝過ぎてただけ?」
「どっちもよ。私にかかれば二人ともすぐ終わらせられるけど、終わった後もあなたずっと寝てたのよね。もう朝の10時だし」
まじか、てことは7時間くらいは寝てたのか。通りで目覚めがいいわけだ、体中痛いけど。
てかそれまで誘救はずっと待ってたのか、全然叩き起こしたって良かったんだがな。
「んじゃ、これ外してくれないか?そろそろ体がキツくなってきた」
「わかったわ。そう、それと一つ」
シルヴィアは手の拘束を外しながら耳元に顔を近づける。二人以外に聞こえないように声を抑えて話す。
「余計なお世話かもしれないけど....誘救くん、あれでもあなたのことちゃんと心配してるんだから、無理させないでね」
「.........あぁ」
俺を起こさなかったのもそれが理由か。心配してくれてるのはありがたいんだが....無理しないとでもいけない状況が多すぎるんだよな。
「わかってるんだが.....どうしてもそうしないといけない状況が多いんだ。だから心配させないようにってのが難しい」
「別に行動を改善する必要はないと思うわ。あなたが証明できればいいの」
「証明?」
「そう、嘘でもやせ我慢でもなく、本心から自分は大丈夫だと証明できればいいの。方法はなんでもいい。言葉でも行動でも、本心で伝える。そうすれば誘救くんも納得してくれるから」
それだけ言うとシルヴィアは腕の拘束を外して離れて行った。腕の関節を動かして調子を確かめた後、ふと誘救の方へ視線を向ける。
何かをしているのかスマホを操作していたが、こちらの視線に気づいたのかこちらに顔を向けた。視線が合う。
互いに何を言うこともなかったので、誘救の方へと足を進めて、頬をつねった
「はにふんはお
「いや、理由は特にないけどなんかしたほうがいいかなと」
「ひみってやふは
つねっていた頬を離す。仕返しと言わんばかりに膝辺りを蹴られた。
痛...くはないんだよな。こいつ力弱いし。
「そっちも俺のこと脅してきたんだからおあいこだろ」
「脅すだなんて酷いなぁ。ただからかっただけなのに」
「俺にとっちゃ脅しみたいなもんだわ!怖ぇよ拘束された状態で満面の笑みでゆっくり近づいてくるの!マッドサイエンティストかよ!」
「ちょ、それ気にしてるんだからやめてくれないかな!?
僕は純粋な知的好奇心を追求してるんだから、人をいたぶることを研究と勘違いしてる気狂いと同じにされたくないね!」
「行動の問題だ行動の!絵面だけ見たらそうだろうが!」
「だから一緒にするなっての!さっき言ったこと忘れちゃうとか君はノータリンかい?」
「んじゃお前はサディストだな!人をいじめるのは楽しいですか〜?」
「それなら君は被虐嗜好のマゾヒストじゃないか!いつもまんざらでもないみたいな顔してさ!」
「言ったなお前それ言ったらもう喧嘩だ喧嘩!かかってこいやオラァ!」
「僕の切れるカードの数わかっていってるのかなぁ?こっちは番外戦術でいくらでも勝負を決められるのにそれすらわからなくなっちゃったかな?」
「.....あなたたちがなにをしようが止めはしないけど、人の店ってこと忘れないでくれないかしら?出禁にするわよ」
「「すみせん」」
二人で煽りあっていたのを店主のシルヴィアに止められたため瞬間的に謝って店の出口へ向かう。
シルヴィアから言われた証明というものをどうするべきか。頭を悩ませながら、二人で帰路へ向かった。
その時はいつもより、誘救の近くを歩いていた。
何度か書き直してたら遅くなってしまった....。書いてるうちに書きたい描写が浮かんでしまう
TIPS:KAMNABI
日本発祥の軍事企業。元は日本の財閥の一企業であったが、歪みの発生以降起きた経営陣の交代により財閥から脱退。以降はアジアを中心に兵器の開発や傭兵の育成などを行っている。
アメリカに匹敵するレベルの「死の商人」であり、その規模はD-TECと同等。軍事力だけなら中小国を遥かに凌駕するほどのもので、
利益を最大限にするために世界中の紛争や戦争に介入を行っており、韓国と北朝鮮の第二次朝鮮戦争や、ミャンマーの軍事革命、ヨーロッパと中東の国々で起きたユーロ・オリエント戦争など数々の戦闘の火種となっている。