灰のみた夢 〜死にゲー世界に転生したので、主人公を全力でキャリーして絶対死ぬ相棒が絶対に生きるルートを開拓する〜 作:深海潜水艦
ディスコネクトにおける『学園』は後世の探求者を育成し、それに伴い次世代の産業である『歪み』を活性化させる人材の育成を目的にしていた。
そのため、『学園』という名称だが、高校や大学といった通常の教育機関ではなく、その実商業学校とミリタリースクールが融合したような体制になっている。
そんな学園がいかにして人を集めているのかといえば、何より就職実績の高さだろう。
歪みの産業において覇権を握っている『D-TEC』やアメリカに匹敵する軍需産業を担う『KAMNABI』、世界中の歪みの調査と研究を行う『WDSO』など名だたる企業や団体へのオファーが来る。
他にもD-TEC傘下の運搬会社『デライト』や製薬・医療会社の『真脳生命工学グループ』や『L.E.A.D』の高官、『Hollow City』の政治家など、将来のキャリアの選択肢が広い。
学費自体も特段高いわけじゃないし、成績次第では免除や支援もある。設備も最新、規則も厳しいわけじゃない。
学園以外にも教育機関は複数存在するが、それでもなお学園が多くの生徒を抱えることができているのはそれらの魅力があるからだ。
まぁ、それも昔の話というか....今は見る影もないんだけど
そんなことはさておいて、色々と準備を済ませて今日は臨時教師の業務初日。即興で作成した資料を提出し、軽く面接をこなして無事採用。多分誘救が裏で諸々サポートしてくれたおかげもあってとんとん拍子に話が進み、今日5月4日が晴れて初勤務日となった。
学園の正面入り口の前。普段の着崩したスタイルとは真反対のフォーマルなスーツを着て俺は立っている。
『サポートはするけどあんまり頼りすぎないでね。不審に思われて逆探されると面倒だから』
(へいへいわかってますよ。ダストさんの手腕に任せとけって)
『さ〜て学園からの逃走ルートでも考えとくか。今の事務所も移さないとね』
(信頼皆無じゃん)
新調したインプラントを通して誘救との通話を可能にする。いつも通りインカムでの通信は怪しまれるので、今回はインプラントを通信可能なものにして連絡を取る。
思ったことを口に出すだけだと通話ができないので、集中して話したいことだけを送る必要があるのがちょっと大変だ。例えるなら頭の中に思う、考える、『送る』というコマンドが追加されているみたいな.....慣れないと少しラグが生まれる。
『ていうか結構似合ってるね。馬子にも衣装って感じだけど』
(それ褒めてないだろ絶対。てか基本スーツって誰だってある程度は似合うだろ)
『君は身長高いからいいでしょ。僕も身長もっと欲しかったなぁ〜』
(頑張って大きくなるんだなガキンチョ)
『足切り落とすよ?』
(俺を低くしてどうすんだよ!お前が大きくなれって!)
百面相よろしく、表情を頻繁に変えながら脳内で会話をしていると、横から声をかけられる。
「もしかして、今日からいらっしゃる臨時講師の方ですか?」
ブロンドヘアのおっとりとした女性が、ほおに手を当てて話しかけられる。どうやらこの学校の教師のようで、首には教員用のIDをかけている。
原作でも序盤によく登場したキャラだ。名前は『
どの生徒にも平等に接する教師で、主人公がトラブルに巻き込まれた時も積極的に味方してくれた。
それ故に生徒人気が高く、教師からの支持も高い。まさに八方美人だろう。
「あぁ〜....はい、そうです。俺が今日から実技・実践の担当になった『灰咲 慎吾』です」
「そうでしたか!すみませんお迎えもできず......」
「いや大丈夫ですよ。ほら、教師の方達って忙しい...っすからね」
「そう言っていただきありがとうございます。そしたらこちらへ、校長に挨拶ついでに学園の案内をしちゃいますね!」
そう言って案内されたのは正面入り口から右手にある教員用の入場口。IDカードをかざすとロックが外れ校舎へ向かう道が現れる。
ここから校舎や訓練場、実践区域など様々な場所を通ることができる。ある種裏道のようなものだ。わざわざ人の多い廊下を移動する必要がないのはありがたい。
「灰咲さんは学園についてどれくらい知っていますか?」
「HPは確認したのである程度は知ってます」
「それなら簡単に説明するぐらいで大丈夫ですね!
