「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」
「ゆうくん、逃げるも何もここは自分の部屋……だからね?逃げ場なんてないんだよ??」
「……今まで内緒にしてたんだけどさ、実は投資で成功しててアメリカに別荘を持ってるん「ゆうくん」嘘ですイキってすみませんでした」
寿さんに誘われ行った遊園地、お化け屋敷やコーヒーカップなど様々なアトラクションに乗り大いに楽しんだ俺だったが彼女には隠されたある目的が。それは「みなみお姉ちゃん計画」という俺にみなみお姉ちゃんと呼ばせるための計画で……ごめん、家に着くまでに本人が自白した内容を今説明してるんだけど訳分かんなすぎて頭痛くなってきた。
まぁ後少しなので頑張るとしよう、楽しい1日のシメとなる観覧車で危うく少年のボクが大人にされかけた(???)瞬間。まさかの姉さんから助けの電話がかかってきたのだ。
そして「ちょっとお話したい事もあるから一緒に来てくれないかな」と俺だけでなく寿さんもお呼ばれしてしまった、ちなみに寿さんはというと今俺の横で恐怖のあまり無言で固まっています。いやこんな流れ化野さんの時にも見たな?
「本当に間一髪だったなぁ、間に合ってよかったよ」
そう言って姉さんは自分の胸に手を置き、心の底から安心している様子だった。姿だけ見れば「そうだね~!」と同意したくなるだろうが、俺には大きな疑問があるので全く喜べない。
正直怖すぎるが、覚悟を決めて聞いてみる事に。
「あのさ、姉さんには今日遊園地に行くって伝えてなかったよね。なのに何故か知っていた、しかも相手の寿さんの存在まで……マジでどうやったんです?」
「あっ、それはね」
もう嫌な予感しかないなぁ、自分で聞いておいてアレだけど知りたくないなぁ。岐阜のヤベェ女な小佐内さんのように、盗聴器でも仕掛けてるとかはやめてほしい。
俺はそんなあり得なくもない可能性に震えていたのだが。
「数日前からゆうくんの様子が何だかおかしくて違和感に思ってたんだ、今日の朝もコソコソして出かけて行ったし。だから行った後にゆうくんについてプロファイリングしたんだよ」
「……それで俺の事情が分かったと?」
「自分でも自信はなかったけどね、でも合ってたから安心したよ。私お姉ちゃんだからやっぱり色々分かっちゃうのかな?ふふっ」
「ふぇぇ、この人怖いよぉ」
前に言ってた「距離が離れていても思考が繋がる~」なニュータイプオチの方がまだマシだったわ、こんなの考察の域超えすぎだろ。
今日はただでさえ疲労感が凄いので、これ以上の情報は脳がキャパオーバーしそうになってしまい頭を抱えていると。
「……黒川さん、ちょっとだけうちの話聞いてくれへんか」
この部屋に入ってからずっと口を閉ざしていた寿さんが喋った。
お姉ちゃんとして俺の行動を的中させたのが嬉しいのか、上機嫌で嬉しそうしている姉さんの笑顔が曇る。
「誰かに敵対心を向ける行為なんてしたくないけど、ゆうくんがピンチだったんだし今回はそうさせてもらうよ……それで何かな、お姉ちゃんを名乗るエセお姉ちゃんさん?」
エセお姉ちゃんさんって何だよ、まぁとりあえずそこに関してはスルーだ。それよりも寿さんがヤバい、何故なら今の姉さんには何を言っても意味がなくむしろ逆効果でしかないからである。
くっ!?ここは俺が合間に入って止めるしかないのか、まさかここで「やめて!私の為に争わないで!」を言う時が来るとは思わなかった。でもこの場合「俺の為に!」になっちゃうのか?何か嫌だな、もしTSして女の子になれたらな……カスオタクの戯言はやめろって?嘘だ姉妹百合作品での女子同士の取り合いとかみんな好きなくせに!
