「……距離が離れていても姉弟で思考が繋がって会話とか出来るようになる、それもいいよね」とヤバい能力を欲しがっていたニュータイプ姉、そんな姉さんに寿さんと遊びに行くのを知られたら面倒な事になるのが確定している。だからバレないよう上手く隠してきた努力の結果、俺は無事土曜日に辿り着けたのだ。姉さんは舞台稽古が休みで家にいるし、出かけるときに怪しんでいる様子も特になかった。よし!今日は大丈夫そうだな!
???「身構えている時には死神は来ないものだ」
何か天パからの忠告が聞こえた気がするけど、まぁ問題ないだろ。ないよね?
今は待ち合わせ場所の駅前で寿さんを待っている状態なのだが、駅前というのもあり沢山の人が行き交っている。しかし、そんな人込みでも芸能人のオーラというのは凄まじく遠くからこちらへ向かい歩いてくるのを見つけた。
「―――黒川君、遅れてごめんやわ。ちょっと計画……準備するのに時間かかってしもうて」
「ケイカク??」
「なっ、何でもないで!?」
どうして「計画」の部分をスルーしちゃいけないものに感じるんだろ、いや気のせいか?これから遊ぶのだから変な思考はやめよう……前回ハプニングで顔をうずめてしまった大きな二つのお山。改めて見てもデカいなとか思うのマジでやめよう。
「黒川君の視線を感じるで、やっぱり雑誌買ってくれたのもそうやし興味が少しでもあるのは間違いなさそうでよかったわ。かわええなぁ……ついに始まるんや、みなみお姉ちゃん計画が」
何か言っているが小声でしかも早口なので、その内容は全く聞き取れなかった。
駅前で待ち合わせた理由というのも、今日行く場所が電車に40分ほど乗った先にある遊園地だからだ。そこへ行こうと提案してきたのは寿さんで、彼女とはメッセージでのやり取りはしているもののまだ直接会ったのは数回程度しかない。誘ってくれたのはもちろん嬉しいけれど、後それ以前の問題があって……姉さんがいても俺は芸能界を詳しくは知らないが、寿さんは売り出し中のグラビアアイドルで中学生とはいえ男子の俺と2人だけで遊園地に行くのは大丈夫なのかな?と純粋に心配に思った。なので本人に軽くその事について聞いてみた所。
「本来それは問題やけどね、でも今回は大丈夫なんよ」
「えっ」
まさか俺をTSさせて女の子に変えるつもりですか!?なんてバカで悲しいオタク的発想が一瞬頭の中によぎったが、次に出てきたのは予想もつかないような驚き発言で。
「く、黒川君はまだ中2よな。だからアレや、一緒にいても姉弟とかに思われるやろうし?もっ、問題ないと思うわ?」
「……確かにそうかもしれませんが、俺にはもう姉さんがいるんですけど「姉弟に見えればええ、問題ないで!」あっハイ」
電話越しでも分かるぐらい寿さんの声はうわずっており、俺にはまるで心の内の欲望を外へ出させないよう必死に抑えてるみたいに感じられて。でもそれが何かは分からないし、圧も凄かったのでとりあえず納得するしかなかった。
「テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるなぁ~」
「黒川君?うちらテーマパークに来とるんよ?」
「ごめんなさい、言いたかっただけです」
電車から降りて改札を出た後に10分ほど歩き、今日の目的地である遊園地へ到着した。事前にどのアトラクションに乗るかなどは別に決めてないのだが、行く前にサラっと見た情報の限りだと一つだけ絶対に嫌なのがある。それは―――
お化けやし「まずはお化け屋敷やね、ここ全国の遊園地の中でもめちゃくちゃ怖いって有名でな。絶対行くべきやわ!」
ふぇぇ。
「寿さん!?暗くて全然見えないんですけど横にいますよね。先に行っちゃってないですよね!?」
「ちゃんと横におるで、それは黒川君が一番分かっとるんやない」
「ま、まぁそれは」
「ふふっ、せやろ。だってうちら今……手を繋いでるもんな?」
元から俺は心霊系が無理で、それに加えて最近見た姉さんの舞台で更に苦手度は上がりここへ入った瞬間から震えが止まらなかったのだ。しかし、そんな俺を見た寿さんが「大丈夫や、怖いときはこうすると落ち着くんよ」と手を取りギュッと握って。
かなり恥ずかしいが、やはり人の体温というのは無償に安心感を覚える……正直グラドルだからかお肌スベスベですげぇとか思ったけど。これは口が裂けても言えない、セクハラですわ!
それにしても怖がってる俺を落ち着かせるために手を握ってくれるなんて、寿さんは優しいし頼もしいなぁ?
「第1段階、優しさと頼もしさを感じさせるは達成やね」
……何故か、心の中のキャルが「ヤバイわよ!」と警告を告げてきたが俺にはその意味が分からなかった。
気づきなさい。