それならまずは校舎から。生徒が一番滞在することが多い建物ですね。主に教室での授業や教員の業務はこちらで行います。教室以外にも、図書室、理科室、データセンター、エーテル供給室など色々な部屋がありますよ。
それと食堂!ここの食堂は外せないですよ〜!特に日替わり定食はおかわり無料ですし、デザートもたくさん......」
原作で何度もお世話になった場所なので適当に相槌をしながら話を聞く。
校舎は普通の高校のような4階建ての建物で、2,3,4階に教室が、1階に職員室含む特別教室が存在する。
特に実験室や開発室などではエリアからとってきたアイテムや素材などの分析や開発などができるため必須級だ。
次に訓練場。体育館や水泳場、武道場や模擬戦ができるアリーナなど、体を動かす以外にも戦闘訓練ができる施設だ。
アリーナでは時折生徒間での賭けや揉め事の解消が行われることもある。面倒ごとがあったら言葉より暴力!勝った方が正義なのだ!!
そしてこの学校の目的でもある実践区画。厳重に封鎖されたゲートの先には学園で管理されているLV.I〜Ⅴのエリアがある。主に生徒の実践訓練に使われ、許可があればエリアに生徒のみで侵入することもできる。エリアで入手した諸々の買取や装備の貸し出し、整備、鍛治なども行えるため、学園パートで一番お世話になる場所といってもいい。
あとは学生寮に映画館やスパ、カラオケや本屋などの娯楽やショッピングが楽しめる施設がある。普通にここで暮らせるぐらいに充実しているのが学園の福利厚生の特徴だろう。
教員がどれくらい利用できるかわからないが、温泉ぐらいは浸かりたいものだ。ゆっくりとお湯に使って、風呂上がりに飲むコーヒー牛乳だけで一ヶ月の疲れは吹き飛ぶ。
「ここが職員室です。机に灰咲さんの名前が書かれたネームプレートがあるので、荷物はそこにおいてくださいね
このあと校長に挨拶をした後、具体的な業務の説明をするので、先に校長室へいきましょうか」
「わっかりました。すいません、一つ聞きたいことがあるん...ですがいいですか?」
「どうしました?」
「俺が担当してるエリアの実践・実技を担当していた前の教員の人はどうしたんですか?急に臨時で人を呼ばないといけないぐらい唐突だった...んですかね?」
そう聞くと、泡榴は一瞬言葉を詰まらせたが、何事もなかったように返答した。
「前の担当教師だった天《あめの》さんは、病気で休暇をとっているだけですよ。何しろエリア由来の病気だそうで、治すのに時間がかかるみたいなんです」
「....そうなんですか。早く治るといいですね」
「はい、とても熱心な方だったので........と、着きました。校長室です」
着いた先は物々しく厳重に封鎖された扉と威嚇するような監視カメラ.....じゃないな、あれはタレットだ。ゲームではほとんど情報はなかったがだいぶ警戒心の強い人みたいだ。
潜入してることがバレないように気をつけないとな.....
泡榴がIDカードをかざすと、渋い男性の声が聞こえる。おそらく件の校長だろう。
何度か話したあと、扉のロックが外されたようで、ドアノブに手をかける。
ゆっくりと扉を開ければ、そこには厳重な警備にには似合わない質素な部屋だった。作業用の机に応対のための机とソファ、収納棚がいくらかあるぐらいでそれ以外に目立ったものはない。
そして何より部屋には誰の姿もなかった。不思議に思って足を一歩進めると.......
斜め左。人間にとっての死角から何者かが現れ、そして細身の剣を突き出す。形状的におそらくエストックだろう。唐突な攻撃をほとんど反射的に体を捻って突きを躱し、脇に力を込めて刃を固定する。
攻撃の方向を見れば、気品の溢れる服装と容姿の男だった。歳的には50代ほどだろうか。学園の校章に一際豪華な身分を証明するIDカード.....おそらく学園の校長本人だろう。
そして俺は今その校長に危うく剣で貫かれそうになったというわけか........
あれ、もしかして潜入作戦失敗か?これ?
ダストくんは社会人経験がそこまで長くないのと、この世界でこれまで敬語を使ってこなかったので話す時若干詰まることがあります
TIPS:都市のインフラシステム
都市のガス、水道、電気といったインフラは全て民営化されており、その全てを管理しているのがD-TEC社によるもの。
そのどれもが高品質で提供されており、ガスや電気が止まることもなく、水道水も処理なく飲むことができる。
それらインフラの契約は複数のプランによって構成されており、最も高いプランでは緊急時でも優先的にインフラが提供されるが、最低限のプランではD-TECの判断次第で予告もなくインフラを止められる可能性がある。
そも、不動産の価格も周りの国に比べても高く物件を購入できないことも珍しくないため、家を購入せずにホテルや野宿で過ごす者も珍しくない。