黒川あかね、劇団ララライの若きエースで優れた頭脳を活かし演じる役に対して深い考察を行う事で役になりきるどころかその人物の思考まで理解することができる。その様は憑依型と呼ばれる演技スタイルで・・・正直難しくてよくわからないので説明はここまでで、彼女は頭脳や女優としての才能のみならず人間性も穏やかで優しくスタイルや顔も良い。
弱点どこだよと思わざるを得ない完璧人間の弟である俺、黒川優斗中学2年生も当然姉と同じように優れた才を持つ完璧イケメン。
「・・・そんな事ないし特に才能ねぇんだよなぁ?」
普通の中学生です、ごめんなさい。姉さんから演技の悩みとか台本の読み合わせ付き合ってるけど悩みとか聞いてもよく理解できないので「あっ、そうなんだ」「頑張って」ぐらいしか言えない雑魚っぷり。応援する気持ちが大事だよね!と自分に言い聞かせて心を込めた「頑張って」を送ってるつもりだ、姉さんは嬉しそうにしてくれるのでこれでいいんだと勝手に思っている。
雑魚な自分に悲しくなってしまったが今日は土曜日、気持ちを切り替え今日も1日楽しくアニメ三昧といこう。ソファーに寝そべっていた俺は起き上がりお菓子を取りにキッチンへ向かおうとすると。
「ゆうくん?毎週休みはひたすらソファーにいるのはどうかと思うよ?」
リビングに入ってきた姉さんは頬をプクっと膨らませて不満そうな表情を浮かべていた、感情としては怒っているといった感じなのだが正直毎回全然怖くない。
「出かける気がしないというか、家に籠ってる方が楽というかさ」
「・・・」
俺の発言でただでさえ膨らんだ頬を更に膨らませ・・・不満マシマシって感じ、姉さんは役者だし嫌がることなく普段からストレッチや運動を欠かさず行っている。舞台に立つ者として見栄えを保つのは大切な事だ。
「運動の大切さはわかるよ、姉さんのスタイルの良さ見てれば尚更」
弟から見ても素直にそう感じる、特におかしなことを言ったとは思えないのだが頬を赤らめ。
「そ、そんな事ないよっ」
怒りはどこへ、姉さんは上機嫌でニヘ顔を浮かべており・・・理由はわからないけど助かったか?ニコニコすぎて舞台で見せられないなこれ。
数分経って落ち着いたのか姉さんは時計を見ながら仕方ないと言った感じで。
「私はお稽古に行くね、ゆうくんもちょっとは運動しないとダメだよ」
「わかった、やるよ」
「・・・今の嘘だよね?」
「すいませんでした!」
観察眼ホント強いな、マジで勝てる気がしない。隠し事とかもすぐ見破られる、ちょっとアレな本をネットで隠して買ったときもバレてあのときの姉さんの顔・・・この話はトラウマだからやめよう。
「姉さん」
「どうしたの?」
「舞台近いんでしょ、あんまり無理しないでね」
知らない人は姉さんのことを天才だと言う、実際天才なのは間違いないが裏で沢山の努力があるのを知っている。器用だから潰れる事はないと思うがそれでも弟として心配なのは確かだ。
それを聞いた姉さんは。
「・・・うん、ありがとね」
喜びと安心が混じった表情で優しい笑顔でこちらに近づき・・・近づき?
「えへへっ」
そのまま抱きしめられてしまった、普通に恥ずかしいから離してほしいが当人が凄く嬉しそうなので言い出しづらくされるがままな状態。
「・・・わかってくれてる人がいるのって嬉しい、私頑張るね?舞台も見に来てほしいな」
「・・・いつも見に行ってるでしょ?」
「知ってるよ、でも言いたかったんだ」
・・・いい話で終りそうだったが、その後抱きしめが10分を超え心ここにあらずと言った感じで恍惚としてる姉さんを何とか現実へ引き戻し出かけさせて。ちょっと運動する気になってたのに疲れた俺はソファーに戻った。