「このソフトクリームめちゃくちゃええわぁ、黒川君も一口食べる?美味しいで」
「いいんですか!?俺の買ったチュロスも美味しいんですけど正直そっちも気になってて……あっ」
「黒川君?」
「え、えっとその場合は文乃が寿様のスプーンを使わせて頂く。そういう事になるのでございますね?」
間接キスという事実にテンパりすぎて色々おかしくなってしまった、むべむべ……はい、推し(琴寄文乃)に現実逃避するのはここまでにしますね。何で中学生でエロゲやってるんだよという部分に関しましては、俺が親に年齢制限の件は上手く隠してDL版を購入させる事に成功したからです本当にごめんなさい。
改めて今の状況を説明します、あの後お化け屋敷を出て時刻を確認するとちょうどお昼時だった。なので遊園地のレストランに行き昼食を済ませ、現在は食後のデザートと言った所である。甘いもので癒される時間かと思いきや、カス童貞には重すぎる試練をぶち込まれて泣きそうなんだけど?いや寿さんが嫌いとかでは当然ないんだが。
あたふたしている俺とは対照的に寿さんは冷静そのもの、恐らく間接キスになる事を分かっていないのだと思ったが。
「―――黒川君、うちは動揺なんてしないで」
「えっ」
まさかの予想は外れ、つまり寿さんは間接キスという事実を分かった上でこの余裕溢れる態度を取っているというのか!?同じイベントでも姉さんは何か目がグルグルして顔も真っ赤になってたんだぞ!?
俺は衝撃を受けていた、姉弟揃って混乱に陥ったのに。何と言うか、寿さん……
「大人ですね!尊敬です!」
「第2段階、お姉さんとしての余裕を見せつけるも達成やね」
またもや心に微かな引っかかりを感じたが、やはり意味は分からない。
寿さんの提案で次はコーヒーカップに乗る事に、またもや陰キャカス童貞にはしんどい試練に正直断りたくなったが。まるで子供のように楽しみそうにしている寿さんに言う勇気は俺にはなかった、でもそのアトラクションって家族や同性の友達以外だとカップルとかで乗る場合が多いのでは。何故俺を?
そう疑問に感じながらも目的地を目指し歩いていると、ステージでヒーローショーでもやっているのか子供達の歓声が聞こえてきた。どうやらちょうど変身シーンらしい。
「アマゾンッッッ!!!」
「……アマゾン」
ライダーはライダーでも子供達に見せちゃダメなやつじゃん、何でやってんねん。
謎すぎる作品チョイスについ頭を抱えたくなったが、寿さんお目当てのアトラクションが見えてきたので思考をそちらに切り替える。
「ホンマ楽しみやわーそういえば黒川君は……女の子とコーヒーカップに乗った経験とかって、あるん?」
「い、いや無いですね。そもそも今まで付き合った事すらないんで」
「うちも男の子とは始めてなんよ、仲間やね!」
多分俺の勘違いだろうが、寿さんの目から一瞬ハイライトが消えたように見えた。気のせいだよな、気のせいだよね……それにしてもタイミングが悪かったのもあるのか予想以上にカップルだらけ。まぁコーヒーカップとなれば仕方ないのか?予想以上にしんどい状況のため、俺は先ほどから抱えていた疑問を寿さんに尋ねてみようと決めた。
「えっと、どうして寿さんは俺をコーヒーカップに誘っ「黒川君うちらもう乗れるみたいみたいやで立ち止まってると後ろの人達に悪いしな、な!?」あっハイ」
理由は分からないが、まるでボロを出さんと言わんばかりに必死な寿さんに話を強引に切られてしまった。
ちなみにコーヒーカップの感想は、どことは言わないけどめちゃくちゃ揺れてました。グラビアの方って凄いなぁ?こう表現するとただのエロガキに捉えられるかもしれないが、それだけじゃない。
以前話したときに俺は、寿さんの自らの仕事に対する真剣な向き合い方に尊敬の念を覚えていたのだが……先ほどのお化け屋敷での恐怖を落ち着かせるために手を握ってくれるという優しさ、同時に感じた年上としての頼もしさ。ソフトクリームの件だってそうだ、俺がアホみたいな思考に陥っている中で寿さんは冷静そのものな大人の余裕っぷりを見せてくれた。
凄い人である、俺は今自分の愚かさを恥じた……エロい目で見るなど言語道断。寿さんは尊敬する年上女性だ!
「だ、第3段階のうちの身体を意識させるは達成やねっ。あかんこれめちゃくちゃ恥ずかしいで!?でっ、でも男の子は年上のお姉さんに甘えたくなるってネットで見たんよ……だからこれで計画の最終段階に移っても大丈夫なはずや」
寿さん=エロなど浅い!俺は尊敬する人間としてこの人の仕事を応援していくと決めたんだ!
この後もジェットコースターやメリーゴーランドなどに乗り、時間はあっという間に過ぎていきいつの間にか夕方に。
「沢山乗って本当に楽しかったなぁ」
「……」
「……寿さん?」
返答はなく、何故か俯いてまま黙り込んでいる。どこか体調でも悪いのかと心配になったが。
「―――黒川君、最後に観覧車乗らへん?」
顔を上げた寿さんは、何か大きな決意を感じさせるような真面目な顔つきだった。
そういえば乗ってなかったなと思い出し、綺麗な景色を見る楽しみを胸に抱き俺は観覧車に乗り。
「ようやく、ようやく2人っきりになれたんや……ホンマにこの時を待っとったで」
―――従業員の人が扉を閉めてから30秒といった所だろうか、俺は楽しみを胸に抱くのではなく寿さんに抱きしめられて胸に顔を埋めている。
自分では「何をしてるんですか!?」と口に出しているつもりなのだが、悲しい事にその言葉は「フガフガ!?」と化してしまっていた。
「今日遊園地に誘ったのはある目的のためなんよ、騙してごめんな」
えっ、何このノリ……
「第1、第2、第3の段階は達成されたんや。そしてうちの計画の最終段階はな」
もう意味不明だけど、どうなってしまうんだ。マジで何も分からんから逆に怖いよ!?
「黒川君にうちの事を」
うちの事を?
「……みなみお姉ちゃん、そう呼ばせるんや」
数秒の間に俺の中に今日の出来事が走馬灯のように思い返される、そして全てを理解した後。ただ、この一言を伝えたくなった―――帰っていいですか?
……だってこれいつものじゃん!姉さんで散々やってきたノリじゃん!?
もうやだぁ。
「観覧車から降りるまでに沢山可愛がって、甘やかしてあげるで……」
「フガフガ!?」(少年のボクが大人になっちゃう~???)
まぁそんな展開などないが、もはや地獄みたいな空間の中で俺のポケットに入ったスマホから着信音が鳴り響いた。誰からかは分からないが、急いで指で画面をスライドし通話をONに。
すると。
「みなみさん、ゆうくんと一緒に観覧車にいるのは分かってるよ。だから今すぐやめてほしいんだ、後はね……ちょっとお話したい事もあるから一緒に来てくれないかな?」
「フガフガ!」(オネエチャン!)
……ごめん待って、何で姉さんが俺達が一緒に観覧車乗ってるのを知ってるんですか?
次回、ご対面。