「朝は大変だったな、マジで」
現在学校も終わり放課後、姉さんのエッチ騒動・・・何だかいやらしい意味に聞こえるな?でもこの言い方で間違ってはいないから怖いよ。今朝の事件は寿さんと知り合った事や雑誌購入が原因だが、俺としては正直色々言われても困る。
ただ知り合いになったというだけ、前提として俺は普通の中学生で相手は高校生のグラビアアイドル。一般人とは天と地ほどの差があり、姉さんは心配しすぎだ。何かが起きる展開などまるでラノベじゃあるまいし・・・まぁこの前祐介に「あんな美人な姉がいる時点で普通じゃねぇよボケ」とか言われて処されたけど。姉萌え野郎め。
「いったい俺は何回処されるんだろう・・・あっ、そろそろ約束の時間だ」
朝の時点で一日分気力を消費した気がするが、いつも通り学校が終わり後は何もな・・・いわけじゃない。理由はお昼休み中に寿さんから「放課後空いとる?」とメッセージが届いたからである、彼女とは数日前にも会っているし断る理由などないのでOKした。
家族の姉さん以外で、高校生と交友関係を持つというのは初めての事。寿さんは明るく話しやすいし、純粋に友達になれたら嬉しいなと思い俺は気軽に待っていたのだが・・・
「く、黒川君」
「寿さ・・・って顔真っ赤ですよ!?大丈夫ですか!?」
待ち合わせの場にやってきた寿さんの様子はどこかおかしく、熱でもあるのかと心配になったけれど。次の言葉でその不安は打ち砕かれる事となる。
「黒川君、うちをエッチやと思った?」
「・・・えっ」
「ざ、雑誌そろそろ届いた頃なんかなーって思ったんや。読んだなら感想とか教えてくれると嬉しいというかな?も、もちろん無理に言わなくてもええで!?でも何故か強く知りたい気持ちがあるんや。二度目になってまうけど・・・うち、エッチやったかな?」
姉さんによる朝のエッチ騒動、寿さんでまさかの2回戦突入です。
「寿さん、とりあえずお水持ってきました。大丈夫ですか?」
「ホンマごめんな、さっきのは・・・忘れてくれると嬉しいわ」
「・・・は、はい」
俺もベンチに座りそこから両者無言になってしまった、あまりに気まずい空間。こうなった理由は先ほどトンデモ発言をした寿さんだが、ここは外であると我に返ったのかただでさえ真っ赤な顔はまるで爆発でもするんじゃないかと思うほどになり。フラフラして今にも倒れそうだったので、近くのベンチに座らせた。
「す、座らせてくれてありがとうな」
「俺も同じように助けられたんですし、全然構いませんよ」
「・・・その、さっきの発言についてやけど」
寿さんは目を伏せて気まずそうにしている・・・さっきのエッチ発言、普通なら痴女かと思うだろうがその意味に気づいたのだ。前に会ったときも寿さんは感想を知りたがっている様子で、俺なんかにどうしてだろうと疑問に思ってたけどようやくわかったぞ。
「いえ、言わなくて大丈夫ですよ。わかりましたから」
「えぇ!?わ、わかったんか!?」
「・・・寿さんはグラビアアイドルとしての向上のため、生の意見も聞きたかったんですよね?同性じゃなく異性である高校生男子の声です。でも同級生にそんな事聞きずらいし、向こうも言いずらくて上手くいかないでしょう。だから俺の感想を知りたがったんですね、高校生じゃなく中学生でごめんなさい」
これは姉に負けない弟の頭脳ですね、間違いない。寿さんもあまりの名推理っぷりに驚いているだろう。
「・・・違うで」
「えっ、違うんですか」
ちょっと怒っているのか、不機嫌そうにムスっとした表情で頬を膨らませていた。
「助けてくれた年下で中学2年生の優しい子から、うちが表紙の雑誌買ったって言われたとき。自分の中で何か未知なる扉が開いた気がするんよ、14歳で一見純粋そうに見えるけど。やっぱり年頃やし実は興味津々なんかな・・・かわええなぁって」
寿さんは頬を赤く染めながら、小声でブツブツ話しており・・・俺には聞こえないがどうしてだろう。何か危ない香りがするぞ?
