「寿さん表紙の雑誌、ポチるか迷う」
ボクの名前は黒川優斗、思春期真っ盛りの中学2年生です。はい、いきなりキモい自己紹介してごめんなさい・・・数週間前。ナンパ野郎共に絡まれていた女子を運動神経抜群で頭脳明晰な俺が華麗に(??)助けたのだが、何とその助けた相手は現役グラビアアイドルである寿みなみさんだった。
優れたルックスと破壊力抜群なスタイルを持つだけでなく、性格も明るく温厚で言わば姉と同じハイスペックさんの部類に入るだろう。2人に共通点はある、これはプールのときに思った事だが姉さんのスタイルはすご・・・今のは忘れてくださいィィィ。
「もっ、もう決めた!買うから、俺買っちゃうから!」
寿さんの件ですっごいバグり方した姉さんは現在舞台の稽古で外出中、まぁそもそも自分のパソコンなので購入がバレる事はないのだが。でもおかしいな?最近帰ってきたら消したはずの電源がついてた謎現象があったんだよね、あれはきっと俺の消し忘れだったはずだ。間違いない、HAHAHA。
見事任務完了したので、謎現象パソコン君の電源をオフにしスマホを手に取った。相変わらず休日なのにインドアだな俺・・・ん?メッセージ?
「さっき午後からの仕事が急遽来週に延期になってしもうたんや、うちも黒川君とまた会いたい思っててな。でも最近雑誌の表紙撮影とかの仕事や学校の予定が色々あったから時間作れんくて・・・急に誘っちゃった形でほんまにごめんな」
「全然構いませんよ、後その表紙の雑誌って昨日発売したやつですか?俺買いまし・・・あっ」
本人の前で「あなたが表紙の雑誌買いました!」ってつい言ってしもうた、いや別に売上的な観点では悪い事じゃないんだけど気まずさがヤバい。いやそもそも今はプライベートなんだし、こんなの反応に困るだけだって。
咄嗟に俯いてしまったから、肝心の寿さんの表情がわからない。俺は「すいません、冗談です」と言って乗り切ると決めて、渋々顔を上げると。
「く、黒川君はまだ中2なんよな?年下の14歳男の子に言われるって何か恥ずかしいわぁ。それに・・・今までにないこの感覚は一体なんなんやろ」
こちらにはよく聞こえないが、顔を赤くしながら小声で何か言っており。とりあえず不機嫌になったようには見えないしよかった・・・でも何故だろう、今この瞬間何かの扉が開いた始まりな気がするのは。今気づかないと大変な事になりそうな?
何かアワアワしちゃってる寿さんを見ながら少しの間悩んだが、まるで分からないのと彼女をあのままにしておくのは普通にまずいので。俺はこの件について考えるのを打ち切った。
「だ、大丈夫ですか寿さん」
「黒川君・・・か、感想とかあるなら教えてくれてもええで?」
「えっ、いや俺ネットで買ったのでまだ届いてないです」
「そ、そうなんやね・・・」
果たして打ち切ってよかったのだろうか。
「生まれも育ちも神奈川だったなんて驚きました」
「関西弁に関しては本当に・・・ノリ?」
あの後、俺達はとりあえず近くのカフェに入って軽くお茶することに・・・てか関西じゃない事は本当にビックリなんですけど。まぁでもキャラ付けとして有効だよね。
「驚き言うなら黒川君のお姉さんだってビックリやで?ホント美人すぎやし、女優の才もずば抜けてるなんて凄いわー」
そして話題は姉の事に、寿さんはテンション高めで姉さんをベタ褒めしている。こういう話を聞いてるのは弟として非常にむずかゆい、それだけで終わってくれればまだいいのだが残念ながら彼女も現役JK。そういうお話大好きなので、変な方にジャンプしそうだった。
「言い寄ってくる人とか絶対多いやろ、彼氏おるか知っとる?」
「そ、それは」
最近俺、姉さんの高校で彼氏になりかけましたね!なんてぜっったいに言えるわけねぇじゃん・・・あの騒動は色んな意味で(特に頬触りとか)広まってはいけない。なので当たり障りのない答えとして、「姉さんに彼氏はいない」と答えた。知られるの、イヤダ。
「そうなん?いるかと思ってたわー」
寿さんは俺の答えに意外そうで、まぁ言い寄ってくる人が多いのは確かだけど。彼氏、彼氏か。彼氏ねぇ?
「・・・黒川君すっごい嫌そうやね」
「えっ!?」
冗談はやめてくださいよ寿さん、事実じゃないのに勘違いしてちょっと引かないでくれます?でも何かここ掘り下げられたら面倒な気がするし。早急に話題を変えなければ、何か気を逸らせるものなら何でもいい。インパクトのある話を、寿さんの意識をそっちに持っていけるものを。
全然思いつか・・・いや一つあるかも、何故かわからないけどさっきアワアワしてたネタ。カフェで言うのは超場違いだけど仕方ない。
「寿さん」
「黒川君?急に真面目な顔してどうしたん?」
「・・・雑誌届いたら、じっくり見させてもらいますね」
寿さんは顔を真っ赤にして、先ほどを超える慌てっぷりとなっていた。
「そこまでお熱なんやね・・・まだ自分でエッチな事するのは早ない、いやそうでもないんかな。もっ、もしかしてうちが初めてのオカズになるんか?」
・・・また何言ってるのか聞こえないけれど、ヤバい事な気がしてならない。
「あっ、おかえりゆうくん。ご飯できたよ」
「お、美味しそうだね」
あの後別れるまで落ち着きを無くしていた寿さん、雑誌の事を言ったのが悪かったのかな・・・とりあえず今日は聞きづらいし、明日辺り本人に聞いてみるしかないか。
話は変わるが我が家の今日の夕食事情について説明すると、母さんと父さんは2人で昔の友達と会う約束があるらしい。なので帰りは遅くなってしまうらしく代わりに姉さんが料理を、舞台の稽古で大変だったはずだ。だから悪いと思い遠慮して出来合い買ってくると提案したが、姉さんは「ふふっ、私がしたいんだ。だから気にしないでいいからね?」と嬉しそうに笑って断ってきた。
そう言われしまっては逆に断る方が悪いだろう。
「・・・夕食ありがとう、姉さん」
心の底からの感謝の言葉を伝えると、姉さんはただ無言で頷き返して・・・ん?家族の間に言葉はいらないってやつ?何か怖いぐらい無機質な表情なもんだから一瞬怒ってるのかと思っちゃったよ。
俺が安堵していると、無表情を保っていた姉さんは突如ゆっくりと口角を釣り上げていきながら閉ざされた口を開いた。
「早く雑誌届くといいね」
「ぽぺぇ??」
「私達ずっと一緒に過ごしてきたんだよ?ゆうくん、リビングに入ってきたときからずっと隠し事してる顔なんだもん。何があったかなんて簡単にわかっちゃったかな」
あぁ、俺は馬鹿か。姉さんの推理力に勝てるわけないのに・・・この後仲良く☆夕食を取って、間近に迫っている舞台の練習にも付き合わされてしまった。幽霊役のクオリティは更に洗練されたものとなり、もう泣きたくなるほどの恐怖です。
・・・ごめんなさい寿さん、俺この家で雑誌を読める気がしません。