俺が2人を止めに入ろうとしたその時。
「―――ホンマにごめんなさい、今回の件は全てうちが暴走したせいや。気持ちが高ぶってやらかして冷静になった今は反省しかあらへん、もちろん謝って許してもらえるとは思っとらんわ。でもただ言わせて欲しかったんや」
深々と頭を下げ、そう言って謝ってきた。俺はもちろん姉さんも予想外だったのか唖然としたが本人は言葉を続ける。
「当然黒川君にも謝らなあかん、今日はよこしまな気持ちで誘ってもうた。黒川君は純粋に楽しんでくれてたのに、それに観覧車での行動は驚いたやろ……ごめんな」
「え、えっと」
寿さんの謝罪に裏など微塵も感じず、言葉の通り本当に申し訳なさそうなその表情を見た俺は姉さんと目を合わせ……幸い向こうも同じふうに思ってくれているらしい。
「別に俺怒っていませんよ、だからそんな頭を下げるなんてやめてください」
「……黒川君?」
「お化け屋敷やソフトクリームの時に感じた頼もしさや尊敬が作った言動だとしても関係ないです、だって今日は純粋にめちゃくちゃ楽しかったんですから。観覧車でのアレはまぁビックリしましたが……そこまで引きずるもんじゃありませんし」
正直俺達の場所を分かった姉さんの方が恐怖を感じました!とは言わないでおく、そんな感じで俺に続き姉さんも未だにちょっとだけ警戒してそうな感じながらも。
「うん、ゆうくんが許すなら私もそうしなきゃね……みなみさん、わざわざ呼び出してしまってごめんなさい」
「く、黒川さんが謝る必要なんて全然ないで!?うちのせいなんやから!」
「そういえばコーヒーカップのときに顔真っ赤にしてましたけど、あのときの計画内容ってどんなやつだったんですか?」
「それ今出すのやめてくれへん!?」
色々あったものの、こうして無事に騒動は幕を閉じ―――その安心感からか完全に気が緩んでしまった俺は。
「あははっ、それにしてもホント観覧車でのアレはビックリでした。狭い空間に2人きり……そういえば前に動画で見た2人のヤンデレな女の子に閉じ込められるってASMRと人数違えどシチュエーションは似てるかも?左右から囁かれて責められるあの感覚、怯えながらもアレは新しい世界の扉を開きかけるレベルの良さがあったなぁ」
ヤンデレもまたいいものだ……って今のやつ口に出てた?
てかちょっと待って、姉さんは急に顔赤くしてどうしたんですか??
「ヤンデレ、新しい世界の扉、怯え、そういえばちょっと前に舞台での役を引きずって私を怖がってるゆうくんの事を可愛いって感じたんだよね……ふふっ」
「ねぇ何でゾクゾクし出しちゃってんの!?ヤベェ顔してるよ!?」
詳しく説明すると、第30話のラストで姉さんは「怯えるゆうくん、結構可愛いかも」まるで新たな性癖の扉を開いたかのようなイケない表情を浮かべていたのである。
「そっか、ゆうくんは2人の女の子に責められるので新しい世界の扉を開きかけたんだ……それなら」
「それならって言葉の意図を説明してくださいお願いします」
俺の訴えも空しく、姉さんは自らの身体の震えを抑えながらも寿さんの元へ近づき。
「―――みなみさん、今回だけだよ。一緒にゆうくんを責めるのはどうかな」
「えっ!?」
とんでもない誘いに驚きの声を上げる寿さん、いや大丈夫なはずだ。俺は寿さんの事を信じている。
「いやダメやろ!?」
「……お姉ちゃん、したかったんだよね?」
「そっ、それはやなぁ」
俺は!姉さんの言葉でもう既に揺らぎかけてる寿さんを信じている!!
「今日だけは一緒に、いいよ?」
「……え、ええんか?」
「うん、なっていいからね……みなみお姉ちゃんに」
「よかねぇよ!これならさっきの話は一体何だったんだ!」
残念ながら誘惑に負けてしまったらしく、目にハートマークを浮かべてこちらに迫ってくる寿さん。
「黒川君……うちがみなみお姉ちゃんやで?」
「ごめんなさい、お望みならあなたの事をみなみお姉ちゃんって何度でも呼んであげるのでそれだけはマジで勘弁してくださ―――あっ」
俺は寿さんと姉さんに沢山甘やかされた、断じてエッチな事はされてません。
自業自得。