姉がハイスペックすぎる   作:ガテル

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第17話

 

「メイオネエチャーン」

 

「・・・さっ、さっきより更によくなった。短時間でこのレベル、黒川君は才能の塊だと思う」

 

「アリガトゴザイマス!」

 

役者の化野さんからお褒めの言葉を頂けるなんて光栄だ、でも震えながら言ってるのはどうしてだろう。まさか人を震わすほどの感情揺さぶる演技とか?それだったら姉さん級の才能が俺にもあるってわけじゃん、凄いね。今日から役者目指しちゃいますか!

 

 

「ゆうくん、カタコトじゃなくちゃんと演技しなきゃダメだよ。心を込めて相手の顔を見る、だって今は化野さんが・・・お姉ちゃん。なんだもんね??」

 

 

「ふぇぇ」

 

 

はい、現実は非情ですね。あの後何が起きたかというと、この現場を見た姉さんは俺達の姉弟設定をやめさせて・・・ではなく続行させた。一見微笑んでるように見えるが目は完全に死んでいて、化野さんは恐怖の視線に耐え切れず現在進行形で震えあがっている。

 

早く解放してもらわなければ両方もたない、そのためには姉さんが何でこんなに怒ってるのかを考える必要がある。弟本人が言うのもアレだが姉さんはブラコンだ、暴走することはあるが今回は同じララライで年上の人が相手。よほど何か地雷を踏んでしまったのだろうか?

 

「ね、姉さんはどうしてそんなに怒ってるの」

 

 

「さっきお姉ちゃんって化野さんに言ってたの聞いてたんだ、ゆうくん私のことはもうずっと姉さん呼びなのに・・・別に羨ましいとか微塵も思ってないよ」

 

 

そう言って姉さんは頬をプクっとさせながら不満そうにしており・・・そんな様子を見た化野さんは何か閃いたようで、こちらに近づき俺にしか聞こえないよう小声で喋りかけてきた。

 

 

「思いついたよ、この状況から脱する方法」

 

「ほ、ホントですか?」

 

「・・・私に任せて、必ず君を助けてあげる」

 

 

やだカッコいい、役者だからキメ顔が様になってるわ。もう彼女を信じるしかない、きっとやり遂げられるはずだ。化野さんは俺から離れ姉さんの方へ向き、キメ顔を維持したまま勝利の口を開いた。

 

 

 

「ごめんなさい、俺はあなた以外にお姉ちゃんって言ってしまった。今からその償いをしたい、どうか許してくれあかね・・・って伝えてほしいと黒川君から頼まれた」

 

「裏切ったな化野さん!?」

 

 

 

演技力高すぎて騙された!解放されるどころか俺にとっては更なる地獄じゃねぇか!!

 

 

「・・・本当にごめんね」

 

色々言いたいが、今度は演技とかじゃなく本当に申し訳なさそうだし責める気にはなれない。生き残るためには仕方ないんだ、生存戦略ってやつ?ピンドラ思いだしたよ。あれ名作だよね。

 

トマトのように顔を真っ赤にして姉さんは現在パンク中、逃げるなら今しかない。でもその前に一つだけ化野さんに聞きたいことがある。

 

 

「・・・黒川君?」

 

「化野さん、今日で何か掴めたんですか?」

 

「君とあかねから何かを掴むのはその・・・色んな意味で難しすぎるって結論に至った」

 

「ごめんなさいでした・・・その、俺応援してます。これからも頑張ってください」

 

「・・・ありがとう、私頑張るね」

 

 

俺の言葉に化野さんは笑顔で返してくれて、無事この場からも去り解放された。彼女の演技スキルも人を引き込む秀でたものであり、将来大女優になれるかもしれない。楽しみだ。

 

 

「・・・よし、何かいい感じだな!俺も帰え「償いって具体的には何をするのかな!?そ、それに私のことあかねって」

 

 

知ってたけどまだ終われないか!?ここから第2ラウンド開始なの?しかも実質ラスボス級だし。もうHPないよ、誰か回復させてください。

 

「償いっていうのはその、何ていうか」

 

「そういえば前に私のこと同級生よりエッチって言ってたよね?で、でも私達は姉弟だからそういうことはダメだよっ!」

 

「言ってな・・・いや言ったけどさ!ここ外なんだよ、エッチとか言わないで!?」

 

 

ああ、皆の視線が刺さる・・・てか羨ましいって目で見てる奴多いなおい。こんなのただの羞恥プレイだぞ、全然よくない。

 

俺が絶対言わないであろう偽造発言により姉さんのテンションはバグっており、いつもの穏やかさはどこへやら。未だ顔は真っ赤で目はグルグルしている。

 

 

「つ、償いの件は家に帰ってからとして・・・私のこと一度でいいからあかねって呼んでくれないかな?」

 

 

「絶対嫌だ、後償いの件引っ張らないで」

 

 

どういう気持ちで姉のことを名前呼びすればいいんだ、まぁあかねは良い名前だと思うけど・・・だっ、だからって呼ばないけどね!?拒否を受けて姉さんは何やら真剣な顔で真面目に考える仕草になり。

 

まずいな、姉さんの閃きや物事を整理し回答を導き出す能力は凄い。2時間ミステリードラマ一緒に見てたら30分で犯人や犯行動機の予想立てちゃって、明かされたとき100%その通りだったからめっちゃつまんなかったし。

 

 

「ゆうくん」

 

「な、何?」

 

俺があかね呼びをせざるを得なくなってしまう会話の流れを作ってしまうかもしれない、乗せられたら終わりだ。負けないよ、この勝負勝たなきゃね。

 

 

「・・・あかねがダメならお姉ちゃん呼びは?」

 

「身構えて損したわ」

 

 

いや真剣な顔で思考内容それかよ、勝負とか捉えた俺馬鹿みたいじゃん。あかねよりはマシだけどお姉ちゃん呼びも十分嫌だって・・・ん?ちょっと待てよ、この流れは俺にとってかなりいいんじゃないか。今の姉さん知力ダダ下がりだしお姉ちゃん呼びも拒否すればもうこの話は終わりそうだ。

 

そう思うと何か心が軽くなってきたな、俺いつも恥ずかしい思いばっかりな気がするし。後一回適当に断ればいいだけ、こんなの余裕すぎない?

 

 

「それも嫌だって、もうこれ終わりでいいよね。お姉ちゃん」

 

 

やっべ、今日散々お姉ちゃん呼びしたせいで無意識に刷り込まれちゃってたみたい。気を抜きすぎたわ、あははっ。姉さんの方を怖くて見れないが、反応は想像でき・・・

 

 

「・・・お姉ちゃんって呼んでくれたの久しぶりだよね、姉さん呼びも好きだよ?でもずっと言ってほしかったんだ。ふふっ」

 

 

予想と違い、その穏やかな笑顔は俺の言葉をゆっくりと噛みしめてるようだった。

 

 

「・・・さっきも不満そうだったけどそんなに言ってほしかったの?」

 

 

「小さい頃は私の事ずっとお姉ちゃんって呼んでて・・・それをまた聞けたんだもん、嬉しくないわけないよ」

 

 

姉さんは本当に嬉しそうで・・・その姿を見て一瞬、そんなに喜ぶならまた呼んであげてもいいと思ったのはきっと気のせいだ。

 

 

 

 

 

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