航空自衛隊TSギア作戦記 ―出撃せよ、戦闘少女飛行隊!……でも中身は皆男性!?―   作:えぴっくにごつ

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ミッション14:「エンゲージ」

 知らせの声を張り上げた隼。その眼、肉眼は。

 見上げた左方向上空の薄い雲の向こうに。三体の戦闘機型の中型フィアー――識別、ナイトメアを。

 旋回降下への軌道変更から、こちらに向けて降下急襲を仕掛けてくるフィアー編隊を見た。

 

《散会ッ!!》

 

 通信に、張り上げられた鍾馗の命令。

 しかしそれを隼が聞き、または鍾馗自身が張り上げるよりも早く。二人は、それぞれ独自の判断ですでに行動に移っていた。

 それぞれは別方向に旋回を伴いバンク。

 隼は低空に逃れる軌道を取り、鍾馗は反対方向へ上昇。

 フィアー編隊の意識と手数を分散し、それぞれを相手取るための動きを始めていた。

 

《交戦、ライデンユニット交戦ッ!!》

 

 通信に、鍾馗の張り上げSOCに伝える声が響き。

 それを聞きながらも、隼の意識はすでに戦闘行動に集中していた。

 

「――!」

 

 バンク軌道から直り、緩い降下飛行を継続しながらも、後方をチラと見る隼。

 目論見通り、三体のフィアーはまた隼と鍾馗をそれぞれ追いかけ二手に分かれ。内の二体が隼を追撃して来ていた。

 

 昆虫に軟体水生動物などを組み合わせたような。そして赤黒く硬そうな表面が特徴の、おぞましい存在であるフィアー。

 そのフィアーが、直後にはその顎らしき部分を掻っぴらく動きを見せ。そして次には熱光線、レーザービームのようなそれを。まるで機銃掃射のようにその体より撃ち放って来た。

 無論、狙うは隼の身。

 

「ッ!」

 

 しかし、隼の予測行動の方が僅かに早かった。

 隼は飛び進みながらも鋭い90°バンクで身を、〝機体〟を捻り。襲い来た熱光線投射を見事に回避。

 さらに次には反対方向にバンク、連続して襲い来た熱光線を再び回避。

 キレのある飛行運動で、フィアーをヒラリヒラリと翻弄するように、連続的な回避機動を見せた。

 

「――」

 

 熱光線攻撃による成果が思うように上がらない事に焦れたかのように。二体のフィアーは徐々に隼との間合いを詰めて来る。

 そのフィアーたちの追撃を背後後方に見つつ。隼は頭を、機首を上げて旋回を伴う上昇行動に転ずる。

 その軌道行動の影響で、少し速度を落とす隼。

 それをまさに機会と見たのか、フィアーたちは熱光線をばら撒きながら、追撃速度を上げて距離を一層詰めて来る。

 しかし――それが隼の目論見であった。

 

「――今ッ!」

 

 自分の身を、機体を上昇から水平に戻した瞬間。

 隼はその身を、機体を思いきり引き起こし。また同時にエンジンのバーナーを思いきり吹かした。

 ――〝それ〟が起こったのは直後。

 起き上がった隼の身が一瞬、宙空でまるで制止――いやバックしたかまでの様相で減速。

 

 その影響で、隼を追撃していた二体のフィアーは見事にオーバーシュート。

 隼の身を追い越してしまい、そのおぞましい体の背を、しかし隼の前に無防備に晒した。

 

「捉えたッ!」

 

 それを逃しはしないと、隼は間髪入れずにHUDに表示されるレティクル――照準にフィアーの一体を捉え。

 〝攻撃の意識〟を強く向けた。

 

 瞬間。隼がその身に装備し、突き出し展開して備えていた25mmガトリング砲 GAU-22/Aが。

 その意志に呼応して、唸りを上げた。

 

 機関砲の火線は背を晒したフィアーの一体へと注ぎ叩き込まれ。

 性転換により生み出される強力なエネルギーを乗せたその投射は、見事にフィアーの身を粉砕。

 フィアーは宙空で穴だらけになり、ボロ布のように千切れ飛び。端切れとなって四散して、次には散り落ちて行った。

 

「一機撃墜ッ!」

 

 その確かな効果を見止め、撃墜を知らせる声を通信に上げる隼。

 

(――すごい……ッ)

 

 通信に声を上げながらも、隼は脳裏にそんな思いを浮かべる。

 