「こ、寿さん?」
「・・・はっ!?だ、大丈夫やで!」
さっきも思ったけど本当に大丈夫なんだろうか。
数分経って、ようやく冷静さを取り戻した寿さん。だが何やら先ほどの俺の発言に引っかかるところがあるらしく、その表情を真剣なものに変えて話し出した。
「・・・黒川君がさっき言ったグラビアアイドルとしての向上、あの発言の意味とは違うけど実際もっと売れたいと思っとる。だからそれが目標なのは確かやで、難しいけどな?」
「そうなんですね・・・」
姉さんがいるからそういった話は少しだけ理解できるが、結局俺は一般人。「芸能の悩みわかります!」なんて事は言えない。
「周りのグラビアの人達が勢いよく売れるのもそうやし、うちのクラスは芸能科やから凄い子もおってな。もちろん応援しとるけど、同時に羨ましいとも思ってしまうわ。情けない話やね」
「情けないなんてそんなこと」
「・・・ついこんな話してもうた、何か黒川君になら話してもええと思ってしまったんや。本当にごめんな」
そう言って寿さんは頭を下げてきて・・・俺はただの一般人だ、その悩みに対して芸能界でこうするべきとか。そんなアドバイスをあげるなど当然できやしない、姉さんもそういう話に思う所はあるだろうし。実際俺に相談してきたこともある、いい事など言えなかったが。それでも姉さんは張り詰めた顔を解いて、嬉しそうに笑ってくれた。
俺にできることは一つだけ。
「寿さん」
「黒川君?」
「まだ会って数回の人が何言ってんだって感じですけど、寿さんは明るくていい人ですし。仕事に対して誠実な考えで向き合っていて・・・一般人の俺から見れば、姉さんや寿さんのような存在は本当に眩しく見えます」
これは嘘偽りない本音だ、姉さんはめちゃくちゃな所が少し・・・いや結構あるけど、役者としては才に溢れた本当に凄い人だしな。
「自分なんかができることは他の人達と同じ、寿さんを応援する事だけ。絶対爆売れするって確信してます、だから頑張ってください」
俺の言葉を聞いた寿さんは先ほどの暗い顔とは一転、安心したように微笑んでくれた。
「・・・こんな時間まで話してもうたわぁ、そろそろ帰らないとやな」
「もう辺り真っ暗ですもんね」
カフェとかじゃなくベンチに長時間・・・でも寿さんの表情は晴れ晴れとした爽やかなもので少しでも力になれたなら俺としても嬉しい、トンデモない1日のスタートでエッチ質問2回戦が始まったときはマジでどうなるかと思ったが大丈夫だったな。
俺はベンチから立ち上がろうとして・・・あっ長時間座り続けたせいでバランスが崩れ!?
「むぐっ」
横に倒れたみたいだが、視界は真っ暗だ。でも顔全体に感じるこの柔らかさは何だろう?凄いふかふかで何だか良い匂いもす「くっ、黒川君!?」
・・・あっ、これはもしかして。ふかふかな感触から顔を離し視界に映ったのは。
「こ、こんなファンサはないんやないかなぁ?」
顔を赤くしながら、困ったように苦笑いしている寿さんの姿だった・・・これは、その。
「漫画みたいな事しちゃった私をお許しください、ごめんなさい!!」
俺は謝罪しながら全力で逃げ去った。
「照れた表情可愛かったわぁ、完全に扉開いてもうたで。これはおねショタってやつなんやろか、もっといろんな表情見るにはどうしたらいいんやろ。いっぱい抱きしめて・・・甘やかせばええんかな?」
「あかね、急に立ち止まってどうしたの?」
「・・・何だか今凄くまずい事が起きた気がするんだ」