 今に隼が見せたコブラ機動は、これまでは強力なエンジンパワーを持つ大型戦闘機などに限って体現が可能であったもの。

 しかし今に在っては、‶機体〟としては大分小柄であるFTGS装備の隼の身は。その小柄からは信じられぬエンジンパワーを見せ、美しいまでの機動行動でそれを成し。

 そしてそれによって得た機会を逃がしはせず、また従来を越える強力さを得たガトリング砲火力によって、見事にフィアーを討ってみせた。

 

 そんな、あらゆる面ですさまじい〝力〟を実現するFTGS装備を――性転換の力を改めて見て実感しての。

 浮かべた思いであった。

 

 そんな思いを抱いたのも一瞬。隼の意識はすぐさま次へと向く。

 残るもう一体のフィアーは、〝嵌められ〟てオーバーシュートから背を晒し、仲間を撃墜されてしまった事態に。

 慌て焦ったのか、、隼の前方向こうで大振りの雑な旋回行動を見せている。

 しかしそれは、フィアー自身の身をいっそう大きく晒してしまう、虚しい足掻きでしかなかった。

 

「――悪いな」

 

 そんなフィアーの足掻く姿にわずかな同情心を覚えつつも、しかし隼は再照準行動を怠ること無く。機体姿勢の微調整から、レティクルにその二体目のフィアーを捕まえ。

 攻撃の意思を念じ、ガトリング砲を再び唸らせた。

 

 最早結果は言うまでも無いか。苛烈な機関砲投射は、二体目のフィアーを面白いまでに宙空で貫いて大穴を空けて千切り。

 一体目同様、無残に散り落ちて行く末路を辿らせた。

 

「二機目撃墜ッ」

 

 そのフィアーの姿を眼下に見つつ、隼は再び撃墜報告の声を無線に上げ。

 また一度機体姿勢、飛行態勢を水平に戻しつつ。残敵、周囲の状況の再確認再掌握のために視線を走らせる。

 

「っと」

 

 しかし直後に見えたのは。側方の少し向こうをまた虚しく墜落していく別のフィアーの姿。

 そしてその上方で、鋭い旋回軌道を描きながらそれを見降ろす相棒――鍾馗の姿、機影であった。

 

 見えたその光景はすなわち、要撃対象であるフィアーの三体が。二人の手によって全機撃墜された事の証であった。

 

《――1-2、合流しろ。編隊を組み直す》

「了」

 

 直後、その鍾馗より通信にて指示の言葉が来る。

 それに隼も返し。次には向こうで鍾馗の身が旋回から降下に入る姿を見せ、隼もそれに向かって上昇旋回。

 程なくして、二人は合流して二機編隊を組み直した。

 

《被害状況は?》

「ノーダメージ」

 

 合流再編成から、まず鍾馗より寄越された安否確認の言葉に。隼は問題ない旨を返す。

 

《そっちは二機だな?》

「えぇ」

《大したものだ》

 

 続いて、隼側の戦果を確認する言葉。隼はそれに肯定し、鍾馗からはそれを評し称える言葉が返る。

 

「相手がドジを踏んだだけです」

《言ってくれる》

 

 それに隼は謙遜で端的に返すが。鍾馗はそれを皮肉の類と受け取ったのか、不敵な笑みを見せて返してくる。

 

《――おっと、遅刻の参加者だ》

 

 その次には、鍾馗は向こうの空に見えた何かに気づき。指差しに合わせて促す声を寄越す。

 

 少し離れた向こうの空より。

 隼と鍾馗とは別の。機械の翼により高高度を飛び来る、二人一組の少女の姿が見えた。

 それは、隼等と同じF-27JAのFTGS装備の航空自衛官。

 小松基地よりスクランブル出動した、第306飛行隊よりのスクランブル機編隊の性転換隊員等であった。

 

《フフッ》

 

 何か不敵な零しが通信に聞こえたかと思うと。

 その見えた306飛の少女たちに、次には鍾馗が揶揄う様子でその身を機動してバレルロールをしてみせた。

 さらに次にはそれを見た、向こうを跳ぶ306飛の片割れが。「揶揄ってくれるな」とでも言うように身を、翼を揺らして返してくる。

 

《今日の主役は、ウチの隼がいただきだな》

「ハッ」

 

 そしてまた、ニヒルな様子で寄越された鍾馗からの通信に。

 当の隼は、「おふざけが好きですね」と暗に言うように、端的で少し皮肉気な一声を返す。

 

《――ライデンッ、レップウッ、両ユニットへ!東北方面より新手の攻撃ユニットが出現ッ!》

 

 その隼始め各員の耳に、しかし。

 SOCよりの切迫した色での知らせが飛び込んだのは、その直後であった――

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